キャリア講義

いい仕事を返すことがキャリアの成長につながる|新卒こそどんどんハンズアップ! 型にはまらず挑戦を重ねていこう

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黒澤 伶 さん(Edgey 代表)

Rei Korosawa●早稲田大学人間科学部卒。デル(現:デル・テクノロジーズ)、ビズリーチ(現:ビジョナル)、コーチングファーム取締役を経て、経営・組織コンサルや人材事業をおこなうITSUDATSU(イツダツ)を創業。代表取締役CEOとして活躍しながら[Edgey(エッジー)](https://edgey.jp/,タイトル,_blank)でも代表を務める

Q.現在ITSUDATSU、そしてEdgeyの代表としてご活躍されていますが、ファーストキャリアはどのように決めたのでしょうか?

ファーストキャリアとしてデルに入社を決めたその決め手としては主に2つあります。

1つ目は、成果主義であったこと。就活時に非常にお世話になった方がいたのですが、その方は新卒から3年で独立したという経歴をもっていました。その姿に感銘を受けたと同時に、その方を超えたいという思いが芽生えたことを覚えています。それで、成果主義でできるだけ早くキャリアが広げられるような企業に就職したいと思っていました。

2つ目は、事業転換期で挑戦できる環境が整っていたことです。新卒で入社したデルは2013年に株式を非公開にしています。それを機にさまざまなIT企業の買収を始め、従来のPCのハードウェア売り企業から、ソフトウェア寄りの企業ブランドをつくり上げるという戦略を描き始めました。私が入社する頃はちょうどその戦略が始まった1年目にあたる頃であり、「今までとは180°違う事業を始める」という言葉に魅せられたこともデルに決めた理由の1つです。

Q.今振り返ってみて、この決断をしたことはどう考えられていますか?

就活時の選択としては、後悔のない選択ができたと思っています。内定を貰えたから即刻就活を終了させたわけではなく、内定はいくつか持っていました。そのうえで各企業の社員と直接会い、お話しをし、慎重に吟味を重ねたうえでの選択でしたから。

一方、いろいろ経験を積ませていただいて、その後「デルとは真逆のカルチャーの組織にいってみよう」と思うようになり、転職を決断しました。

デルは超オペレーション組織、言うなれば「PC界のマクドナルド」のような会社でした。誰の手でやってもミスなく、すべてのものを完璧にすることが求められ、工夫や独自性は盛り込まないというのがデル。そういう働き方が合っている人もいると思いますが、働くうちに私はその点にもやもやを感じるようになりました。業務に対してもう少し自分のアイディアなどを取り込みたい思いが生まれてきたのです。

それでまったく違うカルチャーをもつビズリーチへの転職を決めたのですが、私が感じたようなこのもやもやは就活中にはどうしても気づけないものなのですよね。働いて、身をもって属さないとやはりわからないことが多々あるということ。だからこそ「体験入社」ともいえるインターンと実際の入社は違うのだということに気づかされましたね。

選ばれるのではなく自分で選ぶ! そのための土台作りをしよう

Q.では今のお話も踏まえながら、学生が納得のいく・自己実現につながるファーストキャリアを選ぶうえで「後悔のない選択」をするためにはどうしたらいいでしょうか。

まずは「自分自身」で選ぶことですね。そして自分が「選べるレベル」に成長すること。内定後もそこで満足せず、複数の企業から本当に自分に合う企業を自分で選ぶことが重要なのです。そして自分が「選ぶ」ためには、そもそも「選べる」レベルに成長する必要があるのです。

すると、仮に将来的にその選択は間違っていたと思ったとしても、自分の意志で決めていればきっと後悔はしないはずです。「親が~」「友達が~」と、他人の意見に流されることは絶対やってはいけないことだと思っています。将来的に間違っていても良いので、その時の自分にできる100%の選択をすること。これがもっとも大切なことだと思います。

ただしその一方で皆さんにお伝えしたいのは、「後悔のない選択ができる」状態を作ることは非常に難しいということ。複数社から内定を獲得するには、内定がゴールではなく、社会において突出した成果を出すことをゴールとして、その水準で力を養う必要があります。また、受験先や内定後の入社先を見極めるためには、自分自身を徹底的に分析し、自分の成し遂げたいキャリアが社会においてどのような形で実現可能か、社会を徹底的に調べておくようにしましょう。

Q.「選べるようにしておく」、ここについて、つまり内定を1つ獲得したあとも就活は続けたほうがいいということですよね。

はい、絶対そのほうがいいですね。というより、内定を1つ取ってからが就活のスタートだと思っています。

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誰しも認められると自然と自信がつくもの。そして「どこかの労働市場に自分は評価された」という自信があるのとないのとでは、選考への感覚が大きく違うはずですから

また内定を取ってからのほうが工夫できることはたくさんあります。たとえば仮に内定を獲得した企業が業界3位のA社だったとしましょう。この場合、次にA社よりもシェアの高いB社にエントリーすると選考を有利に進められやすいのです。「A社が内定を出した」というのが適性のエビデンスとなりますから。内定獲得後は、内定を得た企業と同じ業界内、もしくは業界問わずライバル企業の選考を受けてみるとより良いですね。

Q.先ほど企業選定についてのお話がありましたが、ここについてももう少しお伺いしたいです。

はい。企業選定においては、これまでのその人のがんばった経験やつらかった経験などを抽象化して考えることが必要だと思います

たとえば、これまである部活動で良い成績を残すことができていた場合。このとき所属していた部活動は非常に厳しい環境で、毎日監督にビシバシ鍛えられていたとしましょう。そんな環境でも辞めずにしがみついてきたからこそ結果を出せたということは、今後の社会人生活においても、トップがカリスマであり、その人を信頼してその背中を追える環境であれば活躍できることが見込めるのではないでしょうか。

このように、過去の経験を抽象化して、手持ちの企業と重ね合わせながら就職先を選択すると良いと思います。

Q.ほかに、ファーストキャリアの会社を選ぶ際に気を付けておくべきことはありますか?

今「自分の経験を抽象化したうえで合う企業を探そう」とお伝えしましたが、それに加えて職種も重要視したほうがいいですね。

現在はジョブ型雇用に移行しつつあります。つまり特定の職種からキャリアをスタートしていくように、企業側からシフトしつつあるということ。だから、初めに就いた職種から途中で職種を変更することが以前よりも難しくなっているのです。

だからこそ、就活時から中長期的なキャリアを明確にもっている人にとっては、入社後スムーズに自分の思い描くキャリアを歩むことができるようになってきたということ。そういった人たちにとっては恵まれた環境に変化してきているともいえますね。

ただし、ジョブ型雇用においては、その職種の志望理由や職種特化のスキルセットに留意する必要があります。とはいえ自分に合った職種や求められるスキルセットをすぐに把握するのは難しいでしょうから、業界研究だけでなく職種研究もしてみたり、インターンでいくつかの職種を経験しておくことが大切ですね。

企業における居場所を感じ、いかに楽しいと思えるか。これがキャリアの充実につながる

Q.入社後キャリアをより伸ばしていくために、働くうえで持っておくべき心構えについて教えてください。

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心構えとしては大きく2つあります。

1つ目は、いい仕事をすればいい仕事が巡ってくるということ。だからとにかく新卒1年目は守りに入ることなくどんどんハンズアップ、煙たがられるくらいさまざまなことに挑戦してほしいですね。そこで相手が喜んだり結果が出たりすれば新しくいい仕事が降ってくるはずです。逆にいえば就活時はそういった環境がある会社を選ぶべきとも言えるでしょう。

2つ目は、自分のポジションの1個上の人の仕事を自分で獲りに行くこと。たとえばメンバーならリーダーの、リーダーならマネージャーの仕事を、といった形です。学生や若い社員から「視座を上げたい」という声をよく聞くのですが、たしかに視座を上げると仕事の効率も上がりますから、キャリアの成長につながります。そして視座を上げるためにはシンプルに上司の仕事に取り組めばいい。上司のカレンダーをチェックして、自分でもできそうなものがあれば積極的に手を挙げてみてください。

Q.では黒澤さんにとって、充実したキャリアとはどのような状態でしょうか。

いくつか構成要素はあると思いますが、まずは内的充実度、つまり「自分はこの仕事をできて幸せだ」とどれくらい思えているか、ですね。後悔しながら仕事をしたくはないじゃないですか。またこの組織にいることが自分にとってマイナスだと思いながら働きたくもないですよね。いかに「その会社にいる自分が好き」と思えるか、そしてその会社にひしと居場所を感じられるか。これが充実感を高めるには第一だと思っています。

そして充実感を高めるためには、客観的に自分のキャリア・業務を見つめ直す機会も必要です。同僚や先輩などと、業務・キャリアに関する意見交換を定期的におこなうことで、業務のやりがいの再発見や、新しいキャリアに進むきっかけづくりをしてみても良いと思います。

Q.「充実」には、役職やポジションがかかわってくるわけではないということですね。

はい、全然関係ないと思いますよ。役職やポジションがあるかそれ以前に、その会社にいること、そしてその仕事ができていることが誇りであり、それがキャリアが充実しているということだと感じています

役職やポジションが上がることがすべてだとは思いません。立場に縛られなくともキャリアは十分充実したものにできると思います。

Q.ありがとうございます。最後にこれからキャリアを描いていく就活生に向けて、メッセージをお願いします。

今の就活生はZ世代、あなたたちがこれからのビジネスの主戦力です。そしてその主戦力となるあなたたちから選ばれない企業ほど、どんどん淘汰が進むと思っています。そういった相手からの「社会人とはこうあらねばならない」「こうせねばならない」に対しては疑問を持ちながら就活を進めていってほしいですね。そういった世代をこれからリードできるのもZ世代だと思います。従来の固定概念に縛られすぎずにどんどん挑戦してほしいです。

あとは就活はとにかく早く動いてほしいです。3~4年生という大学後期からキャリアについて考え決めていくのはほぼ日本だけで、諸外国では7~8割の人たちがもっと早い段階からキャリアについて考えているとのこと。グローバルという意味でも引けを取っていると思います。就活を早くから進めている人ほど「意識高い系」などと揶揄されることもあるでしょうが、そういった声は気にしなくてかまいません。従来のレールから逸脱して自分のキャリアを考え、描いていってほしいなと思います。

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