キャリア講義
自分で自分を諦めるな! 失敗できるのは新卒の特権! 走り続けて経験値を増やそう
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目次
川畑 翔太郎 さん(UZUZ・専務取締役)
Shotaro Kawabata●高校卒業後は九州大学にて機械航空工学を専攻し、住宅設備メーカーINAX(現:LIXIL)に入社。1年目から商品開発に携わるも、3年目に製造へ異動。その後は自身のキャリアチェンジのため、UZUZ創業に参画。現在はウズウズカレッジ(IT教育)事業統括だけでなく、キャリアカウンセラーとしてキャリアコーチング事業、企業ブランディングを担当
Q.川畑さんの就活時代のお話からぜひお伺いさせてください。
正直、就活はまったくがんばっていなかったですね(笑)。というより私に限らず理系学生の場合、大学4年時にあまり就活をしないのですよ。
特に私の所属していた機械航空工学科はほぼすべての学生が院に進学します。そのため大学4年でやることといえば卒業研究か院試の準備。就職する学生なんてほんの一握りです。キャンパスも文系とは高速バスで1時間ほど離れていましたから、周りに流されて早いうちから動き出すということもなく、情報が解禁される大学3年の3月から就活をスタートさせました。
Q.そうなのですね。そういった状況の中どのように就活を進めていかれたのでしょうか。
「好きなことを仕事に」、その一点張りでしたね(笑)。それ以外に何も考えていなかったです。
正直、就活を積極的にやっていない人間は皆そういうものだと思います。とりあえず就職しないとなと考えたときに、「好きなことを仕事に」が一番耳障りが良く、そして一番ラクなのですよ。もちろん当時は真面目に「好きなことを仕事に!」と考えていたのですが、今考えると就活についてきちんと考えて準備することを放棄して、楽なやり方に飛びついただけだったなと思います。
結局、私自身の就活「好きなことを仕事に」の一点張りだったことで失敗してしまったと思っています。
「好きを仕事に」は危険! その言葉は思考を停止させてしまう
Q.では、川畑さん自身はこの「好き」という軸で就活を進めるのはやはりやめたほうがいいというお考えですか?
そうですね、基本的には「なし」だと思っています。「好きを仕事に」から入ってしまうと、おそらくその仕事の詳細やネガティブな情報を集めたり、学んだりしないと思います。さらに、ほかの仕事という選択肢に対する情報収集も不足してしまい、かなり狭く浅い範囲での就活となってしまうと思います。
そもそも学生の頃って世の中にあるほとんどの仕事を知らないのですよね。学校でも教えてくれない。就活が始まって、急に「仕事を選べ」なんて言われても選択できないのが普通です。
すべてとは言わないまでも大半の選択肢を知ったうえで「好きなもの」を選んでいるのなら問題ありません。でも、ほぼ仕事を知らないのに「数少ない知っている仕事」の中だけで就活をしてしまうことは、もったいないことだし、恐いことだなと思っています。
つまり「好きを仕事に」で就活をすることは、「狭い選択肢」かつ「少なく楽観的な情報」で仕事を選ぶことにつながってしまうと考えているので、あまり良いとは言えないのです。
Q.たしかにおっしゃる通りですね。「好きを仕事に」の危険性がよくわかります。
そもそも仕事は「趣味」や「遊び」ではないということを忘れてはいけないのです。もちろん仕事を趣味のように、遊ぶようにやることはできます。でも仕事では大前提として会社から給料をもらってそれに見合う成果を出さなければいけません。仕事はどこまでいっても「仕事」であり、「趣味」や「遊び」にはなりません。そしてたいていの人の仕事をする最大の目的は「生計を立てること」になると思います。
となると、生計を立てるための仕事に求められるのは「安定した収入」や「今後廃れない・できれば伸びていく」ことではないでしょうか。「好きを仕事に」で就活していると、途中から仕事を「趣味」や「遊び」として探してしまい、「生計を立てる機能」が弱い仕事を選んでしまうケースが発生してしまいます。
Q.だからこそただ「好き」という感情だけで仕事を決めることが危険だということですね。
仕事って、蓋を開けてみたら思っていたものと違うなんてことはよくあります。働いたことがない新卒の場合は特に。だって働いたことがないわけですから。むしろイメージと違う方が普通です。
「仕事のイメージ」は本当に「イメージ」でしかないわけです。説明会などで飾り立てたよそいきの説明を聞いたり、ドラマなどで編集されたイメージを見たりして「仕事のイメージ」は醸成されます。そこから「好きな仕事」が生まれるのです。でも実際その仕事をやってみたら急に現実の姿が見えて、「思っていたイメージと違う…」となり、そのまま短期離職なんてケースはよくあるもの。でももう構造的にそうなってるのだからしょうがなくない? といった具合です。
思っていたイメージと違う仕事に就いてしまった場合、その仕事を続けられるかどうかは、その仕事に「メリット」を感じられるかどうかだと思います。お金でもいいですし、スキルでもいいですし、実績が積めるでもいい。とにかく「入社後に不変のメリット」をどれだけ持っているかが重要です。
「メリットだけで仕事を選ぶなんて何か寂しい」という人もいると思います。何も「仕事を好きになるな」と言っているわけでありません。「好き」を出発点として仕事を選ぶのではなく、「メリット」で仕事を選んで、それから仕事の好きなところを見つけて、あとから好きになった方がリスクが低いという話です。
Q.ちなみに、選んだ仕事を好きになるためにはどうすれば良いでしょうか。
やっぱり仕事で結果が出たり何か新しいことができるようになれば、その仕事を好きになると思うのです。基本的には勉強やスポーツと同じですね。できない教科を好きな人なんていないし、苦手なスポーツは嫌いでしょう。人に競争で勝てた・結果を出せた・他人から褒められた、そういったことが仕事であれば、きっとその仕事は「好き」に近づいていくはずです。
逆に、成果が出ることを「嫌い」と言っている人はかなり稀ですよね。
「好き」という感情よりも、自分が得られる「メリット」で企業を選ぼう
Q.では今お話に出ていた「メリット」について、川畑さんはどういったところにメリットを感じられればいいと思っていますか?
20代のうちはまず「稼ぎ」で選んでいいと思います。稼ぎが多いことはもちろんですが、加えて稼ぎの安定性も重要ですね。
そして、「自分が結果を出せる仕事か」も重要なメリットです。その仕事は「得意なこと」を活かせるか、頑張ればその仕事はできるようになりそうか、仕事で求められる結果を自分が出せそうか、という観点で仕事を探しましょう。
結局、仕事で求められる結果が出せなければ評価はされません。そして評価されないと給料は上がらないし褒められもしないし、自信もつきません。そうなると仕事を好きになるどころかその仕事は苦痛になります。結果が出せそうな仕事を選ぶことは「好きなことを仕事に」に着実につながっていきます。
結論、短期的には「お金」というメリットを、長期的には「成果」をメリットとして仕事業選びをするといいと思います。
Q.「結果を出せるか」、学生には見極めが難しいと思うのですが、何か見極めるコツを教えていただきたいです。
さまざまなビジネスモデルを考えると、仕事における役割は大きく2つに分けられます。まずはその商品やサービスを売る仕事。それと売るための商材をつくったり改善したりする仕事。つまり、売る仕事とつくる仕事、営業職と技術職というとわかりやすいでしょうか。大きく分けるとこの2つの職種の人がいれば大体のビジネスモデルは回るのです。
交渉力や対人力などの営業力で生計を立てていくのか、それとも専門的な知識を含めた技術力で立てていくのか。どっちの選択肢のほうが自分にとって成功確率が高そうか考えてみることが大切です。
Q.そう考えると選択肢が一気に絞られて考えやすくなりますね。
そうですね、意外と仕事は複雑そうに見えて、大別すると役割はシンプルなのです。ですので、大別して「どちらか選ぶ」を繰り返していくと、ある程度選択肢を絞ることができるはずです。
仕事選びはきちんと情報収集しつつ、一つ一つ整理していけばそこまで難しくありません。しかし多くの学生は難しいと思ってしまい、「好きなことを仕事に」という横道に逸れてしまいがちです。
新卒1年目はスター状態! 走らないのはもったいない!
Q.就職後、キャリアを積み重ねるために、働くうえで大切なことは何だと思っていますか?
目の前の仕事に地道に取り組んだり、自分にできることを探したりすることですね。おそらく学生は、就活時に就職してからやりたいことをがちがちに固めすぎていると思います。しかしそのやりたいことの中には新卒1年目からすぐに与えられるわけのない業務も含まれているのです。
学生の頃は、「やりたい」と主張すれば意外とやらせてもらえるもの。それは、学生は「お金を払っている側」つまりお客さんだからです。でも社会人は「お金をもらう側」です。ただ本人が「やりたい」と言っただけではやらせてもらえません。その仕事を任せたいと思わせる「実績」や「期待値」が必要です。
まずは自分ができること、上司や同僚からの信頼ポイントを増やすために、目の前の仕事に一生懸命取り組んで結果を出すことが何よりも大事です。
Q.おっしゃる通りですね。ではやりたい仕事がいち早くできるようにするにはどうすれば良いのでしょうか。
それは「周りからの評価を上げる」しかありません。上司を「仕事を発注してくれる顧客」だととらえてください。顧客から評価されないと仕事はもらえませんよね。上司との関係も同じです。上司から評価されることで仕事がもらえるのです。
となると、まずは与えられたものをきっちりとこなし結果を出すことが重要です。新卒一年目からできることはそんなにないですから。加えてできそうな仕事があれば手当たり次第にやってみて、評価をどんどん積み上げていきましょう。そうするとスキルも勝手についてきます。
最も避けなければいけないことは「仕事の選り好み」です。これをしてしまうと、仕事の依頼が減り、経験できる仕事の量や種類が減ってしまいます。部活をやっていた人はイメージしやすいと思うのですが、練習しないとうまくならない。新人の頃に仕事を選り好みしすぎると、自分の能力も伸びず、活躍の場が狭まってしまいます。自分で自分の可能性を減らしてしまっているようなものです。
Q.新卒で働く際、持っておくべきプライドといらないプライドについて聞いておきたいです。
持っておくべきプライドとしては「質と量にこだわること」ですね。与えられた仕事に対し自分の最大限の「質」と「量」で対応すること。先ほども言いましたが、仕事には給与が発生しています。給与をもらって仕事をしているというプロ意識を持ち、いいものを返す・やりきるプライドは持っておくべきだと思います。
逆にいらないプライドとしては「失敗したくない」というプライドですかね。「やったことないから」「難しそうだから」と初めてやる仕事をやらないのは非常にもったいないです。新人に対しては、仕事を振る方としても失敗することも織り込み済みで「一回やらせてみよう」くらいの心持ちで依頼しています。
だから失敗してもそれほど強く怒られることもありません。それで怒っているようだと上司失格ですよ(笑)。例を挙げるならばマリオというゲームがありますよね、あのゲームでいうところの「スター状態」が新人です。スターをとって無敵状態になっているのに、走らないのはもったいないですよね。失敗してもリスクがなく、経験が積めるのであれば、走った(やった)方が得だとわかります。だからこそ失敗を怖がる必要はなく、なんでもやるべきだと思っています。
自分で自分を諦めない! 工夫次第で状況は何とでもなる
Q.ちなみに、川畑さんが折れずにここまでキャリアを積み重ねられてきたその原動力は何なのでしょうか。
おそらく私は自分がすごく好きなのだと思います(笑)。失敗して途中で折れてしまうのは、「自分のことを諦める」ことなのではないかと思っており、それがすごく嫌なのですよね。失敗したときはもちろん一度は落ち込みますが、「いや自分にできないわけないだろ。やり方が多分悪いんだ」と気持ちを切り替えて、引き続き自分に期待します(笑)。
前職で出世コースから外されて、「もう俺のキャリアは終わりかも」と思ったこともありましたが、やり方さえ工夫すれば結果に必ずつながっていくことを学ぶことができました。今はうまくいっていなくても、腐るのではなくてその状況をうまく好転させるために工夫することを諦めない。どうせ生きていくなら・仕事するなら楽しんだ方がいいと思っています。
何よりも「自分が自分をあきらめる」って、相当自分に対して失礼なことをしています。自分の可能性や努力を自分が一番信じてやらなくてどうすんのよ、と思います。
Q.おっしゃる通りです。最後に就活生に対して激励のメッセージを頂けますか?
就活をやっていると、不採用が続いたり周りが先に内定をもらって就活を終わらせていったりすることで落ち込むこともあるでしょう。でも「不採用」なんて他人からの評価ですし、就活を早く終わらせても何もすごくはありません。他人からの評価や他人との比較から自己評価をも落としてはダメです。
就活だけでなく、社会人になってからも「自分で自分を諦めないで」ください。他人からの評価や他人との比較ではなく、自分で自分を評価できる人間になりましょう。