キャリア講義

常に「もっと」を思考し実践すること|それは仕事の楽しさと自身の成長につながる

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三嶋 浩哉 さん(moovy・代表取締役)

Hiroya Mishima●新卒でキャリアデザインセンターへ入社し、転職エージェントのコンサルタントとして、大小300社の中途採用支援および約8,000人のキャリアカウンセリングを経験。その後、経営企画マネージャーや転職エージェント事業の営業統括部長、新規事業責任者を歴任。人材採用におけるミスマッチと機会損失のない社会を実現すべく、2020年4月よりmoovy(ムービー)を創業。現在、採用動画プラットフォーム『moovy(ムービー)』を運営

企業詳細:コーポレートサイト

Q.現在、moovy(ムービー)の代表取締役としてご活躍されていますが、ここに至るまでどのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか。

新卒でキャリアデザインセンターに入社をし、そこからキャリアをスタートさせました。キャリアデザインセンターでは、転職エージェントの事業部でコンサルタントとして約10年、中途採用支援にかかわってきました。その後、グループ経営企画に携わったのちに、人材紹介部門の営業責任者として事業運営にかかわりました。

そして人材紹介部門から新規事業開発室へ移り、新規ビジネスの企画をおこなっていました。キャリアデザインセンターを退社後はエンジニア養成学校のジーズアカデミーを経て、このmoovyを起業しました

Q.学生の頃からこうして「起業する」という夢を持たれていたのでしょうか。

そうですね。とはいえ、学生時代の私は本当に平凡な学生だったと思います。大学では経営学を学んでいましたが、それを選んだのも「最も汎用的な学問かな」という理由ですし。就活も大学4年の頃に周りに流されるように始めました。

ところが、いざ就活をやってみるとこれが非常に楽しかった。いろいろな社会人・いろいろなビジネスに触れられることがとてもおもしろく、徐々に就活にのめりこんでいきました。最終的には120社くらいの企業説明会に参加したと思います。

さまざまな会社や事業、そしてさまざまな社長と会う過程で、将来は自分の事業で世界を変えたい、「いつか起業したい」という思いを抱くようになりました。

Q.そのときの高揚感や感情の移り変わりがよく伝わります。そんな三嶋さんの就活は最終的にどのように進められていたのでしょうか。

将来的な起業を前提にしたうえで私が考えていた企業選びの条件はこの4つです。

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ヒト・モノ・カネ・情報の真ん中にあるのが人であり、人を採用するのも・モノをつくるのも・お金を動かすのも、何もかも人がかかわっています。だからこそ人材業界に携わることによって、より経営の本筋を理解できるのではと考えました。また、クライアントの業界が幅広い点・採用にかかわることから経営者との接点も多い点も人材業界の魅力でしたね

またリクルートは若いうちから仕事を任せてもらえる、熱量が高くハードワークである、営業力を鍛え新規事業をどんどん開発していく、という点が利点でした。

さらに企業文化として「卒業」という制度が暗にあり、35歳くらいを過ぎたあたりから「次のステージに進みましょう」という感覚になるのです。起業を推奨しているというか、実際この社会においてリクルート出身の方が起業された会社というのは実に多くあるのです。このあたりも、起業を考えていた自分にとっては非常におもしろいと感じました。

Q.ビジョンがはっきりしている分、具体的で非常に確立された軸ですね。

そうですね、でも先ほどお伝えしたように。この選社軸も就活の最初から確立されていたわけではありません。就活中、さまざまな企業との出会いを通じて見えてきたものです。

選考を何十社と受ける中で、「自分は何者なのか」「どうなりたいのか「そのためにどんな会社・組織を望むのか」を自問自答することで、自分の軸がブラッシュアップされました

それまで、自分の就活は別にうまくいっているという感覚はありませんでした。しかし、軸が固まって、なりたい自分・受けたい会社がはっきりするようになってからは、企業の面接はほぼ受かるようになってきましたね。

Q.やりたいことが見つかったなど、自分のやるべき就活がかちっとはまった瞬間などはありますか?

学生って、「こういう事業に携わりたい」よりも「こういう人と一緒に働きたい」という感情のほうが先行するものだと思っています。

私も例に漏れずその通りで、自分がシンパシーを感じる経営者や社員、もしくはそのカルチャーの共通項を整理していくと自然に見つかってくると思います。逆に、そこからやりたいことや将来のキャリア像が徐々に膨らんでいきました。

地道に仕事に取り組んできた過去が、これからなりたい将来像をつくり出した

Q.では三嶋さんが今思う、「こういったビジネスパーソンになりたい」という像についてお聞かせください。

「世の中にないものをつくり出せる人」です。サービスのみに限らず、ビジネスモデルや社会の仕組みなども含めてクリエイティビティを発揮できる人間になりたいと思っています。

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一見難しく聞こえるかもしれませんが、意外と単純なことです。若手であれば、決められたことを丁寧かつ早くやること。これについて徐々に自分のレベルが上がっていくと、取り組むものに対しての課題が見えてきて、それに対する解決案を提案できるようになる

もう少しステップが上がると、そもそもこれをなぜやる必要があるのか、やるにあたって1の力で100のパフォーマンスを出すにはどうしたらいいのかと、論理的・構造的な考え方になっていくと思うのですよね。

そうすると、クリエイティブの種になる気づきが積み重なっていく。このような視点で仕事を続けていきたいと思っています。

Q.そう思えたきっかけ、ターニングポイントなどはありますか?

きっかけになるような特別な出来事というのは特にないのですよね。というのも、自分はこれまで仕事の中でわかりやすいターニングポイントがあったわけではなく、どちらかというと自分の仕事を地道にひとつひとつ実行してきたと思っているからです。

そんな中でも、なんとなく「課題が見えるようになった」と感じるときはありましたね。それはトッププレイヤーからメンバーをマネジメントする側になった時。自分の営業における成功パターンをチームメンバーに押し付けていたせいで、物事がうまくいかないことがありました。それではだめだと、一人一人にどう向き合ったらいいのか、コミュニケーションのあり方や、どう営業管理すればメンバーがやりやすいのかを考えるようになったのです

それは今まで営業のみに注力していた自分ではわからないことでした。そしてその解も自分の中にあるわけがありませんから、とにかくメンバーと対話し、相手の置かれている状況をつかむことに時間を割きました。

一方で、他マネージャーの良い点を真似したり、マネジメント論の書籍を片っ端から読むなど、「視野を広く持ち、俯瞰的・客観的に物事を捉える」ことを心掛けるようになったのです。

そういった事象を複数重ねることで徐々にできてきたイメージだと思いますね。

Q.自分一人で走っていた営業時代からマネジメント側になったことで、自分だけの感覚ではなく人の感覚に合わせる必要が出てきた。そのうち自分だけでは見つからなかった感覚が見つかったことが、新しいものをつくっていくというところとマッチしたのですね。

そうですね。もちろん全員がそうですが、自分の人生をロールプレイングゲームだと見立てたときに、登場する主人公の視点ではなく、それを画面越しに見ているプレイヤーの視点になることで、世界の見え方が変わると思います。パーティーに属するキャラクターやゲーム全体が俯瞰的に見えるでしょう。

自分のキャリアについても同じことだと思っています。マネージャーになったことで、ビジネスやチームや自分自身を俯瞰的に見ることができるようになったことも、そこにある「不」を解決すべく、新しいものをつくっていきたいと思えるようになったきっかけといえるかもしれませんね。

Q.ちなみに、視野が広がり物事を俯瞰的に見られるようになったことで、仕事の楽しさが変わったりしましたか?

そうですね、影響範囲が大きくなるのですよ。自分一人で仕事をするとしたら、1の完成物が生まれます。ところが仲間と一緒に物事に取り組むと、それが10の力になったりもするわけです。メンバーやチームと協業し目標を達成できたときは、個人で物事を達成したときの何倍もの達成感を感じます

もちろん個人競技で優勝したときも嬉しいとは思いますが、それよりも何かチームや団体で優勝したときのほうがより嬉しくはありませんか。それと同じことです。

「もっとよくできないか」を追求すること。それが仕事もキャリアも成長させる

Q.学生も今後社会人になるにあたって、三嶋さんのような気づきを得るためにはどういった心構えで働くと良いでしょうか。

一足飛びに何かが起こるということはほとんどありません。毎日の仕事の中で、何かこれは「もっと上に」「もっと前に」「もっと楽しく」ならないだろうかと思考し続けて実践してみることです

部活で「もっとうまくなるためにはどうしたらいいか」、アルバイトで「もっと速くお客さんを回すためにはどうしたらいいか」と考えるのと同じことです。そうすればおのずと物事が俯瞰的に見えてくるようになってくると思います。

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Q.満足いく企業選びとも通ずると思いますが、働くうえでやりたいことができている方が充実するのか、それともできることをしたり会社のマストをクリアすることが充実につながるのか、どちらだと思いますか?

その人のフェーズによっても変わってくるとは思いますね。たとえば若手ならば、会社から任されることや自分のミッションをクリアすることが充実につながると思います。

さらに創意工夫ができ、より速く・より正しくできるようになってくると、与えられた目標に対して、指示とは違ったアプローチができるようになってくるはず。または、そもそも目標やコンセプトを考える立場になってきます。

この後半のフェーズになってくると、おそらく会社のマストをクリアしていくことは充実とはならなくなってくるのではないでしょうか。

Q.では、今の三嶋さんにとっての「充実したキャリア」とは何か教えていただけますでしょうか。

正直、キャリアにおいて「充実」はあまりないかもしれないですね。

たとえば今私が経営している会社が「年商10億円までいきました」としても、実際年商に際限はありませんから、100億も1,000億もいくらでも目指せるわけです。それに合わせて組織規模もビジネスモデルも変革していくでしょう。たどり着くところは絶対値としては測れないと思います。

また「キャリアにおいて満足している状態」とは人によってかわってくるはずです。チームに貢献できているのが楽しいという人もいれば、リーダーとしてチームを率いているのが楽しいという人もいるはず。何がキャリアの充実度を引き上げるかは人それぞれです。私は、今のサービスをさまざまな人や企業に使ってもらいたいというのが目下の目標で、キャリアの充実度はそのための取り組みによって引き上がりますね

Q.では最後に、学生が今後充実したキャリアを歩めるようにアドバイスをお願いします。

大きな経験をしたほうがいいと私は思っています。最近は働き方改革や新型コロナウイルスの流行によるリモートワークなど、従業員にとって非常に働きやすい環境になってきました。

その反面、仕事においてプレッシャーやストレスを感じることは少なくなってきたと思います。しかし過ごしやすい環境とは反対の、自分の考え方すら一変されるようなハードな環境に身を置いたほうがキャリアの成長にはつながりやすいと思っています

タスク量として重たくはありますが、その分いろいろな仕事を任せてもらえる環境。どんどん手を挙げていろいろなことにトライしてほしいですね。その方が経験を重ねられ、自分の力がどんどんついていくはずですから。

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