キャリア講義

納得感と覚悟がこれからのキャリアを決める|「未来が過去を評価する」今のつらさも良い経験に変わっていく!

椿1

目次

  1. 椿 貴詞さん(シンクトワイス・取締役)
  2. 自己分析×企業研究で納得感と覚悟のある選択をつくり出そう
  3. 就活は何者にでもなれるチャンス! 人生の空想を自由に楽しんで
  4. 「未来が過去を評価する」。つらさはキャリアにおけるストーリーの構成要素

椿 貴詞さん(シンクトワイス・取締役)

Takashi Tsubaki●2001年大学卒業後、広告出版・ダイレクトマーケティング業の会社に入社。その後、創業メンバーとして立ち上げた企業で、不動産業界向けSaaS、求人サイト等のプロダクトを企画開発。2018年、シンクトワイスのWEB領域担当の執行役として入社し、現在に至る

Q.まずは椿さんのこれまでのご経歴について教えてください。

ファーストキャリアとして広告出版・ダイレクトマーケティング業の会社を選びました。この決め手は大きく2つ。代表が魅力的だったのと、規模もそんなに大きくなくて、風通しが良さそうだったからです。今振り返っても、その選択は良かったと思っていますね。というより、常に後悔しないように行動することを心掛けているので、自分のその時々の行動についてはだいたい肯定的に捉えているともいえます(笑)

新卒で入社した会社が大学生向けの部屋探しやアルバイト・就職情報を扱っており、入社4年目で新卒紹介事業の立ち上げに携わりました。その後、不動産情報Web領域の事業もおこなっていたので、その知見を活かして27歳のときに不動産会社の集客を支援する企業の創業メンバーとして参画し、不動産業界向けSaaSの企画開発や業界初の不動産専門求人サイトや人材紹介サービスを開発しました。その後、新卒紹介サービスを展開するシンクトワイスにて現職に至ります。

Q.こうしてさまざまな経験をされていますが、椿さんの企業選びの軸というのは何かあるのでしょうか。

明確に「こういうキャリアを歩もう」「こういう転職をしよう」というようなものはありません。しかしまず「やりたいときにやりたいことをやる、そのためには何をすべきか考える」というのが私のアイデンティティとしてあること。そして「『こうしたい』という自分の想いを形にできるところ」というのが私のキャリアの1つの軸になっています

Q「自分の思いを形にできる」、ここをもう少し具体的に教えていただきたいです。

私は、「こうなっていたらいいのに」というものをビジネスにするのが好きです。

たとえば、1社目では不動産向けSaaSサービスをおこなっていたのですが、これは営業職だったときに顧客が困っているのを見て「世の中にもっとこういうサービスがあったらいいのに」と思ったものを実現したものです。そして求人サイトと人材紹介サービスは、不動産向けサービスのお客様から人材に困っているという話を聞いて作りました。

「こうなっていたらいいのに」という自分の思いを形にしていきたい、そしてそれをよしとする企業を選んできました

Q.やりたいことに対して素直に動けるのは非常に素晴らしいと思うのですが、中には椿さんのように行動する勇気がない人もいると思います。

これは、私が身の回りの課題に対して「どうしたら解決できるだろう?」と考えるのが癖になっているところもあります。それに「こうなっていたらいいのに」だけで終わらせてはただの愚痴になってしまうじゃないですか。それで終わらせてしまうよりは動いたほうがいいですよね。

ただ、実現するとなると人やものやお金を動かさないといけないので、非常にハードルが高い。条件がそろわないとビジネスや成果につながらないので、そこに挑戦することにおもしろさを感じる人間なんだろうと思います。

自己分析×企業研究で納得感と覚悟のある選択をつくり出そう

Q.ここまでのお話を踏まえて、学生が業界や企業を選ぶ際は、どのような点を大切にすると良いと思っていますか?

業界や企業を選ぶ前に、まずは自分の軸を作ったほうが良いですね。私の場合は、企業選びの前に自己分析をそれはもうたくさんやりました。ノート1冊を丸々つぶすくらい。物心ついたころのことから就活中に考えたことまで、それは中学時代にこういう思いがあったからじゃないかとか、「なんで? なんで?」と自問自答を繰り返して。

そしてついに「自分という人間はこういう構成要素でできているのだ」ということがわかったのです。自分がどんなことに喜びや悔しさを感じるのか、企業を測るうえで必要な自分なりのものさし(軸)を手に入れました。僕の場合は、それが「自分の思いを形にできるかどうか」だったわけです。

こういうものさしがないと、志望業界や企業選びがただの物選び、買い物になってしまいます。「合うか・合わないか」ではなく「欲しいか・欲しくないか」「好きか・好きじゃないか」で企業を選んでいるということ。

椿3

就職はあくまでマッチングであり、自分に合った企業を選ぶ必要があります。にもかかわらず、ものさしがなければ自分の好みや願望だけの企業選びになってしまうのです。ですから、就活ではまず自分のものさしをつくること。まだ持っていない人は、まず自己分析をしてものさしをつくることから始めるべきだと思います。

Q.自分に合った業界や企業を見極めるために、まずは自分のことを知る必要があるわけですね。逆に自分ではなく業界や企業を見るうえで大切にすべき点はありますか?

先の話と似通いますが、「こういう業界にこういう人が多い」ということは把握しておいたほうが良いと思いますね。「こういう人」が自分と同じような人であれば、その業界が合っているという可能性が高いといえます

そしてこういう情報を得るにはやはり社会人に会うことが大切でしょう。私たちの時代はまだインターネットが発達していなかったので、情報収集はOBに直接会って話を聞いていました。社会が変化した今はOB訪問がその手段のすべてではないと思いますから、OB訪問を強く推しはしませんが、同様の行動が必要だとは思います。

学生はまだ働いたことがないので、本当の社会や会社というものをきちんとはイメージできていません。両親でも親戚でも良いので大人に会って、社会人の楽しさはもちろんつらさについても生の声を聞くというのは重要だと思いますね。業界としてのメリット・デメリット、そして職種としてのメリット・デメリットを知っておくべきです、仕事は楽しいことばかりではないですから。

Q.ではいざ企業を選び、そして決断するとなったときには、どのような心掛けが大切になるでしょうか。

先ほどもお伝えしたようにデメリットも知ったうえで、納得感と覚悟を持って企業を選ぶことが大事だと思います。

私は、就活時大企業からも全然違う業界からも内定をもらっていましたが、最終的に中堅ベンチャー企業を選びました。自分としては、自分の視野や可能性を狭めすぎずに、できる限りのことをして就活をやりきったという感覚があり、納得感をもったうえで1社を選択したので、あとで「やっぱりあっちの会社にすればよかった」という後悔はありませんでした

納得感とはつまり後悔しないこと。あとから「知らなかった」といって文句を言うのはかっこ悪いですよね。そうならないためにまずは自己分析をしっかりして自分のものさしをつくり、そしてしっかり企業の情報を収集して、自分の選択に覚悟を持てるようになることが大事です。

Q.つまり納得感が得られるまでは就活を続けてみたほうが良いということでもありますか?

そうですね。いろいろ調べ、行動したうえで「この企業が良い」と思って選べば、入社してからの活躍も違ってくると思います。

たとえば付き合っている恋人と喧嘩したからといって、別の人にすればよかったと思うのは少しダサいですよね。自分がこの人を選んだんだという納得感があれば、多少喧嘩しても関係回復を図ろうと思うはずです

社会人生活も同じことが言えるのですよ。自分で能動的に、納得感をもって決めた相手(企業)であれば、多少のネガティブ要素に対してもそこですべてを辞めてしまおうとはしないはずです。

就活は何者にでもなれるチャンス! 人生の空想を自由に楽しんで

Q.今のお話でもあったように、就活では受け身ではなく能動的に動くことが大切だと思います。これは具体的にどうすればいいのでしょうか?

おもしろがって就活に臨むことだと思います。就活は、受けたい企業は好きに受けられるし、会社の内部を知りたければ自由に企業訪問できるのですから。学生と企業が対等に向き合える数少ないチャンスを楽しんだもん勝ちだと思います。こうだったらいいなと、人生の「たられば」をあれこれ自由にイメージできるのは就活のときだけですよ

ここでのポイントは、就活のやらされ感をなくすことですかね。就活を楽しめる部分を見つけられれば簡単です。僕の場合はそれが自己分析でした。自己分析が、自分のルーツや両親との関係を再確認するきっかけになり、「就活もまんざら無駄じゃないじゃん」と思えるようになりました。

Q.「やらされ感」はたしかに感じてしまいますよね。その結果、「この会社に入らせてほしい」と低姿勢で就活をしてしまう人も多いと思います。

学生は勘違いしやすいのですが、就活とは学生と企業が対等なものです。つまり、選ばれる側ではあるけれども選ぶ側でもあるということ。これを意識することが大切かなと思います。

選考される側ではあるけれど、自分のファーストキャリアとしてこの企業を選んでやろうという意気込みも大事です。僕の場合は、自己分析で「自分の思いを形にできるところ」という軸ができたので、「自分はこういう人間ですが、この業界・この会社で使える人材ですか?」とこちらから企業に問う就活をしていました。

とはいえこれは「強気な態度に出ろ」ということではありません。あくまでも就活に臨む目線の話です。「就職先を自分で選ぶんだ」という目線でいると、説明会や面接で「ここまで考えているんだ」という真剣さが相手に伝わるはず。就活に臨む姿勢や逆質問の傾向が絶対に変わりますから。それは必ず向こうからの評価につながってくると思います。

Q.ちなみに、働いたことがない学生がキャリアプランを描くのは難しいと思うのですが、何かコツはありますか?

私でも明確には答えられないのに、学生はもっと難しいですよね(笑)。「キャリアプランは常に変わるものでいい」というのが私の考え。ただし、5年後、10年後に「こうなっていたらいいな」というイメージは常に持ち続けていたほうが良いと思います

私の場合、「5年後にこういうおじさんになっていたい」といった像がまずぼんやりとあって。ではそういう人になるためには? と考えると、これくらいの年収がなくてはいけない、そしてこのくらいの年収をもらうにはこれくらいのポジションにいないといけないというように、将来的になりたい姿から逆算してキャリアプランを決めています。

「未来が過去を評価する」。つらさはキャリアにおけるストーリーの構成要素

Q.今後活躍できる人材になるためには、働く際にどのような意識や心構えが必要だと思いますか?

ITリテラシーも大事だとは思いますが、もっとも大事なのは人間力だと思います。コモディティ化といいますが、先端的なものがどんどん普及していくことで、それが新しいものでも珍しいものでもなくなっていき、一般的なものになっていく。これが今IT技術の普及によって顕著になっていますよね。ITでできることが増えてきて、イコールそれは誰にでもできることになっていく。

そうなると、残るのは「人にしかできないことができること」。相手の思いを汲み取れる、思いやりを持って行動できるなど、そういった人間力とITリテラシーのバランスがしっかりしている人が求められるようになっていくと思っています

人間力を高めるために取るべき行動は簡単です。いろいろな人と交流することですね。社内外問わず、特定の友達だけ・趣味が合う人とだけではなくさまざまな分野・年代・性別の人と交流すること。いろいろな人と接して、人に対する興味を失わないことです。さまざまな人とかかわることで、おのずと人間力が鍛えられていきますよ。

Q.働くうえで、キャリアにおいて壁にぶつかったり行き詰まりを感じることもあると思います。そのようなときに、乗り越える方法を教えてください。

「未来が過去を評価する」。この言葉を贈ります。新卒で入った会社の上司がよく言っていた言葉です。今でも「いい言葉だな」と思いますね。

過去にしんどい時期があっても、今成功していたら「あのときがあったからですよ」って言えますよね。しんどいことがあっても、その先が良くなっていれば過去のイメージはきれいに塗り変わるもの。だから、このつらい思いも良い思い出に変わると信じて取り組み続けていきましょう

Q.ありがとうございます。最後に、就活生に対してメッセージがあれば教えてください。

就活は人生で一度きり、最初で最後に近い経験なので、やはり楽しんだもの勝ちだと思います。どうしても「みんながやってるからやらなくてはいけない」という気持ちになりがちで、そしてそれは自然なことではありますが、せっかくの機会ですから楽しんでほしいです。

楽しみ方は自己分析で自分を知る・将来なりたい像を自由にイメージする・初めて業界を知るなど、人それぞれ。ただ、楽しんで行動することが、最終的に納得感と覚悟を持って1社を選ぶことにもつながります。それが私の場合は自己分析でしたが、これを通じて就活で大きく成長できたと自信をもっていえます。だから皆さんも就活を成長の機会だと前向きに捉えて動いていってください。

椿2

記事についてのお問い合わせ