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商社業界に将来性はあるのか
商社というと、その名の通り「商いをする会社」というイメージが湧く人が多いと思いますが、企業によって扱う商材や分野は様々です。産業の変化だけでなく、情報テクノロジーの進化も商社に大きな影響を与えつつあります。
インターネットや自動翻訳などが普及した現在、メーカーが商社を必要としなくなりつつあるのです。商売相手も自分で見つけられる、言葉も機械が訳してくれる、そうなっては商社を介在する必要がないと感じるメーカーが増えるのも頷けます。
それでも、商社は生き残ろうとさまざまな事業をおこない、投資なども積極的におこなっています。商社業界に将来性はあるのか、あるのであれば、それはどんな分野なのか、に焦点をあてていきます。
商社とは
「総合商社」や「商社マン」など、「商社」という言葉はよく耳にしますが、意外とその仕事内容については知らない人も多いのではないでしょうか。ただ生活する中で「知らなかった」というのであれば大した問題ではありませんが、商社に応募して「一流の商社マンになりたい」などといいながら商社が何かを知らないとなると、大問題です。
そもそも、商社の仕事とはどのような内容なのでしょうか。まず、一般消費者の生活と密接に関係する「商社の仕事」について、詳しく見ていきましょう。
商社はモノとお金と情報を扱う
商社はその名の通り「商いをおこなう会社」のことです。商い、つまり商売に関わることを手広くおこなうのが商社であり、その事業は大きく分けて「物流」「金融」「事業投資」「情報」の4つに分かれます。
物流分野の事業は「トレード」とも呼ばれ、売り手と買い手を繋ぐラインを形成する全てがその守備範囲です。運送、販売、宣伝企画、市場調査、販売企画、マーケティングなどをおこないます。
金融・事業投資分野では、為替や先物の取引をおこなったり、子会社や取引先への投資や融資などをおこなったりします。また、事故などのリスクに備えるための「保険業」などは、物流と金融の両分野に精通した商社ならではの事業といえます。
情報分野に関しては、以前は全国・海外に展開する支店を利用した、情報収集力や伝達力が商社の強みでした。しかし、現在ではインターネットが普及したことにより、手広い情報よりもニッチな情報を集める能力や、情報を処理・活用する技術に重点を置くようになってきています。
総合商社はある意味「なんでも屋」
有名なキャッチコピーである「カップラーメンからロケットまで」の言葉通り、さまざまな商品を扱う「なんでも屋」が総合商社です。商社の中でも、前述した4事業の全てを扱うものが、特に総合商社と呼ばれているようです。
総合商社の取引商品やサービスは多岐にわたり、扱うモノも事業内容も、どんどん複雑化しています。特に、近年では投資の形もさまざまで、金銭的な融資に留まらず、新しい技術や経営手法の導入に必要な人材の派遣などもおこなっています。
最もシンプルな「商い」の形は「安く仕入れて高く売る」これだけでした。そこに商品を運ぶための「輸送」、リスク回避のための「保険」、商品を売るための「宣伝」や、それらに必要な「資金と人材の提供」などに目を付け、これらを一手に引き受ける「なんでも屋」が商社なのです。
専門商社は特定の分野に強い専門家
「総合商社」に対して「専門商社」と呼ばれる商社もあります。専門商社はその名の通り、特定の分野や業種に絞って、投資やトレード(物流事業)をおこないます。
商社の4分野「物流」「金融」「事業投資」「情報」のうち1~2分野を取り扱っているものが専門商社で、「広く浅く」ではなく「狭く深く」、関連した分野や業種の企業に精通しています。
そのため、クライアントが大手から中小まで、幅広いのも特徴のひとつといえます。海外の商社はこの形態が一般的で、総合商社は日本独自の形態のようです。例を挙げると、家具の「アイリスオーヤマ」や、プリンターなどで有名な「エプソン」や「キャノン」なども、専門商社のうちのひとつです。
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商社の今後の動向と将来性
主要な総合商社5社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)の2018年3月期連結決算では、5社とも2016年3月期と比べて回復しており、今後もこの流れでいくのであれば、将来性があると読み取ることができます。
しかし、総合商社は事業を育てる「事業経営ビジネス」に偏りつつあるため、注意が必要です。事業経営ビジネスとは、将来有望な分野、その分野を扱う企業に金銭や人材による投資をおこなうことです。事業経営ビジネスの難点は、利益として還元されるのに時間がかかる点、そして有望な分野や企業の選定が容易ではない点で、一歩間違えると大損害を被るリスクがあります。
一方で、専門商社は「狭く深く」築き上げてきた情報網から、将来性のある分野を選定しやすいメリットがあります。どちらにせよ、商社の将来性は、それぞれの情報力と判断力による、といえるかもしれません。
商社で将来性のある分野
総合商社の将来性は投資先をどこにするか、専門商社の将来性は提携先やクライアントをどこにするかで決まるといっても過言ではありません。それでは、将来性のある分野とは、どのような分野でしょうか。
判断基準は大きく分けて2つあります。ひとつは、今後発展していく分野です。エレクトロニクスや半導体といった電子分野、そしてAIやバイオテクノロジーなどの新しい分野がこれにあたります。
もうひとつは、今後無くなる可能性の低い分野です。たとえばモノ作りに欠かせない資源開発や、人が生きる限り必要で、かつ研究が進む医療分野などがこれにあたります。
資源開発
資源開発というと、石油をイメージする人が多いかもしれませんが、それだけではありません。石油(火力)以外のエネルギー資源や、レアメタルをはじめとした鉱物資源の採掘なども資源開発の一端といえます。人間が生きてモノを作り、ガスや電気などを使う限り、資源は必要とされます。
現在、日本では脱原発が叫ばれ、国際的にはCO2をはじめとした温室効果ガスの削減が課題となっています。そのためか、今では再生可能エネルギーやクリーンエネルギーなどに注目が集まっています。
それ以外にも、海洋汚染の問題からプラスチック製品の利用に対する見直しを検討する企業も増えており、新たな資源、新たな技術への期待が高まっていると考えられています。
医療機器
人がより健康に長生きするためには、医療技術の進歩は欠かせません。それと同時に、医療行為をおこなうための医療機器も必要とされています。日本国内では超高齢社会に向けて、医療分野には更なる発展が期待されています。その期待値に応えるかのように、ノーベル賞を受賞したガンの治療法をはじめ、日々進歩を続けているのが医療分野です。
最近では世界的にも健康志向が高まっており、先進国はもちろん、新興国や発展途上国など、医療技術を求める国はごまんとあるでしょう。このことから、医療機器の市場は、拡大の一途をたどることが予想されます。
特に、正確さや繊細さが求められるのが医療機器です。そのため、日本製の高品質な医療機器は、国内外を問わず、ニーズが高まることでしょう。
エレクトロニクス・半導体・電子部品
エレクトロニクスとは、電子の性質を利用する技術を総称したものです。日本では電子工学と訳すことが多く、半導体などの電子部品、広義にはそれらを応用して作ったコンピューターやテレビ、通信機器などの機器類を指すときにも使われています。
現代では当たり前となったスマートフォンやプラズマテレビ、カーナビなど、現在の「生活」や「利便性」を支えている産業ともいえるのがエレクトロニクスです。人間の代わりに働くAI、全自動運転の車など、一般運用にはまだ至っていないものの、試験導入はすでに始まっています。
こと精密機械にかけては、日本の企業は非常に高い技術とブランド力をもっています。それを武器に、国外企業への流通ルートも確保しやすく、将来性も開拓する余地が十分にあるといえるでしょう。
バイオテクノロジー
バイオテクノロジーとは、生命工学・遺伝子工学と呼ばれる分野です。医療分野の抗生物質、食糧や農業分野の遺伝子組み換え作物、エネルギー分野のバイオエタノール、環境分野の生分解性プラスチックや微生物による汚水処理など、あらゆる分野に貢献しています。
バイオテクノロジーの中でも、遺伝子組み換え作物に対する風評は根強く、依然として風当たりは強いです。しかし、病気に強い作物や栄養価の高い作物を開発することは、世界の食糧問題を解決に導く糸口になりえます。他の技術も同様に、すでに各分野に大きく貢献した実績もあり、これからもバイオテクノロジーを用いた技術の市場はどんどん拡大するとみられます。
これだけ手広い産業に関わる分野なので、専門商社に限らず、総合商社であっても、「なんでも屋」としての手広いネットワークが活かせるでしょう。
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商社の将来性を把握した上で何をするかが重要
インターネットなどの情報産業の普及は、商社業界に大きな変化をもたらしました。販売や流通といった主要事業で衰退が囁かれている現状、将来性に不安を感じる就活生がいるのは無理からぬことです。
しかし、商社業界の事業は流通だけではありません。もちろん、将来性のある産業の流通などに直接的に参入することもあります。また、最近注力している「事業経営ビジネス」で、将来性のある分野や企業に投資し、それによって利益をあげることもあります。
総合商社にも専門商社にも、それぞれの強みを活かした生き残り戦略を立てており、将来性はあるといえます。それらを踏まえ、自分が何をしたいのか、どんな事業に関わりたいのかをよく掘り下げて、自分の考えとマッチする商社を選びましょう。