キャリア講義
自然体の自分の「良さ」が無理なく発揮できる場所でこそ輝ける! 企業選びの指針は楽しさだけではない
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青木大地さん(オーダーワークス・キャリアアドバイザー)
Daichi Aoki●教師を目指し体育大に進学するも、方向性の違いややりたいことへのずれから違う道へと進む。卒業後はタイに留学し英語学校で英語を学ぶ傍ら日本語学校でアルバイトをし、その後はタイで就職。8年間のタイでの生活を経て、日本に帰国後は誰かの人生にかかわれることや自身が体験したことのない就活に興味を持ち、2021年にオーダーワークスに入社。新卒向けのキャリアアドバイザーとして多くの学生の相談に乗っている
Q.まずは青木さんのご経歴について簡単に教えてください。
はい、もともとは教師を目指して体育大学に進学したのですが、実習などを通して自分が思い描いていたものとのギャップを感じその道を離れることにしました。しかし教師以外にやりたいことは特になく、どうしようかと思っていたところ、海外で生まれたというバックグラウンドもありタイへの留学を決めました。
タイの英語学校で学びながら日本語学校で講師としてアルバイトを2年間し、卒業後は日系の不動産会社や海外旅行保険のアシスタンス会社に勤務しながら、美容整形に訪れた日本人をアテンドする事業を起こしました。その後はこの事業を法人化したものの、新型コロナウイルスの影響を受け事業は一旦停止し、帰国することになりました。
帰国後は、誰かの人生にかかわれることに魅力を感じ、かつ自身が積んできたさまざまな経験を活かせるのではないかと考えてこのオーダーワークスに入社し、キャリアアドバイザーとして働いています。
Q.教師の道は諦めたものの、そこですぐに就活にシフトチェンジはしなかったのですね。
ずっと教師の道を目指してきたので、道を諦めたからといって教師以外にやりたいことはまったくありませんでした。かといって周りが「就活しているから」という理由で、周りに流されて就活はしたくなかった。自分の人生は自分の好きなように決めたいと思っていました。
また自身がいつか「自分一人で働きたい」という夢をぼんやりと持っていたため、その夢に活かせる何かにつなげたいという思いで留学を決めました。
Q.一度は教師の道を辞したものの、現在こうしてキャリアアドバイザーとして働かれているのは、何か芯があるように感じますね。
そうですね、誰かの人生に寄り添ったり、誰かの人生を導いていく、という点では近しいものがあると思います。そもそも教師の道を辞した理由としては、成長期の生徒に対し教師として学生の発言に対する、彼らへの影響力の強さやその重さを感じたからでした。
しかしこうしてキャリアアドバイザーとして、ターゲット層は違いますが「誰かの人生にかかわる」ことに戻ってきたことを踏まえると、やはり私は誰かの人生にかかわる仕事に大きな魅力や興味を感じているのだなと思いますね。
Q.キャリアアドバイザーとして働く今がとても充実していて楽しそうに見えます。
そうですね、とても楽しいです。正直、「仕事」とは会社から給料を頂いているものなので、楽しいかどうかは別の問題だと考えていました。実際にタイで働いていたころは、楽しさよりも給料を頂くことやお客様への責任感のほうが強かったように思います。
でも今は心から楽しく仕事ができている実感がありますね。正直、仕事が楽しすぎてずっと仕事をしていたいくらいです。夜遅くまでの残業も、休みの日に仕事をすることになってもかまわないくらいの気持ちです(笑)。
「楽しさ」で仕事を選ぶべきかは人それぞれ! 現実的側面も必ず見るべき
Q.では、青木さんと同じように、就活生も就職先を決めるにあたりその「楽しい」という感情を持てることがもっとも大切ということでしょうか。
うーん……。そこは一概にそうとばかりは言えないと思っていて、学生の性格や考え方によって違ってくると思っています。
たとえば「これがやりたい!」という確固たる意志をもった学生の場合は、楽しさではなくその「やりたい!」という意志を貫き通して良いと思います。そういった学生は比較的現実をきちんと見られており、仕事には楽しいことだけでなく最初に必ずつらいことが訪れると理解している人が多い印象です。そういった人たちには、楽しいやつらいを超えたその先にあるやりがいや達成感を目指してほしいです。
でも、やりたいことが見つかっていなかったり、ワークライフバランスの「ライフ」の部分を大切にしたい学生の場合は、ひとまず自分が働きやすい環境で、楽しく仕事ができることに重きを置いて考えてみようと伝えています。
Q.「楽しい」がすべてではなくあくまでも「学生個人個人」に合わせた選択をするべきということですね。
そうですね。もちろんこの辺りはアドバイザーごとにアプローチが違うと思うので、「仕事って楽しいんだよ、社会人になるとこんな良いことがあるんだよ」などと社会人の明るい面をアピールする人もいると思います。
でも、そうはいっても実際に働くのはそのアドバイザーではなく「学生自身」ですから、楽しいと感じられるかどうかはわかりません。私が「仕事って楽しいんだよ」と伝えたところで、学生が実際に働いてみて「楽しくない」と感じてしまい、理想と現実とのギャップが生まれてしまうのはもっとも避けたいことです。
そのため、もちろんケースバイケースではありますが、なるべく私は楽しさだけではなく現実的側面も見てほしいとは思っていますね。「仕事は楽しい」ということを私は積極的に口に出していないかもしれません。
Q.そうはいっても、実際にこの「理想と現実とのギャップ」に苦しむ新卒は多いのが現状ですよね。このギャップをなくすために、学生が就活時代からやっておくべきことはありますか。
そもそも、ギャップとは仕事に対し夢を見て、仕事のキラキラした側面ばかりに目を向けていたからこそ起こってしまうものだと思います。つまり現実的な部分を見られていないということですね。
ですから、学生は企業研究などの際に、実際の仕事内容や企業の雰囲気など、現実ベースのところもきちんと見て、判断材料としてストックしておくべきです。もちろん私たちキャリアアドバイザーもこの現実的側面を必ず伝えるべきではありますが、もし会社訪問ができるようであれば、実際に足を運んでみるのがもっとも良いでしょう。
このときに気をつけてほしいのが、「現場」の雰囲気をきちんと見ること。企業と学生とをつなぐ人事の雰囲気をそのまま企業の雰囲気ととらえてしまう学生もよくいますが、入社後に働くのはそこではありません。実際、2021年卒生はオンラインでの選考が多かったことから、企業の実際の雰囲気をうまく理解できずにミスマッチを感じてしまった学生が多いようです。
自分が入社後に働く現場をしっかり見て、まずは「自分は入社後にこの仕事をやるんだ」と認識してください。そのうえで「自分はここで働けるだろうか?」と自分自身に問いかけ、考えてみてください。働けそうならそれはもちろん良いですし、難しいと感じたならシフトチェンジすればいいだけのことだと思います。
無理なく出せる自分の「良さ」がマッチするような企業を選ぼう
Q.では、就活において多くの学生がまず始めるのが「志望業界・企業選び」だと思いますが、この際にどのような点を大切にして業界や企業を選ぶと良いと思っていますか。
そうですね、正直それは私も日々考えていることではあります(笑)。そんな中で明確に感じていることが1つだけ。学生はそれぞれ個々に、無理なく努力せずとも出せる「良さ」を持っていると思いますが、その「良さ」とマッチしている企業を選ぶと良いと思っています。
ここでいう「良さ」とは、定性的・定量的・それから人柄などすべてを総合したものを指します。無理せずとも出せる「良さ」ですから、学生的にも身の丈に合った企業で働けるうえ、それが評価されることも遅くないはずです。自分が持っている良さを自然と発揮できる業界を選んだほうがストレスも少ないうえに評価にもつながりやすい。学生と企業、どちらにとっても良いことばかりですよね。
Q.たしかに、無理をせずとも出せるものが評価されるなら、その仕事は学生にとって「楽しさ」や「やりがい」につながっていくはずですよね。でも、それより「やりたいこと」が勝っている学生はどうすればよいでしょうか。
それは本人の覚悟次第だと思います。たとえば内向的な学生さんで、コツコツやることが好きで無理なくできるという人がいたとしましょう。この場合は、先ほどの「良さ」にならうと事務やエンジニアなどの職をおすすめしています。
でも、本人としてはもっと華やかなエンタメ業界に行きたいと考えていた場合。本人が無理なく発揮できる「良さ」とは少し合っていない場合ですね。この場合は「無理をしてでもその夢を追いかける覚悟があるか」が重要だと思います。「やりたい」の上に強い熱意や覚悟があるならば、ぜひ背中を押してあげたいですね。
Q.ありがとうございます。では最後に、就活を今がんばる・これから始める学生に向けてのメッセージをお願いします。
まずは就活は「早く始めればいい」というものではないことを頭に入れておいてほしいです。特に6月以降になると、よく学生から「もう遅いでしょうか?」と相談されることも多いのですが、そんなことはありません。
そもそも働くのは年が明けた4月です。大学卒業時、もっと言えば4月1日までに自分の納得する1社に出会えていればそれで良いのです。早く・速く決めることよりも自分に合った企業を見つけてほしいと思っています。
そのうえで、できることなら就活を始めた早い段階で、私たちでも他社さんでもかまわないので、就活に聡い人にサポートをお願いするのが良いと思っています。特に、就活をどう進めていいかわからない人は特にですね。わからないことに対し、1人で頭を捻っていても答えは出ませんから。就活について詳しい人に相談してみることで道が拓けてくるはずです。1人で抱え込まず、積極的に就活のプロを頼ってみてくださいね。