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作業環境測定士とは
作業環境衛生士とは、労働者の職場などの作業環境における有害物質を作業環境測定法に基づいて測定し、労働者の健康を守るための業務を行う国家資格者です。この資格があると、作業現場の有機物や放射線などの測定、分析を行うことができます。その結果をもとに作業環境測定士は事業所や工場、工事現場、病院などの働く人たちの作業現場などに対し、作業環境を改善するためのアドバイスを行うのです。
作業環境測定士になるためには資格取得試験を受ける必要があります。またその試験に合格後、さらに登録講習を経たうえで厚生労働大臣の指定を受けた「安全衛生技術試験協会」へ登録し、はじめてその資格を取得することができます。この作業環境測定士になるための試験とはいったいどんなものであるのかを解説していきましょう。
作業環境測定士に必要な資格と難易度
作業環境測定士になるための取得試験には高いハードルがあると言います。まず、この作業環境測定士の資格試験を受けるためには、受験資格を満たしていることが必要です。つまり誰でもが受験してこの国家資格を取得することができるものではないのです。
また試験は、衛生法令や理系などのさまざまな科目が設定されており、出題される各科目に対する勉強も必要となります。地道な努力をしないと合格することのできない国家資格です。
作業環境測定士に必要な資格
作業環境測定士には第一種作業環境測定士と第二種作業環境測定士の2種類の資格があります。作業環境測定士は、作業現場における作業環境測定を行うことができる資格です。この第一種資格者はデザインと呼ばれる策定計画の立案、サンプリングと呼ばれる資料の採取と分析の下準備、また簡易測定器での分析、解析などすべての業務を行うことができます。
また「鉱物性粉じん」、「放射性物質」、「特定化学物質」、「金属類」、「有機溶剤」という5つの有害物質について、それぞれ独立した資格となっています。これらの5種類について、すべての資格を取得することもできます。一方で第二種資格者は、デザインやサンプリング、また簡易測定機での簡単な分析作業のみが可能です。
作業環境測定士の合格率から見る難易度
作業環境測定士の合格率は、平成28年度の統計では第一種で59.4%、第二種で36.5%、合わせると47.6%となります。第二種についていえば、受験資格を設定したうえでの30%台の合格率というのは、それなりに難易度が高いものと言うことができます。しかし、第一種では二人に一人が受かるという状況なので、まずまず中程度の難易度と考えていいでしょう。
試験の受け方として、まず最初に第二種を受けこれが受かった後、ある程度の経験を経て第一種を受けるという傾向があります。また第一種については5つの科目のうち一つを選択するものですが、第二種では4科目すべてを受験しなくてはなりません。これらの背景があり、このような結果になっているものと考えることができます。
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作業環境測定士の資格を取得しよう
労働者の作業環境の健全性を改善・維持し、健康を守ることを職務とする作業環境測定士の資格は受験資格さえクリアしていれば挑戦することが可能です。国家資格であることからも、自分自身のこれからの仕事の幅を広げるにはたいへんに効果的な資格ということができます。この作業環境測定士の資格を取得するためには、どのような手順が必要となるのでしょうか?作業環境測定士の資格を取得するための流れとその条件をみていきます。
資格取得までの流れ
業鑑定士資格取得の必要手順
- 受験申請書類を取り寄せ・作成
- 受験申請書類を(公財)安全衛生技術試験協会に提出
- 受験票が送付される
- 受験
- 試験結果の通知
- 合格者のみ登録講習の受講
- 登録受講修了試験
- 修了試験合格で講習修了証交付
- 安全衛生技術試験協会に登録し資格を取得
作業環境測定士の試験は毎年8月と2月に実施されており、各地域の安全衛生技術試験センターで受験することが可能です。試験後の登録講習は、第2種作業環境測定士を目指す人のための「第2講習」が共通科目のみで3日間設定されています。
また第1種作業環境測定士の「第1講習」は、共通科目と選択科目の2つの講習を受講します。選択科目については1科目あたり2日間の講習を受けることが必要です。資格を取得するためには、必ず安全衛生技術試験協会に登録申請を行い、登録証を交付してもらうことが必要となります。
受験資格
作業環境測定士の試験を受けるためには受験資格というものがあり、どんな人でも受けられるというものではありません。この受験資格は細かな規定がありますが、代表的なものとしては次のような人となります。大学や高等専門学校で理系の正規学科を修め1年以上労働衛生の実務に従事した経験した者、また理系でなくとも卒業後3年以上労働衛生の実務に従事した経験があれば受験が可能です。
ほかには技術士試験の第2次試験に合格している者、労働衛生の実務に8年以上の従事経験のある者などです。中学や高校の卒業であっても、理系の正規課程を修め5年以上の労働衛生の実務に従事した経験があれば受験することができます。なお医師、歯科医、薬剤師の免許を持っている人は、第1種、第2種ともに試験を免除されます。
試験の内容
作業環境測定士になるための資格試験には第一種作業環境測定士試験と第二種業環境測定士試験の2つの区分があります。第一種試験では、「共通科目」と「選択科目」の二つの試験を受ける必要があります。「共通科目」とは第一種および第二種ともに科せられる試験で、試験科目としては、「労働衛生一般」「労働衛生関係法令」「デザイン・サンプリング」「分析に関する概論」という共通科目と呼ばれる4つの科目です。
加えて「選択科目」では「鉱物性粉じん」「放射性物質」「特定化学物質」「金属類」「有機溶剤」の5つの有害物質の調査に関わる科目を受験します。これらのうち1科目から受験することができ、また5科目の全科目も同時に受験することもできます。第二種試験は「共通科目」のみの受験となります。
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作業環境測定士の過去問題【公表試験問題】
作業環境測定士の資格試験の勉強法は、各科目についての地道な勉強が重要となります。学校の理系の授業で学んだことが役立つ問題もありますが、共通科目にある「労働衛生一般」や「労働衛生関係法令」など、実務経験のない人にとっては身近でない科目もあり苦労するかもしれません。
暗記すべき項目も数多くあり、しっかりと覚えていくことが必要です。安全衛生技術試験協会では、作業環境測定士試験の過去問題を公表しています。以下ではその過去問題の内容を見ていきましょう。
第一種・第二種作業環境測定士|共通科目
労働衛生一般
- 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指 針」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか
- 労働衛生関係法令
- 労働安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものは どれか。 ただし、衛生管理者及び産業医の選任の特例はないものとする
- デザイン・サンプリング
- 25 ℃、1気圧における環境空気中のイソプロピルアルコール(C3H7OH) の体積分率が 200 ppm であるとき、その質量濃度(mg/m3)に最も近いもの は、次のうちどれか
- 分析に関する概論
- 物理量Ⓐとその単位の記号Ⓑとの次の組合せのうち、誤っているものはどれか
第一種および第二種の「共通科目」は4科目です。ここでは最新の試験問題から各科目の設問のうち、それぞれ第1問のみを引用しました。各々の設問に対して、解答が5つずつ示されており、その中から正解を選ぶ方式となっています。
ちなみに「労働衛生一般」の第一問の正解は「2 化学物質等によるリスクの見積りは、リスク低減の優先度を定めるため に行うものであるので、必ず数値化する必要がある」というものです。共通問題の試験については、すべて暗記問題と考えてよいでしょう。
第一種作業環境測定士|選択科目
- 有機溶剤
- 次の有機溶剤のうち、中沸点溶剤(1気圧における沸点100〜150℃)はどれか。
- 鉱物性粉じん
- 粉じんの光散乱に関する次の記述の に入る語句として、正しいもの は下のうちどれか
- 特定化学物質
- 吸光光度分析法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか
- 金属類
- 次の金属又は金属化合物のうちで、融点が0℃より高いものはどれか
- 放射性物質
- 放射能測定において、試料の6.0分間測定で3,600カウント、バックグラウン ドの10分間測定で200カウントであるとき、試料の正味計数率の標準偏差の値 に最も近いものは次のうちどれか。 ただし、これらの測定において測定時間以外の測定条件は同じ
第一種作業環境測定士試験は5つの科目からの選択となります。受験したいと考える科目をひとつまたは複数選び受験することが可能です。ここでも各科目の設問から任意の問のみ引用しました。選択科目も共通科目と同様に、質問に対して提示された5つの解答例の中から正解を選択します。
こちらも暗記問題が多くなっていますが、計算問題も含まれています。ここで引用した⑤「放射性物質」の設問は、公式を用いて答えを導き出す必要があります。この問題の正解は、5つの解答例の中の2番目である「10.0 min -1」です。
作業環境測定士の資格を取得して職業選択肢を広げよう
作業環境測定士の資格取得について、その仕事内容と取得までの手順や試験について見てきました。作業環境測定士は職場や作業現場のより良い環境を維持し、現場で働く人々の健康を守るという、たいへん有意義な職種であると言うことができます。もちろんこの国家資格を取得するには、条件をクリアし地道な勉強が必要となりますが、自分の職業選択肢を広げるためには多いに役立つものです。
この作業環境測定士の上位資格としては、作業環境コンサルタントや衛生工学衛生管理者というものもあり、よりステップアップする方向性もあります。自分自身の可能性を最大限に広げることを目標として、作業環境測定士の資格取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。