キャリア講義

キャリアは「どこから」よりも「どう描くか」で変わる|就職という出発点から後は素直に突き進め!

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目次

  1. 米川 凱 さん(Stella Point 代表取締役社長)
  2. 望む人材像に合わせて八方美人になることも時には必要
  3. その選択を正解といえるよう、キャリアを自分の手でデザインしよう
  4. 素直さは活躍の必須条件であり最大の武器にもなる

米川 凱 さん(Stella Point 代表取締役社長)

Kai Yonekawa・1997年生まれ。就活では金融系を中心に多数の内定を得るも、経営者の間近で仕事ができる不動産ベンチャーへ就職。しかし入社1年足らずで信頼していた採用時の社長が退任したこともあり、2021年1月に同社を退職。同年3月にStella Point(ステラポイント)設立

企業詳細:コーポレートサイト

Q.米川さんご自身はどのような軸で就活を進めていたのでしょう。

今でこそ人材業界に身を置いていますが、当時考えていたのはある程度お金が稼げることと、なおかつなるべく経営者の近くで働きたいということ。学生時代から起業に関心があったので、お金も欲しかったし経営者を間近で見てみたい気持ちがあったからです

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就活自体は非常に順調で苦労はしませんでした。保険、証券、クレジットカードなどの金融系を中心に内定を合計25社いただきましたが、最終的には経営者の近くで仕事ができる環境が一番整っていた不動産ベンチャーに就職しました。

内定をたくさん獲得できたのには、2歳から始めた水泳を大学卒業まで続けた実績があったこともプラスにはたらきました。とくに金融や不動産系では、体育会出身者は就活で有利な傾向があります。

しかし就活がうまくいった最大の理由は究極の八方美人を貫いたことだと思っています。

望む人材像に合わせて八方美人になることも時には必要

Q.八方美人ですか? あまり良い意味で使われない言葉な気がします。

そうですよね(笑)。ただ、就活でいう八方美人とは、相手に合わせて自分のアピールポイントを選び変えることを指しています。

採用する企業側には必ず欲しい人材のイメージがあるはずです。そして誰でも、自分のアピールポイントが一カ所しかないということはありません。

その企業の求める人材像に合わせて自分をアピールする。嘘をつくのではなく自分の中のどの部分をピックアップして強調するのかを考える。「自分を良く見せる」ことと「正直である」ことはトレードオフの関係ではありません。

また自分の夢に向かって進むためには、まず「企業に入る」というスタートラインに立たなくては何も始まりません。大切なのはスタートラインに立てること。そのためならば八方美人になることも必要だと思っています。

Q.そうしてスタートラインに立ったファーストキャリアは順調でしたか?

研修を経て営業の現場に出てから1カ月ほどでトップセールスになれました。その意味では順調な出だしでしたが、すぐに状況が暗転。

営業成績は良いけれどズケズケものを言うし、社内ではとがった新人だったため良く思わない人物がいて、よからぬ噂まで流されて嫌気がさし、会社との関係もぎくしゃくしました。

そんな状況の中、信頼していた採用時の社長が退任してしまったことも重なり、入社後1年経たずに会社を辞めることにしました

Q.それはなかなか大変なファーストキャリアになりましたね。とはいえそこで辞めてからはどうしようと思っていたのですか?

転職先を探したのですが、その最中に先輩から人材系ビジネスで活躍していた人物を紹介されたのがターニングポイントでした。

自分も学生時代から人を集めるのが得意だったこともあり意気投合。私が学生を集め、その人物が企業へ人材を送り出す役割で協力し合えばビジネスになると考え、彼との出会いから2カ月ほどで新卒学生向けエージェントのStella Pointを設立しました

Q.結果的には早々と最初の会社を退職したことが起業の背中を押したわけですね。

私の座右の銘は『人間万事塞翁が馬』です。幸運だと思ったことが不運につながったり、不運と感じた事柄が幸運を運んで来たり、長い人生で何が運命を左右するかわからないという意味です。

そしてこの言葉通り、人生を輝かせる幸運の種は思いもよらないところにあったりするものだなということを改めて実感しましたね

その選択を正解といえるよう、キャリアを自分の手でデザインしよう

Q.今では新卒学生の強い味方である米川さんから、企業選びのコツについて教えてください。

大前提として企業分析を念入りにおこなうことです。学生はともすれば企業分析より自己分析に力を入れがちですが、もっともっと企業分析をしてください。

日本にある400万社の中から1社の正解を引き当てなければならないのですから、企業分析の必要性もよくわかるでしょう

そのうえで企業選びのポイントは3つ。第1に説明会に参加する。企業のことを知るための入り口です。第2にIR資料を読んで数字面から会社を知る。経営状況を知るのにはここを見るのが一番です。

第3に志望する会社の関係者に会って話を聞く。その会社に勤務している人の話を聞くのはマストですが、できれば同業者や取引先などにも話が聞ければ理想的です。

最近では身内や友人・知人のツテを頼らなくても、大学のキャリアセンターに行けばOB・OGの情報が簡単に入手できます。

その他サークルや自分が属するコミュニティーの先輩OB・OGにも話を聞けるし、何なら自ら志望する会社でインターンシップをしてみる方法だってあります。

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Q.新卒学生の就活を支援する仕事をしているからこそ、学生に対して感じることは何かありますか?

人生やキャリアの安定に対する考え方に少し違和感を持っています。新卒学生の7割は大手企業志向で、その理由は大企業イコール安定との固定概念を持っているからです。

でも考えてみてください。たとえば自動車業界大手のトヨタ自動車でさえ終身雇用の時代ではなくなってきていますし、大企業でも以前のように何千万円もの退職金がもらえる会社ばかりではないのが実情です。

本当にそれでも大企業イコール安定した人生といえるでしょうか。

安定の定義は変わってきています。現代の安定とは大企業に属することではなく、自分のスキルや能力を高めていつでも安定的に仕事ができる状態を手に入れることではないでしょうか

あなたのキャリアは、大企業か中小企業かベンチャーかで変わるのではありません。どれが良いかの問題でもありません。自分のキャリアを、就職先でどうデザインしていくのかで変わるのです。

Q.では、キャリアをデザインしていく中でも、スタートとなるファーストキャリア選びは特別なものだと思います。ここについてアドバイスをお願いしたいです。

キャリアデザインは重要ですが、ファーストキャリアだからといって、それほど特別視する必要はありません。短期離職をしている私のファーストキャリア選びも一般的に言えば失敗だったのかもしれませんから。

でも、今こうして起業して事業経営ができているのはファーストキャリアがあってのことだとも解釈できます。どこに入ろうが、その選択を正解にしてやろうという姿勢、取り組み方が大事です

あえて言えば、自分が掲げる目標に到達するまでのスピード感には影響するでしょうから、ファーストキャリア選びによって目標到達速度は少し違ってくると思います。ロケットスタートを切りたい人にとってはファーストキャリアの重みが増すかもしれませんね。

Q.キャリアデザインは大事だけれど、ファーストキャリアにあまり神経質になりすぎることはないのですね。

ファーストキャリアだからどうすべきかというより、仕事と年齢の関係を意識した方が良いと思いますね。大卒で就活すれば20代で仕事を開始することになりますが、20代には仕事上の特権があります。

20代は、仕事でチャレンジする機会が与えられ、チャレンジと失敗を繰り返すことでスキルや能力を身に付けていくことが許されるのです。ところが30代になれば周りの目も変わります。失敗は失敗としての評価でしかありません。

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ですから20代のうちにチャレンジする機会を多く得られ、失敗しながらでも成長できる環境を用意している企業が、ファーストキャリアにふさわしいといえるかも知れません。

素直さは活躍の必須条件であり最大の武器にもなる

Q.学生がこれから社会に出てから活躍するために必要なことは何でしょう。

素直であることに尽きます。大学を卒業すれば、これまでの人生とはまったく異なる、社会人としての生活が始まります。二十数年間生きてきた中で頭にしみ込んだ固定概念や思考パターンが通用しない場面に遭遇することも増えるでしょう。 

だからこそ、現実を素直に捉えて自分の固定概念を崩していける柔軟性が必要です。先輩や上司のアドバイスを受け入れる素直さがあれば仕事にも早くなじめます

私は最初の職場で住宅販売のトップセールスになりましたが、最初はうまく売れませんでした。そんなときに先輩から「売れているセールスを真似しろ」と言われました。

最初は誰かの真似事や人と同じことをするのが嫌だったのですが、変なプライドを捨てて先輩の言葉に従い真似をするようになり、真似たうえで自分なりの工夫を加えるようにしたら急速に売り上げが伸びました。

先輩の助言を素直に受け入れたからこそ道が開かれたのだと思います。

Q.実際の経験談も、そして人材業界に携わる人としても、さまざまな面からのアドバイスをありがとうございます。最後に就活に臨む学生たちにメッセージをお願いします。

私の周りにはいろいろな天才がいました。水泳の天才、数学の天才、クリエイティブな発想の天才などなど。かくいう私も自分では人を幸せにする天才だと思っています。

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でもここで言う天才とは、生まれつき飛び抜けた才能を持っている特別な人たちのことではありません。誰でも何かの才能を持っていますし、何かしら得意なものがあるはずです。それを見つけて伸ばした者が天才になれるのだと考えています。

多くの人は目の前の事柄や日常に追われて、あるいは現状に満足してしまい、自分の才能を伸ばすことをおろそかにします。しかし自分が目指すものや掲げた目標に向かって進み続けるために初心を貫いた者が、天才としてさらに大きな夢を追いかけられるのです

みなさんもぜひ、自分のなかにある天才を見つけて夢に向かって歩んでおこなってください。

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