キャリア講義
仕事を「作業」にするな|主体的に取り組めばキャリアは自然と積み上がっていく
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目次
作馬 誠大 さん(インタツアー・代表取締役)
Akihiro Sakuma●2020年、インタツアー代表取締役社長に就任。 日本最大級の企業インタビュープラットフォーム「インタツアー」を展開し、 学生のより本質的な就活とOne to One の共感を採用ブランディングにもたらす支援をおこなっている
Q.作馬さんはどのような学生生活、就活時代を送られていたのですか?
正直、大学での生活は特に何も考えていないまま過ごしていましたね。学校での時間よりもアルバイトに力を入れていた学生時代でした。それもあってか私は大学に7年と11ヶ月も在籍していたので、就活らしい就活はしていません。さらにいわゆる「中途枠」での採用でキャリアをスタートさせています。
Q.そうなのですね。就活はどのような感じでしたか?
そもそも1社しか受けていませんが、「これが決め手になったのだろう」と思えるやり取りがあります。
一次面接は無事に通過して、役員面接に臨んだときのことです。面接官から「どうせバイトばかりで無責任に時間の切り売りをしてきたんじゃないのか?」と言われました。それに対して、私は「『バイト』『社員』の区分は関係なしに、店や商品の売上を上げるという同じ目標を共有しながら仕事に取り組んでいました。取り組む姿勢は社員と何ら変わりませんでした。」と答えました。
入社してみて実感したのですが、どうやらその会社では会社共通の目標に対し同心円で考えられる社員を求めていたようです。だからこそ私のその回答が響いたのだろうと思っています。
Q.誰でも、物事に取り組む際には見習ってほしい姿勢や取り組み方ですね。
そうですね、特に学生が今後社会人として働く際にはぜひ取り入れてほしいです。
基本的に物事に取り組む際は、「どうしてそれをやっているのか」が自分の中でわかっているべきだと思います。つまり「自分でそれを選んでやっているんだ」と思えているかどうかですね。
この意識があると、まずは主体性が生まれます。「やらされて」やっている仕事と「自らやりたい」とやっている仕事では、生産性が大きく違うと思うのです。やらされているだけなら淡々と作業をこなすだけになりますが、「自らやりたい」と思えることに対しては、おのずと「成功させたい」という意識が生まれるはず。つまり仕事のその先を見据えて行動ができるため、動きの質が変わってくるわけです。
Q.企業としてもそういった人を求める傾向にあるのでしょうか?
そうですね、特に新卒採用に関してはそうだと思います。中途採用はいわゆるジョブ型採用、スキルや経験の有無が評価されますが、新卒採用はポテンシャル採用、学生の考え方を見られることが多いです。
経験したことそのものは何でも良くて、それが流されてやったことなのか、自らが選択しての動きなのか、が大切だと思います。
Q.それを踏まえて、学生は選考においてどういった面をアピールしてほしいと思っていますか?
テクニカルなことよりも、経験の中で得たことや何か乗り越えたことを伝えると良いでしょう。自分から好んで何かに取り組む場合、何もせずとも順風満帆にコトが運んでいくことはまずないはず。その時々でどういう決断をしてきたかをもとに語ると、学生の考え方がわかりやすいです。
「学生時代に頑張ったこと」とは、実際なかなかキラキラしたものばかりではないと思っています。だからこそキラキラしたもののみで構成されるガクチカでは、意思や意図がないことを人事に見破られてしまいます。このような中身のないガクチカでは、言わずもがな評価は高くはならないでしょう。
泥臭い部分も踏まえ、地に足のついた内容を語ると、学生がきちんと意志や意図をもって動いていたことがわかります。そちらのほうが企業には良く映るはずですよ。
就活の軸はなくて当たり前! 積極的な情報収集から軸を形成していこう
Q.作馬さんは、学生はどのように就活をしていくと良いと思いますか?
そもそも私は就職活動というものを「企業と自分との軸のすり合わせをする活動」だと思っています。
そして、就活の段階で明確に「やりたいこと」や「軸」がはっきりしている人はほぼいないと思っています。なぜなら社会との接点も少ないですし、社会人の経験もないので。話を聞いたり自分で調べたりしていくうちに「これやってみたいかも」というような「軸」が生まれていくはずです。
そのうえで「じゃあそれがどこで実現できるのか=入りたい企業はどこか」は、それまで集めた情報を整理して初めてわかってくることだと思います。社会からできるだけ多く情報を摂取して、自分だけの軸をつくってみる。そして自分の軸と社会の情報とを行ったり来たりさせてすり合わせながら選んでいくといいと思います。
Q.せっかくそうして軸を作っても、就活中に軸がぶれてしまう人も多くいると思います。そうならないためにはどうすれば良いでしょうか。
正直、ここでつくる軸は、あまり確立させずぼんやりしたものでいいのではないかと思っています。ぶれるならぶれても良いですね。
実際、自分のイメージしたキャリアをそのまま歩めている人は数%ほどしかいないという研究結果が出ているのです。つまり、かなりの人が学生時代に思い描いていたキャリアとは違う道を歩んでいるということ。
ですから学生の軸が就活中にぶれるのも、また働いてからぶれるのもある意味当然のことだと思います。それにまだ働いたことのない学生が急に「働く軸」をかちっと決めるのはなかなかでしょう。さまざまな情報を仕入れる中で、就活の軸も、キャリアの軸も、常にアップデートしていけると良いですね。
仕事を「作業」から「やりたいこと」にしよう! そうすれば勝手にキャリアができていく
Q.では逆に、キャリアを形成するために、社会人になってからはどういった心構えで仕事をするべきでしょうか。
先ほどの話と似通いますが、やはり大切なのは主体性であり、目的を自分化することだと思います。自分化することで、同じ作業であっても「その作業をすること」に対する意味合いが変わってくるはずです。「やらなければならないこと」を「やりたいこと」に変えていく、そういう力が養われていくと思います。
そしてもう一つ、やっていることが何につながっていくのかを想像することも同様に大切です。仮に何かの集計作業がタスクとして与えられたとしましょう。それをただ集計して納品するのか、集計した数値がこのあとどう利用されるのかを見越して集計・納品するのとでは、納品物はもちろんタスクを終えたあとの自分もまったく違うものになっているはずです。
そして、これらができる人・自然とこなせる人は、図らずとも勝手に出世していくものです。かつそういった人は目の前のこと以外も見られているため、周りを助けられる人だとも思います。困ったときに頼れる人、そう認識されるとどんどん仕事が舞い込んでくるようになりますよ。
Q.たしかに、今の例だと自然とキャリアが形成されていきますね。
特別何かをせずとも、キャリアは形成されていくのです。またそれ以外に、私はキャリアとは必ずしも仕事だけではないとも思っています。
私は、働くプロセスを通して生き方が表れてくるのがキャリアだと考えています。人は仕事を通して経験や技術を身に付けていくものですが、そのプロセスを通じて人間性をも磨いていける。そうして人間としても成長していくこともキャリアだと言えるのではないでしょうか。キャリアとは仕事を指すだけでなく、人生通じてなりたい自分・在りたい自分のことも指すと思います。
Q.最後に、就活生に対してメッセージをお願いいたします。
めちゃくちゃがんばって、納得した就活をぜひしてほしいと思う反面、がんばりすぎるのも良くないとは思っています。実際、働いてから考えれば良いこともけっこう多いと思うのですよ。
ファーストキャリアと考えると誰しも固くなってしまいがちだと思いますが、当たり前ながら入ったあとにどうするかの方がよっぽど大事です。キャリア形成などはそこで考えそこで学び何かを感じていけばいいと思うので、就活の段階で変に悩みすぎずがんばりすぎずでもいいのかなと思っています。抽象的な表現ですが、ある程度の納得感が自分の中にあればいいと思います。
あとはその「がんばり方」も今一度考えてみてほしいです。時間に猶予がある人は、今の「短期集中型の就活スケジュール」に乗っかる必要はないと思っています。特にじっくり情報を整理して選択するほうが良いという人は、中長期的なスケジュールを組んで、自分と企業と仕事とを見つめていくのも今の就活のやり方のひとつだと思いますよ。