業界研究

【IT業界とは】把握すべき今後の市場の動向や年収事情

ITとは

ITとは、「Information Technology(情報技術)」の略です。パソコンやスマートフォンなどのコンピュータによる情報技術の総称を意味します。インターネットを利用したサービスや検索技術もITです。また、ITという単語は、セキュリティや情報処理なども含み広い意味で使われます。

ITは、今や私たちの生活になくてはならない技術です。スマートフォンやインターネット、SNSなど、ITのもたらすサービスを日常的に利用するようになりました。ITが身近な存在になったことで、IT業界での就職を志望する人も増えています。その一方で、興味はあっても、IT業界の構成や職種がはっきりと分からないという人も多いです。それは、IT業界の発展に伴って、事業内容や職種が複雑化しているからです。

IT業界への就職を目指すのであれば、IT業界の基本を理解しましょう。IT業界の市況や構成、職種などを整理してご紹介していきます。

IT業界の市況

IT業界の基本を理解するために、まずは市況を把握していきましょう。

IT業界の市場は好調です。「業界動向サーチ」によると、2017-18年のIT業界の規模(主要対象企業177社の売上高の合計)は15兆0,374億円となっており、収益性が+4.2%です。過去の推移を見ても、2013-17年にかけて増加傾向にあります。以前は、リーマンショックや東日本大震災の影響で低迷した時期もありました。しかし、不景気時にIT投資を先送りしていた企業が、投資を再開し始めたり、マイナンバーの導入や金融機関のシステム更新など大型案件の需要が伸びたことから、IT業界の業績も近年は好調です。

現在、IT技術は私たちの生活に欠かせません。SNSやネットショッピングは、多くの人が利用しています。また、近年では、自動車や家電製品などにもIT技術を搭載しています。さらに、電力や鉄道などのインフラ、金融機関などの管理システムでもIT技術が活躍している現状を見れば、IT業界の事業の幅広さがうかがえます。

このように、IT業界は成長産業のひとつなのです。

IT業界の市場は今後も拡大する

IT業界の市場は今後も拡大すると言われています。それは、IT技術へのニーズがより高まっていくと考えられるからです。実際に、現在、多くの新しいIT技術が求められています。

例えば、「IoT」です。IoTとは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、コンピューターなどのIT機器だけでなく、モノがインターネットにつながることです。このIoTの技術で、自動車の自動運転や農業アプリケーションによる農場管理など、さまざまな分野での活躍が期待されています。すでに、自動車では自動認識、自動制御による運転アシスト技術が取り入れられ、家電を声で操作する商品も出てきています。

また、近年では「AI」も注目されています。AIとは「Artificial Intelligence(人工知能)」のことです。コンピュータに、人と同じように自分で考え判断をする知能を人工的に持たせようという試みです。今後の技術の発展により、AIが人の変わりに仕事をするようになると言われています。

通信技術では、「5G」の研究開発が進められています。5Gとは、超高速・大容量・超低遅延・多数同時接続を実現する「第5世代移動通信システム」のことです。5Gの技術により遅延なくデータの送受信ができるようになることから、例えば、自動車の自動運転においてタイムラグのない安全なオペレーションが可能になります。また、膨大な数の端末と同時接続することも可能になります。スマートフォンや、身の回りのあらゆるモノを同時にインターネットに接続することができるようになるため、IoTの実用化においても欠かせない通信技術となります。2022年度には、累積7万局の5G基地局が設置されると推定されています。

例で挙げた23つの技術だけでも、その活用方法は多岐にわたります。その求められている技術の発展や開発で企業間の競争が激しくなると考えられます。今後は、IT技術の利用の拡大に伴って、IT業界の市場も拡大するでしょう。

IT人材の確保が必須

IT技術の利用の拡大に伴って、IT業界では今以上に人材が必要とされていきます。その一方で、人口減少に伴い労働人口が減少することから、今後、IT人材の不足が深刻化すると考えられています。経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」によると、2030年には、IT業界で約59万人程度の人材が不足するとの推計結果が得られました。

懸念されているのは、人材不足だけではありません。IT業界では、将来、人手不足と余剰人員問題が同時発生すると言われています。これは、従来の技術者が、先端IT技術に対応できなくなることが原因です。現在働いている人材のスキルアップに努めることはもちろんですが、これからはより若い人材を取り入れ、今から先端技術に関する教育をしていくことも重要なのです。

今のうちから新しいIT人材を確保していくことが、IT業界で求められています。

IT業界の5つの分類と主要企業

それでは、IT業界とは実際にどのような業界なのでしょうか。IT業界では、さまざまな事業や職種があり、技術やサービスの進化に伴って業界の形態は複雑化しています。そこで、IT業界を5つに分類し、それぞれの業界の内容を知ることで全体像を把握しましょう。

また、それぞれの分類をイメージできるように、各分類における主要企業をご紹介します。5つの分類は、インターネット業界、情報処理サービス業界、通信業界、ソフトウェア業界、ハードウェア業界、です。

1.インターネット業界

インターネット業界の代表的な企業

  • Google
  • Yahoo!
  • Facebook
  • Amazon
  • LINE
  • DeNA
  • 楽天

インターネット業界には、インターネットを利用してサービスを提供する企業が分類されます。インターネット業界の事業は多岐に渡り、多くの方にとって馴染みのある業界と言えます。事業内容は、インターネット広告やWEB制作、検索エンジン、EC(電子商取引)、ソーシャルゲーム、SNSなどが挙げられます。

スマートフォンが普及したことによって、この業界の市場は、拡大を続けています。例えば、ソーシャルゲームやSNSは、スマートフォンの登場によって発展した分野です。スマートフォンによってインターネットがより身近な存在になったことから、今後も更なる発展が見込まれる業界です。

2.情報処理サービス業界

情報処理サービス業界の代表的な企業

  • NTTデータ
  • 日本IBM
  • 富士通
  • NEC

情報処理サービス業界の企業は、システムインテグレーター(SI)と呼ばれ、情報システムの設計、開発、運用、保守を行います。これらは、企業に情報システムの導入を行う際に必要となるサービスです。大きな規模の仕事も多く、企業の業務系システムだけでなく、金融機関や公共交通機関などのシステムを請け負うこともあります。

また、システムの設計や運用だけでなく、ITを活用した業務効率化を提案するコンサルティング業務を担う企業もあります。

情報処理サービス業界で、近年、注目が集まっているのがIoTです。IoTが発展・普及することで、今後さらに求人が増えると考えられます。

3.通信業界

通信業界の代表的な企業

  • NTTドコモ
  • ソフトバンクモバイル
  • KDDI

通信業界は、電話やインターネット、光ファイバー、無線などの通信サービスを提供する業界です。NTTやソフトバンクなどが提供する電話回線やインターネット回線が分かりやすい例です。通信インフラを担う業界のため、多くの人にとって必要不可欠な業界になっています。

近年のIT業界急成長の背景には、高速インターネット回線とスマートフォンの普及があります。つまり、通信業界の成長がIT業界全体の成長を促したのです。

また、5G(第5世代移動通信システム)は、IoTやVR、ARといった先端技術の実用化や普及に欠かせない技術です。そのため、通信業界は、今後のIT業界の成長にも欠かせない業界と言えます。

4.ソフトウェア業界

ソフトウェア業界の代表的な企業

  • Microsoft
  • トレンドマイクロ
  • 日本オラクル
  • オービック

ソフトウェア業界では、WindowsやMacOSなどのオペレーティングシステムや、WordやExcelなどのアプリケーションシステムを扱います。私たちが普段利用している、スマートフォン上のアプリケーションの設計や開発を行う業界、と考えると親しみやすいでしょう。

ITの仕事と聞いて多くの方がイメージするのは、このソフトウェア業界の職種です。ソフトウェア業界の主なITエンジニアとして、プログラマーやシステムエンジニア(SE)があげられます。

IT業界の成長とともに、ソフトウェア業界に対して多様なニーズが生まれています。それらに応えるべく、次々と新しいソフトウェアが開発されており、この業界でも市場は拡大傾向にあります。

5.ハードウェア業界

ハードウェア業界の代表的な企業

  • Apple
  • DELL
  • 日立
  • ソニー
  • パナソニック
  • 東芝
  • 富士通

ハードウェアとは、パソコンやスマートフォン、またそれらの周辺機器を指します。ソフトウェアが目に見えぬ製品とすると、ハードウェアは目に見える製品です。このハードウェアの設計、開発、販売を行うのがハードウェア業界です。

ハードウェアといえば、パソコンを思い浮かべます。しかし、近年では、IoTの普及の影響で、ゲーム機や家電製品などのIT技術を搭載した商品もハードウェアのひとつとして考えられるようになりました。そのため、IoTの発展に伴ってハードウェア業界は拡大することが予想されます。

ハードウェア業界には、「組み込みエンジニア」と呼ばれる独特な職種があります。組み込みエンジニアは、ハードウェア製品に組み込まれるシステムの開発を担当します。高度なスキルが求められる、この業界ならではの職種です。

IT系の主な職種

IT系の職種といえば、プログラマーやシステムエンジニア(SE)を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、実際は、IT業界には他にもさまざまな職種があります。また、職種によって、仕事内容はもちろん、必要なスキルも異なります。

ここでは、代表的な職種を5つご紹介します。ITコンサルタントと、WEBディレクター、システムエンジニア、プログラマー、サーバエンジニアです。それぞれの職種の内容を理解し、職種選びに役立てましょう。

ITコンサルタント

ITコンサルタントは、経営状況や業務上の問題点などをクライアントにヒアリングし、システムによるそれらの改善・解決策を提案する職種です。

ITコンサルタントの主な仕事内容のフローです。
①クライアントへのヒアリング
②ヒアリング結果から問題点の分析
③分析結果から、システムによる問題解決策の提案 (例)新システムの導入
④採用された企画のマネジメント

システムの見直しや新システム開発の提案、システムの最適化や動作検証まで、仕事内容は多岐にわたります。そのため、ITコンサルタントでは、ITに関する広い知識が求められるのです。また、ITコンサルタントは、クライアントや社内の関係者とのやり取りが多い職種です。クライアント先や社内のエンジニアからの信頼を得るためにも、高いコミュニケーション能力が必要です。

ITスキルや経験が求められる職種のため、プログラマーやシステムエンジニアがキャリアアップとしてITコンサルタントになるケースが多いです。未経験の人は、「ITコーディネータ」や「中小企業診断士」などの資格を取得することが、就職活動でのアピール材料になります。

WEBディレクター

WEBディレクターは、WEBサイト制作を監督・指揮する職種です。WEBサイト制作には、プログラマーやデザイナーなど、さまざまな役割のスタッフが関わっています。それらの人々をまとめ、WEBサイト制作の進行管理と品質管理を行います。

WEBディレクターは、WEBサイト制作を監督する立場であるため、WEBサイトの構築・運用・管理に関する幅広い知識が求められます。仕事内容も、写真やビジュアル素材の制作や、サイト制作に必要なチームの編成、スケジュール管理、予算管理など多岐にわたります。

また、WEBサイト制作に関わるスタッフをまとめ、クライアントとのやり取りを行う必要があるため、コミュニケーション能力も求められます。

システムエンジニア

システムエンジニアは、クライアントへのヒアリングから、システム設計、プログラミング、保守や運用など、システム開発に関する一連の業務を行う職種です。プログラミングは、プログラマーに依頼することもあれば、自分で行う場合もあります。いずれにしても、プログラミングの知識は求められます。必要なプログラミングスキルは企業や事業内容によって異なるため、確認が必要です。

システムエンジニアは、クライアントへのヒアリングをもとに、システムを設計し、それらをプログラマーへ伝達しなければなりません。そのため、システム開発に関する知識や、コミュニケーション能力も求められます。

システムエンジニアになるための必須資格はありません。しかし、「基本情報技術者試験」や「応用情報技術者試験」は、システム開発に関する基本的な知識を習得していることを証明する資格ですので、取得しておくとよいでしょう。

プログラマー

プログラマーは、システムエンジニアの設計したシステムをプログラミングする職種です。さまざまなシステムやソフトウェアの作成に直接的に携わることができます。

プログラミング作業は、「プログラミング言語」を用いて行います。プログラミング言語は数多くあり、担当する仕事によって必要になる言語も変わってきます。そのため、自分が担当するジャンルでスタンダードな言語をマスターすることは必須です。ひとつの言語を身につけたら、ほかの言語をマスターしていきましょう。多くの言語を扱えるようになれば仕事の幅が広がり、新しい開発に携わることができるようになります。また、バージョンアップなどで仕様が変わることもあるため、常に知識を更新していかなければなりません。

プログラミングは、物事を順序立てて考えられなければ、作業が進みません。そのため、プログラミングを行うためには、論理的思考力も必要です。

サーバエンジニア

サーバエンジニアは、サーバーの設計、構築、保守、運用を行う職種です。サーバーエンジニアの仕事では、「OS」に関する知識が必要です。「Windows Server」「Mac OS」「Linux」「UNIX」といった、どのOSに対しても、深い知識を持っていることが重要です。

また、サーバーサイドで発生した障害への対応やセキュリティ対策も行います。そのため、ネットワークセキュリティや、グループウェアのセキュリティへの対応能力など、幅広い知識が求められます。

サーバエンジニアを目指すには、「Linux技術者認定資格」や「 Cisco技術者認定資格」、「 マイクロソフト認定プロフェッショナル」などの専門知識をアピールできる資格を取得しておくと役立ちます。

年収はITコンサル系で1,000万円を超える

  • ITコンサルタント :649万円
  • WEBディレクター :438万円
  • システムエンジニア:476万円
  • プログラマー   :398万円
  • サーバエンジニア :493万円

年収が高いか低いかは、働く人にとって重要な要素です。IT業界では、どの程度の年収を得ることができるのでしょうか。

転職会議」によると、先ほど取り上げた職種の平均年収は上記のようになっています。国税庁の民間給与実態調査によると、日本の平均年収は432万円です。プログラマー以外は平均年収以上であることが分かります。プログラマーも、平均年収とほぼ同額です。また、これらは技術職です。企業や個人の能力によって年収に差はでてきます。入社する企業によっては、自身の努力次第で、年収を上げることもできます。

「ITコンサルタントは年収が高い」というイメージを持っている人は多いです。実際、業界動向サーチの「IT業界 平均年収ランキング」によると、ITコンサル系の企業で、平均年収が1,000万円を超える企業もあります。年収1,000万円を超える高収入は、働くうえでの大きなやりがいにつながるでしょう。

今後のIT業界は規模の拡大に伴い人材の需要が伸びる

スマートフォンの普及や通信技術の発展により、ITは私たちの生活に無くてはならない技術になりました。また、IoTやAIなど、新たな技術の開発と普及により、今後もIT業界はさらに規模が拡大することが考えられます。

業界の規模の拡大に伴い、当然、人材の需要も伸びてきます。しかし、日本では、労働人口が減少しています。IT業界では、人材不足が今後の大きな課題となるでしょう。

また、IT業界では、技術の進歩が進んでおり、従来の技術者が先端技術に対応できなくなるという事態が懸念されています。今から、技術の進歩のスピードに対応できる人材が求められているのです。これからのIT業界で働くには、常に新しい知識と技術を取り入れる姿勢が大切であるといえます。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

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