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応募する前に福祉業界を理解しよう
高齢化社会で需要が高まり、人材の確保が急がれている福祉関係の職業はやりがいを感じられる場面も多く、社会貢献をしたいと考える多くの学生から注目を集めています。その一方で、福祉業界は「離職率が高そう」「仕事がハードそう」などとマイナスイメージも持たれており、業界を志望する学生にとっては不安も少なくないようです。現在の福祉業界はどのような状況なのでしょうか。
福祉業界と一言で表しても、職種やサービスはさまざまあり、仕事内容や状況は異なるため、現状や今後の動向を知るには詳しく業界研究を進めなければなりません。福祉業界を志望する学生なら知っておきたい福祉業界の現状と仕事内容、サービス内容などについて確認してみましょう。
福祉業界について
福祉業界とは、身体が不自由な人や高齢者など、生活のために支援を必要としている人々に対してサービスを提供する業界です。日本では現在、少子高齢化が進んでいるため、今後はさらに福祉業界の需要が高まると予想されており、人材の確保も急がれています。
しかしながら、福祉業界には良くないイメージを持っている人も少なくありません。ほかと比べて労働環境や給料が悪いという声も聞かれます。実際、福祉業界の現状はどうなっているのでしょうか。
身体の不自由な人をサポートする大事な仕事を担う業界
身体が不自由な人や高齢者は一人で日常生活を送るのが簡単ではありません。家族のサポートだけでは生活が困難である場合、他の人からサポートを受けたり、施設を利用したりして生活する必要があります。介護を必要とする人に対してサービスや人材を提供するのが福祉業界です。そのため、福祉関係で働く人は多くの人や社会にとって不可欠な存在です。
福祉業界が提供するサービスがなければ、身体が不自由な人や高齢者は生活が難しくなります。このことから、福祉業界で働いている人は利用者や家族に感謝されることが多く、やりがいを感じられます。身体が不自由な人や高齢者と交流しながら、社会や人に貢献したいと考えている人には福祉業界が適していると考えられるでしょう。
高齢化による需要が高く人手が不足している
現在、日本は深刻な少子高齢化社会です。2015年には高齢者人口が全人口の4分の1に達し、団塊の世代が70代になる2025年にはさらに高齢化が進むと予想されています。このような状況の下で、高齢者のサポートは不可欠です。そのため、福祉業界は需要が拡大し、市場や規模も年々広がりを見せています。需要が高まる一方で、現在の福祉業界は人手不足であるため、働いている人は勤務時間が長かったり、身体への負担が大きかったりすることには注意が必要です。
他方、政府はこのような状況を改善するために介護職員の給料の値上げやキャリアアップを支援しており、外国人を雇用して人材確保も図っています。また、介護職員の負担を減らすためにロボットを介護に導入する動きも見られ、将来的には働き方や仕事内容が変わる可能性も高いといえるでしょう。
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福祉業界は離職率が高いというイメージは間違い
福祉業界は離職率が高いというイメージを持たれています。以前は体力的にもきついといった印象が強く、福祉業界を避ける学生も少なくありませんでした。では、現在の福祉業界の離職率はどの程度なのでしょうか。厚生労働省の2016年雇用動向調査によれば、医療・福祉業界の離職率は14.8%です。この数字は全業界の離職率の平均15.0%と比較して大きく変わらないことが分かります。
このことから、「福祉業界は離職率が高い」というイメージは誤りで、実際の離職率は他業界とほとんど変わらないといえるでしょう。離職率を見ると、仕事は大変でもやりがいを感じる人はほかの業界に転職しないと考えられます。
異業種からの参入が増加している
福祉業界の特徴として、異業種からの参入が増加しているということも挙げられるでしょう。日本は少子高齢化が進んでおり、高齢者を対象とした市場は今後も拡大されていくことが予想されています。
そのため保険会社や大手スーパーマーケット、スポーツ用品メーカーやアパレルメーカーなど、非常に多彩な企業が参入を進めています。高齢者の割合が増えていくことを考えれば、高齢者のニーズをつかみ、そこに商品・サービスを提供していくことが重視されるでしょう。
実際にはまだ介護を必要としていない高齢者であったとしても、「より健康な毎日を過ごしたい」「便利な環境で安心して過ごしたい」などのニーズはあるのです。これらのニーズを受け、サービス付いた高齢者用住宅や有料の老人ホームなどもどんどん展開されてきています。
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福祉業界に関連する他業種
福祉業界は単独で成り立っている業界ではありません。福祉業界は他業種とのつながりのもとで成り立っていますので、関連する他業種についても知っておくことは大切です。具体的には医療業界や警備会社、不動産業界などが代表と言えるでしょう。
福祉業界が行う介護サービスの中には、医療業界と連携しているものも多くあります。今後、高齢者への介護ニーズが高まることが予想されており、ますます医療業界との連携が増えていくという見方がされています。もちろん、直接介護を行う医療機関もあるでしょう。
高齢者の中には単身で生活している人もいます。そのような高齢者は、具合が悪くなってしまったり、生活に困ることがあっても、周囲が気がつけないリスクがあります。そこで、警備会社が高齢者の見守りサービスを始めるケースなども増えてきているのです。不動産業界の中には高齢者向け住宅の建設を手がける企業もあります。
福祉業界が提供しているサービス
福祉業界が提供するサービスは身体の不自由な人が自宅で生活しながら利用する居住サービスと特別養護老人ホームなどに住んでいる人が利用する施設サービスの二種類です。居住サービスの中には支援を必要とする人が住んでいる自宅に介護福祉士らが向かい、サービスを提供する訪問介護や、自宅から施設に向かう通所介護などがあります。他方、施設サービスは介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の三種類で構成されており、それぞれサービスの目的が異なります。
居宅サービス
居住サービスとは身体が不自由な人や高齢者が自宅に住みながら利用するサービスです。企業によって形態はさまざまですが、代表的な例としては訪問介護と通所介護が挙げられます。訪問介護とはサポートを必要としている人の自宅に介護福祉士やホームヘルパーが向かい、排せつや入浴の介助をしたり、家事をサポートしたりするサービスです。訪問介護では利用者が住み慣れた自宅でサポートを受けられるため、利用者に精神的な負担があまりかかりません。
通所介護は自宅に暮らす体が不自由な人や高齢者が施設に通い、介助を受けたり、レクリエーションを楽しんだりするサービスであり、デイサービスとも呼ばれています。自宅にこもりがちな高齢者が他の利用者やスタッフと交流することによって気分転換できるので、人気が高く、さらに規模が広がると予想されています。
施設サービス
施設サービスとは施設に住んでいる人が受けるサービスです。施設は目的によって介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の三種類に分けられます。介護老人福祉施設とは介護保険で提供される老人ホームで、日常生活のサポートや健康管理が行われます。介護老人保健施設はサポートが必要な高齢者の自立を目指す施設です。
ここでは家庭で暮らせる状態にするために、日常生活の介助に加えてリハビリが提供されます。介護療養型医療施設は医療に重点が置かれた老人ホームです。経営をしているのは医療法人の場合がほとんどであり、働いている医師や看護師の数も他と比べて多いです。介護療養型医療施設への就職を考えている場合、2020年までに廃止される予定となっていることは知っておきましょう。
福祉業界における仕事内容
福祉業界における仕事内容は職種によって大きく異なります。例を挙げると、現場で働く専門スタッフは利用者のサポートをすることがメインの仕事です。しかし、事務スタッフや企業経営にかかわるスタッフは利用者とは直接的にかかわりません。
それぞれの仕事に適性があるので、就職を考えている人は仕事の違いを知り、自分に合った職種に応募しましょう。ここからは福祉業界の中でも代表的な介護職員やホームヘルパー、ケアマネジャーの仕事内容について解説します。職種を知ることによってさらに業界研究も進められるでしょう。
介護職員・ホームヘルパー
介護職員とは、身体が不自由な人や高齢者の生活をサポートする仕事をしている人で、福祉業界の中心を担っている職種です。勤務する施設などによって細かい業務内容は異なりますが、食事、入浴、排せつなど日常のさまざまな動作を手伝ったり、施設を掃除したりします。
施設で働く場合は無資格でも仕事ができますが、訪問介護やより高度な介護をしたい場合はホームヘルパーや国家資格の介護福祉士の資格が必要です。なお、以前は女性がほとんどでしたが、体力が必要なことから男性の介護職員も増加しており、今後さらに男性の割合が増えると予想されています。男性でも女性でも、体力に自信がある人や利用者と積極的に交流したい人は介護職員に適しているといえるでしょう。
ケアマネジャー
ケアマネジャー(介護支援専門員)は老人福祉施設や地域包括支援センターなどに雇用されている人で、利用者と施設などの事業者の橋渡しをする役目を担っています。利用者は福祉サービスを受けたいと思っても、サービスの内容がわかりません。ケアマネジャーは専門の立場で利用者に正確な情報を提供し、介護をコーディネートすることで利用者をサポートします。
そのため、ケアマネジャーには利用者の希望を聞き出すコミュニケーション能力が必要です。また、多くのサービスから適切なものを選ぶ判断力や新しい知識を増やしていくための向上心なども求められます。これらの力に自信があり、知識で福祉に関わりたいと考えている人はケアマネジャーを目指してみると良いでしょう。ケアマネジャーとして働く場合は介護支援専門員証が必要です。
福祉業界の主要企業
福祉業界への就職を検討しているのであれば、福祉業界の主要企業について押さえておきましょう。同じ福祉業界に属していても、理念や事業内容、企業風土は企業ごとに異なっているはずです。
福祉業界へのマッチングだけでなく、志望企業とのマッチングも大切ですので、代表的な企業の特徴を押さえておくことはとても大切です。自己分析の結果なども踏まえ、自分に合う企業はどのような企業か、参考にしてみてください。
業界内にどのような企業があり、どのような特徴があるのかを知っておけば、就職活動だけでなく社会人になってからも役立つでしょう。それでは代表的な企業について見ていきましょう。
ニチイ学館
・企業名:株式会社 ニチイ学館
・代表者名:寺田明彦(代表取締役会長)/森信介(代表取締役社長)
・従業員数:21,091名(連結)
・設立年月日:1973年(昭和48年)8月
ニチイ学館は医療関連や介護、保育、ヘルスケア、教育やドッグサロン、中国への進出など、さまざまな事業を展開している企業です。創業のきっかけは、現会長の寺田氏が、医師が保険請求業務に追われて本来の診療に集中できていない状況を目の前にし、問題意識を持ったことです。寺田氏は保険請求業務を医師から請け負いましたが、それがニチイ学館の創業につながりました。
在宅介護を中心とする介護事業からスタートし、2002年に東証一部上場を果たすと、前述のようなさまざまな事業を展開させ始めました。社是は「誠意」「誇り」「情熱」であり、これらを活かして人間生活の向上に貢献していくというのが経営理念となっています。人とのつながりを大切にし、「やさしさを強さにしたい」と言うスローガンを掲げています。
ツクイ
・企業名:株式会社ツクイ
・代表者名:津久井宏(代表取締役社長)
・従業員数:20,100名(連結)
・設立年月日:1969年(昭和44年)6月
ツクイはデイサービスの日本最大手として知られている企業です。2018年3月時点で日本全国に約500の事業所を持っており、事業所の数でも利用者の数でも国内トップです。福祉業界の多くの企業は、2000年の介護保険制度開始以降に参入してきた企業ですが、ツクイは35年もの間介護事業に携わっており、実績を積み上げています。
最大手ですが、介護サービスの質や顧客満足には徹底してこだわっているようです。全国にある事業所は全て直営しており、顧客満足度の調査も定期的におこなっています。介護を軸としながらも、介護・福祉・医療系の人材開発事業や介護用品のインターネット通販事業、福祉車両や用具のリース事業など、幅広い事業を展開しています。
「地域に根付いた真心のこもったサービスを提供し、誠意ある行動で責任をもって、お客様と社会に貢献」することが理念です。福祉に関連する複数の事業を展開しつつも、福祉サービスに真っ直ぐ向き合い続けている企業です。
ベネッセホールディングス
・企業名:株式会社ベネッセホールディングス
・代表者名:安達保(代表取締役社長)
・従業員数:2,263名(単独)
・設立年月日:1955年(昭和30年)1月
ベネッセは教育事業などで有名な企業ですが、福祉業界でも活躍しています。事業内容は国内教育カンパニー、海外事業カンパニー、介護・保育カンパニー、語学カンパニー、その他に大別されます。
もともとは中学生向けの図書や生徒手帳の発行をしている出版社でした。その後、模擬試験や「進研ゼミ」などの通信教育をスタートし、2000年に東証一部上場しました。その後は介護事業などにも参入しています。
企業理念は、企業名にもある”Benesse”という言葉です。この言葉はラテン語で「よく(正しく)生きる」という意味です。一人ひとりが「よく生きる」ことができるよう、支援することが目指されています。もともとの基幹事業であった教育だけでなく、福祉にも力を入れることで、生涯にわたって人が「よく生きる」ことを総合的に支援できる企業として今後も活躍が期待されるでしょう。
未来のある福祉業界も慎重に企業選びをしよう!
福祉業界は高齢者や身体が不自由な人を助ける大切な仕事であり、高齢化が進む日本では今後、さらに市場が拡大していくと考えられています。しかし、介護職員を中心として現状でも人材不足であるため、企業によっては労働時間が長かったり、仕事内容が大変だったりと労働環境が整っていないことも少なくありません。
また、コミュニケーション力や判断力などが必要とされる業界なので、自分の適性に合っていない職種を選べば、仕事が辛いと感じることも多いです。福祉業界に就職しようと考えている人は慎重に研究を進め、自分に合っている企業を選びましょう。仕事内容や労働環境をよく調べて自分に合った企業で希望の職種に就ければ、やりがいを感じながら仕事できます。