キャリア講義
万人に向く会社はない。なりたい自分から逆算して納得できるキャリアを歩もう
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目次
小林 峻さん(SAMURAI 新規事業責任者)
Takashi Kobayashi・新卒で人材紹介営業からキャリアをスタート。その後医療系SaaS、広告、食品など幅広い業界で法人営業を経験。紹介事業の立上げ経験もあり、ゼロからの構想段階から携わり初年度より黒字化を達成するなど活躍。その後フリーランスで事業の立上げや営業プレイングマネージャーなどを経て、大手転職エージェントで新規事業の拡大に携わる。2023年8月にSAMURAIにジョインし、現職
Q.小林さんご自身は、どのような就活をしましたか?
いま思えばあまりちゃんとした就活はしませんでしたね。採用に応募したのは2社だけだし、そのうちの1社に就職したので就職活動と言えるほどのことはしていないです。そもそも就活では何社くらい受けたらいいのか、どういう準備をして就活に臨むのが良いのか、いまほど情報がなく周りの友人たちと情報交換するくらいしか方法がなかったというのもあります。
Q.その2社を選んだ理由はなんだったのでしょうか。
結局、人材系の企業に就職しましたが、就職しなかったもう1社は大手教育企業系の塾でした。共通点は両社とも人の育成や教育にかかわっていること。広い意味では人材系という共通点があると思います。
でも最初から人材系を意識して軸を置いていたわけではなく、新卒採用サイトを眺めながら何となく気になる企業をチェックしているうちに、この2社が残ったというだけ。共通点が人材系というのも後付けと言ってしまえばそんな気もします。ただこういう選択になった理由も思い当たります。
Q.それは何ですか。
大学生時代の苦い原体験があるのです。大学祭で実行委員会の委員長を務めた際の経験です。高校時代に学園祭の副委員長を任され素晴らしい体験をしたので大学で夢よ再びと考え、大学祭に向けて何とか仲間を60人集めて頑張りました。
自分たちなりにKPIを定め「来場者は前年の3倍以上」、「テレビ番組と新聞に取り上げられる」という目標をクリアし何とか格好はついたのですが、結果的には1人で空回りして自分の思いを周りに押し付ける形になってしまいました。終わってから「あまり楽しくなかった」と打ち明けたメンバーもいました。
この体験を通じて、思いを人に正しく伝えられない自分の言葉足らずな未熟さや、組織マネジメントの難しさに打ちのめされ、半年間は家にこもって考え込んでしまいました。それが原体験となって、人にかかわったり組織づくりをする仕事、あるいは人の可能性を伸ばすような仕事に関心が向いたのだと自己分析しています。
Q.そうして入った会社でスタートした社会人生活はどうでしたか。
正直に言えば20代半ばを過ぎても迷走していましたね。その後、医療機器会社や食品原料卸、産業廃棄物処理会社など複数の会社への転職を繰り返していましたから。単に給料の高さに惹かれたり、何やら面白そうだといった、たわいもない転職理由が大半。将来の目標が定まっていなかったため、あちこち揺れ動いていたのだと思います。
迷走から抜け出すきっかけは新卒同期の仲間の誘いだった
Q.何がきっかけで迷走が止まったのですか。
知り合いに、あるプロジェクトに誘われたからです。新卒で入った会社の同期だった仲間から8年ぶりに突然、電話が掛かってきて早速会うことにしたのですが、そこで医療系プライム企業の子会社立ち上げプロジェクトを手伝ってほしいと頼まれました。
やるからには思い切り仕事にぶつかろうと考え、あえて正社員ではなく時間的な制約のしばりなく働ける業務委託の形態でフリーランスとしてプロジェクトに参画することにしました。セールス兼任のプレイングマネージャー兼部長として、1年間はホテルを転々としながら全国を飛び回りました。
Q.その後、SAMURAIに移ったのですか。
いいえ、まだあります。プロジェクトがひと段落し、フリーランスで鍛えられ自分の成長も実感していたので、改めて人材系の仕事に立ち戻り力試しをしてみることを決意。今度は人材系のレガシー企業に正社員として入りました。
ところが大組織の中では裁量権も小さく思うように仕事ができないと分かり、より活躍できる場を探しているときに当社SAMURAIと出会いました。新規事業の責任者として裁量権を持って仕事できることを確認できたので転職し、いまこうしてインタビューを受けています。
企業選びをうまく運ぶ大前提は、なりたい自分像をつかむこと
Q.さまざまな企業を経験してきた立場から、就活生も参考にできる企業選びのコツを教えてください。
一番重要なのは、自分の将来をどうしていきたいかを考えたうえで、そこから逆算して企業選びや職場探しをすることです。その目的意識があるかないかで自分の満足度も、反対に会社側からの評価も変わってきます。
転職の場合は特にそこが重要ですが、新卒の場合はわけも分からず入社してしまうケースも少なくないはずですから、そんな場合は入社後で構わないのでポジティブな目標を持つようにして、プラス思考で仕事に取り組めばそれが成長につながります。
偉そうに言っていますが、私自身を振り返ると20代で頻繁に転職を繰り返していた頃は、目標を見失い腐っていた時期だったと思います。何かにつけて会社のあらを見つけ、環境のせいにして、他に少し面白そうな会社があると飛びついていたような、あの頃の時間はもったいなかったと反省しています。
その後、フリーランスとして目的意識を持ち、覚悟を持って仕事をするようになってからは、自分の成長も仕事も楽しく感じ、仕事を通じて社会に役立つ実感も持てるようになりました。
Q.お話を聞く限り、やっぱり企業選びは難しいものですね。
そうですね。結局は相性の問題でもあるのです。万人にとって良い会社はないですし、万人にとって悪い会社もありません。しかも会社は生き物で時間とともに良くも悪くも変わっていく面があります。そして最後は相性なのですから、自分次第だとも言えますよね。
いつ仕事を振られても対応できる準備をしていればチャンスを逃さない
Q.キャリアに迷ったとき、抜け出すために実践できる方法がありますか。
抜け出すためというより、抜け出すチャンスを逃さないために、やりたいことが見つかった際にすぐそれをできる状態にまで自分を引き上げておくことが大切です。いつやりたい仕事を振られても、すぐに任せてもらえるだけのスキルを身に着け、会社の信頼を得られる準備を整えておくこと。それが一番じゃないでしょうか。
Q.もう少し具体的に教えてください。
目標になる人を見つけ、その人をロールモデルにして学び目指すようにするのが分かりやすい方法かもしれません。また目の前の仕事に関して、目指せる最大限の目標に向き合ってみるのも方法です。たとえば営業担当なら年間MVPを目指すとか、チームで1位を目指すとか、目標は高い方が良いと思います。
できるかできないかは横に置いても、テンションが上がる目標を立てる。「できたらすごいことになるぞ」という感覚を持てることが、とても重要なのです。
Q.これからはどんな人材が求められるでしょうか。
どんな人材というより、こういう心構えの人を採りたいという基準はありますね。目指す会社の仕事を自分ごととして捉えて、十分に理解したうえで入社を希望してくれる人です。面接対策など要らないから、仕事について本音で向き合ってほしい。でなければ本人も会社も後悔するだけです。仕事の理解に関する解像度は高いほど良いですね。
会社のサイトに掲載されている情報は、企業理念やビジョンを含め抽象的な表現も多いですから、そこからなるべく具体的な仕事のイメージを想像し、想像しきれない分はどんどん尋ねてほしい。そうして解像度は上がっていきます。
仕事を想像しきれていないのに、「必ず活躍してみせます」などと言われても、それでは嘘になりませんか。逆に仕事について分からない点を面接で尋ねても担当者が「分からなくても大丈夫。入ってからで良いから」などと回答が返ってくるような会社はお勧めできません。
Q.最後に小林さんが仕事で目指しているものを教えてください。
現在は新規事業としてITと人材を掛け合わせた、これまでに類のないサービスを立ち上げているところです。ですからこのサービスを育て上げ、自分の息子が成長して就職や転職の際にそれを使ったときに「父の作ったサービスはイケてるじゃないか」と感じてもらえるようにしたい。そう考えています。