キャリア講義

変化に対応し能動的に動ける人材が求められる|変わることを楽しみながら成長していこう

東1

東 正志 さん(キャリア・ブレスユー 代表取締役)

Masashi Azuma●自営業を経て不動産仲介会社や住宅販売会社、金融業、人材会社などさまざまな業種を経験。雇用促進に寄与するため、有志と共に2006年にNPO法人キャリア・ファシリテーター協会を設立、同年にキャリア・ブレスユーも設立して代表取締役に就任

企業詳細:コーポレートサイト

Q.現在はキャリア・ブレスユーの代表取締役を務めておられますが、これまでの仕事歴について教えてください。

家業の電気店を継ぎ長く自営業を営んでいたので、人材業界に身を置いていながらも、実は新卒時の就活の経験はないのです。10年弱商売人として働いたのち、町の電気店という業態に限界を感じ、サラリーマンになることを決意したのは30歳を過ぎてからでした。

資格取得など準備を進め、早い段階で宅地建物取引士の資格を取得。それを活かして何とか不動産デベロッパーに就職できました。

商売人がサラリーマンに転身するのは何もかもが勝手が違いましたね。「商売人の感覚での言葉使いやビジネスマナーではダメでしょ」と注意されることも。しかし逆に顧客との距離感の縮め方は他のサラリーマン営業よりは得意でした。

そこで営業成績を上げていたことがきっかけで転職エージェントから声がかかり、住宅フランチャイズ本部にスーパーバイザーとして入職しました。そこで経験や実績を積み、さらに転職。金融業などさまざまな業種を経験する中で、起業するまでに仕事やビジネスの仕組みについて実に多くのことを学びました。

Q.そんなご経歴の中で、人材系の仕事を手掛けるようになったのはなぜでしょうか?

東1

人材業界のことは、自分自身が転職エージェントから声をかけてもらったことで知りました。

正直、人材業界を知った当初は、ハローワークなどもあるのに人材を紹介したり派遣したりすることがビジネスになるのが不思議でしたね。しかしよく考えてみると、その頃から求人雑誌などによる求人ビジネスはすでにありました。

電気屋さんのように物を仕入れたり売ったりするビジネスから脱却するために始めた不動産仲介業も、売主買主の双方に満足してもらうような情報提供によりコンサルティングをするビジネスです。人材業界に似通うそこでの仕事は自分には向いていたと思います。

加えて人材業界は自分自身もお世話になった業界です。その後務めた会社には職業紹介を使って採用した人や人材派遣会社からの派遣スタッフに優秀な人が多く、企業にとってのメリットも大きいことがわかった。これは希望が持てるビジネスだと感じましたね。加えて数多くの業界や職種を経験して培った人脈や幅広い人間関係があることは自分の強みであり、それを活かせると思えたのです

企業選び・仕事選びのコツは相性の見極め

Q.さまざまな業界や仕事を経験された東さんが考える企業選び、仕事選びのコツとは何でしょう?

業界ごとの景気動向には必ず浮き沈みがあり、しかもその変化のスピードは年々速くなっています。盛り上がっている業界があっという間にいわゆる「オワコン」になったり、逆に新しいビジネスが成長することも珍しくないのが現代です。

だから「自分はこの仕事がしたい」とこだわって希望の職種につけたとしても、何年後かには念願かなって就いたその仕事がどんな状態になっているかわかりません。それならば、「やりたい」だけでなくそういった変化に対応できそうな企業や自分と相性が良い仕事、働きやすい職場を探すのも一つの考え方だと思います。

相性が良く働きやすい職場でなら、仕事にも励めるはずですし人間関係も豊かになるでしょう。きちんと仕事をしていれば信用を得て人脈が広がり、それがその後のキャリア形成の大きな武器となるはずです。たとえ、会社自体の業態が変化しても身につけたスキルは役に立ちますから。

Q.会社の印象は良いのに、事業内容にあまり興味が持てない。逆に会社の印象は良くないけれど仕事には興味がある。そんなケースもあると思いますが、どのような選択をすべきなのでしょうか。

会社の雰囲気か仕事の中身か、そのどちらかが良いのなら、ネガティブ要素を許容できるところに飛び込んでみても良いでしょう。入社してからその会社の印象が変わることはありますし、その逆も然り。仕事も同様で、取り組むうちに関心が増していくことだってよくありますから。

特に今の世の中は転職のハードルが低いもの。「アカンかったら辞めたらいい」という発想を頭に置いておいても良いと思います。自分自身が成長していれば、その時に在籍している会社でも活躍できるし、他社でも活躍できるはずです。

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多くの人の意見に耳を傾け失敗を恐れない社会人になれ

Q.東さんご自身は、その都度、職場で実績と成果を上げてそれを次の転職に活かしてキャリアを重ねてきたようですが、仕事での実績作りや成績向上のコツはありますか。

社内外を問わず多くの人の意見を聞くこと、そしてアドバイスに耳を傾けることですね。

あとは失敗を怖がらないこと。失敗を経験してきた人を評価してくれる企業は少なくありません。失敗を恐れて何もしないより、むしろ自分を信じてチャレンジをした方が、たとえそれがうまくいかなくても次のチャンスへとつながります

これは、言葉を変えると、嬉しいことだけでなく嫌なことも全部経験する方が良いということ。なぜなら経験値が上がるからです。RPGで考えるとわかりやすいのですが、RPGの戦い方と同じで、経験値が上がるほど主人公であるあなたは強くなれるのです。そう考えれば嫌なことにも積極的に向き合えるのではないでしょうか。

Q.では、これから市場で求められる人材になるために必要な力についても教えてください。

目的遂行能力でしょうか。言葉を変えると能動的に動ける人。何かの役目を与えられた場合に、それが何のための役目なのか理解して動ける人ですね。

言われたことをやるだけでなく、自分で考えてやる能力を重視するのは、それが変化に対応できる力につながるからです

Q.この「能動的に動くこと」ですが、もう少し具体的にお伺いしたいです。

会社から仕事を与えられる場合、やり方を教えてくれるはずですよね。教えられたノウハウと手順の通りにやればできるようになっています。ただし、それだけで済ますのではなく、どうしてこの方法でやるのか、どうしてこの手順になっているのか、自分で考えて検証してみることです。

たとえば、台形の面積の覚え方について。方程式は「(上底+下底)× 高さ ÷ 2」ですが、どうしてこの方程式が成り立つのか理解しているでしょうか。方程式を覚えていれば台形の面積を導きだすことはできますが、知らなくても理屈がわかっていたら解くことができるのです。逆に方程式をあてはめることでしか解けないのであれば、それは小学校で覚えたことですら役に立っていないといえてしまいます。与えられた手順だけを覚えたことによる弊害です。

仕事でそのようなことになっては困りますから、同様に与えられた手順だけを覚えるのではなく「何故そうなのか」を推考し、理屈を理解しておくべきです。そして、それを繰り返すことで経験値もスキルも上がっていくのです。

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Q.たしかに能動的に行動できる人は成長も速そうですし、頼りがいがありそうです。しかし、全体から見ればそれができる人はそう多くないと思います。

確かに残念ながら多くはいませんね。ただし、少ないながらもそういう人材の就職後の報告を聞くと、彼らは間違いなく成長しています

実際に、当社が企画した企業取材のインタビュー役を積極的に買って出たり、イベントの立ち上げに参加したりするような前向きなエネルギーを持った学生は、その後社会に出てからも活躍しているケースが多いですね。

Q.ありがとうございます。最後に就活生へのメッセージを頂けますか。

ファーストキャリアは大切にしてください。いわゆるファーストキャリアが自営業だった私は、その後のキャリア形成に苦労しました。ファーストキャリアでは得られていなかったことがたくさんあり、次につながりにくいものだったからです。「手に職をつける」といいますが、そんなものはもうありません。それよりも、どこでも通用する力(エンプロイアビリティ)が大切です。

私のファーストキャリアを次の仕事で評価してもらうことは簡単ではありませんでした。しかし、電気店での仕事自体はその後の仕事にも役立ちました。たとえば不動産業界の営業に電気店の販売手法の発想を取り込むことで成績を上げ、それが評価につながりました。ある業界の常識は、他の業界では非常識になることがままあります。逆にいえば常識で固まった業界に、別の業界から非常識を持ち込むと意外な成果を生むこともあるのです。

どんな業界、業種の仕事でも得るものはあるはずです。せっかく入った会社や、見つけた仕事は最低1年間はやってみてください。その間に仕事の仕組みやポイントを理解する。そうすればファーストキャリアが、次のキャリアやその次に必ず活きてきますよ。

東5

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