企業研究

【学閥一覧を大公開】企業との関係や出世への影響まで詳しく解説

そもそも学閥とは?

「学閥(がくばつ)」と聞いても、ピンとこない就活生も多いのではないでしょうか。「学歴社会はもう古い」といわれている現代なので、当然と言えば当然の事です。しかし、実際に社会に出てみると、未だに「学歴」や「学閥」は根強く存在しており、それを痛感する機会も多いです。

学閥とは、読んで字のごとく、「出身校や学派の同一性に基づいて形成される集団」を意味します。同じ閥に属している人間を、外部の競争相手や敵対者から守り、有利な地位に立たせようとする、排他性の強い非公式な下位集団のことを指すのです。

同じ閥に属している人間には心強い味方となりますが、一方閥に属さない人間はどうなるのでしょうか。ここでは、学閥について詳しく解説していきます。

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学閥の実態

近年、大学を選ぶ生徒の側では、大学OBのネットワークを大いに意識していると言われています。それは、生徒側やその親が出身大学OBのネットワークが、就職や就職以外の局面でも、ビジネスに有利だと意識し始めたからだと言われています。

OBネットワーク、それがつまりは「学閥」です。学閥は特に、企業や、官庁、学界の内部に大きく強く根を張っているといわれています。学閥意識の強い企業などに就職すると、その結束の固さを目の当たりにすることも多く、力強く感じることもあれば、戸惑うことも多いといえます。

就職を希望する先が学閥がある企業であるならば、どの学閥が強いのかを事前に調べておくと、就職活動も優位に進めることができるとも言われていますので、学閥の実態を把握しておくことはとても大切になってくるのです。

学閥が出来る理由

ここまで見てきた通り、学閥は確かに存在しています。社会の中で少なからず影響力を持っている学閥ですが、そもそもそういった学閥はなぜできるのでしょうか?どのような学閥があるのかといった具体的な部分に踏み込む前に、学閥が生まれる背景を知っておきましょう。

学閥に肯定的なイメージを持つにせよ否定的なイメージを持つせよ、そういったものが一定の影響力を持っていることは事実であり、それらが生まれるにはそれなりの理由があります。ここからは、学閥がなぜ生まれるのかといった理由の部分を見ていきます。学閥が生まれる背景を知り、理解を深めていきましょう。

同じ大学出身という仲間意識

学閥が生まれる理由の1つ目は、やはり同じ大学出身だという仲間意識が上げられるでしょう。初対面であっても、自分と同じ学校出身であるとなれば親近感や共感が湧き、話が盛り上がるといった経験は誰もが持っているでしょう。

実はそれは就活を始めビジネスの場でもあることなのです。そこにはさらに、採用へのリスク回避という思惑が入る可能性もあるでしょう。例えばその企業内にA大学卒業の社員が多数いたとします。採用担当者もその大学の卒業生だったとすれば、その大学の学力レベルや雰囲気、卒業生の仕事ぶりなど、リアルに掴んでいるでしょう。

一方、社内に卒業生がおらず、どのような学生がいるのかイメージしにくい大学というのは採用する側が不安になる可能性もあるのです。採用には大きな責任が伴いますので、入社後にミスマッチが発生するリスクを回避したいと考えるでしょう。そこで、「自分がよく知っている大学の卒業生の方が安心」という心理が働くと考えられるのです。

同窓会組織の存在

学閥が生まれる代表的な理由の2つ目は、同窓会組織が存在していることです。例えば慶應義塾大学には「慶應三田会」、東京大学には「東京大学校友会」、一橋大学には「如水会」といった同窓会組織が存在しています。

さらに、慶應三田会であれば東京三田倶楽部、如水会であれば如水会館といった同窓会組織の拠点があり、そこを中心に卒業生たちが交流することができるのです。そういったところでさまざまな卒業生と関わりを持っておけば、仕事の場面などで顔を合わせる可能性もあるでしょう。

特に慶應義塾大学などは実業に強い大学であるため、ビジネスで関わる人が同じ大学出身者であるというケースも多いのです。関わった相手が同じ大学出身者であればやはり嬉しいものですし、「一緒に仕事がしたい」「同じ大学の卒業生(仲間)として引き立てたい」といった心理が起こるのも無理がありません。このように同窓会組織の存在も、学閥の存在の大きな理由の1つとなっているのです。

官僚

官僚の世界は東京大学の出身者がとても多いです。そのため、「東大の学閥が力を持っているのだろうな」と思う人もいるかも知れませんが、実はそうではありません。東大卒の官僚が多い分、逆に東大の学閥に所属する意味が薄くなってしまうのです。

そのため官僚の世界では、東大の卒業生の中で、さらに出身高校による学閥が形成されるという特殊な状況が生まれています。東大進学率の高い開成高校、灘高校、麻布高校、筑波大学附属駒場高校など、高校ごとの学閥があるのです。

もちろん、官僚の世界も東大出身者だけというわけではありません。東大以外の大学出身者もいますので、東大というまとまりもある程度の意味は持つでしょう。しかしそれ以上に、出身高校ごとの学閥が意味を持つとされるのが官僚界の特徴であるといわれています。

日本の学閥一覧

  • 赤門閥
  • 鉄門閥
  • 凌霜閥
  • 三田閥
  • 三四閥
  • 桜門閥
  • 稲門閥
  • 白門閥
  • 茗渓閥
  • 如水閥

上記に日本の代表的な学閥を上げてみました。赤門閥とは、東京大学出身者で構成されている学閥です。同じ東京大学出身者ではあるけれど、医学部の出身者だけで構成されているのが鉄門閥です。

凌霜閥は神戸大学の社会科学系学部の出身者で構成されています。三田閥は慶応義塾大学出身者で構成されている学閥です。三四閥も慶応義塾の出身者ですが、医学部出身者だけで構成されています。

桜門閥は日本大学出身者で構成されていて、稲門閥は早稲田大学出身者の学閥です。白門閥は中央大学出身者で構成され、茗溪閥は筑波大学(元師範学校、元東京教育大学)出身者で構成されています。如水閥は一橋大学の出身者で構成されている学閥です。

業界によって学閥に違いがある

一口に学閥といっても、それぞれに強みを持つ分野が違います。例えば、医療界に強い学閥や、政財界に強い学閥、金融業界に多い学閥など様々です。学閥は昔からあるものであり、その学閥にいる人間を守り、有利な立場へおきたがる特性からも、出身大学と学閥との結びつきは強固だと言えます。

学閥の持つネットワークは、とても広く強いのものです。そのため、考え方によっては、出身大学によって就職への有利さが違ってくるとも言えます。就職した後も大きな助けとなる部分も多いことも、事実としてあります。ここでは、日本における各業界と学閥の関係を紹介していきますので、参考にしてみてください。

医療

医療界に強い学閥は、東京大学出身者で構成される鉄門閥と、慶應義塾大学の医学部出身者で構成される三四閥が有名です。医療界は、医局制度に代表されるように、完全な縦社会と言われており、学閥の影響力は相当なものと言われています。

同じ「医師」という立場だとしても、その出身校が旧帝大(東京大学、京都大学、東北大学、九州大学、北海道大学、大阪大学、名古屋大学)であるのか、そのほかの国立なのか、私立なのかということも、大きく関わってくる世界です。医療分野に進むのであれば、学閥は大いに意識した方がいいといえるでしょう。

公務員

公務員の学閥で、一番大きいものが東京大学出身者で構成される鉄門閥です。ついで、一橋大学出身者で構成される如水閥で、早稲田大学出身者で構成される稲門閥も多いと言われています。

しかしながら、最近は学歴を優先するのではなく、その人そのものを見る、という考え方に変わってきているので、面接カードにも学歴を書かせない所が増えてきています。学歴や学閥によるバイアスがかからないようにする配慮からといわれているので、大学のOBやOGがいるから、学閥があるから安心というものでもなくなってきているといわれています。

銀行

メガバンクの管理者を出身大学別にみていくと、一番多いのは東京大学出身者で構成されている鉄門閥です。続いて一橋大学出身者で構成される如水閥、慶應義塾大学出身者で構成される三田閥となります。

学閥がそのまま合格者数に比例するとは考えにくいですが、例えば、東京三菱UFJ銀行は東京大学出身者が一番多く、次が慶應義塾大学出身者、そして一橋大学出身者の順になります。同じ財閥系の三井住友銀行は東京大学と慶應義塾大学までは同じですが、その次に来るのは早稲田大学出身者と神戸大学出身者になります。銀行のカラーによる部分も大きいと言えるでしょう。

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実際の企業と学閥の関係例【早稲田・慶應】

この世の中には「学閥」というものが確かに存在し、業種によっても学閥は違ってくるということがわかりました。就活生の中では「三菱商事は慶應が強い」「関西電力なら京大か同志社だ」「住友系なら東大出身者が有利だ」などという話しがされていることも多いです。

早稲田大学と慶應大学の両方に合格した生徒が、最終進学先として慶應を選ぶことが増えてきています。これは、明らかに就職を意識しての動きだと言われています。

ここでは、そういった実際の企業と学閥(出身校)の関係性を、進学希望者の多い、早稲田大学と慶応義塾大学を例にとってご紹介しておきます。

早稲田大卒の役員が多い企業

慶應義塾大学の学生が、所謂「ブランド企業」に偏りやすいのに比べ、早稲田大学の学生は実に様々な職種に散らばるのが特徴です。早稲田大学出身の役員が多い企業は、電気化学工業、日本オフィスシステム、昭和電線ホールディングス、エリナス、西島製作所などが挙げられます。地方企業に散らばるのも、慶應には見られない特徴です。

また、マスコミ業界にも強く、角川グループの角川歴彦氏や、新潮社の故佐藤亮一氏なども早稲田大学の卒業者です。しかし、「早稲田大学の学生は、慶應義塾の学生に比べて学閥をあまり作らない」という意見も多くあります。

慶應卒の役員が多い企業

慶應義塾の特徴は、創業家の血筋を引く、2世や3世が多く通うというところです。これは、創業者が後継者に商業の事を学ばせたい場合、帝国大学は理系中心だったために、私学ならば慶應を目指させるのが定番だったからです。

サントリーホールディングスの佐治忠信会長、資生堂の福原義春名誉会長、森トラストの森章社長などが、慶應で学んだ創業者御曹司といわれています。慶應義塾の特性からもブランド企業に進む生徒が多いといえるでしょう。現在では、トーセイ、システムロケーション、大正製薬ホールディングス、ミクニ、東京都民銀行などが、慶應出身の役員が多い企業です。

実際に社会に出て学閥の存在を実感するか

このように、学閥が存在することは確かで、学閥によって就職先にある程度の特徴が見られたり、企業カラーを作る一因となることもあります。では実際に社会に出て働いている人は、普段から学閥を意識しているのでしょうか。

現在では学閥が日常的な業務に関わってくることは少なく、学閥そのものを感じたことがない、という社会人も多いです。一方で、歴史ある大企業に就職した社会人ほど、学閥に触れる機会が増える傾向にあります。

学閥を実感する人は少ない

現在では、学閥が誕生した頃には存在しなかったような、新しい業界・業種が数多く存在し、社会でも大きな存在感を持つほどになりました。また老舗の大手企業の方でも、こういった新参企業に遅れを取らないためには、学閥を意識せずに積極採用していく必要性が出ています。

たとえ高卒でも、実力次第で大きく出世し、会社内や業界内で重要な位置につくケースは増加傾向にあり、大学で将来が決まる時代ではありません。実際に社会人を対象にした調査でも、学閥を実感したことのある人は全体の半分以下という結果です。とは言え、完全に学閥が消失したわけではないので、就職後のギャップに悩まないよう、特に大企業を志す人は、学閥の存在を覚えておきましょう。

「大学」閥と「学部」閥があることも

企業や業界によっては、出身大学を指す「大学閥」とは別に「学部閥」が存在することもあります。上で示したように、鉄門閥や三四閥は医学部の出身者だけで構成されており、他にも法学部出身者を特に優遇するような学部閥も実在します。

一般企業よりも、官僚や省庁・官庁にその傾向が強く出ますが、そもそも法学系統の職業に就く方は、法学部やロースクールなど法学を専攻した方が圧倒的に多いです。法学部閥が存在しているわけでなく、一見してそう感じるだけとも言われます。

他には、財務省や日銀などの組織で経済学部閥が見られることもありますが、特に経済学部を優遇して採用しているわけではありません。どちらにせよ、近年は学部閥よりも、個人の能力が重視される傾向にあり、就職に影響することは少ないです。

学閥は就職後の出世にも影響があるのか

特に一流と言われる企業では、採用の際に出身大学が大きな影響を与えるのは、今も昔も変わらずにあります。入社の時に出身大学でふるいをかけられ、各企業に学閥が存在する事を知った今、気になるのは学閥がどれだけ出世に影響を与えるかということです。

採用時には、当然就活生には仕事実績がないので、出身大学を指標にします。しかし、入社後に出世のための指標になるのは「どれだけ仕事ができるか」ということになってくるのが通常です。

たとえ、有名大学の卒業生であっても、仕事で結果を残せない社員は出世する事は出来ないのです。つまり、学閥は出世には直接影響しないということです。しかし、自分の出身校の学閥がある企業ならば、ネットワークを作りやすいのは事実ですので、上手く付き合っていくことで、結果的に出世すると言う事は考えられます。

有名企業への就職率が高い大学

こうした学閥を持つ大学は有名企業への就職率が高いと言えます。東洋経済ONLINEによれば、「如水閥」という学閥を持つ一橋大学は有名企業に就職しているパーセンテージが日本一です。続いて第2位はグローバル人材を多数輩出している東京工業大学であり、毎年この2つの大学は上位の座を譲ることがありません。そして第3位は「三田閥」のある慶應義塾大学です。それぞれの大学がどのような就職事情なのか具体的にご紹介します。

1位 一橋大学

一橋大学はメガバンクに就職する人が極めて多い傾向にあります。5大商社への就職も他大学の追随を許しません。先の『東洋経済ONLINE』では、約60%の就活生が有名企業への内定を決め、3年間連続で日本一の結果となりました。そもそも一橋大学は、多くの学生が大手企業への就職を望んでいることもあり、一橋大学生に特化したセミナーが盛んです。

また同校の卒業生が後輩たちを迎え入れる動きもあり、企業と大学に強い関係性があります。昨今では、名門大学を中心にこうしたリクルーティングは決して珍しいことではありません。「文系は就職に弱い」というイメージがありますが、一橋大学の学部は「商学部」、「法学部」などすべて文系です。

2位 東京工業大学

一橋大学とは正反対に理系学部のみの東京工業大学も、高い就職率を誇ります。多くの学生が大学院へ進むものの、製造業を中心に就職先を決めている状況です。金融系企業などに入社する学生も少なからず、理系出身者はどの業界でも重宝されるに違いありません。約56%の学生が有名企業に就職しています。東京工業大学はノーベル賞受賞者を輩出し、国内だけでなく世界の大学ランキングでも常に上位です。

世界レベルの研究職に就くためにうってつけの大学だと言えるでしょう。また学生の14%が留学生でその数は約1400名になるほどグローバル化の進んでいる環境です。1881年創立という長い歴史を持ちながらも、時代の最先端を走り続けています。

3位 慶應義塾大学

理系と文系の両方の学部を持つ慶応義塾大学も、有名企業に入社する学生がたくさんいます。メガバンク・大手保険会社など金融系への就職が目立ち、5大商社も主な就職先です。一橋大学や東京工業大学よりも圧倒的に学生数が多く、卒業生約8000名のうち約46%が有名企業に入社しているのも大きな特徴と言えるでしょう。

この数値は、私立大学No.1であることは言うまでもありません。慶應大学生のみを対象とした就活セミナーや卒業生による就職レクチャーがあり、これらが就職率の高さにつながっています。金融系企業・商社以外にも、慶応義塾大学病院や航空会社、広告代理店、国家公務員など人気の業界や職種に就いている学生は少なくありません。

学閥が全てではないが知識として知っておこう

現代では、ITの発展に伴い、働き方や仕事に対する考え方も多様化を見せています。今迄であれば、一流大学を出れば一流企業に就職でき、それなりに出世をしていくというレールがありましたが、現代ではそうもいきません。

逆に言うと、学歴や学閥という後ろ盾がなくても出世できる可能性がある社会になってきたということです。例えば、吉野家ホールディングスで会長と社長を歴任した安部修仁氏は、学歴は高卒、アルバイトで吉野家に入りトップまで上り詰めた「たたきあげ」です。学閥がなくても出世はできるという良い例と言えるでしょう。

確かに就職までの間は出身大学が大切になってくる場合も多いですが、入社後は完全に実力の世界です。「学閥は全てではない」ということを理解しつつ、そのネットワークをうまく活かせば出世の可能性は十分にありますので、知識として知っておいてください。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

多くの学生と企業をマッチングしてきた経験を活かし、『就活対策サイト「キャリアパーク!」が教える 「最高の会社」の見つけ方』(高橋書店)を出版。最高の会社を見極めるための基準や失敗しない企業選びの方法を紹介している。

全国民営職業紹介事業協会 職業紹介責任者(001-190515132-01459)

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