内定について

【就職内定率から学ぶ】就活生が気になる調査方法や数字の推移

毎年発表される就職内定率について理解しておこう

近年の景気感の回復、また人手不足の影響などを受け、就職内定率が過去最高に達したというニュースが眼に飛び込んできます。就職を目指す学生にとっては、これはとてもよいことのように感じられますが、この就職内定率とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。よく耳にするこの「就職内定率」という言葉ですが、実のところその実態について知っていると言い切れる人はあまりいないでしょう。

そこでこの記事では、就活生が知っているようで知らないこの「就職内定率」について、その調査方法から近年の推移などを徹底的に解説します。「就職内定率」について正しく理解し、ぜひ自身の就職活動に役立ててください。

就職内定率とは

就職内定率とは、「就職希望者がいったいどのくらい就職することができたのか、または内定を受けることができたのか」を調査し、その割合を算出したものです。一般にこの就職内定率は、景気や経済状況の目安としたり、就職環境の指標として利用されています。また、大学などの教育機関が自学の就職状況として独自の数字を発表し、学校のPRとしてアピールする場合もあるでしょう。

さまざまな大学や高校などが、それぞれの学校の学生の就職内定率を発表しています。これは学校教育法施行規則によって公表されるもので、それらの学校の就職状況を知るための指針となります。それゆえ、各学校ではPRのための材料として用いているのです。

厚生労働省・文部科学省で調査されたもの

就職内定率とは、該当する年度に卒業する学生が、就職および就職内定を受けた割合をいいます。これは厚生労働省と文部科学省とが共同で「就職内定状況に関する調査」という調査を実施し、これを基に算出した数値です。

厚生労働省はこの調査の目的を、「大学や短期大学、高等専門学校及び専修学校の卒業および卒業を予定する学生・生徒の就職内定状況を把握し、就職問題に適切に対処するための参考資料を得ること」としています。

さらに文部科学省と共に、大学の就職相談員とハローワークのジョブサポーターとの連携での取り組みを通して就職支援を図るため、年に4回、定期的な公表をおこなっています。それにより、その期間における就職内定の状況を周知させているのです。

調査内容

厚生労働省と文部科学省が連携しておこなうこの「就職内定状況に関する調査」は、国内の大学などの就職相談員、ハローワークのジョブサポーターなどの連携を促進するためにおこなわれるものです。

調査の依頼先は、国立大学、公立大学、私立大学、短期大学、高等専門学校、専修大学(専門課程)の112校です。これは地域などを考慮して厚労省と文科省が抽出したもので、調査の対象人員は6,250人となります。

調査方法は、対象となる各大学などで、調査の対象学生を抽出し、電話及び面接によって性別や就職希望の有無、就職状況などを調査します。調査の時期は、毎年10月1日、12月1日、翌年の2月1日、4月1日です。発表についてはそれぞれに対応して11月16日、1月18日、3月18日、5月17日となっています。

平成30年卒の就職内定率

ここからは、平成30年卒の就職内定率を紹介します。厚生労働省が発表した「大学等卒業予定者の就職内定率状況調査」の数値に基づいて解説していきます。調査の対象は短大・高等専門学校および専修学校卒業者が対象ですが、ここでは国立大学・私立大学の卒業生のデータをみていきましょう。

また、全体の就職内定率と合わせて、男女別、文系理系別、地域別の内訳も紹介します。学部や地域によって就職内定率にどれほどの違いがあるか参考にしてみてください。

就職内定率は97.6%

平成31年4月1日の時点で大学生の就職内定率は97.6%となりました。前年の同じ時期と比べると0.4ポイントの低下がみられますが、調査を開始してから2番目に高い数値となり、高水準といえます。このうち、国公立大学の就職内定率は97.3%、私立大学は97.7%です。

厚生省と文部科学省では、新卒者の就職支援を専門とする「新卒応援ハローワーク」に所属する、キャリアコンサルタント等の資格を持つジョブサポーターと、大学の就職相談員が連携して支援する取り組みをおこなっています。高い就職内定率を維持している背景には、少子化の影響と合わせて、このような取り組みの成果が出ていると考えられます。

就職内定率【男女別・文系理系別・地域別】

男女別の就職内定率を見てみると、男子は97.3%で前年より0.2%の低下、女子は97.8%で前年より0.8ポイントの低下となっています。国公立大学では男子96.7%、女子97.8%、私立大学では男子97.5%、女子97.8%でした。

文系・理系別で見ると、文系の就職内定率は97.4%、理系では98.4%という結果です。理系の学部の方が高い水準となりましたが、大きな差はみられませんでした。また、地域別では関東地区の就職内定率が最も高く、98.1%となりました。これは、前年の同じ時期と比べて0.4ポイント低い数値です。続いて高いのは近畿地区で98.0%、次に中部地区の97.9%となっています。

就職内定率の推移

就職内定率は、平成28年から上昇傾向で推移しています。平成30年度卒の数値は前年よりも低くなりましたが、以前として高い数値を維持しているといえます。平成20年にはリーマンショック、平成23年には東北地方太平洋沖地震が発生し、日本の経済に多大な影響を及ぼしました。それに伴い内定率も低い水準となりましたが、景気は徐々に回復していき就職内定率も高い数値となりました。

近年は売り手市場と言われ、企業の人手不足が懸念される一方で、就職内定率は高い数値を記録しています。2021年(令和3年)以降は経団連による就活ルールが廃止されますが、採用スケジュールは大きく変わることはなく、就職内定率に影響が出ることはないと予想されています。

就職内定率の数字が全て正しいとはいえない 

就活生にとっては、就職に関するさまざまな場面で指標として活用される就職内定率ですが、実は注意すべき点もあります。示されている数値が実際の就職状況を正確に反映しているのかどうかというと、実はこの数値がすべて正しい、というわけではない点です。

ここからは、就職内定状況調査の調査依頼におけるサンプル数について、また調査方法にみられるその問題点を探ることで、就職内定率が示す数値についての信頼性について考えていきます。

調査依頼先の大学が少ない

まず知っておきたいのが、調査に用いるサンプルの数です。就職内定率の調査では、該当するその年のすべての卒業生を対象としているわけではありません。先述しましたが、これは大学の設置者、地域の別などを考慮し厚労省と文科省が抽出した学校のみの調査です。大学における就職内定率の実際の調査依頼先は、短期大学、高等専門学校、専修大学(専門課程)を除けば、国立大学21校、公立大学3校、私立大学で38校で、62校です。

ちなみに平成31年版の「文部科学統計要覧」によると、全国の大学数は全体で782校(平成30年現在)で、そのうち国立大学が86校、公立大学93校、私立大学が603校となっています。ここからわかるように、調査の依頼先は決して多いものということはできず、統計学的にもその算出された割合が必ずしも正しいとはいえないということです。

就職希望者のみを調査対象としている

また注意したいのは、これらの大学の調査で調査対象となっているのは、就職希望者のみです。発表されるデータに「注)なお、就職率とは就職希望者に占める就職者の割合。」という記載があることに注意してください。ここでは就職浪人や就職を諦めて大学院へ進学する学生、また留学をする学生は含まれていません。

ここで分かるのは、就職内定率の数値は、大学を卒業するすべての学生の割合ではないということです。平成31年度の調査では、この就職希望者は、調査対象となっている大学全体の74.2%です。ということは、97.6%という就職率は、この74.2%の就職希望者を対象とした就職率であるということになります。

就職内定率の数字には惑わされないようにしよう

就職内定率が近年、堅調な伸びをみせており、世間では売り手市場であるという声も聞こえ、就活生にとっては安心できる就職市場の状況が続いています。しかし、ここまでみてきたように、この就職内定率というのは、100%の信頼性を持つものではありません。

この調査方法であると、就職内定率が実態よりも高く算出される可能性が高いのです。このようなことからも、就職内定率はひとつの目安でしかないといえます。就活生は自分自身の立ち位置をさまざまな方法でしっかり把握し、数字に惑わされない就活を地道に推進していくことが必要だといえるでしょう。

監修者プロフィール

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吉川 智也
(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

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