キャリア講義
会社の成長がおのずと自らの成長となる|逆算と積み上げでかなえたいキャリアに向かって進め!
- 7433 views
目次
中島 悠揮 さん(HRクラウド 代表取締役)
Yuki Nakashima●2009年東証一部上場の大手人材会社に入社。2011年に楽天に転職をし、入社1年半で9,303名の中から選ばれる楽天賞を受賞。2014年に独立しRoots(現HRクラウド)を設立、代表取締役に就任
Q.学生時代はどのような軸で就活を進められていたのでしょうか?
もともと「30歳までに1億の会社をつくる」という目標がありました。ではそのためにはどうしたらいいか?と考えると、まず1億売るには3年はかかるだろうと見込み、では27歳で独立をしようと思っていました。となると、独立するまでに私にある時間は丸5年しかないということ。ですから、5年で起業家になれるような実力をつけるというのが私の就活の軸でした。
そこで企業選びにおいてさらに軸を細分化し重要視していたのは以下の2点です。
そもそも私はあまり世の中のことを何も知らなかったので、まずはいろいろな業界や企業を知りたいと思っていました。それから、社名ではなく「中島悠揮」として戦いたい、そしてそれによって自分の力を伸ばしたいとも考えていましたね。
1つめの軸に関しては人材業界と広告業界が当てはまる、そして2つめの軸に関しては、それほど規模が大きくない会社が当てはまるだろうというロジックでファーストキャリアの企業を決めました。
Q.そのロジックの部分をもう少し詳しくお伺いしたいです。
おそらく、就く職種としては営業職になるであろうと考えていました。そうしたときに、さまざまな業界に提案ができ入っていけるのは人材・広告業界の営業職なのではないかと思いついたのです。
そして「自分の力を伸ばす」、このためにはコンサルティング要素のある営業がしたいと考えていました。たとえば人材業界で考えると、業界最大手のリクルートであれば、そのメディアを武器として提案ができます。でもこれはメディアやブランドのパワーであって「中島」のパワーではないのですよね。
でもメディアの名が知られていなければ、メディアを武器にした提案はできない。相手の潜在的な課題を汲み取るなどコンサル要素が必要な提案の仕方になると思いました。私個人の力で戦い、その力を伸ばしていけると感じたのです。
柔軟性と高速PDCAが成長のカギを握る
Q.では、学生が企業選びをするうえではどのような視点を持っておくと良いとお考えでしょうか。
その企業の成長性ですね。どの市場も黎明期・成長期・安定期・停滞期はあるもの。そしてそのスパンはITの進歩により短くなっています。だからこそ、その業界が今どのフェーズにあるのかを見極め、加えてどこまでの成長ポテンシャルを秘めているのかを理解するべきだと思います。
これは一概に「成長期にある業界・企業を選べ」ということではありません。たとえば成長期に属している業界・企業だとしても、それほど市場が大きくなければ大きな成長は見込めませんよね。だからこそその企業がこれからどれくらい成長するのか、そのポテンシャルの高さを見極めることが重要だと思っています。
しかし成長ポテンシャルが高いということは、今後その業界はプレイヤーも増えていくということ。その分生き残りも難しくはあるでしょう。それでもやはり業界の成長ポテンシャルにかけて飛び込んでみるのもおもしろいと思います。
Q.今お話に挙がった「ポテンシャル」。ここはどのような点から判断すると良いでしょうか?
IRですね。決算説明会資料などに市場の動向が記載されているはずです。その業界のトップの企業のIRを見て、そのマーケットがどう推移していくかを見てみると良いと思います。
Q.中島さんもおっしゃっていましたが、成長性が高い企業では生き残りも難しいと思います。学生が生き残っていくために必要なことは何でしょうか。
柔軟性と高速PDCAだと思います。むしろこれらがないとダメですね。
今はビジネスモデル自体がころころと変わる世の中になってきています。企業としても体制やビジネスモデルの変化をタイムリーにしていかなければならない。そうなった時、自社の社員に対し「今日までは○○をしてもらっていたけど、明日からは●●をやってくれ」と指示を出さざるを得ないことも可能性としてあるわけです。
そうなったときに、「どうして自分がこんなことをやらなければならないんだ」と負の感情を持ってしまうのはもったいないことであり、タイムロスでしかありません。「今までやってきたことを活かしてこれからの仕事もがんばろう」と思える柔軟性が非常に重要だと思っていますね。
Q.高速PDCAについても詳しく教えてください。
「何がうまくいってうまくいかないか」、それはやる前から答えがあるものではないと思います。とりあえずまずはやって試して、うまくいかなければ何がダメだったのか検証して改善してというPDCAを、週次レベルのスパンで回していくことが成長のスピードアップになるはずです。
どういったことでも素直に受け入れ前向きに取り込んでいくという柔軟性、そしてPDCAを高速で回していくこと。気づく人もいると思いますが、これらは別に突出した能力というわけではないのですよね。どちらかというと習慣です。生き残り、また成長のためにはこれらが必須ではありますが、誰にでもできることでもあるのです。
まずキャリアを逆算し、経験やスキルを積み上げ、そしてまた逆算を繰り返そう
Q.中島さんは「仕事とは楽しいもの」というお考えをお持ちですが、仕事を楽しいと感じるためにどうすればいいかお伺いしたいです。
会社の目指していることと自分の目指していることが一致しているかが大事だと思います。
これは「やりたいこと」という浅さではなく、人生を通じて社会に対してどういう影響を与えていきたいかというくらいの深いものが、企業の理念とマッチしているかということ。ここは実はすごく重要で、これをベースに就活を進めていくべきだと思っています。
会社の考えに共感し成し遂げたいことに共感できていれば、仕事も勝手に楽しくなっていきますし、働くだけでやりたいことができることになりますから。
Q.そういったことを踏まえ、就活時にキャリアの観点から持っておくべき心構えはありますか?
20代後半に何をしているかを考えることですね。私自身もそうでした。「27歳で独立する」ために、ではその間の5年間で何をやるべきか、逆算でキャリアを考えていきました。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、これって電車に乗るのと同じことなのですよね。出かけるときは、目的地に何時にたどり着きたいのかを考えて電車に乗る時間を決めますよね。電車の時間が決まればそのために家を何時に出ればいいのか、何時に準備を始め何時に起きればいいのかが決まります。キャリアも同じことで、目標地点にいつたどり着きたいのかによってその間にいつまでに何をやるべきなのか、逆算して決める必要があるのです。
けっこう人生はこのような逆算と、あと積み上げが大切なのですよ。
Q.今お話に出た「積み上げ」についてはどういうことでしょうか。
自分の立ち位置を常に理解してやるべきことを積み上げていくということですね。
たとえば今私が22歳だとして、5年後の27歳、「独立する」という目標に向かって逆算で1年ごとにやるべき目標を決めますよね。まず1年目、「今年これをやろう」という目標のもと、やるべきことをやります。そして2年目ですが、1年前に立てた目標をそのまま実行してはいけないのです。なぜなら市場も1年前とは変わっていますし、自分の成長角度も予想とは変わっているかもしれませんから。
当初の予定や予想と変わっていることがあれば、当然やるべきことも変わりますよね。だから、2年目が始まったタイミングでもう一度自分の立ち位置を正しく理解し、27歳に向かって今からやるべきことを再度逆算し各年の目標を立て直す必要があるのです。
社会人として1年も働けば、自分の立てた当初の20代後半像をかなえるためにはより具体的にどうすればいいかがわかってくるはずです。常に自分の立ち位置の理解とそれに伴って細かな目標・やるべきことのアップデートが必要だということですね。
Q.たしかにそうですね。実際、逆算は単なる予想からなるものですし、働いてみてからわかることもありますよね。
逆算だけなら比較的簡単にできるものです。しかし実際目標に向かって走ってみると、逆算で考えた予定とずれることも多い。だからこそ自分が実際にはどれだけ積み上げられたのかを考えなければならないのです。
会社の看板を磨く意識こそ自分のキャリアに直接影響する
Q.自分のこれまでの積み上げたものを逐一確認し、逆算をアップデートしていかなければならないということですね。非常に参考になります。
あと、多くの学生がけっこう抜けているなと思うのは、自分のキャリアばかりに目が行ってしまっていること。その仕事に取り組むことで何のスキルが自分に身に付くかなどを考えるだけでなく、もう少し視野を広げ俯瞰的に物事を見るとさらに良いと思います。
実際会社が伸びていけば会社の市場価値が上がり、その分自分の市場価値も勝手に上がっていくものです。
部活にたとえるとわかりやすいのですが、たとえば、高校野球の強豪校に在籍していると、「強豪」という看板や伝統を汚さないために、つまり組織のために練習量を増やすなどして努力しますよね。
その逆も然りで、弱小校でも強豪校に勝ちたいと努力することもあったでしょう。すると自ずと自分自身のスキルも上がっていきませんでしたか。つまり組織を伸ばすために努力していたのが、いつの間にか自分の成長へと変わっていったということ。
就職してからも同じで、自分だけではなく入った会社の看板・組織を磨く意識を常に持ちましょう。「どうやったら自社を成長させられるか?」そう考えて行動することで、それが企業の成長につながり、延いては自分の成長につながり自分のキャリアに直接的に影響します。今はここが抜けてしまっている学生が多い印象ですね。
Q.たしかに、部活と置き換えるとこの話は非常に納得感がありますね。
案外学生はみんな知らないのですよね。「自分が」「自分が」と自分のキャリアに寄りすぎるのではなく会社の看板を磨いていく意識を持つ。そのためには「自社を大きくしたい」という主体的な意欲が必要、そのためには先ほどお話ししたように企業理念に共感できていることが必要、ということです。すべては一本の線でつながっており、こういう就活をしてほしいですね。
Q.ちなみに、自社の成長のため、企業からはどのようなことが新卒社員に求められていくのでしょうか?
情報感度の高さは重要になってくると思います。今、InstagramやTikTok、イチナナライブなどのSNSが非常に盛んですよね。そこから情報発信や情報収集をする機会が増えてきていると思います。でも、私のように35を超えてくるとその運用や活用は少し億劫になってきて、徐々に離れてしまうのです。
でも、そういった盛んな活動がなされている場所からこそ新しい市場が生まれて、マーケットが変わっていくもの。しかし年をとればとるほどそういったことをやらないので気づけないのです。そうして気づいたら新しい波が来てマーケットが変わってしまっている恐れもあります。
新しい文化をつくり出すのは若い人たちであり、若者だからこそわかることを社内外で発信していくことが今後の企業の成長のためには大切であり必要だと思っています。