キャリア講義
「働く」を真剣に考える習慣が就活の第一歩|合う・合わないはやってみなければわからない!
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目次
西元 涼 さん(TRUNK 代表取締役CEO)
Ryo Nishimoto●大学卒業後、新卒でDeloiteグループに入社。人事コンサルティング分野を担当し2年目に契約社数トップとなり新人MVPと全社MVPを同時獲得。4年目からは新規事業開発と採用業務を兼務。企業と学生双方が抱える採用の課題を知り、その解決のため2015年にTRUNK(トランク)を設立
企業詳細:コーポレートサイト
Q.学生時代はどのような軸で就活を進めましたか?
コンサルティングの仕事に就きたいというはっきりした軸がありました。父親が会社の経営者だったこともあって中小企業の役に立つ仕事をしたい気持ちがずっとあったからです。そのために、大学では経営学を専攻しました。
Q.具体的にはどのような就活をおこなっていたのでしょうか。
まずコンサルティング系の会社の長期インターンに参加しようと考え働き口を探しました。長期の有償インターンにしたのは、単にお金が欲しかったというのもありますが、もとから「やってみなきゃわからない」という思いが根底にあったので、きちんとその企業の業務を経験したいと思ったからです。
ただ当時は今と違ってインターンが一般的ではなく、どうしたら良いかもわからなかったので、大学の教授や友人、知人のつてを頼っていくつかのインターン先を見つけました。
大学2年の後半から3年にかけて複数の会社でインターンを経験し、そのなかで一番おもしろいと感じ、なおかつ自分がやりたい仕事に近い事業を手掛けていたDeloiteグループのトーマツイノベーションへの入社を決めました。
Q.インターンから就職までの流れは順調だったのですね。
インターンのおかげで事前に仕事の内容や会社の雰囲気は理解できていました。そのうえでこの会社に入ろうという気持ちが固まったので選考を受け、その後は順調にことが運び、大学3年の10月に内定をいただきましたね。
この会社に決めるということに悩みはそれほどしませんでした。おそらくこのインターンを経験して、実際に取り組む仕事や企業風土、社風などを理解できていて、それがあっての「行きたい」という決断だったからでしょう。
「すぐに仕事を辞めてしまう」会社や仕事を知らなければそれは当然ともいえる
Q.希望通りの形でスタートしたファーストキャリアですが、入社以降も順調なキャリアを歩めたのですか。
そうですね。就職先では大手企業から中小企業までを対象に社内研修や社員教育、人事制度構築などを支援する事業をおこなっており、私はそうしたサービス提供を必要とする企業を探してくる役割でした。入社2年目には獲得した契約社数がトップになり、全社MVPにも選ばれました。
Q.そのままキャリアを積み重ねても明るい未来が待っていたと思うのですが、なぜ起業を選んだのでしょう?
コンサルティング系の会社は就活においてそれなりに人気は高いほうです。その分優秀な人がたくさん入社してくるのですが、すぐに辞めてしまう人も少なくありません。
それはコンサルの仕事を何となくのイメージだけで選んでしまい、イメージと異なる面を受け入れられなかったからだろう。もしくは同じ「コンサルティング系会社」であっても、おこなっている業務は会社によって微妙に違い、風土や職場環境もそれぞれ違います。その中で自身に合った企業を選びきれなかったからだろうと、私なりに理由を考えました。
私の場合はインターンによって、その仕事に対しても環境に対しても「ここだ」と思える企業と出会え、活躍させてもらいながら働いてきました。しかし振り返ると周りは意外とこういう経験をしていなかった人が多いように思います。
でも、すぐに辞めてしまうのって会社側にとっても就活生側にとっても時間とお金の無駄ですよね。採用などの業務についた頃からそう思うようになりました。
Q.たしかにそうですね。これを解決するという方向性へシフトした結果が起業だったということですね。
はい。この現状をさらに自分なりに考えていくと、日本は学校教育と職業教育が分断されていて、職業教育が顧みられていない問題に行き着いたのです。だからこそこういった入社後のミスマッチやそれによる早期離職などが起こっているのではないでしょうか。
学校教育の時間全体を100とすると、そのうちの5でも10でも職業教育に割くようにすればこの事態はだいぶ改善されるはずです。だからこの課題を解決する仕事を始めようと思い立ったわけです。
Q.やりたいことが明確で迷いがないですね。これは思い立ってすぐに起業したのですか。
社会にとって、あるいは次の世代のために解決すべき課題に気付いたのだから、自分がやらなければというのはありました。
もちろん社内で任されていた仕事とポジション上の責任もありますから、すぐにというのは無理でした。思い立ってから数カ月間の時間を空け、現状の仕事をきちんとやり切ってからきれいに辞めましたが、それ以外に期間を空けた理由はなく、感覚としてはやりたい仕事が見つかった時点ですぐにやめた感覚です。
企業が欲しがるのは自ら学ぶ意欲が旺盛な人材
Q.それでは次に、これから企業に求められる人材について教えてください。
目に見えるスキルやポテンシャルも大切ですが、一番求められるのは学ぶ意欲でしょうね。企業にとっては何かわからないことがあっても自ら学んで成長していける人材が欲しい。教えてもらうのをただ待っているような新入社員は企業も持て余してしまいます。
そういう意味では当社のサービス「Workschool」などのようなものを利用して、入社前・就活前から積極的にスキルや知識を身に付ける学生は、企業から見ても欲しい人材だと思います。
Q.就活生が社会人となった後にも、さまざまな障害が立ちはだかることがあると思います。せっかく入った会社で壁にぶつかり、辞めたいと思ったときはどのように対処したら良いのでしょう。
まず壁の原因、辞めたいと感じる理由を考えてみるべきです。問題は仕事内容にあるのか、会社の組織や人間関係なのか、もしくは待遇面なのか。要素はいろいろ考えられます。それによって対処方法も違ってきます。
たとえば仕事内容に馴染めない場合は、会社に担当替えを希望してみる方法がありますし、大企業なら定期的な異動の際に配置換えになるのを待ってみる手もあります。
ただし付け加えると、自分がやりたいことは変わっていくものだということは頭に入れておくべきですね。この仕事がやりたいと思って入社しても、時間がたち自分のなかでやりたい内容が変わってしまったり、この手法で解決できない場合には転職すべきでしょう。
そして人間関係に問題がある場合。これも異動などで解決するケースがありますが、組織上の問題は、これはなかなか変わりませんから辞めるという選択肢が現実的になります。
週2時間で良いから働くことや職業を真剣に考える時間を作ろう
Q.実態として職業教育をほとんど受ける機会がないまま社会人になる就活生たちに、アドバイスをいただけますか。
職業教育は早ければ早いほど良いのですが、大学生になってからでも働くということや仕事について少しでも多く考える機会と時間を増やすことで視野は変わります。たとえば1週間のうちに2時間でも3時間でも、仕事、職業、労働について真剣に考えてみる時間を割いてみてください。
いろいろ考えて、それでも自分がやりたいことが見つからないことだってよくありますが、見つけやすくする工夫はすべきでしょうね。たとえばさまざまな分野・いろいろな立場の人たちと少しでも多く話をすることで、自分がやりたい事柄を見つけられる確率が高まります。
ボランティアでも何でも良いから、日常の繰り返しだけでは出会わない人たちと接触する機会を増やせば、刺激を受けるし大切な気づきもあるはずです。
異業種の人を含むさまざまな相手との会食や交流に多くの時間を割く経営者が多いのですが、彼らはさまざまな人と話すことの価値を身にしみてわかっているからだと思います。学生にとってもその価値は変わりません。さまざまな人たちとの交流から視野を広げて、納得のいく就活につなげていってください。