キャリア講義
会社に依存しない自立した人間になれ|多面的なスキルを持つことが求められる人材への近道
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長嶋哲夫さん(キャリア・ナビゲーション・代表取締役)
Tetsuo Nagashima●上智大学大学院理学修士取得。起業家であった父と祖父の影響から若いころから起業を志す。鉄鋼系専門商社の人事担当を務める中、即戦力となる若い力の重要性を感じ、2010年にキャリア・ナビゲーションを設立。入社前の学生を対象に、即戦力となる若い力の育成に努めている。
Q.キャリアナビゲーションを立ち上げるまで、どのような経歴を歩まれてきたのでしょうか。
起業家であった父と祖父の影響から、自分でも「何かを成し遂げたい」という思いがぼんやりとありました。でも就活生時代はそれほど起業したい気持ちも強くなく、そもそも大学卒業後は就職せずにそれまで続けていたボクシングの道に進みました。
その後、ボクシングを辞めざるを得なくなったときに再度起業のことを考えました。とはいえすぐにいきなり起業というのも無理な話だったので、まずはサラリーマンとして鉄鋼専門商社に入社しました。
ここでも、もともと学習塾を経営していた父親の影響もあり、「企業教育」に目を向け、人事担当を務めていました。系列のさまざまな企業に出向させてもらったこともあり、組織の立て直しや採用、教育など人にかかわる多くの業務に携わりましたね。
Q.そこから、何がきっかけでキャリアナビゲーションを立ち上げようと考えられたのですか?
人事担当を務める中で、学生気分のままの学生・自立できていない学生が多いことに気づきました。つまり学生の中で社会人としての覚悟や基盤ができていないのです。ほとんどの企業では入社後に新入社員研修がおこなわれますが、本当はこの研修では業務についての研修をすれば良いはずなのに、ここで精神的な研修もしなければならない、それが少し面倒だなと感じました。
つまり会社員になってからの教育だけだと、一人前の社会人になるためにはまったく間に合わないなと。また私はリーマンショックも経験しているので、そういう意味でも、学生側にしても会社に依存しながら働くのでは良くない、会社がなくても自立して社会人として生きていける人を作らなければと考えるようになったのがきっかけですね。
Q.実際に起業するにあたり、決断のタイミングや基準は何かあったのでしょうか。
私はそれなりにおもしろい経験を積んでいて、1つの企業の人事をやりながら他社の人事のコンサルもやっていました。
もともと自社の内定者教育をかなり奇抜にやらせてもらっていて、社会勉強として水商売のお店に内定者を連れて行ったりもしていました(笑)。そういった私の多面的な教育方法に興味を示した企業から声がかかり、コンサルという形で他社にかかわっていました。
そこで、意外とこの仕事はお金になるなということに気づきました。そこから、自分はもう自分で商売ができるのかもと感じたことが決断のタイミングですね。だいたい入社してから7年ほどかかりました。
「やりたいこと」より、革命的な動きをしている将来性のある産業を選べ!
Q.そんな長嶋さんだからこそ考える「企業選びで大切にするべき点」とはいったい何だと思っていますか?
縮小するマーケットではなく、これから伸びていく産業を選ぶことだと考えています。企業規模は関係なくて、10~20年後に必要なサービスを扱っているか。それであれば必ず今後も伸びていきますからね。「やりたいこと」よりも「社会において必要なこと」ベースで企業や事業、サービスを見ていくと良いと思います。
やりたいことをやっていても、お金がもらえるとは限りません。しかし、必要とされる・求められるサービスに携わっていけば必然的にお金がもらえ続け将来的に困らない、つまり困らない人間になれますよね。使い続けてもらうことのありがたみを感じて社会に出てもらいたいです。どの会社でも活躍できることを目的としたキャリアナビゲーションの長期インターンシップ「UNLIMIT」を立ち上げ、「依存せず自立した社会人であるべき」と言っているのに通ずる部分があるかもしれません。
Q.「これから伸びていくか」どうか、ではそれを判断するために、学生はどのように情報収集をすると良いのでしょうか。
私自身もそれはPSFに参加している学生からよく聞かれますね。でもこの答えはとてもシンプルだと思っていて、「業界地図」など業界のことが詳しく記載されている就活本から情報を得ると良いと思っています。
実はあの本はとても良いのですよ。 業界のことはもちろんですが、先頭ページには新しい産業や今目をつけるべき伸びている産業などがピックアップされまとめられています。その中から自分の興味のある業界を調べていくと良いと思いますね。世の中の動きを読み取り適切な選択をするためには非常に役に立つものだと思っています。
とはいえ「斜陽産業だからこの業界は選ぶな」というわけではありません。斜陽産業でも、たとえばITなどと組み合わせたりと新しい革命的な動きが出てきています。そういった産業を残していくためにどのような取り組みがなされているかにも目を向けた業界研究をしてほしいですね。
Q.では、学生にとって非常に重要な「ファーストキャリア」を選ぶうえで、学生は何を重要視した選択をすれば良いでしょうか。
これは、「その仕事が『やりたい』『やりたくない』」で企業選びをするのはなく、「その企業で働いていけそうか」「幸せになれそうか」という直感を大切にすると良いと思っています。自分の五感や感情を優先しましょう。複数の選択肢で迷うのなら、まずはパッと頭に浮かぶほうを選びましょう。
仮に、3人の異性からプロポーズされたとします。その時、「Aさんは年収が高いから~」など論理的にいろいろ考えはすると思うのですが、最終的に論理で相手を選びはしないと思うのですよね。
一緒にいて幸せになれそうかなど、相手とのフィーリングが最後の決め手になるのではないでしょうか。企業選びも同じでいいのです。仕事がつらくても、あのとき自分の直感で選んだからこそ頑張れることもあると思います。
逆に、具体的に「A社は○○が良くて、B社は××が良くて、でも自分はどちらかというと××を大切したいからB社を選ぶ」などと理由をつけるのは、自分でその選択を正解にしたいという感情が働いていると思います。
でも実際働いてみて考えていたものと何かが違った場合、理由をこじつけた分その企業が合わなかった時により後悔してしまうと思います。下手に理由付けしてしまったほうが、自分を理由で言いくるめて納得させた感があるので。
多面的なスキルを持とう! それが今後の活躍につながる
Q.「必要とされる人間になろう」と先ほどおっしゃっていた長嶋様が思う、「今後必要とされる人」「活躍できる人」とはどのような人材だと思いますか?
複数のスキルを持っている人ですかね。入社と同時にその企業で学び成長していくだけでなく、副業で何か始めて複数のスキルを得ておくと良いと思います。
働くうえで正解はないとよく言いますよね。正解がないということは、新しいことをどんどん作っていかなければならないということです。自分だけでビジネスが成り立つ、商売ができるように多面的なスキルを身に付けておくべきです。
特に今は、早いうちに起業したい・フリーランスとして活動したいなどと企業に縛られずに働きたいという成長意欲の高い学生が多いように感じています。そんな人たちこそ、多面的なスキルを同時並行で付けていかなければ、望む成長には間に合わないでしょう。
もちろん、入社した企業で努力し成長することは優先度90%であることは前提ですよ。残りの10%を副業などに費やすことで知見が広がると思います。逆にそこから自社の業務において活かせるものが生まれた結果、その企業で必要なスキルが尖っていくはずです。
私も人事の業務をその知見の広さで尖らせてきましたからね(笑)。結局、知見を広げ多面的なスキルを身に付けることがその企業での業務にも活きてくるというわけです。
Q.これまでの生き方やサービスに根付いた長嶋さんならではのご意見ですね。最後に、今まさに就活を進める就活生に向けたメッセージをお願いいたします。
まずは「就活する」という考えを捨ててください。「就活」にとらわれすぎると、就職を目的としてしまい、入社後にひと段落ついてしまうと思いますし、考えすぎて鬱になることもあるでしょう。
でもそもそも就活は考えてもわからないことだらけですし、何が起きるかもわかりません。だから、一度周囲の言葉を無視して落ち着いてみることも大切です。私は4年生の卒業までに「内定をひとつもらえればそれで良い」と思っていますしね。
そうはいっても周囲に影響されてしまう人は、自分の身を置く場所を考えることも大切です。就活に注力しているコミュニティの中ではどうしても就活ばかりを考えてしまうじゃないですか。一緒にいる人とは必然的に同類になってしまうものです。私のように「就活をがんばりすぎるな」という考えの人と過ごすと必然的に良い意味で就活を軽くとらえやすくなると思います。少し勇気を出して自分がいるコミュニティを選んでみることもしてみてくださいね。