キャリア講義

「正解」を求めて思考を停止するな|圧倒的な行動量とインプットが自分なりの就活成功へのカギとなる

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目次

  1. ウィルフ 黒石健太郎 さん
  2. 当たり前レベルを上げること。高い成果はそれにもとづいて生まれる
  3. 正解にあてはめようとしない! 情報をインプットし自分の頭で判断して正解をつくり出そう

ウィルフ 黒石健太郎 さん

Kentaro Kuroishi●東京大学法学部卒。新卒でリクルートに入社後、採用・育成・社内活性コンサルティングなどの営業、社内公募による新規事業の企画・立ち上げに従事。2013年6月株式会社ウィルフ(WILLFU)を設立し、現職。起業を考える学生への支援をおこなっている

Q.現在はウィルフの代表取締役としてご活躍されていますが、ファーストキャリアはどのように決めたのでしょうか?

私はファーストキャリアとしてリクルートに入社を決めました。もともと就活時には3つの軸を持っていました。まずはもともと政治に携わりたいと思っていたこともあり「官(公務員)より民(民間企業)」がいい、また民の中でも幅広い業界に携わる仕事、そして最後が一緒に働く人。この3つの軸に当てはまったのがリクルートだったということです。

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Q.その就活時に掲げていた軸についてもう少し詳しく教えてください。

まず「官より民」に関しては、法学部に所属していたこともありもともとは公務員の道を歩もうかと思っていたのですが、練習がてら民間企業も受けてみてはとアドバイスをいただきました。そこで感じたのが民間企業と公務員では思考プロセスが大きく違うのだなということでした

公務員が主張していた公務員の魅力は、「社会にとって本当にためになることを『お金という制約に囚われずに』できる」ということだったのに対し、民間企業が主張していた民間の魅力は、「社会課題を、きちんと『継続的にお金が回る仕組み』にまで作り上げて解決していく」ということでした。

今後少子化が進み財政がひっ迫されていく中で、公務員的思考プロセスでは中長期的な日本の課題解決は難しいと考え、民間企業へのシフトチェンジを決めました。

Q.社会問題の解決に対して、公務員と民間企業ではそこまで違いがあるのですね。その中でなぜリクルートを選んだのでしょうか。

初めはとある銀行に内定を頂いていたのですが、入社前の懇親会や勉強会などの開催にしても受け身な人が多く、刺激がないことに不安を感じていました

そんな時に友人を介してリクルートという企業に出会い、リクルーターや先輩社員などと接していく中でリクルートを魅力的に感じるようになってきました。民間企業のひとつであり幅広い業界に接することができる、そして一緒に働く人に惹かれたためにリクルートを選びました。

Q.一緒に働く人を大切にされている印象ですが、一口に「人」とはいっても黒石さんの中でどのような「人」だったからこそ決め手となったのでしょうか。

同期にはおもしろい人が多かったですね。六本木でバーを経営している人、すでに起業している人、太鼓をたたいて世界を回っている人などがいました。評論家のように口だけで議論している人ではなく、思ったことや考えたことがあれば実行に移し形にしている人が多かったですね。

こういった人たちと話をしてみると、やはり内容が机上の空論ではなくリアリティがあるので、非常におもしろく刺激的でした。このように魂を込めて生きている人たちと仕事をしてみたい、一緒にいたほうが自分も成長できると思ったのが決め手でしょうか。

Q.人は人でもどういう「人」がいいか、きちんと定められていて改めてすばらしいと感じています。ちなみに幅広い業界に携わりたかった理由は何かあるのでしょうか?

そもそも何か特定の社会課題に対して解決を図りたいという思いがあったわけではありませんでした。そういう意味では、幅広い業界が良かったというよりは特に特定の専門性を身につけたかったわけではなかった、という方が合っていると思います。

これはもしかしたら私だけなのかもしれませんが、そもそも大して業界知識もなく、特に意思がない段階で特定の業界に強く興味を惹かれることはあまりないのではないでしょうか。だからこそ幅広い業界に携わりたいというのが自分自身のナチュラルな思考でしたね。そのうえで何か特定の業界に興味が芽生えたらシフトチェンジしていけば良いと考えています。

当たり前レベルを上げること。高い成果はそれにもとづいて生まれる

Q.リクルート入社後は仕事においてどのようなことを考えながら過ごしてきたのでしょうか。

正直、どういうキャリアを積みたいなど何かを意識していたことはない気がしています。ただ目の前の仕事が楽しかったから全力で働いていただけですね。1年目は営業において達成率などがランキング化されていくことがおもしろかったです。圧倒的な行動量が大切だと学びましたね。自分の中での当たり前レベルが上がって、この高いレベル感で仕事がしたいと思うようになりました。

2年目以降は大企業対象の営業になりました。過去に錚々たる営業担当が提案をし尽くしているため、ただ行動しているだけでは売上は上がりませんでした。目の前の担当部署の担当者だけでなく、さまざまな部署の人と仲良くなり、土日はクライアント企業の運動部に遊びに行ってみたり、その後大勢で飲みに行ったり雑談をしているすると、「実はこんな課題が、現場で起こっているのでは?」というものがぼんやり見えてくるのですよね。

そのように、担当部署の方が気づいていないような現場の課題を、現場を歩き回って拾っていかなければ仕事は生まれないことを知りました。それも非常にやりがいがあり楽しかったです。

Q.非常に充実した社会人生活を過ごされていたようですね。そこから起業に至るまでにはどのような考えがあったのでしょうか。

その後、社内で新規事業の立ち上げにリーダーとして取り組んだこともあり、楽しく仕事をしていました。大企業のお金と人を使うことで社会的インパクトある仕事ができると、確信を持って仕事をしていました。ただその新規事業において、さまざまなNPOの代表と仕事する中で本当に社会を変えていくのは「志ある強い個人だ」という結論に達したのです

NPOの代表と議論している中で、「こんな取り組みをすれば社会をいい方向に持っていけるのでは」という話が出た時に、私は「全社経営方針の中のどこに紐付けて、誰に根回しをし、どの会議でどう提案するといいか」を考え、3年後にはできるかなという感覚で受け止めていました。一方のNPOの代表は、すぐにさまざまな企業を回り、お金を集め、事業を形にしていました。また1~2年の実績を作るとその実績を国に報告・提言し、社会の制度変更にまでつなげていました。

「ゼロからイチを生み出し、実績を作ることさえ実現できれば、こんなスピーディに社会も国も変えていけるんだ」という確信を持ったのです。この経験を経て、本当に社会をいい方向へと変えていくために、自身でゼロイチを生み出していく、志ある強い個人になろうと決め、退職・起業しました。

正解にあてはめようとしない! 情報をインプットし自分の頭で判断して正解をつくり出そう

Q.これまでのご経歴からも今後の社会人にとって役立つ情報が多くありますね。逆に就活生が業界や企業を選ぶにあたり大切にすべき点は何だとお考えでしょうか。

正解を求めないことではないでしょうか。「どう選べばいいか」と考えている時点で大事な思考は停止しているように思います。正解を追い求め、正解に当てはまるような人生はあまり楽しくない気がしています。

そもそも働いたことがないので、どこがどんな業界かはあまりイメージがつかないでしょうし、特にやりたいことなどがない場合は相手に判断してもらうのもひとつの手です。とりあえずでもさまざまな企業を受け、その企業や業界に合う・合わないは企業に判断してもらえば、おのずと自分に合う企業・必要としてくれている企業が残りますよね。

企業側もこれまでの採用データなどをもとに、採りたい人物・活躍する可能性のある人物を選んでいます。そういった基準に身を委ねても良いですし、仮に入社できた場合は活躍できる可能性も高まるでしょう。わくわくしながら生きていけるように思いますよ。

Q.では逆にやりたいことが明確な人は、それは自分の行きたい道を進めば良いのでしょうか。

そうですね、そういう人たちはやりたいことを貫き通していいでしょう。ただ、そもそもやりたいことが明確だと思っている人のほうがもしかしたら勘違いしているような気もしています。

これまでの人生の中で企業に関して知っている情報なんて、かなり限られていると思うのですよね。その中で「自分は絶対これをやりたい!」と思い込んでしまうのは、自分の可能性を閉ざしてしまっているように感じます。あくまでその考えは仮説として、やりたいことを絞り込まずにさまざまな企業や業界に触れることでその仮説を検証し磨いていけば良いと思っています。

Q.学生が社会人の第一歩となる大事なファーストキャリアを決めるにあたって注意すべきことはありますか。

企業側のポジショントークに騙されないことが一番大事かなと思っています。

就活をしていると、いろいろな人に相談することが多くあると思うのですが、たとえば大企業の人であれば「大企業はいいよ」、公務員であれば「公務員はいいよ」などとさまざまなロジックで自社の魅力を訴えかけてきます。でも、それは個人の感覚であり自分にとって本当に「いい」のか、正しいのかはわかりません。

世の中には多様な価値観であふれています。それぞれの人がそれぞれの立場でそれぞれの思うことを述べているだけであって、相手の言うことがすべてではないですし、正解があるわけでもありません。正解を探してしまうと正解から外れる自分が怖くなってしまい、不安で意思決定が進まなくなると思うのです。

正解は自分で作るものだという前提で、まずは大量の情報をインプットしましょう。そうすることで、これは少し違うのではないか、しっくりくる、などという基準が見えてきて、仮説検証ができると思います。そこから、自分の頭で考え自分の頭で判断し正解をつくり出していってください。

Q.黒石さんならではの貴重なお話をありがとうございました。最後に、今就活をがんばる学生に対してメッセージをお願いいたします。

あまり他人に迎合せず、自分がやりたいことを貫いていけばいいと思います。やりたいことがわからない場合は、頭で考えてもわからないものはわからないのでとにかく行動量を増やしましょう

インプットと、自分の足を使って行動に移すこと。その業界の仕事内容がわからなければ、バイトに行ってみるインターンに参加してみる自分で事業を起こしてみる、などできることにもさまざまな選択肢があります。行動することで判断がつくようになるものです。だから、人に会ってインプットして自分で実際にやってみる。これに尽きます。ぜひ積極的に動いてみてください。

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