キャリア講義

偏差値が存在しない就活は自分起点の発想が重要|夢や目標をかなえる手段を模索し行動せよ

腰塚1

目次

  1. 腰塚 志乃 さん(NPO法人ETIC. DRIVEキャリア責任者)
  2. なりたい自分のビジョン×好きなこと得意なこと=志望すべき仕事
  3. 就活と受験は違う! 自分起点で物事に取り組むことが大切になってくる

腰塚 志乃 さん(NPO法人ETIC. DRIVEキャリア責任者)

Shino Koshizuka●学生時代に長期インターンを経験し就きたい仕事を見極める。2005年に新卒で大手総合電機メーカーに就職しIT営業を担当。鉄道会社の大規模システム案件を担当するなど仕事に手応えを感じるも、会社の看板やチームの力に頼らない個人の仕事力を磨くためキャリア転換を決断。2010年にソーシャルベンチャー支援をおこなうNPO法人のETIC.(エティック)に転職

企業詳細:コーポレートサイト採用ページ

Q.腰塚さんご自身の就活はどのように進められていたのでしょうか?

私の仕事選びや就職活動に大きく影響を与えたのは、就活本格化前、大学2、3年の頃に参加した長期インターンシップでした。

雑貨類を製造し、有名な雑貨小売店やチェーン店にそれらをOEM供給するベンチャー企業にインターン生としてジョイン。6カ月以上にわたって商品企画と営業を任せてもらいました。

その企業を選んだのは、企画という職種におもしろそうなイメージを持っていたからです。「好きなように商品を企画してみなよ」と言われ、はりきって商品企画を考えました。

自分の考えた商品が店頭で販売されるのにワクワクし、最初はイメージ通りに非常に楽しく働けていました。

Q.働く中で、何か心境の変化があったようですね。

はい。自分には向かないと感じ始めるようになりました。というのも自分が企画して販売に漕ぎ着けたとしても、商品がなぜ売れたかがわからない中で、さらに売れ行きを良くするためには何を改善したら良いのか考えていくのがとても難しかったからです

販売するのは納入先の小売店で、もちろん販売数はわかるもののその理由まで知ることはできません。

たとえば良く売れた場合、商品力が強かったのか、店頭での陳列レイアウトが良かったのか、それとも販促が優れていたのかがわからない。

そんなことを考える中で、何を手掛かりに頑張ったらいいのかを見つけられず、この仕事は自分には向いていないと感じるようになりました。

それを見ていた上司が「営業をやってみたら?」と提案してくれたのです。小売店以外に販路を拡大するために、チェーン展開している飲食店や宿泊施設などのオリジナル備品の企画・製造について、新規営業をしてみることにしました。

そこから、バイヤーと日々接しながら、彼らの悩みや店舗の課題についてヒアリングし、課題解決のために顧客と一緒に頭をひねるのが私の仕事になりました。

この仕事では直接会話をすることでバイヤーのリアルな悩みがわかり、それにフィットすれば商品が売れる。手応えや売れた理由が自分ではっきりとわかり、かつクライアントの悩みを自分の提案で解決できるので、先の商品企画と違って私にとってはとても楽しい仕事でした。

Q.そこから、自分が就きたい仕事が見えてきたのですね。

そうです。この頃から「私がやりたい仕事はこれだ」とはっきりと自覚するようになってきました。それからは、インターンと並行してこういった職種についていろいろと調べ、OB・OG訪問などにも取り組んでいきました。

そして顧客の悩みをなんでもかなえてあげたいという自分の望みに沿えるのは、営業が商品を自由に企画・提案できるIT営業だと思うようになったのです

そこで顧客のニーズに合わせて開発できる業務システムを提案できる大手総合電機メーカーに的を絞ったうえで、できるだけ大きな権限を与えてくれる会社を志望。結果的に望んだ企業に就職しIT営業の担当になることができました。

望む仕事の環境を得られ、希望がかなった自分の就活だったと思います。

腰塚4

Q.しかし、大成功だったという就活の結果入社した大手総合電機メーカーのキャリアを捨ててまで転身したのはなぜですか。

大きな案件にもかかわれて非常に大きなやりがいもありました。満足できる仕事だったのですが、プロジェクトはチームで取り組むので、自分1人の力がどれほどのものかを計りづらかったのです。

徐々に独力でも道を切り拓けるくらいの力を付けたいと思うようになり始めました。

突き詰めると私はプロジェクトの一員ではあっても、プロダクトを作るのはエンジニア、サービスを提供できるのは会社組織の機能や看板があってこそ。

チームの一員として貢献している自負はありましたが、自らのクリエイティビティーで貢献できている感覚は薄かったのが正直なところでした。私はもっと自分に力を付けて、目の前の人に貢献する「ドラえもん営業」になりたかったのです。

Q.「ドラえもん」営業ですか?

もともと仕事を始める時点で目指したのが「ドラえもん営業」でした。顧客の悩みに対し、4次元ポケットから解決策をパパッと取り出すようになんでも課題解決してあげる、そんな営業です。

最初の会社に数年間勤務し、このまま大企業の下駄をはかせてもらって仕事を続けていても「ドラえもん営業」になるための力は得られないと思い始めました

ETIC.は私が長期インターンに行くきっかけとなった団体なのですが、その頃にたまたまETIC.のサイトを見ていたところ、新たな社会起業家支援事業の立ち上げメンバーを募集していると知り、転職を決断しました。

腰塚3

Q.ETIC.の新規事業のどこに惹かれたのでしょう。

仕事の内容は、社会課題の解決に取り組むいわゆるソーシャルビジネスのベンチャー支援でした。社会課題の解決を目指し、強い意志を持って起業する人たちと向き合い、自分の力で起業家の夢の実現を手伝うのが仕事です。

大企業という看板無しに、裸一貫で企業家に向き合って彼らを導いていく。使えるのは自分がこれまで培ってきたノウハウだけです。これぞ自分が望む「ドラえもん営業」に近づける仕事だと思えました。

今は自分の専門性が積み重なってきている感じがして、とてもやりがいを感じています。

なりたい自分のビジョン×好きなこと得意なこと=志望すべき仕事

Q.これまでの自身の経験や、これまでかかわってきた人たちのキャリアを見て、就活に必要な考え方とは何だと思いますか。

現在はキャリア支援の仕事をしていますが、支援する相手に必ずたずねるのが、相手が考える「なりたい自分」の内容やその理想像への思い、ビジョンです。別に立派な志である必要はなく、「こういう風になりたいな」くらいでもかまいません。

次に聞くのが、自分が楽しいと思うことや得意なこと。具体的にはどんな風に人の役に立ちたいか、自分のどんな部分を褒められ、「ありがとう」と言ってもらいたいかです。

その2つが自分のなかでしっかり棚卸しできていることが重要です。そういった願いやビジョンと、楽しい・得意の掛け合わせで見えてくる仕事が自分が求めるものだし、それらのバランスが良い仕事を選ぶのが幸福度の高さにつながります

Q.とはいえ、自分自身のことであっても、やりたいことや目標を自覚するのは簡単ではない気もします。どうすれば見つけられるでしょうか。

腰塚6

自分がリトマス試験紙だと思ってとにかく動いてみることですね。動いた結果、試験紙がどう反応するかを見るのです。

動けば何が得意か、何を楽しいと感じるかがわかります。それを繰り返せば、AよりBが良いけれど、でもCに比べたらAが好きだな、といった順位付けも可能になります

頭のなかで考えていても結論は出ませんから、まずは動いてみること。その結果、自分にフィットするものが必ず見つかるはずで、志望すべき仕事や会社も明確になります。

そこから就活をスタートすれば、のちのち苦しい思いをしなくて済みます。志望動機は後付けで書いても良いのです。好きなもの・得意なことを自分で選ぶからこそ責任を持って仕事に臨めますし、自分の意志を持って成功へ向けて歩んでいけます。

Q.たしかにそうですね。そうすれば企業選びも就活もどんどん進められる気がします。

今はこうして「就活」についての話をしていますが、このやりたいことや目標探しは就活に限らず社会人として生きるうえで必要なことです。

というのも、最近は大学卒業後の選択肢が就活・就職一択だけでなく、起業・フリーランスなどと、どんどん広がってきているからです。

就職というのはあくまで手段。自分の生きたい人生、やりたいことや目標に対してそれをかなえられる手段を選ぶのが本質的なことだと思います。そして就職するとしても、大企業か中小企業か、どれを選ぶかというのも手段の1つを選ぶのと変わりありません。

私も「ドラえもん営業になる」という夢をかなえるため、その手段としてETIC.への転職を選びました。やりたいことや目標があれば、何かにとらわれずに就活を、さらには自分の人生を決められます。

だからこそ、好きや得意探しに向けて積極的に動いてほしいのです。

腰塚5

就活と受験は違う! 自分起点で物事に取り組むことが大切になってくる

Q.ではこうして人材業界に身を置く中で、これからどんな人材が求められていくと考えていますか?

「意志を持って働ける人」ですね。

たとえば大企業の場合は多くの仕事があり、異動によってどんな仕事に変わるかわかりません。そのときに任された仕事に自分がかかわる意味を考え、自分の意志で進むべき道を見出せる人を企業は求めています

そういう意志を持って仕事に取り組める人材は、どの仕事においても発揮するエネルギー量が大きいからです。

そしてそういう人材はそう多くはいません。だからこそなおさらそのような人材が求められているというわけです。

Q.わかりますが、そう動くのは少し難しい気がします。少しでもそんな人材に近づくためにはどうすればいいのでしょうか。

これはこれまで受けてきた教育の影響、あるいはそもそも日本人は「そろうこと」、つまり協調性が評価されるからということもあるのでしょう。

指示されたことを正確にこなせるとか、求められる答えを出して高い点数を取るのは得意でも、自分の意志を仕事に反映させるのは苦手な人が多いように感じます。

それは就活や仕事選びの時点ですでに自分の意志を明確にできない人が多いのですから、正直無理もないと思います。

就活を受験のような感覚で捉え、「したい仕事はこれだけど、就職偏差値的には自分のレベルがここだから、これくらいの会社を志望しよう」と周りの評価を気にしながら発想してしまうと、就職してから「自分の意志」を求められてもなかなかできないと思います

周りの評価にそろえて選んだ企業の中で自主性を発揮できるのかというと、おそらく難しいでしょう。

だから仕事選びの段階から、自主的に好きなものや得意なことを選ぶ必要があるのです。自分の好きなものを仕事とするなら、自分の意志で責任をもって取り組めるはずですから。

腰塚2

記事についてのお問い合わせ