キャリア講義

求められる環境こそが自分の居場所となる|人とのつながりを大切にキャリアを歩んでいこう

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樋江井 繁 さん(エイチ・ビー・エヌ・営業企画部 兼 キャリア支援部 部長)

Shigeru Hiei●北海道白老町出身。新卒で北海道に本社を構える不動産会社に就職し、営業としてファーストキャリアをスタートさせる。その後人事担当に異動したことをきっかけとして企業の採用活動に疑問を持ち、人材系の支援をおこなうエイチ・ビー・エヌに転職。現在は営業企画部とキャリア支援部の部長として、北海道の中小企業と学生とをつなげるほか北海度各地の大学で就活講座の講師も務めている

Q.まずは樋江井さんの就活生時代について教えてください。

札幌市から50キロほど離れた白老町というところで育ちました。将来は地元で就職するのだろうと漠然と考えていたのですが、高校卒業後に札幌市の専門学校に進学したことでその考えが変わることとなりました

北海道あるあるだと思うのですが、札幌以外の地方の町で生まれると、将来は「とりあえず公務員になっておけば安心」と考える人が多いと思っています。私も例に漏れずその1人だったのですが、初めて札幌という大都市で多くの時間を過ごしたことで、地元ではなく大都市で生きて行くのも良いのかもと考えるようになりました。

Q.もともとは地元の公務員を目指していらしたのが、札幌の民間企業にシフトチェンジされたその経緯についてもう少し詳しくお伺いしたいです。

公務員になるという思いのウェイトが大きい中、専門学校で公務員試験に向けて面接練習をすることがよくありました。自分で言うのも何なのですが口はうまい方なので(笑)、先生からの評価も高く練習そのものは何なくクリアしていたのです。

しかし、そのように自信をもって受けた滑り止めの民間企業の面接でまさかの不合格。「どうして自分はこんなに話せるのに不合格なのだろうか」と先生に話したところ、「口がうまいだけで採ってくれる企業なんてない、『相手』がいるのだから、ただ話すだけでなく伝える努力やコミュニケーションをとることが大事なんだ」とこっぴどく言われたのです。

それがきっかけで民間企業の就活に興味を持つようになりました。公務員だと、試験用に勉強をがんばり、ここをクリアできればいいというようなゴールがぼんやりと定められています。でも就活はそのようなゴールがなく、自分で模索しながら企業にぶつかっていく必要があります

自分でぶつかって評価されることは勉強だけではクリアできない。そこにおもしろみを感じて就活をがんばった結果、民間企業に就職することとなったのです。

Q.では、そこから現在に至るまでについても教えてください。

札幌の不動産会社に就職し、初めは営業に配属されました。その後に本社へと配置転換され、会社が新卒採用に力を入れ出したこともあり3年目に人事担当となりました。そこから7~8年人事として勤めていたのですが、将来を考えたとき「組織」でおさまりたくないなと思い、30歳を過ぎたころに転職を決意しました

今の会社は、実は前職のお客様なのです。人事だったので人材系の企業である自社と取引があったため、今は中途採用をやっているかわからないもののひとまずお願いするだけしてみようと思って行動したところ、ありがたいことに拾ってもらったという形ですね。

仕事は楽しみたい! そのためには求められることが重要

Q.「組織」でおさまりたくない、とのことですが、この「組織」についてもう少し詳しく教えていただきたいです。

前職は「THE・組織」、700~800人ほどの大きな会社でした。学生の皆さんはわかりづらいかもしれませんが、組織というのは何をするにも稟議書・申請書などの書類を作成して、内部を固めて内部の許可を取る必要があります。要は何をするにも非常に時間がかかるということです。

もちろん手順としてなければいけないことはわかっているのですが、それでも何かをやるためにわざわざ業務とは直接関係のない資料を作成するこの時間や労力を「不要なのでは?」と感じるようになりました。

自分がやりたいことは内部の許可をとることではない、それより目の前の人に対してより早くアクションを起こしたい。そう考えて「組織」ではないところへ転職しようと決めましたね。

今の会社は稟議書はないですし、申請書もあるようで使われていません。自分の意思でやりたいと思うことに対し、口頭での説明だけでGO/STOPの決断がすぐに出せるような環境です。もちろん発言の裏には責任も伴いますが、非常にスピード感があり仕事がしやすいと感じています。

Q.こういった「自分の意思で動きたい」「組織でおさまりたくない」という考えは、就活時の企業選びにも活かされていたのでしょうか。

そうですね、今考えるとそうかもしれません。「自分を見てくれる」「自分を出せる」ようなところで生きていきたいと潜在的に思っていたのだと思います。

もともと私は仕事は楽しみたいという思いがありました。と同時に「このあと飲みに行くために仕事をがんばる」などという姿勢が非常に苦手でした。仕事は嫌だけどこのあとの楽しみがあるから仕事をする、そのような考えでしか仕事ができないのならその仕事を辞めれば良いのでは?と。

そして、自分が仕事を楽しむためには、自分のことをきちんと見てくれて自分を求めてくれるような環境であることが重要だったのだと思います。自分を求められている感じがあればあるだけ仕事が楽しかったです。求められている感じがあればあるほどやる気が出て、何事にも主体的に頑張れましたね。そんな私だからこそ、組織ではない発展途上の企業が合っていたのだと思います。

Q.ありがとうございます。逆に学生さんには、企業選びの際どのような点を気にされたらいいとアドバイスされていますか?

企業選びの視点は何でもいいと思いますが、最終的に会社決定において大切にしてほしいのは、その企業の考え方やビジョンを理解することですね。考え方やビジョンを「知る」のではなく「言語化してもらって理解する」までしておくのがベストです

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ここでは、できれば経営層や社長など、なるべく上の立場の人が発信していることをキャッチすると良いですね。その企業の思いやビジョンを理解して言語化することが、内定獲得にも入社後のミスマッチをなくすことにもつながると思っています。

Q.具体的にもう少し詳しくお伺いしたいです。

たとえば自社でいうなら、うちは人材系の支援をおこなっていますが決して学生の人生をサポートしたいとは思っていません。

当社が北海道以外の都府県に展開をしない理由がまさにそれなのですが、私たちには「北海道の札幌一極集中をなんとかしなければならない」という思いが根本にあります。北海道のさらなる活性化のためには札幌市外の活性化が必要不可欠。そのため、当社では地方の活性化に積極的に取り組んでいます。

そう考えると、たとえば「御社のさらなる事業拡大のためにオンラインで日本中とつながれるような施策を~」などといった「入社後のやりたいこと」を語る学生がいても、正直魅力的には感じません。また、かといって「北海道を活性化したい」とだけアピールするのでも少し弱いです。きちんとその会社の思いや目指すものを「理解」できていれば選考時も具体的に語れるはず。ちなみにこれは事業内容の目的を理解することが近道かなと思います。

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腹を割って本音で話せる人を作っておこう。大事な局面できっと必要になる!

Q.ありがとうございます。では納得した企業選択をし、入社後仕事に没頭するために学生にできることは何かありますか?

まずはその企業の人事担当と、お互い本音で会話をしてみることですかね。ここは言うのを控えておこう・ここは少し大げさに言っておこうなど、お互いが本音を隠して接してしまう時点で納得した選択は難しいと思います。

人事の人とは入社後一緒に働く機会があるかはわかりません。しかし、自分をすべて出して本音で会話ができる存在が社内に1人でもいることで、その存在が大変なことがあった際の気持ちの支えになるかもしれません。就活で出会う人事の人と腹を割って話せる関係が築けているかは考えてみるといいですね。

私自身も、就職や転職という人生が動く大事な局面には必ず腹を割って話せる存在がいて、だからこそ前を向けたし反省もできました。そういった存在がいることで自分に向いている仕事は何かを考えられましたし、仕事が楽しいと思うことができましたから。

Q.たしかに、心の支えとなる存在がいるとそれだけで頑張れそうですね。

はい。私自身根底にあるのは人とのつながり、やはり「人から求められること」であり、人から求められるような関係ができる人生を送りたいのです。

仕事をするうえでは、私自身が求められて、その還元として自社の商品を提供するという関係でこれまでやってきました。だからこそ、仕事へ没頭できるかはどれだけ自分が求められるかによって決まってくると思います

ですから、先の話とかぶりますが、企業を選ぶ際にやりたいことや興味が見つからないという学生は、企業側がどれだけ本音で自分のことを求めてくれているか、で選んでも良いと思いますよ。

Q.ちなみに、入社後何らかの壁や悩みができたときに、それを乗り越えるための術は何かありますか?

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悩みを解消するのは本人だけではないと思っています。仕事上での悩みというのは社内で解消すべき悩みであり、自分一人では解消できません。だからこそまずは口に出しなさいと伝えています。まずは抱えている悩みを人に共有すべきであり、それができなくなったらおしまいだと思います

大切なのは解消法を考えることより、抱え込まずにいかに早く悩みを口に出すか。口に出すことで、まずは悩むこと・悩まなくてもいいことの境界線が見えてくると思います。これが自力でなんとかすべきことなのか、誰かに頼るべきなのかは初めは自分で判断できないと思いますから。発信して、そこの順位付けをまずは少しずつしていけばいいと思います。

Q.では今後、樋江井さん自身はどのようなキャリアを歩んでいきたいと考えていらっしゃいますか?

そうですね、今は立場も家族もありますから、自分が新たにゼロから何かをスタートさせようとは考えていません。今は、自分の部下が、お客様や地域、その他いろいろなところから求められる回数がより増えてほしいと思っています。だからそのための土俵づくりに力を入れたいと思っていますね。

当社で作成している名刺には、当社の固定電話の番号のほか携帯の電話番号も記載しています。営業担当に対し、個人の携帯に相談の電話がかかってくるのって、その「営業担当個人」が求められていると思いませんか

私はその回数が多ければ多いほど「すごい」と言っています。また個人が求められるようになればその分企業が求められていくことにもなると思いますから。このような、部下の「求められる機会」を広げていくことが今後の私のやりたいことですね。

Q.では最後に就活生に向けたメッセージをお願いします。

まずは情報におぼれてほしくないですね。企業情報・仕事情報・業界情報のほか、就活ノウハウもそうです。今は就活がオンライン化したことにより情報があふれすぎており、毎年おぼれる学生を何人も見ています。

でも、そのあふれた情報の取捨選択は自分だけでは難しいはず。そこで考えてほしいのが、何のために大学にキャリアセンターがあって、何のために就活イベントに相談コーナーがあるのかということ。社会や仕事を知っている大人の力を借りながら就活を進めてほしいです。特に今就活において悩みや困っていることがある人は、積極的に大人を頼ってください。

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