【公務員】扶養手当の条件とは|不正受給した場合の処分や人事院が勧告した減額についてもご紹介
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目次
公務員の「扶養手当」とは
公務員の「扶養手当」とは、扶養家族のある職員に支給される手当のことをいいます。扶養家族の生計がなかったり、受け取れる条件を満たしていれば、その公務員は扶養手当が支給されるようです。扶養手当は、実際に働いている公務員だけではなく、その家族も手厚くサポートされる手当でもあるといえます。
公務員が働きやすい環境を作ることが目的
社会人として家庭を持ち子供を育てていくためには、当然お金が必要です。昔に比べて女性の社会進出は目覚ましく男女共に働く時代です。また、子供の数が少なくなってきたとはいえ、1人にかかる教育費は増えています。そのような時に頼りになるのが扶養手当です。
簡単に言うと、家族を持つ職員に対して生活援助目的で支給されるお金になります。つまり、家族も手厚くサポートすることで、安心して働ける環境を作ることが目的です。一般の企業でも扶養手当や家族手当、配偶者手当などが出るところはありますが、義務ではありません。一方、公務員の場合、一定の条件を満たせば誰でも支給が受けられます。
公務員の扶養手当は法律で決まっている
公務員の扶養手当のうち、国家公務員の扶養手当については一般職の職員の給与に関する法律によって定められています。この法律の11条1項に「扶養手当は、扶養親族のある職員に対して支給する」という規定があり、同条2項以下で扶養親族の要件や金額が定められています。
税金が不正に使われないようにするため
このように法律によって扶養手当が定められているのには理由があります。国家公務員の給与や手当の財源は国税であるので、国民の代表者である国会議員が作る法律によって規定し、国民のチェックを受けさせて税金が不正に使われないようにしようという考え方にあるのです。
したがって、国家公務員の扶養手当を増減させたい場合には、国会で法律を改正する必要があるのです。地方公務員の扶養手当については、国家公務員に準じて地方自治体の条例によって定められています。
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扶養手当の支給にかかる条件
では、一般職の職員の給与に関する法律11条がどのように国家公務員の扶養手当を規定しているのかを詳しく見ていきましょう。まず、扶養手当が支給される扶養親族の範囲が同条2項に定められています。これによると扶養手当が支給されるのは、以下の通りです。
1 配偶者(事実婚の関係にある者も含む)
2 満二十二歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある子及び孫
3 満六十歳以上の父母及び祖父母
4 満二十二歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある弟妹
5 重度心身障害者
もちろんこれらの者は「他に生計の途がなく主としてその職員の扶養を受けている」状態になくてはなりません。
扶養手当が支給される扶養親族の範囲は厳格に定められている
支給額については同条3項に定められていて、上記1が1万3,000円、上記2から5については6,500円(ただし職員に配偶者がいない場合は、そのうちの1人について1万1,000円)と決まっています(2015年4月現在)。また、同条4項では16歳から22歳までの子がいる公務員に対する金額加算の規定もあります。
子どもがいることで得をするケースがある
満15歳に達する日の後の最初の4月1日から満22歳に達する日の後の最初の3月31日までの間にある子供がいる場合、月額5,000円が加算されます。難しい説明ですが、簡単に言えば、16歳から22歳までの子供がいれば、扶養手当が1人当たり月11,500円になるということです。
高校や大学などの就学年齢にある子供を扶養する職員に対して、教育費などの家計負担が特に厳しいことを配慮した措置です。妻と子供2人の家庭を例にとると、子供が高校生以下(23歳未満)の場合、月の扶養手当は36,000円になります。これは、大きな金額ですね。
以上は国家公務員の例ですが、地方公務員の場合は所属する団体(市町村など)によって細部が異なるケースもあります。ただ、おおむね国家公務員の例にならっていると言っていいでしょう。
扶養手当がもらえない条件
次に、扶養手当がもらえない条件について見ていきましょう。
(1)その人について、組合員以外の人が「扶養手当」やそれに相当する手当を地方公共団体や国などから受けている場合
(2)組合員が主たる扶養者でない場合
(3)年額130万円(障害を支給事由とする公的年金等を受けている人や60歳以上で公的年金を受けている人は、年額180万円)以上の収入がある場合
被扶養者の見込み年収が130万円(障害を支給事由とする公的年金等を受けている人や60歳以上で公的年金を受けている人は180万円)を超えた場合、国民健康保険料を自分で払わなければなりません。つまり、扶養から外れることになります。また、年収が103万円を超えると所得税がかかります。被扶養者が働いている場合は、見込み年収のことも考えておくと良いでしょう。
3ヶ月の収入が108,333円を超えるとアウト
前記についてもう少し詳しく見てみましょう。配偶者の年収が130万円を超えた場合、被扶養者でなくなると説明しました。つまり「扶養の範囲内」で働くには、年収130万円を超えないようにしなければならないということです。
この場合の年収は見込み年収と言われるもので、直近3ヶ月間の収入から判断されます。130万円を12ヶ月で割ると、1ヶ月あたり108,333円です。つまり、これが被扶養者として認められるかどうかのラインとなり、108,334円以上になってしまうと翌月から扶養手当が打ち切られます。
この一方で、「106万円の壁」というものもあります。これは、従業員数501人以上の企業で働く人が年収106万円を超えると、勤め先で健康保険や年金の被保険者になる義務が生ずるというものです。結果的に、配偶者の扶養から外れることになります。
毎月10万円程度の収入ならば扶養内となる
1ヶ月あたりの平均収入が108,333円以内だと扶養の対象になると述べました。では、パートで働いている場合、「時給」×「1日の労働時間」×「1月の労働日数」の合計が108,333円ちょうどならいいのでしょうか。ここで注意しなければならないのは、見込み年収の中には通勤手当(交通費)が含まれるという点です。
交通費は税制上非課税ですが、企業側が労働者に払う福利厚生費的な性質のものなので、収入とみなされます。つまり、基本的な賃金以外の手当が支給されるような場合はそれを考慮し、余裕を持って見込み年収を見なければなりません。
会社によっては、数ヶ月分の交通費をまとめて払うというところもあります。それを考えると、毎月10万円程度が扶養になるかどうかの見極めラインといえるでしょう。
ひと月の収入が大きいなら他の月を減らすなどの調整がコツ
108,334円以上の平均月収を得て自分の職場で健保・年金に加入して働こうとすれば、150万~180万円の年収がないと配偶者の被扶養者として働く場合より手元に残るお金が少なくなると言われます(加入する健保・年金の種類によって違いがあります)。
このことから、働く時間や能力に余裕があるのに、あえて年収130万円以内のパートなどに留まろうという人もいます。ただし、パートやアルバイトは、シフトなどによって毎月の賃金が同じとは限りません。小売業などであれば、セールやイベント月、そうでない業種も決算月などは忙しく、働く時間が一時的に増えることもあります。
ただ、見込み年収は3ヶ月の収入により算定するため、ある月の労働時間が増えて収入がアップしても、後の2ヶ月で調整することで、3ヶ月平均を108,333円以内に抑えることができるのです。パートを雇用している職場の担当者はその辺のことを熟知している人が多いので、相談次第で希望を聞いてもらえる可能性は高いでしょう。
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扶養手当を不正受給した場合の処分について
国家公務員の扶養手当は、このように扶養親族の範囲や金額が法律で定められているだけではありません。職員が結婚して配偶者ができたり、子どもが生まれたりして扶養親族が増えた場合、あるいは逆に職員が離婚して配偶者がいなくなったり、子どもが独立して扶養する必要がなくなったり、両親が亡くなったりして扶養親族が減った場合のいずれについても、ただちにその旨を届け出なければならないという義務を職員に課しています(同法11条の2第1項)。これに違反すると当該職員は処分の対象となります。
不正受給に対しては国も地方公共団体も厳しく罰する
では実際には十分な収入があるのに扶養親族として届出をして、扶養手当を不正受給しようとした場合にはどうなるのでしょう。地方公務員の例ですが、妻がもらっている年金額を50万円低く申告した職員が、停職6か月の処分を受けている例があります。
また、偽装結婚が疑われる配偶者を扶養親族として手当を受給し、職員が懲戒免職処分を受けたという例もあります。いずれにせよ、現在では扶養手当の不正受給に対しては、国も地方公共団体も厳しい態度で臨む傾向にあると言えるでしょう。
扶養手当はなくなるかも
2016年の11月に改正給与法が可決され、国家公務員の配偶者手当を2017年度から段階的に減らすことが決まりました。課長級以下は月に13,000円の配偶者手当がありましたが、17年度は10,000円、18年度は6,500円と段階的に減額されるようです。
課長級の配偶者手当は、19年度は3,500円、20年度に廃止となります。しかし、子どもの扶養手当は現在の6,500円から17年度は8,000円、18年度は10,000円と段階的に増額されるようです。
国家公務員の配偶者手当、17年度から減額 改正給与法が成立|日本経済新聞
国家公務員の扶養手当は法律によって定められている
このように、国家公務員の扶養手当は法律によって定められ、その支給事務についてもかなり厳格な運用がなされるようになっています。国民の税金が不正に使われることがないようさまざまな配慮がなされているわけですが、まだまだ不正受給の事件も多く、さらなる監視の目が必要であるとも言えるでしょう。