キャリア講義

意志の発信がキャリアの巡り合わせを呼ぶ|やり切った時にこそキャリアアップの岐路が見えてくる

荻野1

荻野 光 さん(アデコ LHH就活エージェント 課長)

Hikari Ogino●大学卒業後、埼玉県で公立小学校教員を4年間経験。結婚を機に、民間企業へ転職。2015年10月アデコに入社。派遣・アウトソーシング・中途人材紹介を経験し、2020年から新卒紹介事業に異動、学生向け就活支援・企業向け採用支援に従事

企業詳細:コーポレートサイト採用ページ

Q.キャリアアドバイザーとして日々学生と接している荻野さんだからこそ、学生が企業を選ぶにあたって必ず考えてほしいことはどんなことでしょうか。

けっこう自分の好きなものや給与・福利厚生などの条件面など、その企業の一部分と自分を比較してマッチングしているかを考える学生が多い印象をもっています。企業だけでなく自分にも矢印を向け、より広い視点でマッチングしているかを考えてみてほしいです

未来の自分をイメージしてみて、どうなっていたいかを考えること。そして過去にやる気スイッチがどこで押されたのかを考えて企業選びを進めてほしいです。

Q.荻野さんも、そのような考え方で企業を選んできたのでしょうか。

ファーストキャリアからそのように就職先を選んできたか、というとそれはどうでしょうか(笑)。実は私はキャリアを教員からスタートさせています。4年間埼玉県で教鞭を振るったのち、結婚を機に民間企業の事務職へ転職しました。

そこで働くうちに感じたのがなんともいえない不完全燃焼さ。「もっとバリバリ働きたいのに。」そのような気持ちがふくらみ、このままでは自分の目指したいキャリアに近づけないと感じてアデコへ入社することを決めました。

振り返ると「バリバリ働いて活躍し、いち早くキャリアアップしていきたい」という思いが自分の中にはあったようです。そしてその思いは教員や事務ではかなえられないということに気づきました。この内に秘める自分の思いに気づけたのは働いてからでしたが、学生の皆さんには、就活時から自分が本音の部分で持つこういった思いに気づき、それに基づいた企業選びをしてほしいですね

荻野3

Q.ちなみに当時はどうして教員を選ばれたのでしょうか。

教員とは、小学生から大学卒業までの約16年にわたり、常に学校で自分の身近にいる存在だと思います。そのため「社会人」として学生が一番イメージしやすいものではないでしょうか。そのようなこともあり、大学生の私は当時あまり深く考えずに教員を選びました。

人が頑張る姿や成長する姿を見て喜びを感じたり、伴走できるというのは教員だったころも今のキャリアアドバイザーという仕事にも共通している姿です。けれど、今のほうがより目の前にいる人のターニングポイントに深くかかわることができていると思います

就活は将来を考える大切なタイミングです。だからこそ、不安を抱え、つまずき、自己表現がうまくできないのは当然のことだと思います。そのような学生の皆さんを支援させてもらう中で、徐々に目の色や表情が変わっていき、自信をもって選考に挑み、望む未来をつかんで成長していく姿を見るのも、学生から「ありがとう」と言われるのも非常にうれしいことであり、今の自分のやりがいですね。

本気で仕事に向き合ってきたのなら、経験すべてがキャリアに活きる

Q.ところで、荻野さんのファーストキャリアは自分の望む働き方ではないともいえると思います。これは自分のキャリアにおいてはある意味ロスであるとお考えですか?

キャリアロスではないと断言できます。当時を振り返り、仮にそれが望む環境でなかったとしても、そのこと自体が無駄になったということはありません。

教員時代は子供から親まで幅広い世代の人と接してきました。さまざまなタイプの保護者の方ともうまく関係を築いてきたので、コミュニケーション力はおのずと鍛えられたと感じています。また、たとえば子供同士のけんかの仲裁などでは、折衷案を出すこともしばしば。そのような経験は今キャリアアドバイザーとしての仕事にも活きています。

どんなタイプの学生であっても、それぞれの個性に寄り添い、理想と現実との間を埋めながらより良い選択肢へつなげていく。そう考えると、むしろあの仕事をしていたからこそ今の自分があるのだと感じています

教員、事務、そして現在。その時々でどの仕事に対しても「求められている以上の成果を残す」という強い思いで仕事に取り組んできた自負があります。そのように考えているからこそ、これまで歩んできたキャリアは一つも無駄ではなかったと思えるのです。

Q.仕事への向き合い方も、キャリアの捉え方も非常に前向きで見習いたいです。

ありがとうございます。とはいえ、どうせなら歩んできた経験がすべて次に続いていくキャリアがいいとも思いますよ。

これまでの経験が活きているとはいえ、特に職種が変わるとゼロベースでキャリアを始めていくことにはなります。私の場合は教員、事務、そしてキャリアアドバイザーと、まったく違う職種でキャリアを形成してきたため、転職するたびに新しい知識を付け直す必要がありました

その点、たとえば同じ職種で業界だけ変えていくのなら、転職時はその業界の知識を新しくつけるだけで良いのです。

そのためには、自分がかなえたいことやそれをかなえられるということを想像しながら企業選びをすることが大切です。

Q.未来の自分をイメージする必要性はよくわかりましたが、働いたこともない就活生には正直難しいのではないでしょうか。

それが実はそんなこともないのですよ。

「これからどんなキャリアを描きたい?」という質問に答えるのは難しくても、「これからどんな生活をしていきたい?」とたずねると、ほぼすべての学生が答えられるのです

「キャリア」って少し難しく感じてしまいますよね。役職に就くことや昇格することがキャリアを築いていくことだと思っている人もいるでしょう。しかし、上へ上がることだけがキャリアアップではないですし、キャリアや仕事はあくまでも人生や生活の一部。仕事以外のプライベートな「生活」の部分も含めて未来の自分をイメージしてみてください。

たとえば「常に変化がある生活を送りたい」「家族には不自由ない暮らしをさせてあげたい」そんな回答もあなたが描きたい未来です。

「やりたい」は積極的に! それがあなたのキャリアを形作る

Q.最近は転職が当たり前の時代になっています。荻野さんのように、就職してから転職を考える人も数多くいますよね。転職を検討すべきタイミングなどはあるのでしょうか?

一概に「このタイミング」というのはないでしょう。ただ、特に入社してすぐのころに感じやすい「私ってこの仕事向いてないのかも」というネガティブな感情。この感情を感じたときは、まだ転職を検討するタイミングではありません。

そんな時こそ一念発起して頑張るタイミングだと思います。入社してすぐのころなど、思うように仕事ができなくて当然です。そこを乗り越えられれば「できた」「やりきった」というポジティブな感情が生まれてくるはずです。むしろやりきったという感情がないまま転職をしても、その先で同じことに直面してという繰り返しになります

逆に転職のタイミングとなりやすいのは、今の仕事において達成感や区切りを感じたときだと思います。そしてそのタイミングでも「転職しよう!」とすぐに決断するのではなく、「今後はどうする?」と一度立ち止まって検討してみてほしいです。

このままここにいても自分自身は成長できるのか。転職せずに自社でさらに別のチャレンジをすることも企業によっては可能です。しかし今後の成長の機会が見込めない、求めているチャレンジができないのならば、そのときはさらなる成長機会を求めて転職する良いタイミングだといえるでしょう。

荻野4

Q.「いち早くキャリアアップしていきたい」という思いでここまでキャリアを築いて来られた荻野さんですが、そのためにどんなことを意識されていたのですか?

できるかどうか未知数でも、まずは経験することを優先してきました。チームリーダーなど、初めてでできるかわからないことでも積極的に手を挙げてきましたね。できるかわからないということは、できるかもしれないとも言えるはず。そしてそれが意外とできてしまって、それが実績となってさらなるキャリアアップのチャンスに結びつくこともあるものです。

Q.そうはいっても、できるかわからないことにチャレンジするのはいささか不安です。

実は、結果にこだわらず手を挙げてやってみたことそのものが自分の自信となるのです。それだけでもチャレンジした甲斐はありますよ。まずは一度やってみてください。「またやってみよう」と思えるきっかけになるはずですから。

実際、私は今この課長職に就いています。入社時からずっと「上を目指したい」と発信し続けてきました。発信し続けてきた結果、折に触れてさまざまなタイミングで挑戦機会を数多く頂き、それにチャレンジしてきた結果、望むキャリアを歩むことにつながりました

発信するだけならタダですから(笑)。むしろ発信することが大切なのです。そのポストが空いた時、やりたいといっていた仕事が生まれた時、巡り合わせが来やすくなります。

Q.今、上司として部下を何人も束ねる荻野さんから見て、やはり発信している人のほうが仕事を任せたくなるものですか?

もちろんです。むしろ仕事を振るときに助かりますね。「誰に振ろう?」と迷うことがなくなりますから。

ちなみに、上司目線でいうと、発信しているだけでなく「他責にしない」人にも仕事は振りたくなります。他責思考の人は難しい仕事に対して「できない理由」を探しがち。その反面、他責にしない人は難しい仕事に対して「できるためにどうしようか」と考えます。

そういう姿勢をみていると、上司としては「この人なら絶対にやってくれる」と信頼感をもてるものです。なんとかしてこの仕事を「できた」「やり切った」と思えるようにしてあげたいと、できる限りのサポートをします。それも手を挙げて実績ができる理由なのですよ。やりたいという強い意志がある人を上司はそのままにしません。必ず力になります。だからこそ積極的にチャレンジをしてほしいのです。

Q.では最後にこれから就活に臨む学生へ、荻野さんから熱いメッセージを頂きたいです。

就活は誰しも初めてであり労力もかかる。その分、不安などネガティブな感情も先行します。でも、就活とは未来の自分のわくわくを探す活動だと思ってください。

たとえば来月、友達と初めての海外旅行に行くとします。旅行よりずっと前から、たくさん計画を練りますよね。どこに行こう、何をしよう、何を食べよう……。とてもわくわくしませんか。わくわくする未来をイメージするということは、海外旅行も就活も実は同じことです。来年のわくわくにつながる時間だと考えて、ポジティブに就活を進めていきましょう! そして、行き詰ったときには、家族・友達・大学の先生・信頼できるエージェントなども迷わず相談してください!

荻野2

記事についてのお問い合わせ