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自己分析ってどうやるの?我究館が教える方法とは
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目次
我究館 熊谷さんの紹介
【経歴】
我究館館長。横浜国立大学を卒業後、(株)リクルートに入社。2009年、(株)ジャパンビジネスラボに参画。現在までに3,000人を超える大学生や社会人のキャリアデザイン、就職や転職、キャリアチェンジのサポートをしてきた。難関企業への就・転職の成功だけなく、MBA留学、医学部編入、起業、資格取得のサポートなど、幅広い領域の支援で圧倒的な実績を出している。また、国内外の大学での講演や、執筆活動も積極的に行っている。 著書に『絶対内定2021』シリーズがある。
ーーまず我究館に入社しようと思ったきっかけって何だったんでしょうか?
熊谷さん:そもそも「絶対内定」の読者だったんです。最初の著者であり我究館の創業者でもある杉村太郎に憧れて学生時代に就職活動をしていて、「人の人生に関わりたい」と思ってリクルートに入社したんですね。リクルートでは活躍の場も与えてもらっていましたし、今でも大好きな会社です。ただ、メディアを通してではなく、もっと対面で膝を突き合わせながら人の人生と向き合うような仕事がしたいなと思った時に我究館の社会人校を受講しました。
受講しながら我究館で働くことに魅力を感じていた矢先に、(杉村)太郎さんから声をかけてもらったのです。当時、既に(杉村)太郎さんは末期ガンで、それを聞いた時に「この人と少しの時間でも長く一緒に仕事をして、夢を描きたい」と思い転職を決意しました。我究館にジョインして2年後に残念ながら太郎さんは亡くなり、その後僕が館長になりました。かれこれそこから10年近く経ちます。
ーー我究館では何をやられているんですか?
熊谷さん:実は、大学生向けの「就活塾」という言葉自体は8年くらい前に突然生まれました。我究館は28年目となっており、ずっと「キャリアデザインスクール」という冠でやっています。自己分析をしてキャリア戦略を描くことに重点を置いてきたからです。
学生だと「就職」を選ぶ受講生がほとんどです。そのため、いわゆる「就職活動」のサポートを充実させようという想いで、徐々にカリキュラムが「自己分析・キャリアデザインのパート」と「就活対策のパート」という形になっていきました。
書籍『絶対内定』には、自己分析のワークシートが94枚あります。これを受講生にやっていただきますし、自分と向き合った上で納得のゴールを設定して、戦略を持って就職活動を進めていただきます。
一方で、我究館では社会人向けのコースも展開しているのですが、社会人の場合、キャリアゴールの選択肢がより多様になります。起業、副業、留学、進学、資格取得など。自己分析を深めるプロセスは学生と同様のコーチングを行いますが、最終的に何を選択するかによって、とるべきアクションはまったく異なってくるので、それぞれのキャリアを実現するために必要なアセスメントをしています。
自己分析は業界選びや自己PRの基礎として必要
ーー就活で自己分析が必要と言われている理由をお話いただけると嬉しいです。
熊谷さん:自己分析が必要な理由は2つあると思っています。1つ目は、業界選びの軸を作るためです。毎年、多くの大学でキャリアデザインの講演に呼んでいただきます。年間5,000人近い方たちとお会いさせていただく中で感じることは、今の新卒採用マーケットが「売り手市場」なので、あまり自己分析をしないことです。
そのため、企業選びを「難易度の高さ」や「かっこいいイメージ」で選んで受けていくんですけど、それって本質的じゃないですよね。
志望業界選びにおいて、「みんなからすごいと言われたい」とか、「優秀の証明として内定が欲しい」という業界選びじゃなくて、ちゃんと夢を描いて、そこに到達するための業界としてどこがあるのか、そもそも自分がやりたいことが何なのかをちゃんと分析する必要があります。
2つ目は自己PRとかガクチカを定めて言語化するためです。自己PRやガクチカを作成する際に「他の学生より頑張ってきたことある!」と過剰に思いすぎている学生さんと、「普通の大学生だから別に人に誇れることなんてない」と思ってしまう学生さんの2通りあります。
前者の場合に気を付けたいのが、「他の学生と違うことをやっている」=「優秀」ではないんですよね。やったことの実績よりも、それを始めようとしたきっかけや、そのプロセスの方がはるかに重要になります。
また、後者のように、普通にバイトやサークルをやっていた子達は、ネット上に落ちている武勇伝っぽいESの例と自分を比較して、過度に自信を無くしちゃうみたいですね。このタイプの学生が圧倒的に多いのを感じます。今まで僕も3,000人くらい学生と向き合ってきましたけど、そんなに特別な経験をしている学生っていないです。ただ、ちゃんと自己分析していかないと自分の「行動特性」や「人との違い」が見えてきません。
なので、いずれにしても、ちゃんと自己分析をして、自分なりに頑張った「切り口」を言語化できた状態にすることが大切だと思います。
自己分析ができている学生は迷いがなく行動するほど成長する
ーー自己分析ができている学生とできていない学生ってどんなところに差が出てくるのでしょうか。
熊谷さん:まず企業選びの段階で自己分析ができている学生は、次のキャリアで何が欲しいのかが明確なので迷いがないです。自己分析ができていない学生は、「(企業の)数が多すぎてわけわかんなくなっちゃいました」や「(どこの企業も)全部かっこよく見えちゃって困ります」と話すことが多いです。
自己分析ができていない人は、動けば動くほど混乱したり自信をなくしたりします。
その一方で、自己分析をしている学生は動けば動くほど重要な一次情報(ネット上にある情報ではなく、実際に自分の目で見て得た情報)を取りに行けるので、行動すればするほど成長していける、話すことの精度が上がっていくのですごい差になっていきますね。
ーー面接をする上でも差が出ると思います。例えばどんなところに差が出ますか?
熊谷さん:当たり前ですけど、自己分析を終わらせて早い段階で業界が確定すると、企業研究の精度が上がっていきます。情報収拾のインプット量が増えますし、最近はOBOG訪問のプラットホームが充実しているので、一次情報へのアクセス量も格段に増やすことができます。
目的意識がある学生って、志望業界の10人にも20人にもOBOG訪問するので、大量の一次情報が取れるんですね。OBOG訪問で20人とコミュニケーションをとって磨き上げた志望動機やガクチカ、自己PRを面接で話すので、やっていない人との差は歴然ですよね。
ーーアウトプットの密度が変わってきますよね。行動と振り返りをセットで繰り返すと話す内容の精度が全然違ってくるような。
熊谷さん:勉強でもスポーツでもそうですよね。明確な目的や目標がある人とない人では、出せる成果がまったく違うと思います。人生の全ての種目においてそうだと思うのですが、だからこそ、そこをちゃんと明らかにしようという当たり前の話ではあると思います。
自己分析ができていない学生には問いを立てて思考を深めてもらう
ーー実際に自己分析ができていない学生に対してどういったアドバイスや指導をされていますか?
熊谷さん:自己分析をやる時のポイントって、「思い出す」というフェーズと「深める」というフェーズがあると思うんですね。「思い出す」とは、要はどんな人生だったのかというファクトを書き出す状態ですね。ここまでは誰でもできると思うんです。
例えば高校時代に部活を頑張ってレギュラーを取れて嬉しかったけど、大学に入ったら目的意識がなくなって何となくつまんなくなっちゃったみたいな。
だけど、これを思い出しただけでは深まっている気はしないはずです。
大切なことは、この経験や感情の動きが、自分にとって何を意味するのかを「深める」思考フェーズを経ることです。
その際に注意すべきことは、絶対に「深める」フェーズを1人でやらない方がいいですね。1人でやっていると思考がループしたり、行き詰まったり混乱して来ます。それを避けるために、誰かに「なんでそう思ったの?」などの問いを立ててもらうことで思考を深めたり整理したりすることができます。「思い出す」までは自分でやったらいいんですけど、「深める」というのは人に問いを立てもらうといいですね。
ーー熊谷さんは『メモの魔力』著者の前田裕二さんとも対談されてますよね。「思い出す」という部分では『絶対内定』のワークシートを活用して、「深める」ところを『メモの魔力』の思考法を使って欲しいという認識ですよね。
熊谷さん:『絶対内定』の読者から抽象化が難しいとよく聞きます。「何が嬉しかったのか」という具体的なファクトから、どういう価値観が満たされた瞬間なのかという抽象度をあげていく作業が結構みんなわからなくなるみたいですね。
例えば、「大学受験に受かって嬉しかった」というファクトがあっても、嬉しかった理由って人それぞれ違うんですよね。「自分の能力が高いことが証明できた」「家族に喜んでもらえた」「憧れの街にいける」など。それぞれがすごく重視しているポイントがあったりするじゃないですか。そのポイントが見えてくると、その人が求めている価値観の粒度が上がっていくんですよね。
ーー学生が抽象化するとき、本音って話してくれますか?
熊谷さん:我究館内では「本音」で話すことを大切にしています。なぜなら、話づらいことに、その人の大切な価値観が隠れていることが多いからです。もちろん、どうしても言いたくないトラウマは話さなくていいですけどね。
話しにくいテーマの代表に、「コンプレックス」があると思うのですが、僕の経験上、コンプレックスって、その人の未来の希望につながることがすごく多いです。
学生の中にはネガティブなことを隠したり、取り繕ったりとかして、一般受けのいい夢とか即席の志望動機を作ったりする人も多いです。でも、我究館では、コンプレックスについてもできる限り本音で話してもらいます。それを話してくれた時には、「それめちゃくちゃいいじゃん!同じようなコンプレックスを持つ人たちが希望を持てるような社会を作ろうぜ」という風に話します。
頑張り屋の学生ほど、実はコンプレックスがあったりするじゃないですか。でも、「そこがエネルギー源となって今日まで一生懸命頑張ってきたとか、すごいことじゃない?」と話すことはすごく多いです。
こんなふうに話すとみんな目を輝かせてくれて、実際にその後のキャリアにもその部分がすごく活きていて、素敵な人生を歩んでくれています。宝物なんですよ。コンプレックスって。
自分で自己分析をする場合はワークシートを書いてフィードバックをもらう
ーー自分でできる自己分析の方法をお聞かせいただきたいです。
熊谷さん:基本的に、その気になれば自己分析のプロセスって我究館に来なくてもできると思うんですね。『絶対内定』のワークシートを書いて、フィードバッグをもらうのは我究館に入らなくてもできると思うので、自分で再現してもらってもうまくいくと思います。ちゃんと自走できるタイプの学生は、参考にして走っていただければ、うまくいくんじゃないでしょうか。
ーーワークシートでファクトをぶつける相手って重要ですか?
熊谷さん:自分のことをある程度以上知ってくれていて、あとは自分が尊敬できる相手がいいですね。サークルで仲が良い程度の相手にぶつけると、適当な感じになったりとか、素直に受け取れなかったりとかするんですね。
価値観を具体化していくときや、ネガティブなことを掘っていくときって、相手のことを信頼していないと話せませんよね。だから、ある程度信頼できて尊敬できる相手とじゃないとやるべきではないですね。むやみやたらに人数を増やしたりするのはNGです。
自己分析「ここで終わり」と決断できたら終了する
ーー最後に、自己分析は何を持って完了とすればいいでしょうか?
熊谷さん:結構難しいですけど、「これで終わりにする!」と本人が決められたら終了ですね。まだ迷っているという気持ちが一番の敵です。決断ができない、自己分析がまだ終わっていない、もうちょっと悩んでいたい学生は、「ここまで来たら終わりにしよう」と自分が決めないと、やっぱりどんどん後手に回るんですよね。
なので、「●月までにやり抜く」と制限時間を決めてやるのがいいと思います。決めたらいったんそこから先は行動する。それで一次情報を取りに行った方が心が動いたり動かなかったりする瞬間にいっぱい出会えるので、そこを分析した方がはるかに実感値を持って分析できるのでオススメです。期限を決めて自己分析をして、あとは決断する。そして、誰よりも行動量を増やしながらいろんな角度から自分を分析をしていくのがいいと思います。
まとめ
今回は、我究館現館長の熊谷さんにお話を伺いました。自己分析についてたくさんの参考になるお話ありがとうございました。
「自己分析ができていない人は、動けば動くほど混乱したり自信をなくしたりする一方で、自己分析をしている学生は動けば動くほど重要な一次情報を取りに行けるので、行動すればするほど成長していける」
「思い出すまでは1人でやって、深める時は人に問いを立ててもらうのがいい」
「自己分析は制限時間を決めて決断することが重要」
これらが印象的でした。自己分析はただ就活で内定を獲得するためのツールではなく、自分の価値観や夢に向き合って未来を作るものということがわかりました。深く自己分析をすると、自分の嫌いなところやコンプレックスと向き合うこともありますが、それに対して熊谷さんは「コンプレックスが未来の希望につながることは多い。コンプレックスは宝物」とおっしゃいました。コンプレックスも含めた自分のすべてと向き合うためにも「信頼できて尊敬できる相手としか自己分析を深めない方がいい」というのも納得です。
我究館の詳細は以下リンクで確認できます。我究館では専属コーチとの面談の他にもグループコーチングや特別講師による講演会や面接対策などのサポートをおこなっています。就活に困っている人や自己分析の手法を身につけたい人は、ぜひ相談してみましょう。