印刷業界とは
印刷業界は広告印刷などの事業を行う業界です。印刷業界は就活生にはあまりが馴染みのないものも多く、広告や出版業界と同じように考えれていることも多いです。印刷業界は広告や出版業界とも深い関係にありますが、全く同じものではなく、印刷業界だけで独立しています。
印刷業界は現在さまざまな変化が起こっており、大きな転換期にある業界でもあります。印刷業界についての正しい知識を身に付けて、就活に役立てていきましょう。
印刷業界の概要
印刷業界の事業は大きく出版印刷、商業印刷に分けられます。出版印刷は書籍や雑誌、商業印刷はカタログやチラシなどの印刷ですが、どちらの分野も業績は縮小傾向、あるいは横ばい状態で推移しています。
これは電子書籍やインターネットの普及によりメディアが紙媒体からデジタルに移行していることが原因です。出版不況に伴い、出版印刷は縮小傾向になっていますし、商業印刷も業績は横ばい状態です。
打開策として電子書籍の分野に乗り出す企業もあり、印刷業界は大きな転換期を迎えています。電子書籍分野でいかに業績を回復させることができるか、紙媒体からデジタルへと移行できるかどうかが、今後の印刷業界を占うカギとなっています。
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商業印刷と出版印刷の違い
印刷業界に関わりたいと思っているのであれば、知っておきたいのが印刷の分類についてです。印刷と一口に言っても、その種類は細かく分ければ複数存在しています。例えば事務用品の印刷や証券印刷、ダンボール箱などの包装物への印刷は、それぞれ特殊な印刷として個別に分類されている部分があります。これらは印刷する方法や対象が特殊であり、通常の印刷業務よりも技術が求められることも多いです。
印刷する対象が特殊なものとは別に、一般的な印刷として企業でおこなわれているのが、商業印刷と出版印刷です。主に印刷業界というと、特殊印刷よりも商業印刷と出版印刷が主に挙げられることも多いようです。これら2つの具体的な内容について、個別に説明していきます。
商業印刷
商業印刷の主な顧客は、一般企業や団体になります。これらの組織の事業活動に使われる印刷物が主な対象で、内容は宣伝用印刷と業務用印刷に分けられます。
宣伝用印刷は主にチラシ・パンフレット・ポスター・POPのような、企業や団体の業務を宣伝する際に使われるものになります。よく見かける広告のチラシやポスターなどは、宣伝用印刷にあたる訳です。
これとは別に業務用印刷は、企業商品のカタログや会社案内、マニュアルや報告書のような業務に直接関わる印刷物が対象です。就活中に企業から配布される会社案内などは、この業務用印刷になります。他には名簿やマニュアル、社内報などの内部業務や企業・団体内のコミュニケーションに関わる印刷物も扱います。
出版印刷
出版印刷は主に出版社や新聞社が発行する商業出版物に対応する印刷のことをいいます。新聞や書籍・雑誌だけでなく、地図や教科書などに至るまで、商品として取り扱われる印刷物は全て出版印刷にあたります。
また研究機関や団体が発行する書籍類も出版印刷として扱います。いわゆる自費出版の場合も、出版物を商品として扱うことになるので、出版印刷の中に入ると思っていいでしょう。
このように出版印刷は、文字を読む書籍から写真・イラストを用いた観賞用まで様々な形態で印刷されるため、作成ノウハウが多岐に渡ることも特徴です。印刷の分類の中で一番我々の生活に触れる機会が多いのが、この出版印刷に分類される印刷物であるといっても過言ではありません。
印刷業界の業績推移について
- 業界規模3兆8,318億円
- 平均年収515万円
- 平均継続年数15年
印刷業界の業界規模は3兆8,318億円です。2005年から2007年にかけては業界規模は上昇傾向にありましたが、2007年以降はやや縮小傾向であり、2011年以降はほぼ横ばいで推移しています。出版印刷の縮小などの課題はありますが、業界規模としてはそれほど大きな変動はありません。
平均年収は515万円であり、他の業界と比べても平均的な金額です。企業による若干のばらつきはあるものの、平均年収にそれほど大きな差はありません。平均継続年数は15年とやや長めであり、離職率はそれほど高くないと言えます。
他業界と比べても平均継続年数は長い傾向にあり、印刷業界は働きやすい職場が多いことが分かります。これも企業間による若干の差はあるものの、全体でみればそれほど大きな差はありません。
印刷業界の将来性
現在の印刷業界全体の売上額は横ばい傾向となっており、これらは主に電子書籍やインターネットの普及により、広告や雑誌などを紙の形で求めることが減ってきていることにも由来します。
これらの現状を顧みて、印刷業界の電子書籍事業への本格参入もおこなわれつつあります。事実印刷業界大手の大日本印刷は電子書籍サイト『honto』を、凸版印刷は電子書籍ストア『BookLive』を運営し、また専用の端末の開発もおこなうなど積極的に電子書籍事業を展開しています。
大手の事業展開を受けて、今後さらに印刷業界からの電子書籍事業展開がおこなわれる可能性が予測できます。そうなると将来的に、印刷業界に大きな変化を起こすことができるでしょう。
印刷業界の細かい職種分類について
- 研究開発
- 事務
- 営業
印刷業界の職種は研究開発、事務、営業などです。研究開発では企業独自の印刷技術の研究、開発が行われています。近年では電子化の波も広がり、有機ELディスプレイや機能性フィルム、画像処理ソフトなど印刷技術以外の研究、開発も行われています。
事務は印刷物の品質管理や、企画開発などが主な仕事です。完成した印刷物のチェックを行ったり、クライアントのニーズをもとに、商品やサービスなどの企画開発を行います。営業はクライアントを発掘し、自社の製品を売り込んでいくのが仕事です。
また既存の商品を売り込むだけではなく、クライアントのニーズに合わせてプレゼンテーションを行い、印刷物のデザインや完成までの納期などを設定していきます。どれも印刷業界には欠かせない職種であり、それぞれが連携して仕事を進めていきます。
主要企業5選紹介
就活では業界研究だけではなく、企業研究を行うことも大切です。業界を知ることも大切ではありますが、同業界内でも企業によって強みや特徴は違っています。企業ごとの違いをしっかりと理解し、それに合わせて志望動機や自己PRなども考えることが大切ですので、印刷業界の主要な企業を知っていきましょう。
主要な企業は業界の特徴を表すものでもありますので、企業を知ることで業界を知ることにもつながります。企業を知り、就活をさらに有利に進めていきましょう。
①凸版印刷株式会社
- 企業名 凸版印刷株式会社
- 代表者名 金子眞吾
- 従業員数 連結 50,705名
- 設立年月日 明治33年(1900年)
凸版印刷株式会社は、情報コミュニケーションや生活・産業、エレクトロニクスの3分野で幅広く事業を展開している企業です。それらは印刷テクノロジーがベースになっており、独自の印刷技術によって成長を続けています。
印刷業界は二強であり、そのうちの一社が凸版印刷です。高い業績を誇り、印刷業界をけん引しています。凸版印刷は出版印刷の縮小に伴い、電子書籍ストア「BookLive」を運営を開始するなど電子書籍の分野にも積極的に参入しています。
凸版印刷の採用メッセージは「可能性を絞るには、早すぎる。」です。メッセージ通り、さまざまなことにチャレンジできる社風であり、若いうちからの挑戦を支える風土もありますので、向上心の強い人には向いている企業です。
②大日本印刷株式会社
- 企業名 大日本印刷株式会社
- 代表者名 北島 義俊
- 従業員数 10,800名 (連結38,808名)
- 設立年月日 1876年(明治9)10月9日
大日本印刷株式会社は、情報コミュニケーションや生活・産業、エレクトロニクスなどの分野で活躍している印刷会社です。DNPの名前でも知られ、印刷業界の二強のうちの一つの企業でもあります。
大日本印刷は国内外のさまざまな場所に拠点を持ち、グローバルに活躍している企業です。電子書籍の分野にも強みを持ち、平成22年12月にNTTドコモとの合弁会社トゥ・ディファクトを設立し、電子書籍サイト「honto」を運営を始めています。
さらに平成24年には日本ユニシスの株式を取得し、クラウド技術を活用して電子書籍事業を拡大しています。大日本印刷では挑戦と協働を大切にする社風があり、周囲と協力しながら、さまざまなことにチャレンジできる環境のある企業です。
③トッパン・フォームズ株式会社
- 企業名 トッパン・フォームズ株式会社
- 代表者名 坂田 甲一
- 従業員数 1,897名 (連結 11,673名)
- 設立年月日 1955年5月
トッパン・フォームズ株式会社は、印刷物と電子ドキュメントなどの融合を武器とした製品開発などを行っている印刷会社です。デジタルを核としてさまざまな製品、技術を生み出しているのが強みであり、情報管理ソリューションカンパニーとしての側面も持ち合わせています。
それらのベースには、ビジネスフォームやデータ・プリント・サービスなどの分野でのノウハウがあり、高い技術力、製品力でさまざまな分野に事業を展開しています。
トッパン・フォームズで求められている人材は、自ら考え、行動できる人、常に成長し、前進し続ける人などです。社員が自由に挑戦できる社風であり、若いうちからさまざまなことに挑戦していける環境が整っている企業だと言えます。
④NISSHA株式会社
- 企業名 NISSHA株式会社
- 代表者名 鈴木 順也
- 従業員数 791人(連結5,198人)
- 設立年月日 1946年12月28日
NISSHA株式会社は、産業資材、ディバイス、ライフイノベーション、情報コミュニケーションの4つの事業を展開している企業です。もともとは日本写真印刷株式会社という名前でしたが、2017年10月6日に現在のNISSHA株式会社に社名を変更しました。
NISSHAでは独自の技術によって、さまざまな事業領域への展開が行われており、中でも注目を集めているのはタッチセンサーです。印刷業界での業績は低迷気味ではありましたが、高性能なタッチセンサーを開発したことにより、業績を回復させました。
NISSHAでは人材育成を大切にする社風があり、人材育成制度などが整っています。社員一人ひとりを大切にする風土があり、働きやすい企業です。
⑤共同印刷株式会社
- 企業名 共同印刷株式会社
- 代表者名 藤森康彰
- 従業員数 1,905名
- 設立年月日 1925年(大正14)12月26日
共同印刷株式会社は、情報コミュニケーションや情報セキュリティ、生活・産業資材などの事業を展開する総合印刷会社です。独自の営業力、技術力、製造力によって事業規模を広げ、成長を続けている企業でもあります。
印刷物という枠組みを超えて、モノづくりを考えている企業であり、企業独自の強みによって、幅広い分野で活躍しています。またベトナムにも工場を持つなど、日本国内だけではなく、国外にも活動の幅を広げている企業です。
共同印刷では「未来を創り出せる人」が求められています。現状にとらわれることなく、未来を見据え、主体的に行動できる人が求められています。社風としてもチャレンジしやすい環境にあり、柔軟な働き方ができる企業です。
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印刷業界企業の内定をもらうために覚えるべき用語
ここでは、印刷業界の内定をもらうために覚えるべき用語について解説していきます。印刷業界は規模が大きい反面、ペーパーレス化が進んでいる今日において、衰退していく傾向にある業界です。そのため印刷業界では日々新たな取り組みが行われており、それらについて理解をしておくことは印刷業界を志望するにあたって重要なことになるのです。
以下に挙げる用語については、印刷業界を志望する以上、面接においても聞かれる可能性のあるものです。しっかりと理解しておき、印刷業界の内定を獲得できるよう準備を進めておくようにしましょう。
デジタルサイネージ
印刷業界の内定をもらうため覚えておくべき用語の1つ目は、デジタルサイネージです。デジタルサイネージとは、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するシステムのことです。今日においては、ショッピングモールやホテル、公共空間や交通機関など至る所で活用されています。駅や空港の案内板に利用されているのを見たことのある人も多くいることでしょう。
デジタルサイネージは、明確な目的と効果を伴って情報を送る手段として注目されています。デジタルサイネージの利用されるシーンは拡大される傾向にあり、緊急情報の発信も行うなど、その役割は重大なものとなってきています。テレビ、パソコン、ケータイに次ぐ第4のメディアとしての役割を担う可能性が期待されているのです。
セキュリティ印刷
印刷業界の内定をもらうために覚えておくべき用語の2つ目は、セキュリティ印刷です。セキュリティ印刷とはコピー牽制・マイクロ文字・特殊インキを使用した印刷等、セキュリティ性の高い印刷物を提供するサービスのことです。身近な例で言うと、パスポート用のセキュリティホログラムが挙げられます。
パスポートは世界共通の身分証明書であり、そのことからコピーされ、悪用されることによるリスクが大いにあるものです。そのため、パスポートにおいては個人情報が記載されているページにホログラムが転写されており、偽造が出来ないようになっているのです。偽造、模倣といった被害を防止するため、セキュリティ印刷は大きな役割を担っているのです。
電子ペーパー
印刷業界の内定をもらうために覚えておくべき用語の3つ目は、電子ペーパーです。電子ペーパーとは、「紙媒体の優れた面」と「電子ディスプレイの優れた面」を併せ持った反射型表示媒体のことです。電子ペーパーは、偏光板とバックライトが不要なシンプルな構成のディスプレイであり、かつ軽量であることから読みやすさという点で紙媒体と同様、メリットを受けることが出来ます。
また電子メディアであることから、編集など情報の更新をスピーディーに行うことが出来、その点で電子ディスプレイのメリットも享受できるのです。消費電力が低いことによるメリットも大きく、今後、病院や学校、オフィスなどにおいて広く利用されていくことが期待されています。
印刷業界研究のおすすめ書籍紹介
業界研究の方法としては、ネットで調べる、企業説明会に参加するなどの方法がありますが、さらに深い知識を身に付けるのであれば、書籍がおすすめです。業界に関係する書籍であれば、より専門性の高い情報を学ぶことができますし、ネットや説明会では知ることができない、業界の知識を知ることもできます。
業界に関してより深く、専門的な知識を持っていれば、就活を有利に進めることができますので、書籍を利用して印刷業界についての知識を身に付けていきましょう。
①1秒でわかる印刷業界ハンドブック
1秒でわかる!印刷業界ハンドブックという本は、印刷業界の基礎的な知識から、電子書籍などの新しいビジネスモデルまでを学ぶことができます。印刷業界は大きな転換期にあり、その原因となっているのが電子書籍の登場です。
印刷業界と電子書籍の関係は非常に重要なものであり、印刷業界を志望するのであれば、絶対に知っておかなければならない項目の一つです。
また印刷業界の基礎知識だけではなく、業界の今後など、将来的なことまで学ぶことができます。
基礎知識から応用的な知識、実践的な知識まで幅広い知識を身に付けることができます。就活中だけではなく、就職後にも役立つ情報が満載ですので、印刷業界を目指すのであれば、一度は読んでおきたい一冊です。
②印刷業界大研究 新版 (大研究シリーズ)
印刷業界大研究 新版 (大研究シリーズ)という本は、印刷業界の基礎的な知識から最新の動向までさまざまなことを学ぶことができます。大日本印刷、凸版印刷などの大企業を始めとして、さまざまな企業の現状と将来像についても解説されていますので、企業研究にもおすすめです。
印刷業界は印刷技術を核としつつ、さまざまな分野、領域への事業拡大によって新たな戦略を構築しています。
企業の動向を知ることで業界全体で起こっている動きを知ることができますし、そこから業界としての展望を考えることもできます。
また印刷業界が手がける最新技術なども紹介されており、最先端の技術を知ることも可能です。業界内部について基礎から専門的な知識を身に付けることができますので、業界研究の入門書としてもおすすめです。
印刷業界を深く知って就活を有利に進めよう!
人々の生活の変化にあわせ、印刷業界も今大きな転換期を迎えているといえます。紙を用いた印刷物から電子書籍などに需要が移る中、日々何かしらの変化が起こり続けている業界といえるでしょう。
今後の印刷業界は、印刷というノウハウを生かした発展した印刷事業をおこなうか、電子分野への参入などの新規事業開発をおこなうかに分かれていくことになる可能性が高いです。いずれにせよ、我々の生活に密接に関わっている業界のひとつでもある印刷業界が、消えてなくなるということは決してないでしょう。
印刷業界の今後を予測するためにも、こまめに業界の動向を探ることは大切です。常に最新の情報を見逃さないよう注意を払い、様々な観点から業界分析をおこなうようにしましょう。