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「存じ上げます」と「存じます」の違いとは?意味と正しい使用例文
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目次
「存じます」と「存じ上げます」を正しく使い分けよう
就活にあたって戸惑いを覚えることはいくつかありますが、敬語の使い方もその一つでしょう。社会人になると、学生時代はあまりなじみのなかった礼儀正しい言葉遣いをしなければなりません。敬語は使い慣れれば比較的スムーズに出てくるようになりますが、それまでは少々訓練が必要です。面接に臨む前に、敬語の使い方についてきちんとチェックしておいた方が良いでしょう。
敬語の言い回しで引っかかりやすいものは少なくありませんが、特に迷いやすいのが「存じ上げます」と「存じます」の使い分けです。この二つはどういった場合にどういう意味合いで用いればよいのでしょうか。本記事では、「存じ上げます」と「存じます」の意味や使い方について詳しく解説していきます。
「存じる」は知っている・思っているの謙譲語
「存じる」は、知っている・思っているという意味をあらわす謙譲語です。謙譲語の「存じる」に丁寧語の「ます」を付けた動詞は「存じます」となり、敬うべき相手に対して「思います」「知っています」というときに使う言葉遣いです。目上の人や上司に対して使う言葉であり、後輩や同期に対しては使わない表現です。学生のうちはあまり使わない敬語ですが、社会人になると良く使う言葉遣いとなっています。それでは、謙譲語は尊敬語とどう違うのでしょうか。以下で見ていきましょう。
謙譲語・尊敬語・丁寧語の違い
謙譲語、尊敬語、丁寧語の違いについてみていきましょう。謙譲語とは、自分をへりくだることで相手を立てるときに使う言葉です。謙遜する意味があり、主語を自分に当てたときに同士を謙譲語に変えて使うことが多いです。尊敬語は目上の人に使う言葉であり、謙譲語と同様に相手をたてるときに使います。尊敬の意をあらわし、相手を敬う言葉です。
上司や目上の方に対して使います。謙譲語は自分が主体となる言葉ですが、尊敬語は相手が主体の言葉という違いがあります。丁寧語は聞き手に対して丁寧に述べる言葉です。です・ますを付けて話すなど、相手と内容を問わない話し方となります。謙譲語や尊敬語と同様に敬意を払った話し方ですが、上品に話をしたいときの改まった言葉遣いとなっています。
それぞれの意味と使い方
そもそも、「存じます」と「存じ上げます」にはどういった意味があるのでしょうか。両者はどちらも「存じる」という言葉が元になっていますが、これは「知っている」「思う」という意味を持つ「存ずる」の上一段活用です。つまり、意味としてはどちらも「知っています」「思っています」といったものになるわけです。
では、両者は同じ使い方をしてもよいのでしょうか。実際にはこの二つは微妙なニュアンスの違いがあり、それぞれ使い方も若干異なります。それについては以下で見ていきましょう。
「存じます」の使い方
まずは「存じます」の使い方から見ていきましょう。この言葉は先にも述べたように「知る」「考える」という意味の動詞「存じる」に、丁寧語の「ます」が付いたものです「存じる」は謙譲語で、こちらがへりくだる際に使われます。つまり、こちらの考えや知っていることを、上司や取引先など目上の相手に伝える場合に使われるわけです。
「存じます」が適用される対象は幅広く、人や物、場所などに対して使われます。ニュアンスとしてはやや硬い表現のため、文書やメールなどの文章で用いられることが多くなっていますが、対面相手や電話の相手に対しても使われることが多くあります。前述のように「存ずる」は謙譲語のため、相手の立場に対しては使えません。例えば「存じていらっしゃる」などの使い方は、敬語として正しくないので注意しておきましょう。
「存じ上げます」の使い方
一方、「存じ上げます」の使い方はどうでしょうか。こちらも謙譲語の動詞「存じる」が元になっているのは同様ですが、「上げる」という言葉が付属しているのが特徴です。では「上げる」が付くことで、どのようなニュアンスが生まれるのでしょうか。この場合の「上げる」は、動詞の後に続いて相手に敬意を表する意味を持っています。つまり「存じ上げます」は、謙譲語の「存じる」を、さらに丁寧に敬意を込めて表現する言葉だと言えるでしょう。
「存じ上げます」の違いとしては、用いられる対象が物や場所ではなく、人に限られるという点があります。また、「存じます」はビジネス文書などで主に使われるのに対し、「存じ上げます」は対面や電話の場合によく使われるという違いもあります。
「存じ上げております」の使い方
ところで「存じます」や「存じ上げます」と同様に、「存じ上げております」という表現もよく耳にします。この「存じ上げております」という言葉は、どういった場合に使われるのでしょうか。「存じ上げております」は、「存じ上げる」に「おる」という「いる」の謙譲語が付いた言葉です。「いる」はすでにある状態を指し、過去から現在にかけて行われている様を表します。
つまり「存じ上げております」は、「すでに知っている」ということを丁寧に表現しているわけです。物や事などに対しては使われず、人に対して使われるのは「存じ上げます」と同様です。目上の人が目の前にいる時などに、「お名前はよく存じ上げております」などといった使い方をするのが一般的です。
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「存じ上げます」「存じます」の使い分け
上では「存じます」と「存じ上げます」のそれぞれの使い方について見ましたが、実際に使う際にはやはり混同しがちです。
話している最中に悩んでしまい言葉に詰まって印象もよくありません。逆にスマートに使い分けることで、面接の際なども好印象を与えやすくなるでしょう。ここでは、「存じます」と「存じ上げます」の使い分けのポイントについて見ていくことにしましょう。
大まかな使い分けを覚えておけば便利
それぞれを的確に使い分けるには、両者が何に対して用いられるかを踏まえておくと便利です。前にも触れましたが、「存じます」と「存じ上げます」は使われる対象が若干異なります。「存じます」が使われるのは人や物、場所や案件などに対してですが、「存じ上げます」は主に人に対して使われる言葉となっています。この違いを踏まえておくと、使い分けに迷うことはなくなるでしょう。
つまり、場所や事物については「そこは○○(場所の名前)と存じます」「その件については○○(物・事の名前)かと存じます」となり、人については「○○様かと存じ上げます」といった使い方になるわけです。注意したいのは、「存じます」は人に対しても使われますが、「存じ上げます」に比べるとやや敬意に欠ける感があるということです。ですから、特に対面の相手に対しては「存じ上げます」を用いた方がよいでしょう。
疑問で使う「存じる」
それでは、「存じる」を疑問形で使う場合にはどうなるのでしょうか。これも前に述べましたが、「存じる」は謙譲語のため、主語が自分や身内の場合以外は使えません。ですから「存じていらっしゃいますか?」といった使い方は間違いということになります。
「知る」を疑問で使う際には、「ご存知」を使うのが適切でしょう。厳密には尊敬語ではありませんが、一般的に「知る」の尊敬語として使われるようになっています。つまり疑問形としては、「○○をご存知でしょうか?」といった使い方になるわけです。
一方で、「ご存知」は敬語の「存じる」に丁寧語の「ご」を付けた言葉のため、「二重敬語にあたるのでは?」という見方もあります。しかし、現在は一般的に使われる言葉として広まっており、ビジネスシーンにおいても違和感なく使用することができます。
「存じ上げます」「存じます」の正しい使用例文
「存じ上げます」と「存じます」の使い方について、なんとなく理解できた方も多いでしょう。しかし、「存じ上げます」と「存じます」は、実際に使ってみるとなると難しい言葉遣いといえます。ここでは、「存じ上げます」と「存じます」の正しい使用例についてみていきましょう。使用例文を参考にすれば、ビジネスシーンでも正しい使い方ができるようになるはずです。社会人として、正しい敬語表現が自然と出てくるようになるまで練習しておきましょう。
「存じ上げます」の使用例
- 「田中様のお名前は、かねてからよく存じ上げております」
- 「その方でしたら、金田様の奥様かと存じ上げます」
- 「高橋様については存じ上げません」
以上が「存じ上げます」の使用例です。前述のように、「存じ上げます」は人に対して使う言葉になります。「○○様のご高名は、以前からよく存じ上げております」のように、人物や名前に対して用いるのが一般的です。
ですから、「この件に関しては存じ上げません」など、事物や案件の場合には用いない方がよいでしょう。むやみに「存じ上げます」を使うことは、返って慇懃無礼な印象を与えかねません。使用するときは対象を人物や名前に限って使った方が適切でしょう。
「存じます」の使用例
- 「貴社ますますご清栄のことと存じます」
- 「お忙しいこととは存じますが」
- 「この件につきましては、すでにご承知のこととは存じますが」
- 「わたくしもそのように存じております」
- 「お心遣いいただき、まことにありがたく存じます」
- 「今後一層努力していきたいと存じます」
以上のようなものが、「存じます」の使用例になります。「存じます」は物や事が対象となるため、ビジネスシーンにおいては幅広く使われる言葉となっています。
特に、メールや文書などでややかしこまった言葉遣いをするときにはよく用いられますから、普段から使い方を練習しておいた方が良いでしょう。面接の際も適度に使用することで、ぐっと印象が変わってくるはずです。
「存じ上げます」「存じます」の間違った使用例文
「存じ上げます」と「存じます」の正しい使用例についてみてきましたが、続いて間違った使用例文についてみていきましょう。間違った例文をみてみると、その違いがより分かりやすくなるはずです。「知っている」と「思います」のどちらの意味になるのか注意して、「存じ上げます」「存じます」を使うタイミングを間違えないようにしましょう。間違った例文を知っておけば、この二つの言葉を混同しないように気を付けることができるはずです。
「存じ上げます」のNG使用例文
- ○○さんのご高名はかねてより存じ上げます
- ○○の商品は、よく存じ上げます
- 新しくできた○○を存じ上げますか?
上記の例文だと、「存じ上げます」が「思います」の意味になってしまいます。「ご高名」は、高い評価を受け広く名前が知られていることを意味するため、「○○さんの評判を知っている」という意味で「存じる」を使いたい文章であり、このままでは「○○さんの評判を思います」といったおかしな文章になってしまいます。また、「存じ上げます」を「知る」の意味でとらえたとしても、「○○さんの評判は昔から知っていて、これからさらに知ります」というような意味の文章になってしまいます。
したがって、正しくは「○○さんの御高名はかねてより存じ上げております」が正しい言い方です。「○○の商品は、よく存じ上げます」も、正しくは「○○の商品は、よく存じ上げております」です。「新しくできた○○を存じ上げますか?」という表現も「新しくできた○○をご存知ですか?」が正しい表現といえます。
「存じます」のNG使用例文
- はい、○○のことは存じます
- ○○さんのことは存じます
- 存じますように、福岡は九州にあります
「はい、○○のことは存じます」とすると、○○のことをこれから知るような文章となっているため間違いです。この場合は、「はい、○○のことは存じております」が正しい言い方です。こうすれば、○○のことを「知っていた」という意味の文章にすることができます。
「○○さんのことは存じます」もおかしな文章です。このままだと、「○○さんのことは思います」という意味になり変な日本語になってしまいます。この場合は「○○さんのことは存じております」とすれば、「○○さんのことは知っています」という意味の文章になり違和感がありません。「存じますように、福岡は九州にあります。」も、「ご存知のように、福岡は九州にあります」の方が自然です。
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言葉の違いを知って使い分けよう
「存じ上げます」と「存じます」は、どちらも「知る・思う」という意味の謙譲語「存じる」が元になっています。よく似た言葉のために混同して使いやすい両者ですが、それぞれにふさわしい使い方があります。「存じ上げます」は主に人に対して、「存じます」は物や場所、案件に対して使うと覚えておきましょう。
敬語は日本語においても特に混乱しやすい分野です。普段使い慣れていないと、とっさの時に使い方を迷ってしまうことも少なくありません。就活生はそれまでと違い、急に敬語を使う機会が多くなりますから、なるべく練習してスムーズに使えるようになっておきたいところです。