業界研究

【ガラス業界徹底研究】主要な企業や業界のトピックスを紹介

ガラス業界とは



ガラスと聞くと、多くの方は窓ガラスを思い浮かべるでしょうが、現在ガラスの用途は実に多岐に渡り、工業用素材として目に見えない形で使われているものもあります。それらの製造に携わるのがガラス業界です。

日本のガラス業界には世界でも大きなシェアを持っている有力企業が名を連ねており、寡占に近い状態が続いてきましたが、近年はその構図にも変化が生じつつあります。これから、ガラス業界を取り巻く環境についてくわしく見ていきましょう。

世界全体でのガラス需要は日々拡大しており、ガラス業界は成長市場ですが、近年は液晶用ガラス分野に中国企業による低価格帯ガラスが台頭しています。国内での需要は伸び悩んでおり、さらに海外勢が勢いを増す状況下で、技術力に長けた日本ガラス業界では、高付加価値ガラスの製造が始まりました。

例えば断熱性の高い窓ガラスなら、室内の冷暖房効率を上げられることから、CO2排出抑制につながります。自動車のフロントガラスなどに軽量かつ衝撃耐性の強いガラスなどを用いれば、自動車の総重量を減らすことができ、低燃費化およびCO2排出削減を実現できます。これらは「エコガラス」と呼ばれ、近年、急激に需要が増えており、今後主流となっていく可能性が高いです。

ガラス業界の業績推移について

  • 業界規模 3兆1300億円
  • 平均年収 580万円
  • 平均勤続年数 16.7年

ガラスの需要は現在、自動車・
建築、などを対象とする板ガラス部門と、ディスプレイ・スマートフォンなどを対象とする液晶ガラス部門に二分されます。世界的な経済不況のあおりを受け、平成24年頃まで自動車・建築用板ガラスの需要が激減しました。その後、スマートフォンの成長にともない、ガラス業界は業績を回復しています。

業界規模に比べ、ガラス業界の平均年収や平均勤続年数は高めです。日本のガラス業界は世界でもトップシェアを有しており、激しい競争に直面していないので、比較的のんびりとした企業風土のところが多いです。それだけ高い技術力を持っていると言えます。

ガラス業界の細かい職種分類について

  • 営業販売
  • 物流
  • 製造
  • 開発
  • 設計
  • 企画

ガラス業界の職種では、他の業界にない特殊な職種として、物流関連職を挙げることができます。建築・自動車に用いられる巨大な板ガラスは、高度な製造技術が必要であると同時に、輸送にも高度な技術が必要です。この特殊性が、新規参入しにくい大きな要因でもあります。物流関連職は、ガラス業界ならではの物流を管理・構築する職種です。

製造、設計などには建築・電気・機械・工学なの理系学部から人材を登用し、新しい技術の開発に向けた研究をしています。営業販売、企画などでは文系学部からも志望することができ、製品の販売や海外展開の企画などをします。販売相手のニーズを調査して開発に取り入れていくのも営業販売職の役目です。

ガラス業界の主要トピック3つ

ガラス業界の全体的な背景は以上の通りですが、基礎知識を業界研究へ昇華させるには、業界の主要トピックやニュースに目を向ける必要があります。

寡占状態が続いているガラス業界では、大きな構図変動もなく、技術革新やその必要性も取り沙汰されていません。日々技術は進化しているものの、ニュースらしいニュースは報じられにくい傾向にありますが、こちらでは少し古い情報にさかのぼり、合わせてその後の経緯などを紹介します。

高度9Hなのに透過率は99.9%!衝撃に強いiPhoneX用保護ガラス!

近年、旭硝子製のiPhoneX用の液晶画面保護フィルムが話題になっています。同フィルムは厚さ0.26mmの強化ガラスでできており、貼っていることを感じさせない薄さを実現し、タッチ機能を損なうこともありません。ガラスフィルムは貼るときに気泡が入りにくく、ガイド枠が同封されているので、ずれずに貼るのも簡単です。

9H硬度というのはガラスコーティングでは限界値硬度とされており、「9H硬度の鉛筆で引っかいても傷がつかない硬度」を表します。実際にはカッターの刃を当てても傷がつかず、64gの珠を70cmの高さから落下させてもキズが付かなかったという実験結果が得られています。汚れや指紋もつきにくい素材です。

旭硝子の強化ガラスフィルムは、透過率99.9%が示すとおり透明性が高く、耐熱性にも優れている、という特徴があります。電子製品に使われるガラス製品は、加工工程や使用条件などから、高い耐熱性が要求されますが、旭硝子製の強化ガラス保護フィルムはそれをクリアしています。

鮮明にくっきりと見える秘密はその構造にあり、肉眼ではわかりませんが、何枚もの薄い層を合わせていることも多いです。旭硝子が高い技術力を保持していることがわかるトピックです。

ガラスのガリバーが新興国に復活懸ける!旭硝子、中国やブラジルなどに相次ぎ向上増設

近年では、旭硝子が中国やブラジルに工場を増設しています。ブラジルは2014年のワールドカップや2016年のオリンピック開催でインフラ整備が進み、建築ラッシュが訪れたことは記憶にも新しいですが、ブラジルでは現在でも建築ラッシュが継続しています。こういった背景からブラジル国内では自動車の販売が好調で、自動車用ガラスの生産も急ピッチで進めていく必要があり、旭硝子では積極的に設備投資を図りブラジル国内でのガラス生産を倍増させていく予定です。

数年前まで、旭硝子の柱といえば液晶テレビ用の大型液晶ガラスでした。しかし近年は中国や韓国などから安価で汎用性の高い液晶用ガラスに席巻され、現在では伸び悩んでいます。そこで、旭硝子は中国で工場を開設し、現地メーカーと関係を強化し液晶ガラスの事業拡大と利益回復を計ることにしました。中国は巨大市場であると同時に、東アジアにおける一大生産拠点としての役割も果たします。

一方でロシアや欧州ではガラス不況が続いており、リストラなどの対応に迫られることになりました。欧州での失敗を巻き返すためにも、新興国市場での舵取り(かじとり)が試されています。旭硝子では2013年に発表した新中期計画で、新興国事情での売上比率を当時より10ポイント上げることを目標として掲げており、現在は徐々に回復基調となっています。

「防弾レクサス」に乗ってみた!過去に衝撃?社長の答えとは

2017年11月に来日したトランプ大統領が、乗車した大統領専用車が銀行の大金庫並の防弾性能をそなえている、と話題になりました。実際にトランプ大統領が乗車したのは米高級車キャデラックによる「ビースト」ですが、日本でも防弾車は作られており、東京五輪などに向けて防犯性能が重視されているということです。

ビーストと違い、トヨタ レクサスの防弾車は街に溶け込むことを目的とされているために一般的なレクサスと見た目は変わりません。防弾パネルがドアやボンネットに内蔵されており、開け閉めに苦労するほどずっしりと重たいドアになっています。その原因は厚さ20mm以上もあるドアガラスにありました。これは通常の3倍にあたる厚さで、実際に拳銃を使用して車内へガラスが散乱しないことを実験で確認しています。

天井にも防弾パネルが装備されており、通常のレクサスに比べると300kgも重いです。タイヤはパンクしても時速80kmで走行可能な特殊構造を採用しました。

日産からは11月、遮音性の高いガラスを利用して車内静寂性を向上させた新車が発売されています。現在主流の自動車用板ガラスは電波透過率が悪く、通信電波を透過させるガラスの需要が増えるなど、今後も高付加価値ガラスの需要は増していきそうです。

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主要企業5選紹介

ガラス製品にもいろいろあるので一概には言えませんが、日本のガラス業界は世界でも高いシェアを誇っており、王者の旭硝子の下で日本板硝子と外国勢が2位争いをしているような状況になっています。

国内で見ると、旭硝子だけで4割以上のシェアがあり、上位5社までで9割以上を占めます。これほどに日本のガラス業界は強い企業価値がありながら、その実態はあまり知られていません。ここではガラス業界の情勢が伺えるよう、国内売上高上位5社を紹介します。

旭硝子株式会社(AGC)

  • 企業名 旭硝子株式会社
  • 代表取締役社長執行役員CEO 島村琢哉
  • 従業員数 6,024人(2016年12月31日現在)
  • 設立 1950(昭和25)年6月1日

旭硝子株式会社は世界最大手のガラスメーカとして大きなシェアを持っていますが、知名度は低く、2018年7月に社名をAGCに変更する予定です。国内でのシェアは42%を誇り断トツで首位です。

高い技術力を持ち、高付加価値製品も続々と開発されていますが、為替変動や材料高騰の影響で、中国企業の進出に次第に押される格好になっています。海外展開と高付加価値製品の展望が今後の課題です。

ガラス製造技術を生かして各種電子部品や化学関連素材など多角化も実現しており、インドネシアやベトナムでの工場稼働に意欲を見せています。

日本板硝子株式会社

  • 企業名 日本板硝子株式会社
  • 代表執行役社長兼CEO 森重樹
  • 従業員数 約27,000人(2017年3月31日現在)
  • 設立 1918年(大正7年)11月22日

日本板硝子株式会社は、世界で活躍する大手ガラスメーカーです。2006年にイギリスのガラス大手ピルキントンを6千億円で買収し、小が大を飲む合併と言われました。ピルキントンはフロートガラスと呼ばれる巨大板ガラスの製法を発明した企業で、現在は旭硝子、日本板硝子を含む世界4企業がほぼ市場を独占している状態になっています。

ピルキントンとの合併以降、業績は低調で、2016年3月期には498億円という過去最大規模の巨額赤字を計上しました。足元の景気は回復傾向にありますが、今後の成長が課題です。

HOYA株式会社

  • 企業名 HOYA株式会社
  • 代表執行役最高経営責任者 (CEO) 鈴木洋
  • 従業員数 35,752名(連結)
  • 設立 1944年(昭和19年)8月23日

HOYA株式会社は光学レンズメーカーとして設立されて以来、メガネやコンタクトレンズ、内視鏡、精密機器など、多角的に展開しており、世界中に拠点を持つ企業です。半導体チップに用いられるマスクブランクスという製品、HDD用のガラス基板事業では世界シェア70%を有します。

高齢化や予防医学の注目に起因したライフケア市場の拡大を予測してライフケア部門の拡充で成長事業をシフトしており、将来的にはライフケア部門が業績を牽引していく格好を目指し、積極的に海外へ展開しています。

日本電気硝子株式会社

  • 企業名 日本電気硝子株式会社
  • 取締役会長 有岡雅行
  • 社長 松本元春
  • 従業員数 1,644人(2016年12月末現在)
  • 設立 1944(昭和19)年10月31日

日本電気硝子株式会社は、薄型テレビ用ガラスの大手で、液晶用においては世界の20%を供給しています。創業当初は真空管ガラスに始まり、現在までに自動車、半導体、医療、ディスプレイ、照明、家電など多くの分野に進出してきました。

近年の成長は横ばいに近い状態が続いていますが、2016年に中期経営計画を発表し、ディスプレイ関連事業の収益強化、積極投資などを掲げ、持続性のある成長を目指していく方針です。高い技術力を持ち、超薄型ガラスを始めとした特許製品も数多く輩出しています。

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日本電気硝子の平均年収と生涯賃金|年齢別・役職別の年収・月給・ボーナス推移と業界比較

セントラル硝子株式会社

  • 企業名 セントラル硝子株式会社
  • 代表取締役社長執行役員 清水 正
  • 従業員数 7,236人(連結)・1,662人(単独)
  • 設立 1936年10月10日

セントラル硝子株式会社は、ガラス製品と化学製品、肥料などを製造しています。設立以来80年にわたって培ってきた技術力による多彩な商品ラインアップが強みです。年次や経験に関係なく、異業種が垣根なく集まって話すことができるような企業風土があり、多分野を融合しながら新たな製品を生み出す環境があります。

ソーダ製品の製造販売を目的とする化学メーカーとして設立した経緯から、化学メーカーに分類されることもあります。大手企業にはない良さを生かして、今後も独特な製品を生み出していきます。

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ガラス業界研究のおすすめ書籍紹介

ガラス業界の基本的なことはなんとなく理解できたのではないかと思いますが、ガラス業界を本気で志望したい方には、書籍を入手して理解を深めることをおすすめします。

ガラス製品は製造方法、輸送方法、製品特性、用途など、あらゆる点において特殊ですので、業界研究はもちろん重要ですが、ガラスそのものの理解が不可欠です。この2つの観点から参考書籍を選ぶようにすれば、ガラス業界の特殊性や他の業界との関係性がよくわかるようになります。

図解入門業界研究最新化学業界の動向とカラクリがよ~くわかる本[第4版](How-nual図解入門業界研究)



図解入門業界研究最新化学業界の動向とカラクリがよ~くわかる本[第4版] (How-nual図解入門業界研究)

』という本は、ガラス業界について解説した本ではありませんが、ガラス製品は化学素材に分類されることも多いので、業界研究の際はガラス業界だけでなく、化学業界全体を視野にいれるのがよいでしょう。この本では化学が誕生してから現在に至るまでの歩みを追い、途中でガラス業界の立ち位置にも触れています。

中国、アジア勢の台頭で、他の業界と同じように、ガラス・化学業界にも再編の嵐が吹き荒れているのが現状です。現在の地位におごることなく、今後も成長を持続していくには世界に通用する競争力を養っていく必要があるでしょう
。この本には日本だけでなく世界中の化学企業100社が取り上げられており、近年の大型M&Aについてもわかりやすくまとめてあります。

トコトンやさしいガラスの本(B&Tブックス ー今日からモノ知りシリーズ)

トコトンやさしいガラスの本(B&Tブックス 今日からモノ知りシリーズ)』は、ガラスそのものについてくわしく解説している書籍です。ガラスの起源にはじまり、ガラス製造法の歴史、現在も実用化がなされている機能化ガラスの数々などを紹介しています。最後には世界のガラスメーカーにも焦点を当てて紹介しています。2004年に出版され、その後改訂されていますが、ガラス業界を激変させるような技術革新などは起こっていないことがわかるでしょう。

現在、ガラス市場は上位数社による寡占状態となっていますが、身近でありながらその特殊な性質から、私たちはガラスについてくわしいことはよく知りません。この本を読めば、ガラスそのものを通して、ガラス業界の実情を垣間見ることができます。ガラス業界を志望する方には必読の書です。

ガラス業界を深く知って就活を有利に進めよう!

日本のガラス業界は長年の間一定の地位を保ってきましたが、それは他者の追随を許さない高い技術力を保持し、常に開発研究を進めてきたためです。
ガラス業界がこれからも成長していくためには、他の業界との関係が重要ですので、広い視野で業界研究をしていきましょう。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

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