キャリア講義

夢へのステップを逆算してキャリアを描こう|期待値を理解し超えることがキャリアアップの近道

薗田1

薗田浩樹さん(グローバルクリック・代表取締役社長)

Hiroki Sonoda●青山学院大学大学院国際政治経済研究科修了。国際会計事務所のアーサーアンダーセン勤務を経てオランダの人材サービス会社ランスタッドの日本法人立ち上げに携わる。その後はカタリナマーケティング財務経理本部長、マッキャンワールドグループCFOを歴任し、2019年にグローバルクリックを設立。

Q.まずは薗田さんのご経歴を簡単に教えてください。

大学を卒業後、新卒で入った会社を1年で辞め、紆余曲折あって伊藤忠商事に当時としてはめずらしく派遣社員として勤務しました。総合商社の新人正社員とほぼ同じ仕事を任されるほど評価される中で、働くうえで大切にしたい軸を4つ定めました。

まずは世界共通語である英語を使いグローバルに働くこと、ファイナンス・国際会計の知識を強みとする、広い業種にクライアントを持つサービス業に従事する、成長組織に属しともに自分も成長する、の4点です

薗田2

その軸をもとに当時世界5大会計事務所アーサーアンダーセンのコンサルティング部門に入社、9年間で財務経理や経営管理のいろはを学びました。その後は外資系のファイナンス・ディレクター職にヘッドハントされたのち、世界的広告代理店のマッキャン・ワールドグループでCFO(最高財務責任者)に就任しました。

目標としていたファイナンス部門のトップを合計10年以上経験し、これからは若い人たちがより早く自分自身の未来を国際的視野で実現できる仕組みを提供したいと思い、英語を起点としたキャリア構築のプラットフォームとなるグローバルクリックを設立しました。

Q.素晴らしいご経歴を積まれてきたのですね。転職をするうえでの基準となるものは何かありましたか?

伊藤忠商事での勤務経験をもとに、会社の方向性をCEO(最高経営責任者)と同じ目線で担う役割のCFOに将来はなりたいと考えるようになりました。それが自分のキャリアの目標であり基準となるものでした。

そこまでどうやって上り詰められるかと考えたのですが、外資系の企業は人材の流動性が一般的な日系企業よりも高いので、早期にキャリアアップの機会があるのではと思いました。当時日系企業はひとつの企業の中で複数の職種を経験してキャリアを積み重ねていくケースが多かったのですが、外資系の企業ではキャリアを積み重ねるためには専門性を高めて、その中で実績を作ったうえで別の会社に転職していくような形がキャリア構築のスピードを獲得するのではと思いました。

CFOになる目標を見定めたうえで、所属企業で求められる実績を上げ、それを武器にステップアップの転職をすることで着実にキャリアアップを重ね、夢をかなえました。

Q.確実に実績を上げてキャリアアップを重ねてこられた姿が本当に素晴らしいです。この「実績を上げる」ですが、どのような工夫をされてこられたのでしょうか。

会社から自分への期待値を理解して、その「期待値を超える」ようにしてきたことですね。自分がやりたいことだけを頑張っても、必ずしもそれは評価されません。会社から何を・どれだけ期待されているのか、つまりは「まず期待値を理解」したうえで、少しだけその値を「常に」超えることを意識してきました。それが評価や実績につながってきたのだと思います。この「期待値を理解する」ことは簡単ではないのですが、今のポジションに関係なく意識してみることをおすすめします。

日常でおこなう小さな業務、たとえば「会議に使う書類のコピーを取る」ことひとつにおいても同じです。どんなスピードで・どれだけの正確性が求められているかを理解して、相手の期待に応える。これは上司でありチームであり、お客様相手かもしれません。すべての業務で期待値を理解する癖をつけると、その達成に向けて必要なことを考えるという次のステップに無駄や勘違いもなくなり成果が出やすくなるのではと思います。

薗田4

さまざまな企業に直接触れることで、企業に共感できるか探っていこう!

Q.ここからは就活生にフォーカスした話に移りますね。まずは就活で学生が企業選びをする際にどのような点を大切にすると良いでしょうか。

「その企業でおこなうサービスと事業の方向性に共感できるか」を重要視すると良いと思います。

日本には非常にさまざまな企業があります。また、そのどれもがさまざまな企業とかかわっています。まずは目に見える有名企業でもかまわないので、自分が興味を持てる企業や、事業内容・サービスに共感できる企業をとりあえず一つ定めてみてください。それが見つかったら、その会社のホームページやIR情報・Webサイトなどからその企業の取引先や関連企業など、かかわる企業を紐解いてみましょう。その業種で一番有名な企業だけが自分にベストとは限りませんからね。

そうすることでさまざまな企業を知ることができます。その中で興味を持てた会社があればその企業を深掘りして調べてみてください。そしてその企業でおこなっているサービスと事業の方向性に共感できるか? を企業選びの1つのものさしにすると良いでしょう。

Q.企業を深掘りして調べる際、どのような手法が効果的でしょうか。

実際に働いている人の話を聞くのがもっとも良いと思います。OB・OG訪問などですね。就活が本格化する前の3年生の夏など、早いうちに訪問をおこなうほうが早期に就活の方向性や自分発見もできておすすめです。リクルートスーツを着ないで訪問できるのがベストです(笑)。

この時は、先輩社員に自社の自慢できることや逆に苦労することなど、ポジティブな面とネガティブな面の両方について質問してみましょう。また、1人ではなく複数人の社員に同じ質問を投げかけるのもおすすめです。部署別、年代別などで感じる苦労も違うはずです。さまざまな面にきちんと目を向けることで、企業のリアルな像が見えてくるかもしれません。

自分の将来像をまず描こう! そこから逆算してファーストキャリアを考えることが大切

Q.学生が社会人としての一歩を踏み出す大切なファーストキャリアですが、ここで必ず持っておくべき視点について教えてください。

先に、20代後半~30代頃に自分がどんな姿になっていたいかをできるだけイメージしておきましょう。そうすると、それがその企業に入ったあとに目指す姿になるわけです。

ここで持つ夢は「海外で働いていたい」など、多少漠然としたものでもかまいません。しかし「この企業で働けばその最終的な夢に近づける」と、その会社で働く目的を持ってモチベーション高く仕事に励めるでしょう。もし仕事でつらいことがあったときでも、すぐに辞めるという決断には結びつかないはずです。

Q.そうはいっても、社会人経験のない学生が20代後半の姿を考えるのも難しい気がします。夢を考えるためのヒントなどはありますか?

もっともヒントになるのは「自身の興味」でしょう。まずは「興味」を夢へと昇華させ、この興味をもった部分をさらに具体化してみましょう。たとえばクリエイティブな業務に興味があったとしても、SNSでの訴求がやりたいのか、はたまたITを駆使した仕組みの開発や広告のデザインなど、何がやりたいのかは人によって違うはずですよね。

興味が具体的になってくると、それに行くためには何が必要かというのが逆算できるようになります。

ひとつの例

映画監督になりたい!

テレビや映画関連の会社でディレクターになる

まずは番組ADになる、もしくは映像やデザイン制作に近い仕事をする

映画関連会社・テレビ局関連・CM制作会社などに入る

学生の早いうちに関連企業でアルバイトをする、企画を作るサークルに入る

自分の夢というゴールへのステップをどれだけ逆算して考えられるかが大切ですね。

こう聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、実はこれ、恋愛の作戦立てと同じなんですよ(笑)。気になる相手を射止めるために、どうすればデートに行けるか、気を惹けるか真剣に考えますよね。やるべきことはそれと似ているかと思います。とにかく全力で考え、作戦を練りましょう!

最近の事例では、メジャーリーグ・エンゼルスの大谷翔平選手も、これと同じようなことをやっていました。8球団からドラフト1位指名を受けるという夢のために、やるべき8つの大きなアクションとさらにそれぞれから派生した8つの細かいアクション、合計64個のアクションに分解しマンダラチャートを作成する作業を高校1年生でおこない、実践していました。これも、ゴールまでのステップを逆算するのに役立つかもしれません。自分の未来に思いを馳せるのはとてもわくわくするはずです!

Q.ありがとうございます。最後に、今就活をがんばる学生に対して薗田さんだからこそできるアドバイスをお願いいたします。

「Where there is a will, there is a way」意志あるところに道はある

この言葉を送ります。

就活において、誰からどう評価されるかはわかりません。不安だと思いますがそれはみんな同じで、誰もが自分を模索するのが就活なのです。不安で模索するからこそ自分の未来へのイメージや意志をもって就活に臨むことが大切なのです

しっかりとした意志をもっていれば、きっと自分を必要とする会社と出会えます。逆に、不採用になった会社は「こんなに意志のある自分を落とすなんて見る目ないな!」と思うくらい強い気持ちでいましょう(笑)。会社は日本には数えきれないほどありますからね。

こんなにじっくりと時間をかけてさまざまな企業と向き合えるチャンスは就活だからこそです。だからこそ、意志をもって自分の未来に前向きに就活に臨んでほしいですね。

薗田3

記事についてのお問い合わせ