鉄道業界とは
鉄道業界はインフラの事業の一つであり、その安定性などから就活生人気の高い業界です。鉄道業界に興味を持っている人は多いものの、それぞれの電車や路線だけを知っているだけで、鉄道業界全体としてどんな取り組みをおこなっているか知らない人は多いです。
就活を攻略し、志望する企業に就職するためには、業界研究を欠かすことはできません。鉄道業界について理解を深めるためにも、業界の規模や動向、職種など基本的な知識を身に付けていきましょう。
鉄道業界の現状
鉄道業界は現在堅調に推移しており業界規模は、ほぼ横ばい、あるいは若干の成長傾向にあります。景気の低迷を受けて業界規模が縮小していた時期もありましたが、景気の回復とともに業績も回復しました。現在では訪日外国人の増加や国内旅行客の増加によって、堅調に推移しています。
近年では鉄道業界にもさまざまな変化が起こり、単にインフラ事業としての役割を果たすだけではなく、豪華列車など付加価値のあるサービスも提供されています。また国内だけではなく、海外への高速鉄道輸出などもおこなわれており、業界内でもさまざまな変化が起こっている状態です。従来の輸送サービスとしての鉄道ではなく、さまざまな価値を付けてのサービスの提供が進められています。
鉄道業界の市場規模
鉄道業界の市場規模は、2018年の総務省のサービス産業動向調査によると約780,583百万円です。生活のインフラの中心ともいえる事業であるため規模は巨大であり、鉄道業界の労働者人口も約28万人と多いです。
少子高齢化によって利用者が減少傾向にあるため、長期的にみると市場規模はどうしても縮小すると考えられます。しかし、これは鉄道業界に限ったことではなく、他の業界でも同じことがいえるでしょう。
また、外国人観光客の増加や国内旅行の増加によって、少しずつ業績は回復傾向にあり、明るい兆しが見えているのも事実です。人口減少という避けられない問題を除くと、鉄道業界全体としては横ばいかプラスにシフトしているといえるでしょう。
鉄道業界の細かい職種分類について
- 整備
- サービス提供
- サービス開発
- 営業・販売促進
- 不動産開発
鉄道業界の職種として整備、サービス提供、サービス開発、営業・販売促進、不動産開発が挙げられます。整備は車両の整備、点検などをおこなう職種です。車両だけではなく、線路や信号など鉄道運行に関わるものに対しての整備をおこないます。サービス提供は電車の運転など、車両の運行をおこないます。
サービス開発は新しい鉄道サービスの企画・開発などが主な仕事です。鉄道事業に付加価値を付け、新しいサービスの提供を考えるのもこの職種です。営業・販売促進では、鉄道沿線の魅力をアピールするための宣伝やPR活動などをおこないます。鉄道利用者を増やすため、さまざまな取り組みをします。不動産開発は鉄道沿線の都市開発が主な仕事です。沿線の魅力を向上させることで、鉄道利用者を増やすことが目的です。
あなたが受けない方がいい職業をチェックしよう!
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鉄道業界には総合職と現業職の2つがある
鉄道業界での仕事は、大きく総合職と現業職の2つがあります。総合職は鉄道業界以外でも登場するワードであるためイメージしやすいですが、現業職という言葉自体を聞いたことがない人は多いはずです。
現業職は鉄道業界特有の職種であり、業界によってはこの職種自体が存在しない場合もあります。また、イメージしやすい総合職でも、業界が違えば当然仕事の内容は異なります。それぞれどのような仕事をするのかを知り、鉄道業界への理解をさらに深めていきましょう。
総合職とは
総合職は鉄道の運営や管理をおこなう仕事であり、いわば本社や支部などのオフィスに務める仕事です。入社してすぐや研修などで現場に出ることもありますが、基本的には裏方として仕事をし、鉄道運営にかかる幅広い業務を執りおこないます。
例えばダイヤの作成や駅構内のテナントの誘致など、業務内容は多岐にわたり、複数部署にまたがって仕事をすることも少なくありません。また、鉄道事業以外を実施している企業では、不動産や広告といた別事業を手掛けることもあり、活躍の幅は非常に広いです。
総合職は幹部候補生として採用されていることも多く、基本的には大卒に募集がかけられます。企業によって扱いに違いはあるものの、基本的には内勤の幹部候補生と考えてよいでしょう。
現業職とは
オフィスで鉄道事業の運営を支える仕事をする総合職に対して、現場で鉄道サービスの提供をおこなう仕事が現業職です。電車の運転士や車掌、駅構内に在籍しているスタッフなどがこれに該当し、現場での仕事をおこなう職種と考えてもよいでしょう。
現業職は仕事内容が細分化されていることも多く、特に運転士の場合は特別なスキルを必要とします。そのため、大卒の中でも理系で専門の勉強をした人のみに募集がかけられることも多く、文系学生ではそもそも応募ができない場合もあるため注意しなければなりません。
もちろん、特定のスキルを要する仕事でも、企業によっては自社育成枠を設けて採用することもあります。そのため、専門的な仕事であっても、挑戦できる可能性は少なからず残っていると考えましょう。
主要企業5選紹介
就活では企業研究を行うことも大切であり、徹底して行うことで就活を有利に進めていくことができます。企業にはそれぞれ違った特徴や強みがありますし、それらの違いを知って、選考に役立てることが大切です。
志望する企業について詳しく知ることで、効果的な志望動機や自己PRを考えることもできますし、就活を攻略するためには、企業研究は欠かせません。まずは主要な企業についてを知り、企業理解を深め、そこから業界についての視野も広げていきましょう。
①東日本旅客鉄道株式会社
- 企業名:東日本旅客鉄道株式会社
- 代表者名:冨田 哲郎
- 従業員数:58,550人
- 設立年月日:1987年4月1日
東日本旅客鉄道株式会社は、旅客鉄道、貨物鉄道、旅客自動車運送事業などを始めとして、幅広い事業を展開している企業です。国内の鉄道業界では最大規模の企業であり、業界1位の売上とシェア率を誇っています。
東日本で路線が展開されており、貨物駅を含む駅数は1,665駅、一日当たりの列車本数は12,416本、一日平均輸送人数は約1,700万人です。鉄道業以外ではルミネやアトレなどのショッピング事業が有名であり、鉄道業以外でも高い知名度を誇っています。
JR東日本では柔軟な思考力を持ち、変革を恐れずに挑戦していける人材が求められています。一つの仕事に対してしっかりと責任感を持って取り組むことが大切にされており、真面目に仕事に取り組みやすい環境です。
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②西日本旅客鉄道株式会社
- 企業名:西日本旅客鉄道株式会社
- 代表者名:来島 達夫
- 従業員数:29,152人
- 設立年月日:1987年4月1日
西日本旅客鉄道株式会社は、運輸、流通、不動産やその他の事業を展開している企業です。JR東日本に次ぐ鉄道会社であり、業界でも高い位置づけを誇っています。関西圏を中心に路線が展開されており、駅数は1,200駅、車両数は6,562両、一日当たりの輸送人員は在来線で1日あたり約500万人です。
日々膨大な人数を輸送しており、最多乗車人員駅である大阪駅では1日あたり最高約431千人の輸送を行っています。また不動産業としてはホテルの経営なども有名であり、鉄道事業に関わらず、さまざまな場所で活躍しています。
JR西日本では社風として安心、安全が大切にされており、求められているのは信頼される人物です。誠意を持って何事にも取り組むことができる人材が求められています。
③東京急行電鉄株式会社
- 企業名:東京急行電鉄株式会社
- 代表者名:野本 弘文
- 従業員数:4,402人
- 設立年月日:1922年9月2日
東京急行電鉄株式会社は、鉄軌道事業、不動産事業などをおこなっている企業です。東急の名称でも知られており、鉄道事業だけではなく、路線バスの運行などもおこなっています。鉄道業界ではJR線が高い売上を誇っていますが、それらに次いで高い売上を上げている企業です。
不動産事業にも強みがあり、二子玉川駅を中心にづくりを行い、沿線の価値上昇にも貢献しています。沿線価値の上昇によって、鉄道利用者も増え、相乗効果を生み出しています。
東急電鉄は社風として「高い志を持ち、自ら考え、主体的にやり抜く」ことが大切にいる企業です。新しい価値を求めて主体的に行動し、変革にも挑戦できる人材が求められており、企業としても挑戦できる風土にあります。
④名古屋鉄道株式会社
- 企業名:名古屋鉄道株式会社
- 代表者名:安藤 隆司
- 従業員数:5,012人
- 設立年月日:大正10年6月13日
名古屋鉄道株式会社は、鉄道事業や開発事業を含めたさまざまな事業を展開している企業です。鉄道の運行だけではなく、駅ナカビジネスやクレジットカードのビジネスなど幅広い分野で活躍している企業です。名鉄の愛称でも馴染みがあり、名古屋を中心に路線を展開しています。鉄道沿線でのハイキングやバスツアーの提案、沿線旅行の提案など付加価値型の事業も展開しており、国内の鉄道業界でも高い売上を誇り、業界をけん引する存在です。
名古屋鉄道ではさまざまなことに挑戦できる人材が求められています。社風としては地域に寄り添い、信頼されることが大切にされており、誠意を持って仕事に取り組める人材も求められています。仕事に対して真剣に取り組み、成長していける企業です。
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⑤阪急電鉄株式会社
- 企業名:阪急電鉄株式会社
- 代表者名:杉山 健博
- 従業員数:2,989人
- 設立年月日:1907年(明治40年)10月19日
阪急電鉄株式会社は、都市交通事業、不動産事業、エンタテインメント・コミュニケーション事業などをおこなっている企業です。大阪梅田と神戸、宝塚、京都間で路線を展開しており、沿線価値が高いのも特徴です。鉄道業界内での位置づけも高く、高い売上を誇っている企業です。
エンターテインメント・コミュニケーション事業としては「宝塚歌劇団」が有名です。阪急電鉄は鉄道会社でありながら、「宝塚歌劇団」を運営していることが特徴であり、地域で愛されている企業でもあります。
阪急電鉄ではグループとして「安心・快適」、「夢・感動」が大切にされています。それらを実現できる人材が求められており、人を思いやる気持ちが大切にされている企業です。
鉄道業界の内定をもらうために覚えるべき用語
鉄道業界は歴史的にも国鉄の民営化や各私鉄、第3セクター誕生など、様々な形態の会社が存在してきました。実際の就活の際には前もって是非覚えておきたい用語が多数あります。例えば面接試験の時に話題として鉄道の用語が出てくる場合や、資料を調べる際に専門的な用語に遭遇する場合も出てくるでしょう。
そして実際に鉄道関連の企業に就職をした暁には、これらの用語が仕事上で出てきた時にひとつひとつ調べるという事が少なくなります。これはスタートラインで同じ立場の他の同期生に対し一歩リードできるという事になり得ます。ここでは基本の3つの用語を紹介していきます。
JR
全国幅広いエリアで利用できるJRは、もともとは日本国有鉄道という国営の事業でした。そのため、現在のようにJRではなく、「国鉄」と呼ばれていた時代もあります。現在のJRの形となったのは、国営事業が民営化されたことが理由であり、JR東日本や西日本のように、エリアごとに分割して民営化が進んでいます。
民営化とは国営事業を民間企業に委託することであり、簡単にいえば国が運営していた鉄道事業を、民間企業が引き継いだと考えるとイメージしやすいでしょう。JRは東日本と西日本以外にも北海道や東北、四国や九州など各地方に分割されています。グループでもっとも売上が高いのはJR東日本であり、国内の鉄道業界でも群を抜いて高い業績を収めています。
私鉄
大きな意味では鉄道形、軌道業などを民間企業が行うこと、またはその事業者のことを指します。日本においての私鉄はJR各社が国の経営から分割民営化された、という経緯がある為、JRは実際には民間企業ではありますが、分類としては私鉄扱いにされません。
日本国内のJR、第3セクター、東京地下鉄などを除く民間の鉄道会社を表します。そしてこれらの私鉄は日本民営鉄道協会(民鉄協)に所属しています。私鉄を代表するものとして、東京地下鉄を除いた大手の15社は大手私鉄とも呼ばれています。
主な企業として、東京急行電鉄、京浜急行電鉄、小田急電鉄、西武鉄道、阪急電鉄、近畿日本鉄道、阪神電気鉄道、西日本鉄道、名古屋鉄道などがあります。
第3セクター
第3セクターとは、公共部門(国や第1セクターの地方公共団体など)と民間企業(第2セクター)が共同出資して誕生した半官半民の事業体のことを表します。公共的な意味を持つ事業を民間企業の資本を投入した形で、政府の民間活力活用の一環です。
誕生した当初は、国内のJRから続く赤字ローカル路線を引き継ぐという事もあり注目されましたが、1980年代以降は民間活力活用の政策の下で、全国各地に広がりました。バブル崩壊後は経営難に苦しむ第3セクターも多く、社会問題にもなっています。
これは元々の赤字路線ということもあり、人口の現象と、沿線の人口過疎化、他の交通手段への切り替えなどが原因とみられます。代表的な第3セクターは、三陸鉄道、阿武隈急行、会津鉄道、北越急行、のと鉄道、長良川鉄道、伊勢鉄道などが挙げられます。
公営鉄道
公営鉄道とは、地方公共団体の公的機関が経営する鉄道の会社のことです。基本的には運営する自治体内のみで運行される交通手段になりますので、短距離の鉄道がほとんどとなります。例に挙げると地下鉄、路面電車、モノレール、新交通システムなどを運行している公営会社があります。
その例としては札幌市交通局、仙台市交通局、名古屋市交通局、大阪市交通局、京都市交通局、神戸市交通局、福岡市交通局、東京都交通局、横浜市交通局などの自治体があります。首都圏の人口が多い地域を除いて、地方自治体が運営する公営鉄道は赤字や経営が困難な所も増えて来ています。
その理由は第3セクターとも共通している部分が多く、日本の人口の減少、特に首都圏への一極集中による地方の人口減少、民間企業に比べて多額の設備投資が難しい、車やバスなど他の交通機関に乗客が分散している、などが挙げられます。公共の交通機関という使命を果たしながらも、今後の経営も様々な工夫や改革が必要になってくる事が予想されます。
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鉄道業界研究のおすすめ書籍紹介
業界研究の方法はさまざまありますが、より専門的な知識を身に付けたいのであれば、書籍の利用がおすすめです。書籍には他では知ることができない情報が数多く詰まっていますし、情報価値は高いです。
また情報が凝縮されているため、ネットのようにさまざまなワードで検索をする必要がなく、効率的に業界研究を進めることもできます。業界研究では書籍は重要な役割を果たしますので、おすすめの書籍を参考にして、書籍での業界研究も進めていきましょう。
①鉄道は生き残れるか
鉄道は生き残れるかという本は、鉄道の生き残りの方策について解説しています。鉄道業界はかつて斜陽産業と呼ばれていましたが、現在では環境面から見てもエネルギー効率が良いなど省エネの交通手段として認識が改められつつあります。しかし鉄道業界の展望はそれほど明るいものではありません。
少子高齢化によって人口減少が進んでいますし、国内での鉄道業界以上は縮小も見込まれています。それらに対応するための方法を考えることがこれからの鉄道業界の課題であり、鉄道存続に向けた方策が解説されています。
鉄道業界を切り開いていくためには、変革を欠かすことはできません。鉄道業界に立ち込める暗雲や将来に向けての方策を知ることができますので、鉄道業界を目指す人におすすめの一冊です。
②ローカル線で地域を元気にする方法: いすみ鉄道公募社長の昭和流ビジネス論
いすみ鉄道公募社長の昭和流ビジネス論は、ローカル線での経営戦略について解説されています。全国にローカル線は数多く存在していますが、その全ての経営が順調なわけではありません。中には経営が悪化し、赤字が続いている路線もあります。ローカル線で赤字が生まれてしまうのは魅力がないからではなく、その魅力を引く出すことができていないからです。
ローカル線では商いの要素がたくさん詰まっており、それらについてが詳しく解説されています。ローカル線をどのように復活させるか、その戦略が実際のビジネスモデルを例に挙げて紹介されています。
ローカル線の事業戦略を知っておくことで就活中だけではなく、就職後にも役立てることができますので、鉄道業界志望者におすすめの一冊です。
鉄道業界を深く知り就活を有利に進めよう
鉄道業界について紹介してきました。子供のころから鉄道業界で働くことに憧れていたという人も多く、人気の業界です。鉄道業界は堅調な業績を誇っていますが、国内市場縮小の危険性も受け、さまざまな変革が起こっている業界でもあります。
変革が必要な業界であり、企業の動きも大きいという現状を踏まえて対策をしていくことが大切です。業界研究を徹底しておこない、就活に役立てていきましょう。