キャリア講義
自分にとって幸せな会社は誰にでもあるはず|仕事は選り好みせず挑戦意欲を優先しよう
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渋谷 綾子さん(エル・フォート 「化学系学生のための就活」責任者)
Ayako Shibuya・大学卒業後の2002年、設立3年目の広告会社エル・フォートに新卒入し企画営業を担当。2006年に転職をするものの、2008年にエル・フォートへ復職。2012年から化学系人材関連の事業を担当し「化学系学生のための就活」のWebサイトを立ち上げ、事業責任者を務める
Q.学生時代はどのような軸で就活に臨んでいたのですか。
軸は2つありました。まずひとつは広告関係の仕事に就くことです。当時は広告業界を志望する学生が大変多く、私もその一人でした。広告のコピーやCM制作の現場などに興味がありました。もうひとつの軸は、せっかく働くのだから自分の存在意義をしっかりと感じられるような環境で働きたいということでした。
Q.渋谷さんが就活していた2000年代初めは就職氷河期の真っただ中ですから大変でしたね。
新卒で就活するのは1回限りなので他の年と比較できず何とも言えませんが、厳しい環境だったとは思います。企業が実施する会社説明会も、大きなホールで数百人、数千人規模でおこなわれていることも多かったです。
そのような中で、とある大手企業の会社説明会が深く印象に残っています。それは、説明会最後にトップの方が「あなたが幸せになる会社が絶対にある」とおっしゃっていた言葉です。大きなホールで1,000名近くが参加している説明会でしたが、一人ひとりにお話しくださっているように感じました。
人はそれぞれ異なる価値観を持って生きているのだから、仕事に関しても好き嫌いや、苦手や得意、ハードだと感じるポイントなどはそれぞれ違うはず。だからこそ誰かが決めた価値観ではなく自分の価値観に基づいて進めれば、自分にフィットして自分が幸せだと感じる仕事や会社がきっと見つかるはずと思うことができました。
Q.それで実際に幸せになれる会社を見つけたわけですね。
そうですね。エル・フォートは1999年の設立なので、私が入社した2002年は会社ができてまだ3年目。当時は主に採用広告を扱い、他にも企業の採用パンフレットや採用ホームページなどの制作をおこなう広告代理店でした。
会社ができたばかりで新卒採用は私が初めて。社長直属の形で働き、早く仕事ができるようになりたくて毎日必死だったので、自分の存在意義に悩むなんてことは一切なかったです。その意味で就活の軸として望んだ2つの条件はかないました。
当時は営業として飛び込み営業やテレアポに奮闘する毎日でした。採用を考えている企業に出会えるように数をあたり、たとえ採用の予定がなくてもコンタクトが取れた企業には定期的に連絡や提案を行いました。就活中は、正直なところ営業は大変そうと思い込んでいたのですが、やっているうちにこの仕事の醍醐味が分かるようになりました。
そのきっかけのひとつが社長の言葉です。採用広告は小さなスペースだとしてもとても重要なもの。仕事の選択という人生を左右しかねない場面に必要とされるものだし、企業の成長を支えるのはそこで働く人。採用広告を通じて、私たちはその会社の発展やそこで働く人々の人生に関わっているということを教えてもらいました。
受注した広告は、社長やデザイナーに相談をしながら、企画やコピーライティングにも携わりました。営業だけでなくクリエイティブや、プロジェクト一つひとつに主体的に関わらせてもらえたことで、仕事に対する責任感が強く芽生えるようになりました。アイデアや働きかけ次第で、企業の採用結果が大きく変わるということを経験できましたし、まさに自分の存在意義を感じられる日々でした。
Q.その後いったんエル・フォートを離れて、1年半ほどで再び戻られた経緯は?
5年ほど仕事をしているうちに、より大きな企業で力を試したいと思うようになりました。それで転職をしたのですが、小規模な組織で責任と権限を与えられて自分で動くエル・フォートでの仕事スタイルが好きだったし自分に合っていたということにあらためて気づき、またそういう組織で働きたいと思うようになりました。
同僚に伝え、社長に「もう一度お願いします」と自分の正直な気持ちを話しに行ったら、「外で経験したことをさらなる自分の糧として、エル・フォートで頑張ってください。それが、お世話になった会社への恩返しにもなるのだからね。一緒に頑張ろう。」と言っていただき、エル・フォートに復帰しました。
任された目の前の仕事を頑張ることが初めの一歩
Q.ファーストキャリアのスタート、転職、そして復職というキャリアを歩んでみて何を得ましたか。
仕事と自分との向き合い方について多くを学びました。人によっては、ファーストキャリアで100%自分の望みをかなえるのは難しい状況があるかもしれません。ですが自分で決めた会社ならば、まずは任された目の前の仕事を頑張る。それがキャリアの始まりです。
自分が何に向いているのか、自分はどんな力を持っているのか、若いうちは分からないもの。だからこそ、選り好みせず目の前の仕事をやる。回ってきたチャンスを逃さずものにする。そうして続けていくうちに自分の得意も苦手も好きも嫌いも分かってくるし、まわりもあなたを理解します。そうすると仕事が少しずつ楽しくなってくるはずです。
Q.仕事を通して自分を知ることができるわけですね。
仕事を通して新たな自分に気付いたり、可能性が広がっていくはず。そのためにも今の自分自身を理解することが重要なのではないでしょうか。
満足できる就活とは、自分を知ることと企業を知ること、そしてその両方をすり合わせて結論を導くことだと思っています。自分を知るためには自分の価値観をより深く理解することが重要です。企業を知るにはより多くの情報を集めなければなりません。
集めた情報を整理しても何かを判断できないときは、まだ情報や行動が足りていないということなのかなと。判断をするために足りない情報を集めたり、自分への理解を深める努力が必要です。
Q.それでは、今後求められる人材像についても教えてください。
一番大切なのは行動です。目の前に現れた機会があれば選り好みせずにとにかく動いてみる。動く前から勝手に判断してしまわずに、やってみなければ判断できないというスタンスを保てることが大事だと思います。
考えることは大切ですが、頭の中で考えているだけでは物事は前に進みません。肝心なのはどう動くかです。それができないと仕事においても支障が出ます。実現したいことや問題解決のためには、考えたり悔やんだりしているだけではどうにもなりませんので、できることから一つひとつ行動をする必要があります。
生の企業情報を集めるには少しでも多くの大人と会い話をすること
Q.企業の情報をより多く集めるにはどうしたら良いでしょう。
現在は情報を得る手段がたくさんあります。ただし今は売り手市場のなかで就活生側が情報収集の範囲を狭めてしまう傾向があります。あまり自分の適性や志望を限定しすぎず、より多くの会社の情報に触れてほしい。その過程でより多くの大人と会い、話を聞いてください。
説明会の機会を生かしても良いしインターンシップを活用する手もあります。とにかく自分のなかだけで完結しないで多くの意見、話を聞いて判断してほしいですね。
Q.ありがとうございました。最後に就活生へメッセージをお願いします。
20代の失敗はいくらでもリカバリーできます。それにまわりの大人たちもみな失敗を経験しています。ですから失敗にどう対処するかの解決策も持っているから大丈夫。それよりも行動せずにいつまでもモヤモヤを引きずる方が問題です。
就活においても失敗を恐れすぎず、自分の価値観にしたがって行動しチャレンジしてみてください。