キャリア講義
何より重要なのは「自分で決めること」|信頼と実績を積み重ねるためにまずはイエスから始めよう
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ワークス・ジャパン 成瀬 仁美 さん
Hitomi Naruse●2010年ワークス・ジャパン入社。新卒採用支援の一環として採用プロモーションや選考管理システムの営業・企画を担当。入社時から営業職に従事し、現在に至る
Q.成瀬さんの学生時代はどのように就活をされていたのですか?
大学1年生からインターンに参加していました。就活のためではなく、周りに優秀な友人が多く、彼らの意識や行動力に刺激を受けて、自分も何かやらなければ、という思いで参加しました。
そのインターンを選んだ理由としては、事業内容よりも社長の人柄や思いへの共感が大きかったです。「働く人を元気にする」というミッションのもと新入社員研修や営業力研修など、社内研修をおこなっている企業でした。当時従業員数3人程度の企業の立ち上げにかかわれたことは非常に良い経験になりましたね。
結果としてこの経験が、自分の就活の軸である「働く人を元気にする」を作ることになりました。
Q.かなり早い段階で就職やキャリアについて考えられていたのですね。では成瀬さんのキャリアに対する考え方についてお伺いしたいです。
私は「経験=成長」であると思っています。人生で体験する経験の中に無駄なことはひとつもありませんから、積極的にさまざまなことを経験するべきです。逆に本だけ読んでいてもそれは成長にはつながらないと思います。
もちろん本を読むことも大切で学びの助けになりますが、成長するためには自分で実際に動くことが大切だと思っています。
Q.それを実際に働くことに置き換えると、人はどのように行動すべきなのでしょうか。
イエスから始めることですね。やるべきことや上司からの指示に対しては常に「イエス」から始めて、まずはやってみるべきです。
とにかく、指示や依頼に対して「やりたい/やりたくない」で反応したり、「自分がやるべきことか」を考えて勝手に優先順位を決めてしまいがちですが、すべての指示や依頼には必ずその背景や目的、期日があります。
そもそも新卒社員にできることはほぼなく、仕事を与えてもらっている立場だと自覚しましょう。そのうえで、もらった指示や依頼をまずきちんと返していくことから始めてほしいなと思いますね。
Q.たしかに、指示を出す上司のほうが経験も豊富ですし、意図やその意味もきちんと考えているはずですよね。
はい。だからこそ、指示ややるべきことに関してはすぐに行動に移しましょう。すぐに行動することでそれが信頼にもつながっていくはずです。
また、上司も部下の力量を理解したうえで指示を出しますから、基本的に振られた仕事はできるものが多いでしょう。出せた結果は信頼につながります。その信頼を積み重ねていくことで、真に自分がやりたいことができるようになっていきます。いくらやりたいことがあっても、結果も信頼もなければそれが回ってくることは難しいですよね。指示に対しイエスで応え続けていくことで、やりたい仕事をやれる環境をつくることにつながるのです。
基準はなんでも・なんとなくでもかまわない! 大切なのは自分事にして考えること
Q.学生が企業選びや業界選びをするうえで見るべき視点などはあるでしょうか。
視点などはさまざまあっていいと思っています。それより大切なのは「自分で決める」ということ。そのために、自分で決められるだけの情報集めをすること。それが就活であると私は考えています。
さまざまな人、さまざまな就活メディアから、「こういう視点が大切」などといった点のアドバイスは得られますよね。でも、誰かに言われたからその視点で企業を見ても、選べないと思います。ですので、自ら「自分はここの会社で働くぞ!」と決められる状態を作るために、さまざまな情報を得てそのうえで自分で考えて決めることが大切だと思っています。
Q.自分で決めることが何よりも大切ということですね。
はい。人から言われたりすすめられたり、あとは人より年収がいい、多くの学生から人気などさまざまな情報があるとは思いますが、結局働くのは自分です。つまりその選択に対し責任を持つのは自分です。
そのうえで、仕事は日々おこなうものですから納得感がなければ継続していくことは難しいのですよね。一日の大半を費やすにあたり「自分で決めたんだ」という納得感がなければ、やりがいも感じられず自ら考えて行動を起こしづらい。能動的に仕事に取り組み、学びや成長を得ていくことが難しいと思います。
自分で自分の目標に向かい走るために、「なぜ私はこの会社にいるのか」をきちんと理解し、自分で決めたという納得感が必要です。
Q.では、企業選びにおいて「なんとなく」という視点はあまり良くはないということでしょうか。
学生は働いたことがないですし、学生のうちは「なんとなく」でもかまわないと思いますよ。ただし、そのうえで必ず振り返りをするべきです。たとえば「人気だったから」という理由である企業の説明会に行ったとします。そこでどう感じたかを必ず振り返りましょう。気づきや面白さがあればそのまま選考に進んでも良いですね。
大切なのは「自分事にすること」。振り返りをすることで、なんとなくから生まれた行動が自分事として捉えられるようになります。振り返りをおこなえば、そこから選考に進むか・進まないか、自分の意志で決断をすることになりますから。
先ほどから「自分で決めよう」と言っていますが、別にきっかけは「人から」でも、なんとなくでもかまわないのです。それをきちんと自分事にして、最終的に自分で決めることが何より大切だと思います。そのためには行動量を増やして、判断材料としてさまざまな情報を得ると良いですよ。
主体的に動ける社会人になろう。それが目指すキャリアをかなえる近道
Q.では、働くうえで就活時にキャリアの観点から持っておくべき心構えはありますか?
人気の企業、大手の企業に入ったからといって自分のキャリアが素晴らしいものになるわけではありません。自分のキャリアは自分で作るという考えを持つことが何より大切だと思います。そのためには、自分の得意や苦手を把握し、どんなことがやりたいか・どんなスキルを得たいか・どんな人と働きたいかを考えてみましょう。
会社から与えられる仕事やミッションは、もちろん自分のキャリア形成に必要なものでもありますが、達成して当然のものです。つまり仕事をこなすだけではそこで終わってしまうのです。そこに、仕事に対し自分の成長のためにどんなテーマを持てるかが、目指すキャリアをかなえるために重要だと思っています。
だからこそ自分がやりたいことや得たいスキルなどについて考えることが大切なのです。それと、取り組む仕事の内容が合っていれば、おのずと自身の成長につながるわけですから。自分の中でテーマを持たないまま仕事をしていては、ただただ一年が過ぎるだけで疲弊していくだけになってしまう気がしています。
Q.社会人1、2年目に持っておくべき心構えを教えてください。
社会人1、2年目は本当に重要な時期です。「働くとは何か」についてきちんと自分で考えるようにしなければ、のちのち苦労してしまいます。そのためには少し先ほどの話とかぶりますが、まずはイエスから始めること。新卒1年目というのはできることがほぼありません。その中で、積極的に自分でできることを見つけその実績を積み上げていきましょう。
そのうえで、会社を選ぶ際に指針としても良いのが「言うべきことをきちんと言ってくれるか」。良いことばかりでなく、悪い点も指摘して正してくれる会社であるといいですね。ちやほやされたままでは真にやるべきことに気付けず、何も積み上がりませんから。
Q.それを踏まえて、今後新卒社員にはどのようなスキルが求められていくでしょうか。
主体性でしょう。指示や依頼に対し、「これには何が求められているのか」という背景や目的、期日を捉えることが大切だと思います。
「エクセルを作っておいて」という指示も、何かを見える化するためにエクセルを作っておいてほしいはずですよね。指示の先にある背景や目的を必ず理解しておいてほしいです。
背景や目的が理解できていれば、自分でその業務に工夫もできますし、完了までに足りないものがあればそれも見えてくるはずです。つまりこのコミュニケーションは自分がそのタスクを確実にこなすため、自分のためにもなるのです。そういったコミュニケーション、いわゆる報連相がきちんとできる主体性を身に着けてほしいです。自分のために報連相をする、そう思えたら一気に成長できるはずですよ。