キャリア講義
仕事への主体的な取り組みは「興味」から生まれる|視野を広げ可能性のある選択肢を増やしていこう
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目次
本間菜々子さん(メイテックネクスト・キャリアアドバイザー)
Nanako Honma●大学卒業後、教育系の広告代理店に入社。高校生の進学選択アドバイザー業などをおこなう中で、人材業界に携わりたい思いからメイテックネクストへ。企業の営業担当を務めたのち新卒学生のキャリアアドバイザーへと転向し、採用活動支援をおこなう傍ら、国家資格であるキャリアコンサルタントの資格を取得。現在は学生への支援をおこないながらエージェント全体のマネジメントも担当している
Q.まずは本間さんのご経歴を簡単に教えてください。
大学卒業後は教育系の広告代理店に入社し、高校生へ大学情報の提供やセミナーや合同説明会の企画などをおこなっておりました。私の就活は東日本大震災とちょうど同じタイミングだったので、就活が難航する中で「良い就職とは何か」「進路とは何か」を考え出すようになりました。
当初は「人材」については何もわかっていなかったものの、それがきっかけで「人の意思決定の瞬間に携わりたい」と人材業界に興味を持つようになりました。とはいえ働いたこともないのに人の進路について意見するのはなかなかやりづらいなと思ってしまいました(笑)。その点教育であれば私自身通ってきた道ですので、そこに介入することで良いキャリア支援ができればと思ったのです。
その後今の会社に転職をし、企業への営業担当として働いたあとに新卒向けのキャリアアドバイザーに転向し、現在に至るというような形です。
Q.かなりしっかりと考えられたうえで意思決定をされてきた印象ですが、転職を決意された背景についてお伺いしても良いでしょうか。
今お伝えした通り、私自身もともと人材業界に興味があったので、いつかは人材の世界で働きたいと考えていました。そういった思いを抱えて教育・広告の世界で働く中で、広告でできることには限界があると感じ出したのがきっかけです。
広告はあくまで「情報提供の場」であるため、一方的なイメージがありました。「良い情報を得られて良かったね」それだけで終わってしまう感覚です。もっと、一人一人の意思決定まで踏み込んでキャリア支援がしたいと思ったことから転職を決意しました。
Q.その中で現在の会社に入社を決断された決め手などはあるのですか?
そうですね、まずは現在の会社に出会い製造業やその技術者の支援に興味を持ちました。ものづくりはどんなに世の中が変わろうと絶対に廃れないものですし、電気自動車や半導体の誕生など世の中を大きく変える瞬間に立ち会えるのは、領域として非常に魅力的なマーケットだと感じたからです。
Q.ちなみに、本間さんは文系出身のようですが、どうして理系の道に進もうと思われたのでしょうか。
たしかに、私自身はこれまで文系だったのですが実は私の家族はだいたい8割が理系でした。身近に理系の人間がおり、そして仕事に対し一生懸命にひたむきにがんばっている姿を知っていたからこそ、理系が身近に感じられておりかつ文系の私でも支援ができたらおもしろそうだと感じました。
もちろん知識などもないですし、正直理系の世界に飛び込むことに不安はありました。しかし、キャリア選択においては文理問わず「本人の意志や価値観まで下りること」は変わらないと思っていたので、特段大きく困ることはないと考えていたのです。新しいことを学ぶ知的好奇心もありましたので、良い意味で「何とかなるだろう」と楽観的に考えていたところはありましたね(笑)。
「好き」は満足につながりがち! 興味や課題意識で意思決定をしよう
Q.ここまでキャリアの中で本間さんは2社をご経験されていますが、共通した「意思決定の決め手」はありますか?
「自分がそのときやりたいと思えたこと」ですね。仕事は一日のうちでも人生のうちでも1/3を占めるものですから、せっかくならやりたいことを仕事にしたほうが力が発揮できそうだなと考えていました。
Q.ちなみに、では学生はどのような点を大切にして志望企業や業界を見ていくべきだと考えていますか?
私自身も大切にしていることなのですが、これまでの人生で興味や課題意識を持ったことと、仕事が結びついているかどうかは大切にしてほしいなと思っています。
こういう姿勢であれば、仕事に対して主体的に考えられるようになってくるはずです。興味や課題意識があれば「これってどうしてなんだろう」「これをもっと良くするためにはどうしたらいいんだろう」と自ら考えますよね。
こうして自走していくことにその人の価値や組織を変える何かが生まれてくると思います。これが「好き」だけではそこで満足してしまうのではないでしょうか。興味があるからこそ、「もっと知りたい」「もっとより良くしたい」ともう一段階深掘りができ、それが仕事としてのおもしろさや組織を良くしていくことにつながると思います。
Q.自分の興味や課題意識を感じているものを見つけるコツなどはありますか?
簡単に言うと自己分析ですが、私自身の話を例にしてみますね。私はもともと音大を目指していたのですが、その理由は「音楽が好きだから」ただそれだけでした。考えた末に音大への進学はやめたのですが、大学時代のサークル活動などを振り返って考えると、私は音楽そのものよりも「音楽を通じて人に教えたり、より良い組織編成を考え組織を輝かせる」ことに興味があったと気づきました。
そうすると、私は「音楽の道に進む」ことよりも「人が本来の力を発揮するための道に進む」ことが向いているのではと気付けたのです。こうして音楽ひとつにおいても「やる」こととその「過程」どちらに興味があるのか、自分を掘り下げ興味の本質をきちんと見極めることが大切だと思います。
Q.人生で一度しかないファーストキャリアを決める瞬間ですが、だからこそ持つべき視点などはありますか?
とにかく、可能性のある選択肢はすべて初めに見ておくべきだと思っています。学生は働いたことがない分、現時点での自分の知識だけに引っ張られてしまうものだと思うのですが、それは非常にもったいないことです。ぜひできるだけ視野を広げてほしいですね。
たとえば、自分の視野の中に「メーカー」は入っていなかったとします。メーカーとは有形商材をつくる仕事ですから、広告などの無形商材よりも自由が少なくつまらないと思う人もいるかもしれませんよね。
でも、実はメーカーも顧客からの要望に応じてつくるモノをカスタマイズできたりと意外と自由度が高めなことを知らない人は多いです。思い込みで業界や企業のイメージを決めずに、成果物だけでなくその過程にまで目を向けてみてください。きっと興味や課題意識が広がるはずですから。
私自身がその狭まった視野で就活をしており、非常にもったいなかったと感じています。学生の皆さんにはそのような感覚を味わってほしくはないですね。
Q.メーカーも意外と自由度が高めなのですね。初めて知りました。そう考えると学生の可能性はどんどん広がりそうですね。
はい。ちなみにこういった過程を知るためには、OB訪問などをおこなってみるのはもちろんですが大学のキャリアセンターに行ってみるのもひとつの手ですよ。
大学の場合、自分のOBやOGがどの進路に進んだのかの情報が記録されています。自分の研究がどんな仕事に活きるのかわからない人は、先輩の進路を参考にすると良いでしょう。現在はさまざまな就活情報が横行していますが、その中で自分と同じことを研究してきた人は良いサンプルデータになりますよ。
「就活に正解はない」「情報は万能ではない」情報に振り回されすぎないで
Q.今のお話と関連しますが、現在就活市場にはさまざまな情報があふれており、学生にとってはそれが良くも悪くも大きな影響を与えていると思います。学生が情報の取捨選択をするコツはありますか?
これはなかなか難しいですよね。正直、人によるとしか言えないかもしれません。
そもそも就活に「正解はない」というのが原理原則です。これを言ったら合格!面接突破!とはならないですし、たとえばある企業でウケが良かった発言が別の企業だとまったく評価につながらなかったということもよくあるものです。
しかし、そんな就活とは逆に現在は「これを言ったら合格!」という指南寄りの情報が増えてきていると感じています。それに伴って学生も「答えを求める」傾向にあります。本当に当たり前のことなのですが、「その情報は万能ではない」ということを肝に銘じ、情報に振り回されすぎないようにとは伝えています。
あとはその情報提供者の立場を考えてみることも大切ですね。たとえば知人の「これを言ったら受かったよ」はきちんと受け止めるべき情報ではないはずです。なぜなら知人はその発言がなぜ良かったのかをきちんと理解していないからです。採用基準をきちんと把握しているのは採用担当ですから、採用担当から得られる情報のほうがストックしておくべきものではないでしょうか。誰がどの文脈で言っているのかは考えるべきですね。
「絶対これ!」と断言するような情報は嘘と振り切って考えても良いかもしれませんね(笑)。
Q.では、せっかくですので理系学生に向けて就活のアドバイスをお願いします。
まずは自分の学びやこれまでの人生に自信を持ってほしいなと思います。そもそも理系を選ぶことはマイノリティではあるかもしれませんが、自分の中でそれなりに意志決定があったと思います。その意志決定に従いここまできちんと勉強をして今進路を迎えようとしているのですから、これまでの研究や学んできたことには自信を持つべきです。
また、新卒就活のうちにいろいろな就活を知ってほしいですね。選ぶかどうかはあくまで自由なので、興味や可能性がありそうなものは食わず嫌いをせずに見てみてください。そこで得たことが刺激になることもありますから。せっかくなので「いろいろ知る」気持ちで楽しんで就活をしてほしいです。