キャリア講義

自分のキャリア選択には自分で責任を持つ|企業の採用プロセスは学生にとっての最適な就活プロセスとは限らない

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目次

  1. 竹井 もゆこ さん(つながるキャンパス運営委員会 副代表(COO)兼経営戦略室室長) 
  2. キャリア形成のカギは「この人と一緒に働きたい」という思い
  3. 人が変われば仕事も変わる。居心地の良い場所でやりやすい仕事をしよう
  4. 就活は人生にかかわる重大な岐路。だからこそ自発的に動くべし!
  5. あらゆる人が活躍できる個性ある日本社会の創出に貢献することが自分にとっての充実したキャリア

竹井 もゆこ さん(つながるキャンパス運営委員会 副代表(COO)兼経営戦略室室長) 

Moyuko Takei●外資系コンサルティング企業、大手自動車メーカーを経て、外資系組織コンサルティング企業へ。人事組織コンサルタントとして、日系グローバル企業のカルチャー変革やジョブ型人事制度の導入など、複数のグローバルプロジェクトのマネジメントを担う。つながるキャンパスには2020年の設立当初から協働パートナーとして参画。2022年4月より現職で約50名規模の運営委員会立ち上げを担う

Q.竹井さんは新卒でコンサルティング企業に入社されたそうですね。

はい。大学時代、政治哲学や組織論について学んでいく中で、あらゆる人々が活躍できる世の中をつくりたい、またそのための社会や組織の仕組みを整えたいと思うようになりました。それができる仕事は何かと模索した結果、コンサルティングという仕事にたどり着いたのです

Q.コンサルティングであれば日本にも数多くの企業がありますよね。どうして外資系の企業を選ばれたのでしょうか。

私自身は日本に生まれ日本で育ってきたのですが、「右にならえ」とでも言いますか、小学生くらいの頃から全員同じ時間割で先生の言うことを一方的に聞くような学校生活に居心地の悪さを感じていました。就活においても学生は皆同じようなリクルートスーツに身を包み、髪の色は黒。今でこそ徐々にその風習も緩和されつつありますが、私の時代は皆がそうでした。

就活中にそのような風習にも違和感を持ち、カルチャーとして多様性への許容度が高い外資系企業の門を叩いてみることにしました

実際新卒で入社した外資系企業は、選考中から非常に居心地がよかったです。非日本人の割合も高く、多種多様な文化や価値観が受け入れられている風土を感じることができました。リクルートスーツを着る必要もないですし、髪色もそもそも地毛が茶色や金色の人もいるわけですから、もちろん黒染めする必要もありませんでした。

キャリア形成のカギは「この人と一緒に働きたい」という思い

Q.竹井さんの場合、2回ほど転職をされていますよね。これからのキャリアを描いていくうえで、どういった点を大切にして企業選びをされていたのですか?

「人」を常に重要視してきました。ここでいう「人」とは、一緒に働く人のことです。

新卒で人事組織コンサルタントとして4年弱働き、その仕事の楽しさも感じていましたが大手自動車メーカーへ。誘ってくださった方がいたのですが、この方と一緒に働きたいという思いが強かったです。そこからコンサル業界へ戻るという決断をしたのにも、ある方の存在があります。

新卒のコンサルティング企業時代、共に働き非常に信頼していた上司でした。「新しいことをやるから来ないか」と声をかけてくれたのです。その方とまた新しいことができることに胸が高鳴りました。そのようにして組織コンサルティングを専門とする現在の企業に入社することを決めました。

どちらの転職も、決め手は「人」でした。「この人と一緒に働きたい」という思いがキャリアを形成してきたと思っています。

Q.ちなみにこの「人」の部分、竹井さんが大事にされてきた「人」とは特に誰でしょうか?

経営陣・人事・現場、一口に「人」と言っても企業の中にはさまざまなポジションがありますよね。その中でも私は現場で、「実際に一緒に働く人」を重要視してきました。仕事は人生の時間の多くの部分を占めるものなので、どんな人とその時間を過ごすかは自分という人間の形成に強い影響があります

実は今の会社に誘ってくれた方は、私が新卒のコンサルティング企業への入社を決断する決め手となった方でもあるのですが、まだ大学4年生の時に面談をした際の会話を今でも覚えています。

その方とチームメンバーとのかかわり方についてのお話で、メンバーの一人であるワーキングマザーと接するときに気をつけていることがあると。ワーキングマザーだからといって、仕事をその方の判断で加減することはしない。こういう仕事があって、それをやってみるかやらないかは自分で判断してもらうようにしているとのことでした。

機会は誰に対しても公平であり、それを選ぶのは自分自身なのだということを学んだと同時に、そういった考え方が非常に新鮮で刺激的でした。こういう人と働けたらどんなにいいだろうかと感じ、その会社への入社を即決しました。

人が変われば仕事も変わる。居心地の良い場所でやりやすい仕事をしよう

Q.この「人」という視点は、学生が企業を選ぶ際にも大事にしてほしいと考えられていますか?

そうですね。私は、毎日その人と顔を合わせても良いか、むしろその人に会えるからがんばれるくらいの感情を持てる人と一緒に働くべきだと思っています

面接中に自分の感覚を研ぎ澄ませて、心地の良い刺激や自分を成長させてくれる学びを与えてくれる人のいる企業を選ぶこと。就活においてこれはかなり重要なのではと思っています。

Q.「人を基準にするのはその人が辞めたときに働くモチベーションがなくなるから危険」と考える人もいると思います。その点はどうお考えですか?

状況にもよりますが、私は、その会社で一緒に働きたい人がもしいなくなったなら、辞めてもかまわないと思います。

私は仕事を「生き物」だととらえています。同じ仕事でもAさんがやるかBさんがやるかでまったく別の仕事になると思います。ひとつの課題を解決するためのアプローチもそうですし、毎日のミーティングの進め方や意思疎通をするうえでの言葉選びですら人によって違うはずです。

そうなったときに、同じ事業は続いていくとしても、人が変わればそれはまったく別の仕事をやるに近い。だからこそ、社会には同じ事業をおこなう複数の会社が存在しているのではないでしょうか。自分は同じ会社で働いていながら転職したようなものだと思うので、むしろそのほうが自分のパフォーマンスが100%発揮できない恐れがありリスキーだと思います。

Q.竹井さんのように「自分の基準をもって企業選びをする」ために、就活生にできることはありますか?

そうですね、私の場合なら「一緒に働く人」を基準にしていたので、選考中に「実際に一緒に働く人に会わせてほしい」と自分から企業の人事に依頼していました。企業によってはオフィシャルな選考プロセス内で現場社員や上司との面談を設けているところもありますが、ない場合は直接交渉すると、快く受け入れてくれる場合が多いです。

就活は、自分の人生、長いキャリアを決める大事な瞬間です。自分の意思決定には自分で責任を持つものであり、誰かのせいにできるものではありません。入社前に確認したいことが残っているのに、「そういう採用のプロセスがなかったからわからなかった」では済まされない、この意思決定とはそれくらい大事なものだと思います。自分の目や感覚、自分の納得する基準で判断をしてほしいです。

就活は人生にかかわる重大な岐路。だからこそ自発的に動くべし!

Q.竹井さんから見て、キャリア選択において「これは責任を持てていないな」という選択とはどのようなものでしょうか。

企業の人事から用意されている選考のプロセスは、あくまで人事・企業側が効率よく採用活動をおこなうために組まれているものなので、それがイコール学生にとって最適なプロセスかといわれると実はそうでもありません。

足りない情報や会いたい人、確認したいことがあるのにもかかわらず「プロセスにないから」という理由だけでその足りない部分を自分から補うための行動を起こさないのは、責任が持てていないなと思います

Q.少しでも不安や心配事があるのならば、動いた方がいいということですね。

そうですね。言われていないことを自分から提案していくことは難しいことです。変に目立ってしまうのではないか、そして落とされてしまうのではないかと心配になるかもしれません。

でも、先に言った通りこの決断は自分の人生にかかわる重大な決断。不安ごとを解消しておきたいと考えるのは自然な思考回路ですから、採用プロセスにとらわれずに柔軟に行動してみること、自分の目や感覚で確かめることはぜひ大事にしてください。不安ごとを解消しておくという自発的な行動が、自分自身で責任を持った選択をすることにつながります。

これは働いてからも同じことがいえますね。「与えられなかったから」「仕事を振られなかったから」で昇進できなかったとしても、それはあなたが責任を持てていなかっただけです。動けるチャンスはいくらでもあるわけですから。

あらゆる人が活躍できる個性ある日本社会の創出に貢献することが自分にとっての充実したキャリア

Q.竹井さんにとって今後目指すキャリアの姿、充実したキャリアとはどんなものか教えてください。

私自身のミッションは、あらゆる「違い」がある世の中において、その「違い」を超えそれを「個性」として輝かせることができる社会をつくっていくことです。

「違い」を批判し合うのではなく、根底で共通する思いを見出し、有機的なつながりを持たせる。そこからあらゆる「個性」が輝く世の中をつくっていきたいと思い、すべての活動をしています

特につながるキャンパスは、「世代や距離の垣根をなくし、ひとりひとりの共感や熱意から次の一歩が踏み出せる社会へ」をビジョンとして掲げています。このビジョンは、私個人の価値観とも通じているのです。今後、このビジョンで描かれているような社会に少しでも貢献できることが、私の充実したキャリアだと言えるかもしれません。

Q.ありがとうございます。最後に就活生へ向けてメッセージをお願いしたいです。

今はSNSなどで多くの情報が目に入るので、情報の正誤を見極めることが難しいと思います。その中で何を信じてどう行動するのかは自分次第です。

自分の行動を決めるときに、インターネットに載っている文字情報だけでは決めないでほしいと思います。実際にその会社に行ってみる、人と話してみる、感じてみるなど、実践することや体験することを大切にしてほしいですね。感覚を研ぎ澄ませて、自分の歩むべきキャリアを決断してください。

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