キャリア講義
「自分ごと」と「会社ごと」を合致できる企業を選べ|時間は有限だから時間と効率のバランスを
- 3972 views
伊藤 朗誠 さん(Beyond Cafe 代表取締役社長)
Akinobu Ito●中学生時代から社長になる夢を思い描く。大学卒業後、2014年に教育分野のITベンチャー企業へ新卒入社。営業で新人賞を受賞。2015年に友人2人とTerrace(テラス)を共同創業しCOOを務める。同社の創業メンバーで新たに2016年、Beyond Cafe(ビヨンドカフェ)を創業し取締役COOに就任。2018年9月より現職
Q.伊藤さんご自身はどのような就活生だったのですか。
父親が自営業だった影響もあって、中学生時代からずっと社長になりたいと思い続けていました。ただし大学卒業を前にして、いきなり起業するには力不足だとわかっていましたし、会社経営の全体像をつかむ必要があるのもわかっていました。
ですから、「社長」という夢に向けてまずは会社に入り自分を鍛えるということが就活のテーマでしたね。
Q.いずれは起業という志を持ったうえでの就活だったわけですね。
はい。とはいえ、ファーストキャリアに選んだ会社を起業への踏み台にしようと考えていたわけではありません。もともと関心が高かった教育分野とITを軸に就活をした結果、出会えたベンチャー企業の事業内容やビジョンには心底共感できました。
これは起業をしなくても社長になる夢はかなえられるのではないか。そう思い、入社式では「この会社の社長になりたい」と宣言しましたね。
Q.それは随分と大胆な宣言をしましたね。
私の座右の銘は「根拠なき自信を持て。それを裏付ける努力をせよ」。これは大学生時代に長期インターンで光回線の訪問販売の営業をしていたときの上司の言葉です。
それ以前からできないこともとりあえず「できます」と言ってしまい、後から必死に努力してなんとかできたという経験を繰り返してきました。
自分の歩んできた道がまさにこの言葉通りだなと、だからこそこの言葉は自分に重ね合わせることができ、心に刺さったのでしょう。
その座右の銘があったからこそ入社式でのこの発言があり、この発言をすることも厭わなかったのだと思います。
Q.ところで、就活時はどうして教育分野とITを軸に据えたのですか?
教育分野が軸だとなった理由は、2人の恩師との出会いにあります。10代でその出会いを得たおかげで今の自分があると思っています。
ただし、そのような恩師に巡り会えた自分は幸運で、そうでない人もたくさんいることは容易に想像できました。だからこそ「教育の機会格差を是正して自立のきっかけをつくりたい」という問題意識に目覚めたのです。
また学生時代にタイからシンガポールまで、2ヶ月かけて縦断したことがあります。その途中でネットカフェを利用したときに、距離も空間も瞬時に飛び越えるインターネットの可能性を改めて実感し、ITによって多くの社会課題が解決できると思えました。
教育分野の問題意識もITの力を掛け合わせることで解決できると考えたわけです。
成長するために視野は広く視座は高くする
Q.確固たる軸を持っておられた伊藤さんですが、では就活生の企業選びについてはどうあるべきだと考えていますか。
「自分ごと」と「会社ごと」を一致させられる企業を選ぶことが重要だと考えています。働くうえで自分が成長するのはもちろん大切なことですが、それに加えてそれが会社の成長と一致するのが好ましい環境といえます。
単にお金のために働くのは「ジョブ」。アルバイトも同じ形ですが、働いていく中で成長する部分もあり、その道筋がキャリアといえます。
しかしそれとは別に、仕事自体が自分の人生の目標と一致し仕事を通じて自分を表現できる状態を英語で「コーリング」と呼び区別します。日本語の天職に近い意味ですね。
できることなら「コーリング」を目指して天職を選び、充実した仕事人生を歩みたいですよね。だからこそ「自分ごと」と「会社ごと」を一致させられる企業を選ぶところから始めるべきだと思います。
Q.就職は人生の一大事だけに、ついつい自分のことばかりを考えてしまいがちです。
自分ごとしか頭になく会社ごとに思いが至らないのでは、いつまでたっても視野は狭く視座が上がらないままです。それではそもそも成長できません。
部活にたとえればプレイヤーとしてのレギュラー争いしか考えないのは下級生まで。上級生になったらチームの視点で勝利を目指す視座の高さが求められますよね。視座の高さが自分を上へ引き上げる原動力になってくれるはずです。
Q納得できる会社や職場を得ることができ社会人になってからも、必ず壁にぶつかることはあると思います。伊藤さんは人生において壁やピンチに直面した際には、どのように対処していますか。
まず知ってほしいのは人間は危機的状況に陥ったときにこそ成長の機会を得られるということ。むしろそれ以外には成長のチャンスはないとさえいえます。
壁を乗り越えたときに人は成長します。乗っている船の底に穴が開いて沈没しかけたとします。沈没前にさっさと逃げ出すか、何とか穴を塞いで皆を救おうと考えるか。成長は後者のみに与えられるものではないでしょうか。
こう考えるとわかりやすいですよね。勇気をもって壁やピンチにぶつかり乗り越えようとしてみてほしいです。
時間の長さは変えられない。変えられるのは密度だけ
Q.就活の軸づくりや仕事と人生の関係について貴重な話をいただきましたが、就職活動そのものに関して何かアドバイスをいただけますか?
時間の長さは変えられません。変えられるのは密度だけです。だから起業当初は寝袋を持って会社に1週間泊まり込み、集中してガッツリ仕事をした時期もあります。就活も費やせる時間は限られているので、ポイントを押さえつつ密度を高める必要があるでしょう。
Q.では、就活において時間の密度を高めるために絶対に押さえておくべきことは何でしょう。
密度の高い時間を必要に応じてうまく配分することがポイントです。たとえば人と会ったりイベントに参加したり、人とコミュニケーションすることで得られる情報や人脈を求めることに対しては惜しむことなく時間を十分に割くべきです。
それに対して自己分析を自分自身でおこなおうとすると、どうしても延々と時間がかかってしまいます。それを自己分析ではなく他己分析、他者の評価に委ねてみてはどうでしょう。
その結果から自分を知れば大幅に時間を短縮できますよね。しかも他者による分析方が主観の入らない、的を射た自己分析ができるというメリットもあるでしょう。
そしてこれは何かを学んだり習得したりする際にもいえることです。わからないことを3時間かけて自分で調べなくても、誰かにたずねて理解すれば5分ですみますよね。
さらにその情報をアウトプットすれば記憶の定着率も自分で調べたときと遜色ないという調査結果もあるのです。2時間55分の無駄をなくして効率を上げる工夫は、就活においても必要であり、社会人になってからも成長に必ず役立ってくるはずです。