キャリア講義
普遍的に変わらないものを意思決定の指針に|1%の期待に向かいポジティブに就活を進めよう
- 7424 views
矢野雅さん(プレシャスパートナーズ・常務取締役)
Masaya Yano●大学時代は法学部で学ぶ。弁護士の道に進むか悩んでいた頃に学生時代の先輩である現社長に声をかけられ、共にプレシャスパートナーズを立ち上げをおこなう。経理や総務などの管理部門の責任者を経て、新規事業である人材紹介の立ち上げをおこなう。現在は主に新規事業の立ち上げに携わっている。
Q.まずは矢野さんのご経歴を簡単に教えていただけますか?
大学時代は法学部に在籍しており、弁護士を目指していました。卒業後も弁護士を目指し、4年ほど勉強をしながら法律事務所でアルバイトをしていました。その後、27歳のときに弁護士の夢を諦め、就職を検討し始めたときに髙﨑(誠司氏・プレシャスパートナーズ代表取締役社長CEO)に声をかけられ、プレシャスパートナーズを立ち上げました。
当初は経理や総務などの管理部門に携わっていましたが、設立から4年後の2012年に新規に人材紹介事業を始めることになり、立ち上げをおこないました。現在も、新規事業の立ち上げにメインで携わっています。
Q.10年弱学んできた法律の道から、突然のシフトチェンジをされたのですね。その背景にはどのような考えなどがあったのでしょうか。
27歳を迎え、そろそろ身の振り方を考えなければならないと思い始め、このまま弁護士への道を進み続けるか考え出した頃に、学生時代からの知人である高崎から声をかけられました。
「これはチャンスだ、ここで一旗揚げてこれまでの人生を変えたい」、「もうここしかない」などさまざまな感情が自分の中を巡りました。これまでのキャリアの中で人を活かしたビジネスをしたいと言っていたこと、そして何より自分がこの人と働きたい、この人を幸せにしたいと感じたことから、今後の社会人としての人生を彼と歩むことを決断しました。
また、学生時代に多くの人とかかわってきた中で、学歴がなくても優秀な学生、やる気や意欲に満ち溢れた学生をよく見てきました。学歴でフィルターがかけられることもあるこの世の中で、そういった学生を支援したいと思っていたのも決め手のひとつですね。
企業選びでまず持つべき視点は「夢に近づけるかどうか」
Q.学生が就活において企業選びをする際、どのような視点で企業選びをすることが大切だと考えていますか?
自分の夢に近づける会社を選ぶことです。たとえば、「20代のうちに年収1,000万を稼ぎたい!」という夢を抱く学生が、大手企業に入社してもその夢はかなわない可能性が高いでしょう。大手企業はキャリアパスが決まっていることが多く、若くからすぐに昇進をすることは少し難しいからです。それなら、たとえば実力主義な企業や中小・ベンチャー企業を選んだほうが夢には近いのではないでしょうか。さらに、夢に近づけると感じる企業であれば、働くうえでのモチベーションも高まりますよね。
Q.たしかにそう考えると企業を見やすくなりますね。とはいえ、学生の中には将来の夢がない人もいると思います。そのような学生が企業選びの判断軸にするべきものはありますか?
明確な夢がない学生はまず、業界を絞ろうとしないほうが良いでしょう。「○○がしたい」という夢がある学生こそ業界を絞りやすいものです。無理に業界を絞らず、自分が「良いな」と思える企業に目を向けてみましょう。
たとえば「仕事でかなえたい像はなく、それよりプライベートを優先したい」という学生なら、それがかなう企業を選ぶべきですよね。「残業が少ない」「仕事とプライベートのメリハリがはっきりしている」といった点に「良いな」と感じられると思います。このような選び方でも私はまったくかまわないと思っています。それより、こういった学生が向上心あふれる熱い人たちが集まる企業に就職してしまうと、うまく企業や社会人生活に馴染めない未来が想像できますよね。
また現状将来の夢がない学生も同じように、とりあえずでも自分が「良いな」と思える企業を選ぶと良いでしょう。正直、まだ働いていない学生が将来の夢を持つのはすごく難しいことだと思います。働いて初めて夢が持てることも少なくないので、まずは働きやすい環境に身を置きましょう。働くことを通して夢が見えてきたら、そこから身の振り方を考えても良いのではないでしょうか。
Q.主に、夢がまだない学生に多くありますが、最近は「人」を企業選びの軸にしている人も多くいますよね。
そうですね、でも「人」を軸にしてしまうのは少し危険かなとも思います。
たとえば説明会で出会った人事担当者に惹かれたという学生を目にしますが、実際入社後にその人事担当者と働ける可能性は低いですよね。入社したらその人事が辞めてしまっていたという話も耳にします。また共に働く部署の先輩や上司に惹かれたとしても、その人が退職してしまったときにモチベーションを保てないかもしれません。
こういったときは、普遍的に変わらないもので意思決定するべきでしょう。たとえば、特に中小・ベンチャー企業の場合、人は人でも「社長」であれば変わることはまずありません。同じように、ひとつの会社が存続していく以上その企業理念や方向性、ビジョンなどは変わらないでしょう。こういった「変わらないもの」に共感ができていれば、たとえ社内環境や配置が大きく変わってもモチベーション高く仕事に励むことができるのではないでしょうか。
私もそうですが、社長に惹かれ社長が掲げる企業理念に惹かれたからこそ、この人についていくことを決意しました。今後どのような事業が始まるにしろ、社長の信念と方針を理解し共感しているからこそ、この企業で取り組む仕事へのモチベーションがなくなることはありません。
就活は人生に一度きり! 1%の期待に向かってつらいことも乗り越えてほしい
Q.現在の就活市場における課題は何だと考えていますか?
入社後のミスマッチ、ではないでしょうか。就活時に見えていた企業像と入社後の企業像とにギャップを感じてしまい、早期離職を選んでしまう人が増えてきたと感じています。
この課題を解消するためには、就活時から企業に対し「入社後のビジョンがしっかり見えるか?」という視点を持つことが大切だと思っています。ここでいうビジョンとは、理想像などではなく「自分が実際に働いている姿」ですね。入社したら実際にどのような仕事をするのか、どんな環境でどんなタイムスケジュールで働くのかなどです。
ですから、説明会など企業からの情報提供の場において、学生が興味を持ちそうな事業内容などのキラキラした側面だけを語る企業よりも、その裏にある泥臭い部分まで見せてくれる企業を選んだ方が良いでしょう。そうしてやっと入社後のビジョンが見え、ギャップの解消に近づくはずです。
Q.ギャップをなくすために、仕事におけるリアルまで知っておく必要があるということですね。それを踏まえて学生が就活で絶対にやっておくべきことは何でしょうか。
まずは大前提として充実した自己分析は絶対ですね。自分の興味関心のほか、企業に売り込めるスキルや長所、就活市場における自分の立ち位置などまで理解しておけると良いでしょう。自分のことを理解していなければ、先ほどお話しした自分の夢や「良いな」と思えるポイントもぼやけてしまいます。
そのうえで、自己分析を通し自己を知ることだけでなく企業を知ることも積極的におこなうべきです。会社説明会などへの参加はもちろんですが、OB・OG訪問で生の社会人の声を聞いたり、弊社でおこなっているような社長・経営者と触れ合えるイベントなどにもぜひ参加してみてほしいです。
就活は誰しもやったことがないものであり、知らないこと・わからないことが多いものです。だからこそ、自分の肌で感じ、耳で聞いたものを判断材料としていく必要があります。自分だけで就活を進めようとはせず、積極的に周囲の意見や情報を聞くようにしてみてください。
Q.ありがとうございます。最後に、就活生へのメッセージをお願いいたします。
就活のゴールは内定・入社ではありません。むしろ私は入社がやっとスタートだと思っています。そのスタートを気持ちよくきるためにも、楽しく就活をしてほしいですね。
なんといっても就活は一生に一度きりのものです。人生において、一度しか体験できないものってなかなかありません。「一生に一度きり」そういうものって誰でもその機会をめちゃくちゃ楽しむと思います。そう考えると就活も楽しめますし、楽しくやらないともったいないですよね。
就活を進めていると、つらいことや苦しいことの割合の方が大きい人が多いと思います。でも就活は苦しいことばかりではなく、楽しいと感じられることも必ずあります。99%がつらいことであったとしても、残りの1%は良いことがある。その数少ない1%の期待に向かいポジティブに活動していってほしいです。
そしてその姿勢は絶対に就職後にも活かせます。社会人生活は就活以上につらいことが多いですから(笑)。1%の期待に向かって生きる精神が持てれば、その後に続く社会人生活もきっと良いものになりますよ。