キャリア講義
成果を出すカギは公私ともに素の自分でいられること|企業の看板はキャリア形成にかかわらない
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荒籾 周平 さん(Scale Management 執行役員COO)
Shuhei Aramomi●2013年早稲田大学政治経済学部卒業後、大和証券にてリテール営業、投資銀行部門に従事。2018年からアパレル系企業にて営業部門・物流部門責任者としてEC運営に従事。その後、ストライプデパートメントへ経営統合のため転籍し、PMIを推進。営業企画部長、営業・開発部門の責任者を務める。2020年よりXTechからの出向にて、ミクシィとの合弁会社であるクロスポッケの代表取締役に就任。2022年3月よりScale Management(スケールマネジメント)執行役員COOとして、事業全般の統括を担当
Q.荒籾さんは現在Scale Manegementの執行役員COOとしてご活躍されていますが、Scale Manegementへの入社を決めたその背景について教えてください。
就活時から、キャリアの軸として「自分が成長できること」を掲げていました。そして人材育成に携わりたいという思いのもと企業選びを進めてもいました。人財が育つことはそのまま企業の成長に直結しますから。
加えて、私には年の離れた弟がいるのですが、やはり肉親ですから私は彼の良いところをよく知っています。その個性をどうにか伸ばしていけないかと思うようになったのです。
やはり個性を伸ばしていきながら働ければ幸福度は上がりますし成果も生み出しやすくなります。個性を伸ばす、つまり成長させたいという思いがあったことで、今はこのScale Management(スケールマネジメント)への入社を決めました。
Q.ご自身が成長したいという思いについて、もう少し具体的にお伺いできますか?
私自身が何か1つのものをずっとやり続けるタイプではないのですよね。いろいろなことを死ぬまでやり続けたいと思っています。
いつかどこかのタイミングで「何か」がやりたいと思えたときに、躊躇なくそれができるようにしたい。たとえばスキル不足でそれができないという事態が起こらないようにしたいのです。
だからこそそのときに備えて常に成長していたいのです。ジェネラルに、スキルや経験を積んで成長していきたいと考えています。
やりたいことを諦めない! 重要なのは会社そのものよりそこで自分が担う役割
Q.では学生に対しては、どのような視点で企業を選んでほしいと思っていますか?
自分のできることとできないことに縛られすぎずに、「5~10年後にどうなっていたいか」ということから逆算して考えてほしいですね。企業選びのフレームワーク、Will・Can・Mustでいうと「Will」の部分に重きを置いてほしいです。
そのうえで、どうしても学歴やスキルの有無であきらめてしまうこともあると思うのですが、掲げる夢そのものは諦めないでほしい。
会社に入るのはゴールではなくて、自己実現するために会社があるのです。どの規模で・どれくらいの知名度かなど、その企業の看板は関係ありません。大事なのはその企業でどういう役割を担えるかです。
なぜなら基本的に企業における職種は共通しており、その職における成長は企業の看板ではなくどんな役割で仕事に臨めるか、どんなマインドやスキルを身につけられるのかにかかっていますから。
Q.「5~10年後にどうなっていたいか」、社会人でも若干難易度が高いですが、就活生がそれを考えるコツは何かありますか?
簡単にいうとロールモデルを作ると良いですね。まずは「なんとなくかっこいいな」と思う程度の人を見つけるのでかまいません。
しかし「かっこいい」「この人になりたい」と思える人でも、社会人なりたての頃から順風満帆にキャリアを歩めていたわけではないでしょう。ここまでのキャリアや地位を築くまでにも順があります。
著名な人ならインタビュー記事があがっていることもあるでしょうから、その経歴を見て、これまでそれぞれのフェーズでどんな経験を積みどんなスキルを身につけてここまで来れているのかを見て、それを追っていくようにするとより自分に置き換えて逆算がしやすいですね。
このときは、感情などのエモーショナルな部分もきちんと着目すると良いです。その人がどのような考え方で生きてきて、どのようなマインドの変化があったのか。ここもキャリアを構築するには必要なものですから。
オンとオフで自分を使い分けないことが成果を出すカギ
Q.では荒籾さんにおけるエモーショナルな部分、ネガティブな感情から脱却してきた方法についてお伺いしても良いでしょうか。
ファーストキャリアは営業職から始まりました。当然ですが上司から厳しくいわれることもあり、悔しくて涙を流すこともありましたね。
しかし、仕事のストレス発散で始めたキックボクシングに没頭する中で、上司に対して縮こまってしまっている自分に気づいたのです。つまりは、プライベートの自分とオフィシャルの自分とのキャラクターが違うということ。
しかし、冷静に考えると、自分は今キックボクシングをやっていることもあり、物理的に上司より強いなと。それなら何を上司に縮こまる必要があるのだろうと思えたのです(笑)。
そう思えてからは、会社でも変に下手に出ずに自分の素を出して仕事に取り組むようになりました。すると、おもしろいことに営業の成績も伸び出したのです。
そこで気づいたことは会社の自分と普段の自分、公私でキャラクターが分かれていると成果は生みづらいということでした。たしかに周りで成果を出している人を見ていると、皆「会社の自分を作っている」ということはなかったのです。
Q.いかなる場面でも同じキャラクター、自分を貫いている人の方が成果を出しやすいということですね。
当時の支店長の言葉を今でも覚えています。
「家にいるときの自分と会社にいるときの自分とでキャラクターが違えば営業の数字は取れない」
自分で気づいてからは、この言葉に本当に納得しました。そのあとは、上司に対して臆することなく自分の意見を伝えたり、必要であれば論理的に反論したりもしましたね。
Q.上司に対して素の自分のまま、そのような姿勢で向かうのは新卒一年目からはなかなか難しい気もします。
ここは簡単で、学生のうちにいかにこのような経験ができるかにかかってくると思います。
アルバイトなどで社会人とかかわると、自分の知識の足りなさや視座を引き上げなければならなかったりと、自分の未熟な部分を認める必要が出てくるでしょう。未熟な部分は認めつつ、それを受け入れて議論や意見を交わし合う習慣をつけられると良いですね。
ここで勘違いしないでほしいのは、大人に噛みつくのとは違うということ。受け取った指摘などは飲み込みつつ、頭の切り替えをしましょう。
もらった言葉の中から今の自分や取り組みに必要なものを取捨選択して、建設的な話をすることが大切です。「こうやって言われたのは腹立つけど、これとこれとこれは一理あるな」といった感じです。
「この人は怖いから」「面倒だから言うこと聞いておこう」と、相手への態度を変えて切り捨ててしまうのではなく、学びになる部分を見つけられること。こういうことが癖づくと社会人になってからもキャラクターを変えずに接することができますし、成長も早くなります。
そして何よりこういうことができる人は成熟度が高いです。そして成熟度が高い人は、学生にはもちろん社会人でもめったにいません。皆、感情が顔に出てしまったりしがちです。
自分の色をそのまま出すことが巡り巡って働きやすさにつながる
Q.これも、学生のうちから身につけられるよう、すぐに行動にできるような具体的な行動例は何かありますか?
常に自分の意見や仮説をもつことです。そしてそのためにはできる限り社会人と話すと良いでしょう。
学生は、社会人に対してどうしてもある種のバイアスをかけがちです。私は学生、この人は自分より人生経験を積んでいる社会人。そうすると、どうしても「社会人であるこの人が言うことは私より正しい、自分は間違っている」と無意識にバイアスをかけてしまいがちなのですよね。
ここを一歩抜けて、「この人にはこういわれたけど私はこう思う」「こっちの方が合っているのではないか」と思うようにするべきで、そうでないと何事にも自分の色を出せないのです。
そして自分の色を出せないということは、それは素の自分でいられていないということ。これはやはり先ほどお話ししたような、社会人になってから成果を出せないことにもつながるのです。
Q.たしかにそうですね。すべてがつながっているのがわかります。
ただしこの話はあくまでも対人関係における話だとは留意しておきましょう。対人関係において、上司や仕事に対して、要はいかに猫を被らない・壁を作らないでいられるかということ。
会社でなくとも、猫をかぶって人に接したりするのは疲れますよね。だから、働きづらさや居心地の悪さを感じてしまうのです。そしてそれは最悪の場合離職につながる。
だからこそ、最初にお伝えした通り、会社の看板だけで入社する企業を決めるべきではないということです。
基本的なことができていれば自ずとチャンスは巡ってくる
Q.では、実際に入社してから働くとなったとき、荒籾さんから見て成長が見込める人材とはどのような人でしょうか。
「素直さがある」「挨拶ができる」「時間を厳守する」の3点がある人ですね。
素直さとは飲み込みが速く、物事をすぐ実践に移せるということ。そしてそもそもコミュニケーションの基本は挨拶であり、すべての関係はそこから始まります。
また、挨拶、つまりコミュニケーションを大切にしているということは他者に関心があるともいえますよね。
つまりは自分の中の知識や常識だけで物事を終わらせず、箱から出て知見を増やそうという意志があることにもなります。また時間厳守というのは、相手との約束を守るということですから、信頼関係の構築において基礎中の基礎です。
これらができているだけで、相手には覚えてもらいやすくなります。突出して何かができなくとも、尖った行動がなくとも、意外とこういった基礎的なことができているだけで記憶には残るものです。そしてそれがチャンスが与えられるきっかけとなる。
誰に仕事を振ろうか考えているとき、パッと思い浮かびやすくなりますし、基礎ができている人間には信頼が生まれますから、「仕事を任せたい・任せても大丈夫だろう」と思えるものです。
Q.ありがとうございます。最後に、学生に対してメッセージをお願いします。
企業の看板に囚われず、自分自身が目指すキャリアへ向かってください。欲望丸出しでOKですから、自分のなりたい姿を思うがままにイメージして、深掘りして、その姿に向かう計画を立てましょう。
その欲望や熱い想いは行動の源泉となります。やりたいことに忠実に、自分らしく行動してキャリアを切り拓いていきましょう。