倉庫業界とは
倉庫業界は物流、流通などの分野に属する業界であり、注目を集めている業界です。倉庫業界は就活生にはあまり馴染みはありませんが、物流では欠かせない業界ですし、今後の成長も期待されています。倉庫業界は単体で独立しているのではなく、物流、流通を始めとして運輸業界にも深く関わっている業界です。
さまざまな業界、分野に関連していますので、幅広い活躍が期待できる業界でもあります。倉庫業界を知るためにはまずは基本的な知識や動向などを知っていきましょう。
倉庫業界
倉庫業界は近年大きく成長している業界であり、業界規模なども好調に推移しています。2007年頃から業績は伸び悩み、2009年にはかなりの落ち込みを見せましたが、そこから右肩上がりに成長を続け、現在もその勢いは止まっていません。業績好調の背景には通販市場の拡大が挙げられます。
パソコンやスマートフォンの普及などによって通販市場は爆発的な成長を見せ、それに伴い倉庫需要も増し、大きく成長を続けてきました。一時期ほどの爆発力はないものの、現在でも業績は堅調に推移しており、さらなる業界の成長が見込まれています。物流業界全体としても業績は好調であり、今後も貨物の増大が見込まれますので、倉庫業界も拡大していくことが考えられます。
倉庫業界の業績推移について
- 業界規模:3兆0,453億円
- 平均年収:626万円
- 平均継続年数:14年
倉庫業界の業界規模は3兆0,453億円であり、国内の業界としては平均的な規模です。業績は堅調であり、今後もさらなる業界規模の拡大が見込まれています。平均年収は626万円であり、平均よりもやや高い水準です。業界内でも大手であればさらに高い年収を獲得していますが、業界全体としての給料の差はそれほど大きくはありません。平均して、高い給料をもらっている人が多いと言えます。
平均継続年数は14年であり、他業界と比べても平均的な長さです。企業によっての差もそれほどなく、業界内では比較的長く続けている人が多いです。平均年収が高く、業界としても好調ですので、働きやすい環境にあると言えます。待遇の良さなどが継続年数の高さにつながっていると言えます。
現状:インターネット購入増加に伴う倉庫の増加
倉庫業界を志望する就活生が、知っておかなければならない現状として、インターネットでの購入増加に伴う倉庫の増加です。具体的には、Amazonや楽天市場の躍進がこの動きを加速させています。これらの企業は、在庫を管理する拠点として倉庫を建設し、そこから全国に商品を発送しています。このおかげで、私たちは注文した商品を翌日に受け取れるのです。
さらに、インターネットとビジネスモデルの発展で、インターネット上で商品を購入するEコマースが消費の方法として一般的になってきていることも、倉庫の数が増加している原因のひとつでしょう。この先もこの流れは加速していくものと考えられています。
課題:企業が増えすぎたことによる相次ぐM&A
倉庫業界では、企業の増加によるM&Aが相次いでいます。倉庫業界でM&Aが相次いでいる理由はいくつかありますが、1つは規模が大きくなるとその分だけ多くの顧客情報を手に入れられます。物流の中には、海運・トラック運送・倉庫業界とあります。その中でも、海運業界は大手の寡占化が進んでいます。
具体的には1兆円規模の会社が3社と1000億円クラスの企業5社が寡占状態にあります。トラック運送業でも同様に、1000億円規模の企業が10社程度が寡占状態にあります。このような物流の現状から考えても、現在倉庫業界は先ほどあげた2つの業界よりも数社が寡占状態にある等は言えないので、今後もM&Aが相次いでいくと予想されます。
倉庫業界の細かい職種分類について
- 倉庫管理
- 情報管理
- 荷役
- 輸入
- 事務職
倉庫業界の職種は大きく倉庫管理、事務職に分けられます。大きく現場と本社に分けられており、倉庫管理は倉庫の現場で働く職種、事務職は本社などで働く職種です。企業によっては倉庫内に事務所があり、そこで事務職が働いている場合もありますが、現場の商品や貨物などに手を触れるのは倉庫管理の仕事です。
倉庫管理にはさまざまな仕事があり、貨物の検品作業や在庫管理、梱包作業、ピッキングなどを行います。また、場合によっては通関業務などを行う場合もあり、倉庫内だけではなく、物流・運送業界でも大きく活躍する職種です。
事務職は倉庫管理に関するさまざまな事務作業係です。倉庫の運営や人員配置を考えるなど、現場の職員の管理やサポートなどをおこないます。
倉庫業界の主要トピック3つ
業界研究は、業界についての基本的な情報を知っているだけでは不十分です。基本的な知識を身に付け、業界の動向などを知ることは大切ですが、そこからさらに発展的な知識を身に付ける必要があります。業界について詳しくなるためには、業界内の出来事を知ることが大切です。
業界の話題を知ると、業界の現状や動向なども分かります。主要なトピックの把握により、さらに業界研究は深まりますので、それらを参考にして倉庫業界への知識を深めていきましょう。
①冷蔵倉庫、急がれる脱フロン
特定フロンの製造が2020年に禁止になります。特定フロンは、現在7割もの冷蔵倉庫が使用しており、特定フロンから自然冷媒への切り替えが急がれています。また冷蔵倉庫業界で約1割が使用している代替フロンについても、2019年から規制が始まります。
冷蔵倉庫は特定フロンの在庫などもありますし、場合によっては再利用も可能ですので、すぐに営業が停止するわけではありません。しかし2020年に製造が禁止になる以上、自然冷媒への切り替えは依然急がれており、切り替えに伴う費用や倉庫自体の建て替え、耐用年数などが問題になっています。冷蔵倉庫業界は多くの課題を抱えていますが、その影響は他業界へも広がりを見せ、食品業界にも影響していくと予想できます。
特定フロンや、代替フロンからの自然冷媒への切り替えには高額な費用かかり、切り替え中は一時的に倉庫が稼働できない問題がでます。自然冷媒への切り替えは急がれているものの、そのハードルは高く、切り替えによって経済的に大きなダメージを受けてしまう企業も多いのではないかと考えられています。環境省は自然冷媒への切り替えに向けてのサポートを行い、メーカーでも環境に優しい冷凍機などの開発が進められている状態です。
②AIによりコスト1割減
倉庫業界における、見逃してはならない大きな流れのひとつとして、AI化の流れが進んでいるようです。すでに、在庫や人員の最適な配置を計算するソフトウエアの実証実験がおこなわれており、AIを活用し、倉庫内にかかるコストを1割程度削減できると結果が出ています。物流業界では現在、人手不足が大きな課題になっているため、企業はこれらAIの早期の実用化を目指しています。これらから、AIによる人員削減とコスト減はどんどん加速してくことが予想されます。
③ラストワンマイルの課題解決へ
日本初の自動宅配走行ロボットが誕生しています。ロボットの開発を行ったのはZMPであり、自動運転技術開発などでも知られています。発表された自動走行宅配ロボットの名称は「CarriRo Delivery(キャリロデリバリー)」です。キャリロデリバリーは六本木ヒルズ内の物流センターやその他の店舗から、森タワー内のオフィスへの宅配を行っています。
物流業界では物流センターや店舗から利用者に届くまでの工程、ラストワンマイルが人手不足であり、業界の課題となっています。キャリロデリバリーはこのラストワンマイル問題の解決を目指すものであり、今後の活躍にも注目が必要です。キャリロデリバリーは現在は実験段階であり、実用化が進められている途中です。
実験期間として2017年10月から2018年3月31日までが設定されており、この間でどれだけの活躍ができるかに、期待が持たれています。将来的にはさらなる技術の開発によって、オフィスへのコーヒーのデリバリーや、荷物の配達などへの実用化も考えられています。ZMPでは2014年に物流支援ロボット「CarriRo(キャリロ)」の開発を進めており、すでに物流倉庫などに出荷がされている状態です。
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倉庫業界の売上高TOP10
先ほど、倉庫業界のM&Aについて、物流業界の中の海運とトラック運送業界は寡占が進んでいますが、倉庫業界ではあまり寡占が進んでいないと紹介しました。ここでは、具体的に倉庫業界の売上高TOP10を業界動向リサーチを参照に紹介します。
倉庫業界の売上高1位は4968億円の郵船ロジスティクスです。これに続くのが近鉄エクスプレスです。売上高は4,202億円です。海運、トラック運送業界のトップを走る企業が1兆円規模だと、寡占が進んでいないとわかります。3番手は大きく引き離されて、上組、三井倉庫HD、三菱倉庫、日新、住友倉庫、キユーソー流通システム、トランコム、日本トランスシティと続いています。
売上高ランキングTOP10
- 郵船ロジスティクス 4,698万円
- 近畿エクスプレス 4,202万円
- 上組 2,423万円
- 三井倉庫HD 2,129万円
- 三菱倉庫 2,068万円
- 日新 2,017万円
- 住友倉庫 1,722万円
- キューソー流通システム 1,535万円
- トランコム 1,262万円
- 日本トランスシティ 932万円
主要企業5選紹介
業界研究を進めるためには、業界全体について詳しくなるだけではなく、企業研究も大切です。同じ業界内であっても企業によって特徴や強みなどは異なりますし、場合によっては業務内容などまで変わってくる場合もあります。
業界内で業務については共通している部分はあるものの、企業によって細部は違いますので、それらの違いを知っておく必要があります。まずは業界内の主要な企業についてを知り、倉庫業界についての理解をさらに深めていきましょう。
①三井倉庫株式会社
- 企業名 三井倉庫株式会社
- 代表者名 木納 裕
- 従業員数 9,016名 (グループ全体)
- 設立年月日 2014年10月1日
三井倉庫株式会社は、倉庫事業、港湾運送事業などを行っている企業です。国内外でさまざまな拠点を持ち、幅広いネットワークを活かして倉庫事業を展開しています。食品や化学原料、医薬品、生鮮品・保冷品・危険物などさまざまな分野の商品、貨物の取り扱いが可能であり、高い保管技術を有しています。
また文書の保管なども行っており、紙媒体としての保管だけではなく、電子化しての保管などを行っているのも特徴です。文書については保管だけではなく融解処理なども請け負っており、幅広く事業を展開している企業です。
三井倉庫では新しい挑戦、革新的な分野への挑戦が大切にされています。新しいことを始めやすい社風であり、個性を発揮して活躍できる企業です。
②三菱倉庫株式会社
- 企業名 三菱倉庫株式会社
- 代表者名 松井 明生
- 従業員数 4,419名
- 設立年月日 1887年4月15日
三菱倉庫株式会社は、倉庫事業や港湾運送事業を始めとし、さまざまな物流事業などを展開している企業です。陸上、海上、航空輸送はもちろん、国際輸送や物流情報システムの開発なども手がける企業であり、幅広い事業展開が強みでもあります。倉庫事業では在庫管理なども行っており、さまざまな企業に利用されています。
企業としての歴史も古く、業界内でも高い売上を誇っており、倉庫業界を古くからけん引してきた企業です。三菱倉庫では挑戦とチームワークが大切にされています。協働が大切にされていますので、働きやすい環境にあると言えます。
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③株式会社住友倉庫
- 企業名 株式会社住友倉庫
- 代表者名 小野 孝則
- 従業員数 739名
- 設立年月日 1899年(明治32年)7月1日
株式会社住友倉庫は、倉庫事業や港湾運送業を始めとし、さまざまな事業を展開している企業です。陸上、海上、航空の運送や通関業、不動産業までを幅広く展開しています。倉庫事業だけに留まらず、幅広い事業展開により、高い売上を誇っている企業です。倉庫事業では文書の保管や電子化のサービス、磁気テープや映像テープ・フィルムの保管なども行っています。
またそれらの情報記録媒体の管理だけではなく、家財や美術品、貴重品などの管理も幅広く行っており、貸金庫のサービスまで提供しています。住友倉庫で求められているのは、新しいことにも挑戦し、目の前のことに全力を尽くせる人材です。挑戦が社風としても大切にされており、向上心の強い人におすすめの企業です。
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④株式会社上組
- 企業名 株式会社上組
- 代表者名 深井 義博
- 従業員数 3,707人 (連結4,111人)
- 設立年月日 1867(慶応3年)
株式会社上組は、倉庫業や港湾運送事業を含め、幅広い事業展開を行っている企業です。国内物流事業としては貨物自動車運送事業、倉庫工場荷役請負業などを行っており、国際事業として国際運送取扱業なども行っています。
また重量貨物運搬据付業、不動産賃貸業、物品販売業、酒類製造販売業など物流に限らず幅広い分野で活躍している企業です。業界内での売上はトップクラスであり、歴史の古い企業でもありますので、古くから日本の倉庫業界、物流業界を支えてきた存在でもあります。
上組では一歩先を読んで行動し、時代の変化にも柔軟に対応できる人材が求められています。社風としても時代の先読みが大切にされています。
⑤株式会社日新
- 企業名 株式会社日新
- 代表者名 筒井 雅洋
- 従業員数 1,517名
- 設立年月日 昭和13年(1938年) 12月14日
株式会社日新は、倉庫業や港湾運送、国内外での輸送や引越し、旅行、不動産事業など幅広い分野で事業を展開している企業です。国内のさまざまな場所に拠点を持っているだけではなく、海外にも拠点を持ち、事業を展開しているグローバルな企業でもあります。
海外拠点は24ヵ国であり、中国、香港、タイ、シンガポール、ロシアなどのアジア圏だけではなく、アメリカなどの欧米地域、さらにはヨーロッパにも進出しています。世界のさまざまな場所で活躍している企業であり、国内の倉庫業界でも高い位置づけを占めている企業です。
日新では仕事へのやる気がある人、協力し合って仕事ができる人が求められています。愛社精神が大切にされており、お互いに協力し合える環境ですので、働きやすい企業です。
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ビジュアル図解 物流センターのしくみという本は、物流センターや倉庫業の役割や仕組み、実際の業務内容について解説しています。物流倉庫は物流業界の中心となる存在であり、これがなければ安定した商品の流通はできません。この本では物流業界の生命線でもある物流倉庫の実態について、細かく解説されています。
物流センターにおける業務内容や在庫管理やコスト管理、さらには最新システムや技術などについても解説されており、業界についての知識が深められます。ビジュアルで解説されているため、初心者であっても分かりやすく、おすすめです。物流センターについての詳細な知識だけではなく、そこから発展して、物流業界全体についてを知れます。
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