キャリア講義

目の前の決断や行動にきちんと意思を持て! 成功につなげる方法はもう自分の中にある

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川久保 公成 さん(プラセム・取締役)

Kiminari Kawakubo●学生時代は大学に在学しながら東証一部上場の情報通信業を展開している企業でインターン生として営業に従事。その後新卒で東証一部上場の機械商社へ入社したのち、マザーズ上場のITベンチャー企業で人材事業を経験。現在はプラセムの取締役として従事

Q.川久保さんのこれまでのご経歴について教えていただけますか?

もともと親が会社を経営していたので、DNAレベルで「いつかは経営者になるのだろう」という漠然とした思いがありました。

そのうえで学生時代は情報通信系の企業で営業のインターンに注力していました。親の仕事を手伝いがてら早い段階で営業や接客にはかかわっていましたから、そのいろはをきちんと持っている自覚はあったのです。だからこそこれまで培ってきた営業力がどれほどのレベルのものなのか試したいという思いがありましたね。

そして卒業した後はとある専門商社からファーストキャリアをスタートさせましたが、紆余曲折あって退職。その後転職の際にキャリアアドバイザーにお世話になったことから、人材の仕事の魅力に気づき人材業界へ足を踏み入れました。その後フリーランスの時期も経て現在に至ります。

やりたいことはなくて当然! やるべきことに取り組む中で見つかるもの

Q.「経営者になるのだろう」とは思いつつ、当時はまだ「何がやりたい」などと考えていなかったのですね。

そうですね。私はもともと「やりたいこと」や「夢」について、知識や経験などの材料がない中でそれを決めるのは少し違うのではないかと思っていました。そもそも興味関心とやりたいことは違います。知識が不十分な状態での「やりたいこと」、それはあくまでも「興味関心」だと思います

真の「やりたいこと」とは、目の前のことに一生懸命、やるだけやったときに見つかるものであり、そうして見つかったときに着手すればいい。そう思って当時は特に「何がやりたいか」は深く考えていませんでした。

Q.就活時もよく「今後やりたいこと」についてたずねられますが、回答するのは正直難しいと思います。

今問われても正直わからないですよね(笑)。今と5年後とでは時代も環境もスペックもコネクションも変わっていくものですし。

たとえば大学時代に居酒屋でアルバイトをしており、そこから食品メーカーに就きたいと思ったとします。でもたった4年間アルバイトとして従事しただけで、真にそれが「やりたいこと」だと言えるのでしょうか。それはあくまで興味であり、「なぜそれを仕事にしたいのか」とは別なのでは? と思っています。

業界視点は視野を狭める! もっと大切なのは職種

Q.では学生が企業選びをする際は、逆にどこを見て選ぶといいと思っていらっしゃいますか?

業界は二の次、職種のほうを大事にすべきだと思っています。

今は転職が当たり前の時代になってきましたから、業界を変えて別のキャリアを歩むことは比較的しやすくなってきました。学生のうちから業界に絞って就職先を決めようとすると、視野が狭まってしまうので逆にリスキーです

業界よりも大切なのは職種。それを特化させていくほうがよっぽど大切です。

Q.職種でキャリアを選択するとどんなことがありますか?

たとえば、プログラミングが好きでそれを伸ばしたいと思い、プログラマーという職種に就くとします。このプログラミングという仕事ですが、さまざまな業界でプログラミングの仕事はありますから、別にわざわざ業界を絞る必要はありません。その分視野を広くして企業選びができますし、就職後もスキルを磨き成長し続けていくことができます

私も「経営者」という漠然とした目標があり、そのためのスキルや経験を積むために「営業」という職種を選びました。そのため、これまでのキャリアの中でさまざまな業界を経験しています。

Q.職種でファーストキャリアを決めることは、どうしてそんなに大切なのでしょうか。

職種をチェンジすることはけっこう覚悟が必要だからです。

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先ほど、のちのち業界を変えることは比較的しやすいとお話ししました。とはいえもちろん未経験の業界であれば、圧倒的にその業界の知識が足りませんよね。まずは知識付けなど、一からのスタートとなるため年収が下がってしまうリスクはあります。

しかし、たとえば営業職からエンジニア職に職種を変える場合。その仕事を円滑におこなうためのスキルがないので、仕事そのものが今まで通りにはできないですよね。仕事ができなければその分給料も下がります。だからこそ職種チェンジのほうが年収が下がるリスクは大きいのです。

Q.では、職種選びの基準などは何かありますか?

職種を大きく表に立つものと裏側のものとで分けて考えてみましょう。

正直20歳前後になってくると、自分のいるコミュニティでの自分の立ち位置はある程度わかってくると思います。コミュニティを引っ張るのか、陰で支えるのか。これまでの立ち位置に準じた職種を選ぶのがもっとも進みやすい道でしょう

とはいえ社会人になるにあたって、今までとは違う新しい立ち位置・スタンスでチャレンジしてみたいという人もいるはず。それはそれでまったく問題ないとも思います。

職種選びで大切なのはまずは当然ながら確固たる思い、それから理解か挑戦かどちらかです。これまでのスタンスへの十分な理解のもと職種を選ぶか、もしくは新たな立ち位置への挑戦か。どちらが正解というわけではないのですが、とどのつまり確固たる意思があるのならどちらでもいいとも思っています。

Q.明確に「こんな人はこの職種に就け!」というような規則はないということですね。

その通りです。こうして「仕事」というものができて何十年も経って、そしてデジタル化が進むこの世の中であれば、「こういうマインドの人でこういうスペックがあってこういう大学の人は、この企業のこの職種に就きこういうことをすればいい」という公式ができていてもおかしくありません

でも現在そのような公式はありませんよね。そんな公式があればすべての企業の社長は全員東大出身になっていますよ。でも実際そんなことはない、つまり企業選びや働くうえで「正解」はないということ。正解はないからこそ「どちらがいいか」は誰にもわからないし、アドバイスする側もその人の経験則でしか話ができません。

失敗するのは当たり前、いかにネクストアクションに移せるかが重要

Q.だからこそこのキャリア選択の際に大切なことは何でしょうか。

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盲目にならず自分で意思を持った選択をすることです。そうしなければ、言い訳人間になって現実逃避がとてもうまくなってしまうと思います。

きちんと戦って負けるのと、流されて戦いそして負けるのとでは、その負けから得られるものがまったく違うはず。そもそも失敗しない人間はいません。失敗しないのなんて某医療ドラマの女医先生くらいですよ(笑)。日本ですらさまざまな過ちや失敗を繰り返して今があるのですから。

失敗するのは当たり前のこととしても、大前提の意思がないとそもそも失敗に気づけなかったり、その失敗を認められなかったりします。そして成長するためにはこの「失敗の認識」が何よりも大切なのです。

Q.ではキャリアを前進させるため・成長させるために、「失敗を認識」してからやるべきことについて教えてください。

失敗を認識したら、「じゃあこれからどうしたらいいか」それをきちんと実行することがもっとも大切です。

学生に限らず人間の多くは、失敗して次に成功するために自分が何をやるべきかは心の底でわかっているのです。でも、わかっているけど、何らかの理由をつけてほかの攻略法を見つけようともします。でもそれは現実逃避しているだけなので、成功には結びつきません。

やらなければならないことにきちんと向き合って、そして人よりも覚悟をもって取り組むこと。トライ&エラーなんて、喧嘩したときの仲直りの仕方や赤点をとったあとの勉強の仕方と変わりません。失敗から立ち直り成功するための基礎のキはみんなわかっているはず。

ほかの方法を模索する必要なんてない。「どうやったら成功できるのか」その答えは絶対それぞれがもう持っています。きちんと合わせ鏡をしてみれば、やるべきことはすぐに見えてきますよ。

Q.ちなみに、川久保さんの考える「キャリアの成功」とは何だと思いますか?

具体的に「こうなれれば成功」というものはないですね。そもそも成功か失敗かは他人に決められることではなく、自分で決めるものですから

ただし自分で「成功」を決めるうえで納得感は重要だと思います。

その納得感のものさしとなるのは「お金」「ポジション」「仕事内容」何でもかまいません。でもそのものさしの部分がふわっとしていると、まず成功したかがわからないですよね。そして何のために・どうしたくて仕事をしているのか、成功どころか現在地すらわからない状態で仕事に取り組むことになってしまいますから。常に意思をもって納得感を生めるような行動をしていきましょう。

意思をもった行動・意思をもった決断をしていこう

Q.最近は新卒3年以内の転職も市場の課題として話題になっています。

そうですね、もちろんそれは解決すべき課題だとは思いますが、完全に「悪」とまでは言い切れないと思っています。

私は働くことは恋愛に似ていると思っています。付き合って一緒にいることに慣れると、片思いしていたころのあのきゅんきゅん・きらきらした気持ちが薄れていくのも当たり前のこと。だから就活から就職にかけて企業に抱く感覚も同じことでしょう。

恋愛において関係が終わりそうになった時、自分の努力や改善で関係の継続が見込めるのなら、それは努力しますよね。働く際も、もし今の会社が嫌になった時、自分もしくはパートナー(企業)の努力で関係の継続を見込めるのであれば何かしらの歩み寄りや努力はすべきです。恋愛の場合、関係継続の努力をしてみてそれでも一緒にいたいかどうかで今後を決めると思いますが、就職も同じなのですよ。

また恋愛で、1ヶ月おきに恋人をころころ変えている人がいると「大丈夫か?」と不安に思いませんか。転職においても同じことがいえます。だから、短期離職を繰り返している人は心配されるのです。

もちろん恋愛もそうですが転職どちらにおいても別れることは当然あるでしょう。そのたびに自分の求めるものや自分の悪いところもきちんと認識して次の出会いに臨む必要があると思います。そうすることでベストなパートナー(企業)に出会うことができるはずですよ。

Q.最後に就活生へメッセージをお願いします。

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人間社会を生きていくうえで、天才以外はみんな努力をしなければなりません。だから苦しいこともたくさんありますし、誰かと比較をして苦しむこともあるでしょう。でも誰かより劣っていて苦しいのなら、その誰かより努力をする必要があります。

でも就活においては「1社目はこの会社に行く」ということが正解で優れている、とは限りません。社会人になってからできる選択もたくさんありますから、だから今より楽に就活を考えてもいいと思います。

とはいえこれは私の経験則から言えることです。私のこの発言が正解でもありません。だからこそ自分の意思で行動し、決断をしていくことが何より大切だと思っています。

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