キャリア講義

天職とは仕事への全力投球で見つかるもの|生涯かけてチャレンジし続けることが理想のキャリア

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河野 万里子 さん(色彩舎・代表取締役)

Mariko Kono●京都女子大学文学部卒業後、大手商社や旅行代理店などを経て2002年12月カラーコンサルタントとして色彩舎を創業。2007年7月代表取締役に就任、2009年 現一般社団法人カラータイプ協会を設立。現在はカラータイプ®理論をさらにカラーコーディネート理論、パーソナルカラー理論との融合へと発展させている

Q.河野さん自身はどのような就活をされていたのでしょうか。

就活は真剣にやっていなかったですね。というのも私が女子大出身で、当時の女子大は現在に比べて就活感度が弱かったのです。そのため就活に対してエネルギッシュではなく、何をしていいかがあまりわかっていませんでした。

とりあえず就活をしなければと思っても社会にどんな企業があるかを知らないので、自分が知っている会社、つまり名の知れた有名どころにしかエントリーできない。そもそも自己分析もきちんとできていなかったので、どういう会社に入ったらいいかもわからない。そして企業を知らないので企業研究のしようもない。そんな状態でした。

Q.そこから、現在までどのような道を歩まれてきたのでしょうか。

そんな状態でも、私も働くうえで求める条件というのをいくつか考えていました。

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いわゆる就活の軸ですね。仕事に対しての意欲はもっていましたし、どんな場所でも何をしていても自分らしくいたいというのが大前提にありました

ファーストキャリアはとある出版社でスタートさせ、その後は商社や旅行代理店への転職も経験。

転職をした理由の1つとしては、自分が完全に満足いくような働き方ができなかったことが挙げられます。たとえば出版社では、仕事内容や環境は良かったものの体力がついていかなかった。商社は体力面では問題なかったもののファイリングなどの仕事に物足りなさを感じてしまった。何かが自分にとって良くても、別の何かが合わないと感じてしまったのです。

Q.そんな河野さんにとって、キャリアを形成するためのターニングポイントはどこだったのでしょうか。

そんな中、主人の仕事の研修に付いていく形でドイツに行くことになったのですが、それが自分にとってのターニングポイントだったように思います。

行ってみて、仕事への考え方や流れがまったく違うことに驚かされました。またドイツの街並みの綺麗さにも影響を受けましたね。花や外壁など、街並みを美しくするための工夫がなされており、その中で色彩の重要性にも気づきました。これが私が今生業としている色彩との出会いでしたね。

当時は、今後も何か生涯通じて仕事はしたいけれども、何かが良くても何かがダメというように満足いく仕事ができないと悩んでいました。企業に属して満足いく働き方ができないのなら、自分でやればいい。またドイツに住むという経験を通じて色彩の魅力にも気づき、かつ色彩なら年齢や体力などの制限なしに一生かかわれる。こうして生涯通じてできる仕事を見つけた私はカラーコンサルタント会社の立ち上げを決めたのです。

天職は探すものではなく一生懸命働くことで見えてくるもの

Q.起業されてみて、今の働き心地や以前と比べて変わったことなどはありますか?

今考えても、私は非常に起業向きの人間だと思いますね。正直起業は向き不向きがあると思います。企業という組織に属することで安定は得られますが、誰かの指示や何らかのミッションのもと動かなければならない、つまり自分で物事を決められないのがつまらないと感じていました。

その点、起業すれば、意思決定するのは常に自分。それが良かったですね。

起業にももちろんリスクや困難があります。でも、私にとって起業で起こる困難とはすべてチャレンジでした。たとえば経営を安定させるのも難しくはありますが、積極的に考え行動しチャレンジしていけばいつかは解決の糸口が見えてくるもの。これからおとずれるであろう困難に対してワクワクすらしましたね。

Q.では今は就活時に考えていた「いきいきと自分らしく働くこと」は叶っているということですね。

そうですね。私にとっては起業こそが就活時の軸をかなえるものだったのだなと今になって思います。

今は終身雇用制度も崩れてきており働き方が多様化していますよね。望む働き方をかなえることも比較的しやすくなってきました。ですから、誰もがキャリアの中で一度は起業について考えなければならない時代になってきていると感じています。その点私は「起業」という、自分の望む働き方や一生かけてやりたい仕事に早い段階で出会えたので、これからのキャリアも人生もチャレンジするのみで楽しみでしかないですね。

Q.では学生が河野さんのように「いきいきと自分らしく働ける」企業選びをするためにしておくべきことはなんでしょうか?

自身の経験なども含めて答えると、ライフプランを思い描いておくことが重要だと思います。これは難しいことではなくて、仕事とプライベート、どちらもにおいて今後起きるであろうことについて考えておくということ

いきあたりばったりでは、にっちもさっちもいかなくなる瞬間が出てくると思います。たとえば結婚・出産・子育て・介護など……。今はこういったことは女性だけでなく男性も考えていかなければならない時代です。

何歳頃でこういうライフイベントが起こる、だからそれに向けてこういうことが実現できる会社に身を置くなどと、ライフプランのことも加味しながら企業選びをしていくべきですね。

Q.たしかに自分のキャリアばかりで人生そのものに目を向けられていない学生は一定居る気がしますね。

そうですよね。ただ、大前提としてこういった「いきいきと働けること」、天職とでもいいましょうか、最初から天職を探そうとする必要もそれほどないのかなとも思っています。

私も転職を2~3回ほどしていますが、天職であろうとなかろうと、所属したどこの企業でも全力で働いていました。置かれたところで一生懸命努力する、これは特に20代のうちは絶対に取り組んでほしいことです

社会人としてまだ駆け出しのうちに頑張って経験値を増やせば、その分できることややれることの量も領域もどんどん広がっていきます。大は小を兼ねるというように、手持ちの「できること」が多いと、のちのちその手持ちから自分のやりたいことを選択して、逆にやる仕事の範囲を絞っていくこともできるのです。

天職探しをするのではなく、仕事に対し全力で取り組めばおのずと自分のやりたいこと・合ったことが見つかってくると思います。

生涯かけてチャレンジをしていく。それが理想のキャリア

Q.今は理想のキャリアを歩んでいる最中だと思いますが、河野さんは今後さらにどのようなキャリアを描いていきたいと考えていますか?

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とにかくチャレンジをするということは心に決めています。今は「海外にカラーマーケティングを広める」ことが私のミッションです。海外にまで規模を広げるのは少しハードルが高く難しいことかもしれませんが、だからこそ果敢にチャレンジしていきたいと思っています。

また現在は大阪の大学の非常勤講師も務めているのですが、大学のマーケティングの講義の中にすべてカラーマーケティングを導入するなど、色彩を学問として正式に取り入れるよう動いていきたいとも考えています。

自分が魅せられた「色彩」を、今度は多くの人に広めていく。そのためにおとずれる困難に果敢にチャレンジしていく。このようにワクワクするような楽しいチャレンジを一生し続けていくことが理想のキャリアですね

Q.ご自身のお仕事やキャリアについて語る河野さんは本当に輝いていて、とても充実したキャリア・人生を過ごしているように見えます。

自分の人生かけてやりたいことがずっと研究できて、そして周りには同じ方向を見ている仲間がいる。そしてそんな仲間とともに自身の研究を世界に広めるチャレンジができる。本当に幸せなことだと思っています。

私にとって今の仕事は、良い意味で働いている感覚がなく、ずっと趣味に没頭しているとも言えるのかもしれません。ライフワークと仕事をくっつけた感覚です。

Q.でしたら、「趣味を仕事にする」ことについてのお考えもお伺いしておきたいです。

趣味や自分が楽しいことを仕事にする、というより、何年も経ってから「仕事」と「趣味や楽しいこと」が一緒になるものだと思います。最初から楽しいものは逆に仕事になりにくいのではないでしょうか。なぜなら仕事には「稼ぐ」ということがつきものだから。「好き」だけですぐに稼ぐのは難しいと思います。

そして、そもそも好きなことは仕事にならないことが一般的だとも思っています。やらなければならないことややるべきことが仕事であって、好きな仕事はそれを経て実現するものだと思います。さまざまな周りの環境や偶然もあって好きなことができているのです。

だから、最初から「好きなことを仕事に」は非常に安易な選択で、簡単なものではないし好きなことほど稼げない。先ほども話した通り、まずは目の前のことに全力で取り組みできることを広げてから、改めて「好きなこと」に目を向けるのでもいいのかなと思いますね。

Q.ありがとうございます。では最後に就活生に向けたメッセージを頂きたいです。

今は就活生がそれはもう多くの会社に闇雲にエントリーをしているという話を耳にしますが、その時間の使い方はとてももったいないなと思っています。

恋愛にあてはめると、好きでもない人にラブレターを送っているのと同じこと。仮にOKされたとしてもお付き合いはしませんよね?闇雲にやるより、もう少し丁寧に就活をやってみましょう。仲間になれそうな人はいるか、自分がいきいき働けそうな環境か。ゆっくり丁寧に吟味したほうが絶対に後悔のない就活になるはずですよ。

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