キャリア講義
仕事とは「望む生き方」を叶えるツール|未来の自分のために「今」は可能性を広げる選択を!
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藤原 賢一 さん(イノース・代表取締役)
Kenichi Fujiwara●関西学院大学卒業後、アパレルブランド・ヨウジヤマモトへ入社。その後アディダスグループ企業への転籍を経て、2012年ネオキャリアに入社し、人材業界に足を踏み入れる。新卒人材紹介事業の大阪支社立上げに参画、拠点責任者として立ち上げを成功に導く。その後何度かの転職を経て、2017年大手人材会社にて新卒人材紹介事業の立ち上げに従事、3年で約700名を就職へと導く。2020年12月イノース創業
Q.藤原様はどんな就活時代を過ごされていたのでしょうか。
就職支援をおこなっていながら、私自身はきちんとした就活をしていないのですよ。ファーストキャリアはアパレル企業だったのですが、これは周りの人に影響されたからです(笑)。
あとは、「スーツを着て仕事をする」ことを「楽しくなさそう」と思っていたのも理由のひとつですね。私の父は銀行員で、常にスーツを着て働いていたのですが毎日のように「仕事がおもしろくない」と言っていました。そこから「スーツを着てする仕事=楽しくない」という印象がつき、スーツをあまり着用しないアパレル業界に興味が湧いたということもあります。
Q.仕事は楽しみたいと考えていらっしゃったのですね。
そうですね、それは大前提にありました。学生時代は可もなく不可もない、楽しいとはいえない生活を送ってきました。また極論あまり働きたくはなかったので、今後「仕事」が生活のメインになっていくのならばそれは楽しいものにしたいと思っていましたね。
Q.その後転職に至るまでにはどんな思いや考えがあったのでしょうか。
働く業界を変えたいという思いがあったわけではありません。まずは働く中で実績をあげ、当時業界トップの百貨店にある店舗に異動することになったのです。
業界トップの百貨店ですから、自社・他社含めその中で働く人たちはみんな意識が高く素晴らしい人たちなのだろうと期待していました。しかし現実は期待していたほどではなく、インバウンド効果で売上を上げているという印象でした。期待していた分、残念な気持ちが芽生え、自分も腐っていきそうな不安を覚えたのです。転職を決意したのはこのときでしたね。
では何が悪くてこうなっているのか。私は人が悪いのではないかと考えました。働く人たちにはビジネス感がまるでなく、ただ「好き」だから仕事をしているだけのように感じたのです。働く人に問題がある、つまりは採用をきちんとできていないのではないかと。私自身このアパレル業界に育ててもらったとも思っていますから、人の面から何か恩返しがしたいと考え人材業界にたどり着きました。
Q.転職した人材会社ではどのようなご経験を積まれたのでしょうか。
ここで自分の意識が上がりましたね。これまでいたアパレルの企業は組織規模が大きすぎて、自分のやったことがうまく評価につながらない感覚がありました。しかしこの企業では成果が評価に結びつきやすく、やりがいを感じられていました。それと同時に次にやりたいことも芽生えだしてきましたね。
これまでは事業の拡大をおこなってきました。つまり1⇒2にする作業ですね。だからこそ次は0⇒1にする作業、新規事業の立ち上げから携わりたいという思いが生まれ、縁もあり、とある企業の人事部の立ち上げに携わることを決めました。
Q.どんどんとキャリアが広がっていきますね。その中で起業に至るきっかけなどはあったのでしょうか。
二度目の転職やさまざまな企業と出会う中で気づいたのが、「どれだけ社長の考えが社員に浸透しているのか」が大切ということです。二度目に転職した企業はいわゆる社長のワンマン企業。社長の考えは会社の考えであり、これが社員の行動原理となります。社長、つまり会社の考えに共感できていなければ、仕事に対して当事者意識が生まれませんよね。そのような姿勢で仕事をしていけば、いつかその企業が倒産してしまうリスクも高くなります。
そう考えて、しばらくたってからその会社を離れました。その後も転職をする中で、同じように経営陣との考え方が合わず自分でやりたいことができなくなることがあり、それならばもうやりたいことは自分でやるしかないと考えて、起業に至りました。
どの仕事を選んでもOK! 望む働き方や生活に合っているかが大切
Q.そうだったのですね。では企業を選ぶうえではやはり「人」を重視すると良いのでしょうか。
そうですね、私のように社長や経営陣に共感できるかも大切ですし、「誰」と働くかは最重要視すると良いと思います。考え方が合う人と働くのがもっとも働きやすいはずです。退職理由も「人」であることが多いですから。
学生はよく「やりたいこと」「できること」で仕事や企業選びをしていきますが、特にまだ働いたことのない学生にとって「できること」はないと思っています。何かの実績あっての「できること」だと思っているので。だからこそ仕事そのものよりもその周り、働く環境としての「人」を重視すると良いと思っていますね。
Q.とはいえ、実際におこなう「仕事」そのものの選び方に良い方法などはありますか?
ここは自分がわくわくできそうなものでいいと思いますよ。やはりまだ働いたことがないわけですから、極論「モテたい」でもいいと思います。
「これから伸びる業界や仕事を選ぼう」という人もいますが、これから伸びるということはその分そこを狙って参入してくる人も多いわけです。つまり競争が非常に激しくなるということ。その競争社会でやっていけるのかは一度考えてみたほうがいいですね。そこで勝ちぬけばダイナミックな活躍は期待できますが、安定を求めるのであれば、マーケットは小さくとも大きなシェアを持っている企業のほうが良いと思います。
Q.それならば、人によってどの仕事を選ぶべきかは大きく変わってきそうですね。
もちろんです。そして極論どの仕事を選んでも良いのです。それよりもその仕事を選ぶ覚悟や熱量のほうが大切ですし、どういう働き方や生活をしたいかによるでしょう。今の例でいうと成長志向やチャレンジ精神が強い人は果敢に成長産業に挑むと望む働き方ができると思います。
そして多くの学生は「普通に生活できればいい」と言いますが、人によってその基準は違います。親御さんが国家公務員の人と中小企業のサラリーマンの人とではどうしても「普通」に差が出てきてしまうもの。でもどちらも本人にとっては「普通」ですよね。
「普通」の生活を望む場合はまず親やこれまでの自分の基準を理解することから始める必要があります。そのうえでその「普通」を満たすためにはどのような企業・仕事を選ぶといいか考えるべきです。
Q.その考えは今までになかった視点で新鮮です。
この「普通」ですが、その人にとっての普通の基準とともにその「普通」をいつまでに達成したいかも合わせて考えると良いと思います。20代のうちから国家公務員並みの収入を得たいなら、安定した企業よりも実力主義のベンチャー企業のほうがその希望をかなえやすいでしょう。
私自身、親のおかげで何不自由ない生活を送ってきました。しかし私は欲深いので(笑)、もっと自分のやりたいことをやりたいようにかなえたいと思っています。そう考えると年功序列で50代前半にやっと年収の頂点が来るようでは少し遅いなと。30代の時点でもっと自由な生活をしているためには、福利厚生や労働時間よりもリスクを取ってでもお金を稼ぐという選択をしました。
逆にいうと、それが理由でこの仕事をしているだけともいえますね。この仕事はもちろん好きですが、それだけがこの仕事を選んだ理由ではありません。あくまでも自分の望む生き方をかなえられる仕事であるというのが前提にあります。学生にもこのような基準にのっとった仕事選びをしていいと思っています。
未来の自分が輝けるような選択をしよう
Q.ということは、やはりキャリアプランは企業選びの前に考えておいた方がいいということになるでしょうか。
そうですね、大まかには考えておくといいと思います。今お話ししたようにその方が企業選びはしやすいはずですから。
どうしても考えられないという人は、将来的に働く中でやりたいことが見つかったときにスムーズにその進みたい道に行けるように、自身の市場価値が上がるような選択をすると良いと思います。たとえば若いうちからさまざまなことにチャレンジできたり、努力次第でできることの幅が広がったりするような環境が挙げられますね。
私自身も初めは販売にしか従事してきませんでしたが、どこの業界でも通ずるマネジメントスキルを手に入れ、市場価値を上げていました。だからこそやりたいことをもったときに転職に成功できたのだと思っています。
Q.そのうえで、ファーストキャリアだからこそ注意しておくべき点などはありますか?
福利厚生や年収などの条件だけで企業を選ぶのはやめておいたほうがいいです。そういった条件面に目が行くのもわかるのですが、それは仕事の本質ではないですよね。またどうしてもこういった条件は状況に応じて変動するものです。「誰とどこでやるか」ここの優先度を高くして、それでも決め切れないときに、最後の最後の決め手にする程度にしておきましょう。
ちなみに、条件面で見ておくと良いのがオフィス環境ですね。会議室や面談ルームなどが乱れていないか、来訪者に対して挨拶があるかをチェックしてみてください。整理整頓・挨拶は基本中の基本です。その基本事項ですらできていないのは、会社の統制が取れていないとこれまでの経験から感じています。ナビサイトや人事とのやりとりの印象がよくても、実情は違うことが多いです。ここも基準のひとつにしてみてください。
Q.最後に、就活生へのメッセージをお願いいたします。
学生と接していて思うのが、とても真面目な人が多いなということ。たとえば一度選考に落ちてしまっただけで「これがダメだった」と真面目に反省している人がとにかく多いです。でも社会には何万と会社があるので、ダメでも「次、次!」くらいの気持ちで就活を進めていいと思っています。程よく力を抜いて、重たく考えすぎないのが一番です。
一度就職してみないとわからないとは思うのですが、さまざまな業界を見て受けられるのは新卒の特権です。転職では前職の業界や職種に基づいて職が決まりますから。だからこそこの一度しかない絶好の機会を楽しんでほしいとは思いますね。