キャリア講義

「具体的なビジョンは必要ない」。“好きの源泉”探しが充実のキャリアの鍵

佐川好司さん(アイデム・JOBRASSグループマネージャー)

Koji Sagawa●人材情報サービスを展開するアイデムに2001年に新卒入社。広告の法人営業やweb事業の立ち上げを経験した後、2013年にローンチした逆求人型就活サイト「JOBRASS新卒」の立ち上げに参画。現職は、JOBRASSグループのマネージャーとして事業を統括。趣味はマラソン

Q:新卒生を支援するJOBRASS(ジョブラス)事業に10年にわたって携わってきました。最近の学生と接するなかで、どのような印象を受けていますか?

非常に優秀な学生が多いですね。グループディスカッションも非常にきれいな言葉で話されます。プレゼンテーションをつくらせると、びっくりするくらい出来のいいものをつくってきます。

一方で、一つの回答を深掘りすると、うまく答えられないケースが多々見られます。頭で考えられる物事にはうまく対処できるんだけど、用意してきた以上のことに対処できない。もちろん人にはよりますが、頭でっかちな人が増えている印象がありますね。

具体的なキャリアは決めなくていい

Q:今後ファーストキャリアをスタートさせる就活生に対して、キャリアについてのアドバイスをお願いします。

いまキャリア形成の重要性が声高に叫ばれていますが、就活生の時点で「IT業界に入って、何年後にITのスキルを身に着けて、5年後に管理職になる――」といった具体的なキャリアを決める必要はないと思っています。

極端ですが、「やりたいことや業界を絞りすぎるな。キャリアを決めすぎるな」といいたいですね。

たとえば、ある大学生が、今後のキャリアのビジョンを明確に決めていたとしましょう。しかし、就職先でその希望がすべて叶うわけは当然ありませんし、社会情勢の変化が著しいのが現在です。学生の時に思い描いた具体的なキャリアプランをそのまま歩めることは100%ないといっていいでしょう。

ただし、「未来のことなんて何も分からないから、やみくもに就活をすればいい」というわけではありません。自分が心から楽しめる原動力は何か。つまりモチベーションとなる「好きの源泉」は把握した方がいいと思います。

Q:どうしてでしょうか?

私自身のキャリアを今一度振り返れば、まず就活をほぼしていませんでした。というのも、ガソリンスタンドのアルバイトにハマっていたからです。

バッテリー交換やオイル差しといったオプションを獲得すると、インセンティブ報酬がもらえるんですね。その数字が積みあがっていくことに熱中してしまって、新卒の初任給以上は稼いでいましたね。(笑)

当時は就職氷河期の真っ只中です。友達からも「やばいぞ、やばいぞ」と言われる中で、なんとなく参加した大手広告会社の説明会で「広告ってなんだか面白そう」と軽い気持ちで、一応広告会社を目指すことにしました。

Q:広告会社の中でもアイデムに魅力を感じたのはなぜでしょうか?

求人リストを見ていると、広告業界のなかで「アイデム」が一番上にあったからです。あいうえお順の「あい」なので。(笑)

かなり不純な動機で応募したわけですが、だからとって自分のキャリアが充実していなかったかと言われれば、そうではありません。

運よくといえばそうなのですが、「好きと仕事がうまくマッチした」ということでしょうか。自分の好きの源泉はガソリンスタンドのアルバイトの時もそうですが、よくよく考えれば、「目立ちたい。そして数字を上げたい」という部分だったと思っています。

入社後は埼玉県の一つのエリアの広告営業を任されましたが、「売り上げでナンバーワンをとる」とひたすら目標達成に取り組めたのも、そうした特性があったからでしょう。

好きの源泉さえマッチすればやることが変わっても活躍できる

Q:やることが変化しても、「目立ちたい。数字を上げたい」を源泉にしてキャリアを積んできたということですね。

はい、その通りです。ただ、一つだけ断っておきたいのは、長いキャリアの中でその源泉は役職や立場などによって変化しますし、アップデートされていくということです。30歳、40歳になって求められる仕事のレベルが上がっていくなかで、「目立つこと。数字を上げること」をずっとモチベーションの源泉にしてその達成を第一に考えていては、成果はあがりませんよね。

広告営業の次に経験したweb事業では、「売れない事業をどうやって伸ばすか」という視点を持つようになりました。新規事業であるJOBRASS事業では、立場的にも売り上げに対する利益率を高められる組織作り・事業づくりが必要と気づき、そこに注力しましたし、そこに楽しさを見出したわけです。

何事も必死にやってきたわけですが、すべてが順風満帆というわけではなく、JOBRASS事業では営業がうまくいかずに責任者をはずされた苦い経験もあります。そうした非常に苦しい時期もありましたが、なんとか踏ん張れたのは、根底には「仕事が好き」があったからだと思います。

でも根本にはやはり「目立ちたい」という気持ちが今でもあるのかもしれません。(笑)

Q:まさにこれまでの実体験がいまのキャリア観につながったというわけですね。

はい、そうです。

Q:学生が充実したキャリアを歩むために就活でどのように具体的に行動してほしいでしょうか?

ポイントは、やはりモチベーションとなる好きの源泉を知ること。それも抽象度をかなり高める必要があります。

好きの源泉の抽象度を高めてみよう

Q:たとえば、ものづくりが好きだから、それを起点に企業を選ぶという感じでしょうか?

いえいえ、もっともっと抽象度を上げてください。これまでの人生でテンションが上がった瞬間は何か。「人に褒められたこと」が共通しているとかそういうレベルです。

好きの源泉を突き詰めて自分が選ぶ仕事とマッチしていれば、どのような企業だろうが、自分がもともと希望していなかった職種だろうが、ファーストキャリアはどこでもいいというのが正直なところです。好きの源泉が共通していれば、転職して全く違う業界や業務でキャリアを積み上げるの選択肢の一つでしょう。

冒頭の学生の話にもなりますが、「頭で考えすぎる学生」が「頭で考えすぎる就活」を脱却するためのヒントにつながるかもしれません。つまり、好きの源泉を中心にして行う就活では、自分が思いもよらなかった業界や企業に出会えることだってあるというわけです。

マッチ度としては、思いもよらないからといって低いわけではなく、好きの源泉と仕事が合致しているので、必然的に高くなるはずです。

まずは、自分の足でいろんな業界や企業を見て、多くの人とコミュニケーションをとることです。食わず嫌いはダメです。可能性を自分の頭で決めつけない。五感を大切にしましょう。野菜ばかりでなく、肉もガツガツ食べましょう、ということです。

Q:何事も「実体験に基づいて考えて、行動しろ」ですね。そうしたキャリアを歩まれた佐川さんらしい非常に納得感のあるアドバイスです。

思い描いたキャリアではないかもしれませんが、後々になって振り返れば、充実したキャリアが積みあがっているはずですよ。

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