住宅業界とは
住宅は、人が購入するもののなかで最も高額な商品のひとつであり、住む人の人生に大きな影響を与えます。そのような住宅に関わる仕事をしたいという就活生も多いことでしょう。住宅業界への就職を目指すには、各企業の特徴や各職種の業務内容を押さえることが大切です。さまざまな企業や職種の中から、自分に最も適した企業・職種を探し出すために、まずは業界の基本情報を身に付けていきましょう。
住宅業界
住宅業界は、戸建て住宅の設計や施工などに関わる業界です。住宅に関わる仕事は多岐にわたっており、設計や施工といった技術系の仕事もあれば、事務や営業といった職種もあります。近年は、特に耐震や耐火といった安全面へのニーズ、省エネに対するニーズが高まっています。
消費が低迷している中、安全性や省エネ性などの付加価値をいかに高めていくのかが重要といえるでしょう。また、太陽光発電などを取り入れ、ITを使ってエネルギー消費などを制御可能な「スマートハウス」も注目されています。安全性や省エネ、スマートハウス、バリアフリーなどの付加価値を巡り、各企業の競争は今後ますます激化すると考えられます。
住宅業界の業績推移について
- 業界規模 :10兆2,162億円
- 平均年収 :617万円
- 平均勤続年数:10.7年
住宅業界の業界規模は、全業界の中でも上位にあります。2007年以降、改正建築基準法の施行や金融不安、消費低迷の影響を受けて伸び悩みましたが、2010年以降は好転しています。先にも書いた通り、住宅の付加価値へのニーズをどう満たしていくのかが非常に重要です。
平均年収は123業界中53位であり、全業界の平均よりもやや上位です。しかし、企業による差が大きく、平均年収が900万円を超える企業もあれば400万円未満という企業もあります。平均勤続年数についても同様で、18年以上という企業がある一方、1年未満という企業もあります。他の業界から見ると勤続年数は短めで、転職の多い業界であると言えるでしょう。
住宅業界の細かい職種分類について
- 設計
- 施工
- 営業
- 経営企画
- 人事
- 総務
- 経理財務
住宅業界の職種は技術系(設計・施工)、営業、その他バックオフィス系の職種に分かれています。設計は、消費者のニーズや人気のある住宅を踏まえ、新たな住宅の設計に取り組む仕事です。企業によっては法律関係の事務業務を行うケースもあります。
施工は現場で実際に施工を行う職種です。設計された図面通りに建築されるよう、段取り・大工などへの指示・監督・管理業務を行います。営業は、お客様に住宅の営業を行う職種です。お客様のニーズを聴き取り、設計に伝達するのが主な業務です。またお客様へ提案や相談、資金計画へのアドバイスなどを行います。このほか、他業界と共通するバックオフィス系の職種も必要とされています。
住宅業界の今後の課題
住宅業界の業界研究を進めるには、今後の課題についても知っておく必要があります。住宅業界が今後も躍進を続けるためには、課題に対する改善策を立てておかなければなりません。これは、住宅業界を志望する就活生も同じです。課題と改善策まで考えを及ばせておくことで、面接で質問された際にスムーズに答えることができます。住宅業界の今後の課題とは、どのようなことでしょうか。ここからは、2つの課題について紹介していきます。
世帯数の減少
「人口・世帯」減少時代への備え-「世帯」が増え続ける時代の終焉-ニッセイ基礎研究所によると、2019年以降は人口と世帯数がともに減少すると言われているようです。アパートやマンションは一人暮らしにも需要がありますが、一軒家は主に複数人が属する世帯で持つものになります。
そのため、世帯数が減少すると住宅の需要も比例して減少するのです。結婚する男女の数は年々減っており、初婚年齢についても上昇しているのが現状です。世帯数の減少や婚姻率の低下が、住宅業界に与える影響は大きいでしょう。
女性目線の重視
住宅業界において、女性目線を意識した商品の開発やプランニングは重要になっています。夫婦が住宅を購入する際の決定権を、女性が持っていることも多いです。「ママにおすすめ」や「主婦が快適に暮らせる」などのキャッチに魅力を感じる女性は多いと思われます。
そこで重要になるのが、女性社員の活躍です。女性社員の感性を活かした事業展開で、女性顧客からの支持を集めることが求められるでしょう。開発や営業などにおいて、積極的な女性社員の活躍や管理職登用などが待たれます。
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主要企業5選紹介
住宅業界の特徴は、個性的な企業がたくさんあることです。住宅事業に特化している企業もあれば、それ以外の事業を手広く行っている企業もあります。中には、住宅事業以外の関連事業を、住宅事業と連携することで大きな成果を出している企業もあります。
住宅業界で志望企業を選ぶには、各企業の特徴を押さえておくことが必要です。たくさんの企業があるので、それぞれの企業の情報を十分に集め、吟味しましょう。
①大和ハウス工業株式会社
- 企業名 :大和ハウス工業株式会社
- 代表取締役社長:芳井 敬一
- 従業員数 :15,725人
- 設立年月日 :1947年(昭和22年)3月4日
大和ハウス工業株式会社は日本の住宅業界でトップの売上高・シェアを誇る企業です。「人・街・暮らしの価値共創グループ」を掲げ、事業を通して人々が心豊かに生きる社会の実現を目指しています。また、お客様との絆を深め、一生涯のパートナーとしての信頼を育む姿勢も大切している企業です。
住宅事業では、時代のニーズを先取りした住宅を次々と生み出すことで消費者に広く支持されています。2013年に純国産材を使用した木造住宅「xevo GranWood(ジーヴォグランウッド)」、2014年には大地震が繰り返し起きても初期性能を維持できる新工法を導入した「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」も生み出されました。業界トップでありながらも、新しいことに貪欲に挑戦している企業だと言えます。
大和ハウスの平均年収などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
②積水ハウス株式会社
- 企業名 :積水ハウス株式会社
- 代表取締役社長兼COO:阿部 俊則
- 従業員数 :16,181人
- 設立年月日 :1960年(昭和35年)8月1日
積水ハウス株式会社は、日本の住宅業界で2位のシェアを誇る代表的なハウスメーカーです。事業内容は建築、不動産売買やコンサルティング、地域開発、インテリア商品売買、廃棄物処分、福祉施設の運営、ソフトウエア開発など非常に多岐にわたっています。
企業理念の根本哲学には「人間愛」が掲げられ、真実・信頼を基本姿勢に最高の技術と品質を実現することを目標にしています。そして事業の意義として掲げられているのは、「人間性豊かな住まいと環境の創造」です。住宅の販売数が多いのが特徴であり、競争の激しい住宅業界の中でもトップクラスの販売力を持っているとされます。
積水ハウスの平均年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。
③飯田グループホールディングス株式会社
- 企業名 :飯田グループホールディングス株式会社
- 代表取締役社長:西河 洋一
- 従業員数 :7,041人
- 設立年月日 :2013年(平成25年)11月1日
飯田グループホールディングス株式会社は、2013年にそれまで別々だった住宅企業6社が経営統合されて誕生した企業です。住宅業界内の売上高・シェアは3位となっています。グループとしての経営理念は、「より多くの人々が幸せに暮らせる住環境を創造し、豊かな社会作りに貢献する」です。
統合された6社がもともと持っていたノウハウや強みを結集し、コストパフォーマンスの高い住宅作りを進めています。今後も国内市場のシェアを広げていき、海外への進出も目指しています。すでに高い国内シェアを確立してはいるものの、総合不動産メーカーとして複数の市場への積極参入や海外進出を目指しており、非常にフットワークの軽い企業です。
④住友林業株式会社
- 企業名 :住友林業株式会社
- 代表取締役社長:市川 晃
- 従業員数 :4,485人(単体)、17,802人(連結)
- 設立年月日 :1948年(昭和23年)2月20日
住友林業株式会社は元禄時代に創業された歴史ある企業です。住宅事業のほか、資源環境事業や木材建材事業、海外事業、生活サービス事業を展開しています。グループの経営理念は、「木」を活かし、「住生活」に関するあらゆるサービスを通じて、豊かな社会の実現に貢献することです。
環境に優しく、長年にわたって住み継ぐことが可能な木の家が特徴です。共働き家族の声を反映した「DUE CLASSO」、デザイン性の高い「BF GranSQUARE」など個性豊かなラインナップが10以上あります。また、千葉県には住友林業建築技術専門学校があり、家づくりのスペシャリスト養成にも力を入れています。長きにわたって「木」に携わってきた企業だからこそ、木を活かした住環境に徹底的にこだわっていると言えるでしょう。
住友林業の平均年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。
⑤旭化成ホームズ株式会社
- 企業名 :旭化成ホームズ株式会社
- 代表取締役社長兼社長執行役員:川畑 文俊
- 従業員数 :6,808人(連結)
- 設立年月日 :1972年(昭和47)年11月
旭化成ホームズも日本を代表する住宅メーカーです。旭化成ホームズが行っている新築請負事業、旭化成リフォームのリフォーム事業、旭化成不動産レジデンスの不動産事業を連携させています。それぞれの専門領域を連携して活かすことで都市型生活を支えるリーディングブランドとして定着しているのが特徴です。
旭化成ホームズが作る家は、ずっと住みたいと思われるデザイン性た優れた耐火性や耐震性、快適性を重視しています。「ロングライフ住宅」という考えに基づき、長時間住みやすい環境を実現するだけでなく、長期にわたるサポート体制も充実させているのが特徴です。
住宅業界の業績シェアを把握しておく
住宅業界で働きたいという就活生は、住宅業界の仕組みや課題などについて知っておく必要があります。住宅業界の業績シェアを把握することも大切です。各企業の売上高や営業収益について把握しておきましょう。
住宅業界の知っておきたい用語
ここからは住宅業界への就職を考えるにあたり、知っておきたい用語を解説していきます。住宅業界には特殊な用語が多く存在します。「難しい言葉は苦手」と苦手意識がある人もいるでしょう。しかしそれらを知らずに面接に臨むと、「本当に志望しているのかな」と志望度を疑われてしまう可能性があります。
入社に対する熱意を伝えるためにも、必要最低限の用語は覚えておくことが重要なのです。以下、住宅業界に就職するにおいて、事前に知っておくべき用語を3つ挙げ、それぞれ解説していきます。しっかりと学び、聞かれてもすらすらと答えられるようにしておきましょう。
スケルトン・インフィル住宅
スケルトン・インフィル住宅とは建物自体は頑丈で長持ちするように造る一方、内装に関しては状況に併せて比較的自由に変更できるように造られた住宅のことです。分譲マンションなどで多く見られるものです。家は一生の買い物とよく言われます。老朽化しない限り、せっかく買ったお気に入りの家を手放したい人はいないでしょう。
しかし、一生の中で家に求めるものは変わっていきます。内装、間取りに関して、「昔は子供がいたからこれでよかったけれど、今は自立したしこのままだともったいないな」と感じることもあるのです。そのような際にこの手法の住宅であれば建物自体を変えるのでなく、内装を自由に変えることが出来るので、住環境を変えずにニーズに合わせた家に造り替えることが出来るのです。
エコハウス
エコハウスと聞くと「環境問題に配慮した家なのかな」と漠然としたイメージしか湧かない就活生も多いことでしょう。エコハウスとは、地域の気候などの条件を利用し、自然エネルギーを生活に必要なエネルギーに最大限活かすこと、そして環境に負担をかけない方法で建てることに重点を置いて造られた住宅のことです。環境問題が叫ばれる中、その対策として力がそそがれている分野です。
また、エネルギー問題の解決の糸口になる可能性もあります。原発事故から原子力によるエネルギーの生成が困難になっている中で、日本のエネルギー事情は厳しい状況にあります。原油国からの輸入に依存してしまうのもリスクがあります。そのような中で、各家庭が必要なエネルギーを自家発電する仕組みが整えば、日本のエネルギー問題の突破口になる可能性もあるのです。
リノベーション
リノベーションとは「革新」という意味であり、住宅の性能を高めることです。リノベーションと聞くと「リフォームと何が違うの?」と疑問に思う就活生も多くいることでしょう。リフォームとは老朽化した建物を元の状態に戻すことを言います。一方リノベーションはというと、もともとの物件に大規模な工事を行うことで、物件の性能を新築時以上に高め、物件の価値を向上させることを言います。
近年リノベーションを考える人は増えています、ご子息が自立し、ご主人も定年退職をしたことをきっかけに「生活する人数も生活リズムも変わったんだから、それに合わせて家を設計しよう」と考える方が多いのです。新築で検討するよりもコスト面で負担が少なく、検討する人が多くなっています。
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住宅業界研究のオススメ書籍紹介
住宅業界について理解を深めるためには、書籍での研究がおすすめです。インターネットやニュースから得る情報も業界研究に役立ちますが、書籍を読むと知識や情報が体系化され、より深く業界を知ることができます。
一度住宅業界の基本的な仕組みを書籍で理解してしまえば、インターネットやニュースからの情報もより理解しやすくなるでしょう。ここからは、住宅業会研究におすすめの書籍を紹介します。
図解入門業界研究 最新 住宅業界の動向とカラクリがよーくわかる本[第2版]
『図解入門業界研究 最新 住宅業界の動向とカラクリがよーくわかる本[第2版]』は、住宅業界の仕組みや住宅業界を巡る昨今の変化などがわかりやすくまとめられた書籍です。住宅業界について研究を始める際にまず手に取るべき書籍と言えるでしょう。
日本の住宅業界は複雑怪奇で難解な業界とされています。その背景となっているのは、空き家の問題や欠陥住宅の問題、住宅寿命が短い、中古住宅市場が発達していないなどの状況です。
この本では最初に住宅業界の現状について説明し、住宅業界の構造、規律や法律、技術開発について紹介していきます。さらに、今住宅業界が抱えている問題点や将来展望についてもまとめられており、就活生だけでなく住宅業界に関わるすべての人に役立つ内容となっています。
人はなぜ「納得」で家を建てるのか
『人はなぜ「納得」で家を建てるのか』は、「納得住宅工房」という1999年創業の住宅メーカーが出版した書籍です。著者はこの会社の代表であり、中堅ハウスメーカーや工務店勤務を経験後、独立しました。創業後はわずか9年間で受注棟数100棟を達成し、少人数で顧客満足度の抜群に高い住宅を作っていることで注目されています。
「日本一の感動ホスピタリティの住宅企業」を目指して顧客満足度の高い住宅を提供しつつ、日本に家具付き住宅を普及させてきました。消費者のニーズが多様化したり消費意欲が低下している昨今において、住宅をただ作って売るのではなく、真の顧客満足を追求するという視点はとても重要と言えるでしょう。この書籍は今後の住宅業界に必要な顧客満足について、考えを深めるヒントになるでしょう。
住宅業界を深く知り就活を有利に進めよう!
住宅業界は非常に規模の大きな業界であり、住宅を通して人に与える影響も非常に大きいです。その分やりがいのある仕事と言えますが、昨今は社会情勢など、多くの出来事から多大な影響を受けています。
またIOTやZEH住宅など新たな技術も導入され、ますます大きな変化が起きることが予測されるでしょう。住宅業界を志望する場合には業界の知識と最新のニュースの双方について調べ、広い視野で業界研究に努めましょう。