業界研究

【ドラッグストア業界の現状と今後の課題】職種や主要企業を紹介 

日常的に利用されるドラッグストア業界

いまやコンビニエンスストアと並び「近くにある便利なお店」のイメージが定着しているのが、ドラッグストアです。薬だけでなく化粧品から日用品まで幅広い品揃えであることから、日常的に利用されている方も多いことでしょう。そんな身近なイメージから、ドラッグストア業界への就職を検討する方も少なくありません。

しかし、ドラッグストア業界の仕事内容や業界のしくみなどは、意外と知られていないものです。ドラッグストア業界を志望するのであれば、まずは業界の基本的な情報を知ることから始めましょう。

ドラッグストア業界の仕組み

まずはドラッグストア業界がどのような仕組みで成立しているのか、基礎的な部分から理解を深めておきましょう。ドラッグストアは医薬品はもちろん、化粧品やその他の日用雑貨なども広く販売しています。

また、店舗によっては食料品などを販売しており、スーパーやコンビニなどのように機能していることもあるでしょう。ドラッグストアはこれらの売り上げによって店舗を経営しており、売り上げの内訳は医薬品が30~40%程度、化粧品や日用雑貨、食料品などがそれぞれ20%程度です。

つまり、医薬品以外の販売で利益を得ている店舗も多いため、スーパーやコンビニに負けないように安く売り出したり、商品展開を充実させている店舗もあります。

ドラッグストア業界の現状

ドラッグストア業界はドラッグ、つまり市販の医薬品を販売する仕事をしています。市販の医薬品は利益率が高く、近年の高齢化に伴う需要増も追い風となり売上は好調です。

また、ほとんどのドラッグストアは医薬品だけでなく、化粧品や日用品、食料品などを併売しています。こうした日常消費を取り込むことで安定した来客数を確保しているのが、ドラッグストアの販売スタイルの特徴です。

多くの企業がチェーンストアを営んでおり、全国規模で新規出店を競い合っています。また吸収合併も多く、そうした激しい争いを繰り返しながらドラッグストア業界は成長を発展させてきました。しかし現在の市場はもはや飽和状態ともいわれ、今後はさらに競争が激化すると予想されています。

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ドラッグストア業界の今後の課題

ドラッグストアは、都市部のみならず地方でも店舗数を伸ばしています。生活資材や食料品、医薬品などが揃うドラッグストアは高齢者にとっても身近な存在です。

しかし、運転免許を持っていない高齢者や身体的に買い物に行くことが難しい高齢者も多く、そうした利用客への対応が待たれています。インターネットを使った通販を展開するドラッグストアも増えていますが、パソコンやスマートフォンを所持していない高齢者のことも考えた施策を待っている人も多いでしょう。

ドラッグストア業界の業績推移について

  • 業界規模:6兆4,557億円
  • 平均年収:526万円

ドラッグストア業界は毎年順調に売上を伸ばし続け、現在の業績は6兆4,557億円という規模にいたるまで成長しています。この成長は新規出店やM&Aなどの企業戦略によって支えられてきました。しかし現在の市場は飽和しつつあり、今後は成長が鈍化するとみられています。

6兆円超の業績規模に見合った平均年収とはいいにくい数字ですが、企業によっては離職率も高いことから実態とは多少かけ離れた数字となっている可能性もあります。

ドラッグストア業界の職種

ドラッグストア業界と一言で言っても、職種はさまざまあります。職種は各企業によって内容が異なるため、就職したい企業毎によく調べましょう。

ドラッグストア業界で働きたいという抽象的な志望動機では採用担当者に伝わらないことがあるので、その中でも具体的にどの職種につきたいのかを明確にしましょう。

バイヤー

バイヤーはドラッグストアで扱う薬品、日用品の仕入れをおこなう職種です。チェーン店であっても各店舗の需要は異なります。そのため、店舗ごとに地域にあった商品を仕入れなければいけません。

また、新商品の選定などもおこないます。また、製薬会社などの取引先と商談や契約をおこなうこともあります。仕事で扱うことも多岐にわたるので、ものごとを俯瞰して見る必要があります。

販売

販売は店舗スタッフと連携して、必要とされている商品を把握しながら業務をこなします。季節毎に売れる商品は異なるため、発注する商品数にも気を配る必要があります。

販売するだけではなく、経営の面もあります。アルバイトやパートタイマーの人材をどこに配置するのか、シフトはどうするのかなど店舗の経営にも携わる職種です。

実際にドラッグストアでアルバイトした経験を活かすことができるので、販売を志望する場合は志望動機などに取り入れてみましょう。

販売支援

販売支援は、直接販売に関わることがない職種です。ひとつの店舗に限らず、担当した地域にある複数の店舗を巡回することがあります。各店舗毎の問題やマネジメントなどを店舗スタッフと相談をして、よりよい店舗を作り上げる職種です。エリアに合わせた販売戦略や商品展開なども考えます。

商品に関する研究だけではなく、スタッフの教育も取り扱います。スーパーバイザーやエリアマネージャーといった呼び方をすることがある職種です。利用したことのあるドラッグストア店それぞれの特徴や課題などを整理することができれば、志望動機に取り込むといいでしょう。

主要企業7選紹介

ドラッグストア業界は現在さまざまな企業がひしめきあっています。激しい競争に打ち勝つべく、新しい事業に乗り出して差別化をはかる企業も少なくありません。また企業のM&Aなど再編の動きも激しく、業界の勢力図はそのつど変化をみせています。

そんな変化に富んだドラッグストア業界を知るには、主要企業について知っておくことが重要です。業界をリードする主要企業の取り組みや経営方針をみることは、ドラッグストア業界全体を理解することにもつながるからです。

①株式会社マツモトキヨシホールディングス

  • 企業名 株式会社マツモトキヨシホールディングス
  • 代表取締役社長 松本 清雄
  • 従業員数 323人(単独) 6,243人(連結)
  • 設立年月日 2007年(平成19年)10月1日

株式会社マツモトキヨシホールディングスは、ドラッグストア最大手である株式会社マツモトキヨシをグループに持つ持株会社です。マツモトキヨシは都市型ドラッグストアの草分けとして知られています。1995年にドラッグストア売上高トップを記録して以降は、中小チェーンの買収などでグループを順調に拡大させて来ました。

ドラッグストアブランドとしての認知度も高く、2017年には国内のブランド価値評価ランキングでドラッグストア唯一のランクインを果たしています。海外進出にも意欲をみせており、常に野心溢れる社風です。挑戦的に仕事がしたいと考える人には向いている職場だといえます。

②ウエルシアホールディングス株式会社

  • 企業名 ウエルシアホールディングス株式会社
  • 代表取締役社長 水野 秀晴
  • 従業員数 20人(単独)平成31年2月28日現在 
  • 設立年月日 2008年(平成20年)9月1日

ウエルシアホールディングス株式会社は、全国に展開する調剤併設型ドラッグストアチェーン、ウエルシア薬局株式会社を主力とする持株会社です。ウエルシア薬局は、ドラッグストアチェーンとしては珍しく24時間営業をしている店舗が多数あります。

2014年にイオングループとなってからは、子会社の寺島薬局をウエルシア介護サービス株式会社と改め、介護サービス事業に本格参入しています。また、2016年には株式会社CFSコーポレーションと合併しました。医薬品の販売や介護を通じて、地域と密着した事業の形成に取り組むウエルシアの職場では、お客様の目線に立った細やかなサービス精神が必要とされています。

③株式会社ツルハホールディングス

  • 企業名 株式会社ツルハホールディングス
  • 代表取締役社長 堀川 政司
  • 従業員数 233人(単独)2019年5月15日現在
  • 設立年月日 1963年(昭和38年)6月

株式会社ツルハホールディングスは北海道で創業し、いまや南は九州まで全国展開をしているドラッグストア業界でも最有力企業のひとつです。ツルハグループは主力のツルハドラッグを筆頭に、くすりの福太郎やレディ薬局、杏林堂薬局など多くのチェーンを傘下に持っています。

またツルハグループでは、「M’s one(エムズワン)」「Medis’ one(メディズワン)」をはじめとしたプライベートブランド商品の開発にも積極的です。ツルハグループでは現在他店舗展開によるスケールメリットと本部統合によるコスト削減に取り組んでいます。野心とコスト管理のバランス感覚に自信のある人にはおすすめの会社といえます。

④株式会社サンドラッグ

  • 企業名 株式会社サンドラッグ
  • 代表取締役社長 赤尾 主哉
  • 従業員数 6,882名 (2019年3月末) (パート、アルバイト含む)
  • 設立年月日 1965年(昭和40年)4月

株式会社サンドラッグは、1965年に有限会社サンドラッグとしてチェーン展開を始めました。1994年に株式会社化し、以降は関東圏中心から全国展開へと事業戦略を転換しています。サンドラッグは従来の調剤併設型に加えて、調剤専門薬局のサンドラッグファーマシーズを展開しており、調剤事業に注力する姿勢をみせています。

また西日本を中心にディスカウントストアのダイレックスを展開しており、多角的な経営であるのもサンドラッグの特徴です。このような企業姿勢から、堅実かつ意欲的な人材が求められている職場だといえるでしょう。

⑤株式会社コスモス薬品

  • 企業名 株式会社コスモス薬品
  • 代表取締役社長 柴田 太
  • 従業員数 4,240人(正社員)
  • 設立年月日 1991(昭和58年)年4月

株式会社コスモス薬品は、九州を拠点に全国へ展開中のドラッグストア、ディスカウントドラッグコスモスを運営しています。企業サイトによれば、日本で最初に小商圏型メガドラッグストアを他店舗展開するビジネスモデルを構築したということです。スーパーやコンビニエンスストアなどの小商圏における競合業態を圧倒する、大型ドラッグストアを展開することで、コスモス薬品は業績を拡大させてきました。

またコスト削減のために、あえてクレジットカードや電子マネーを取り扱わないなど、低価格提供の実現にも徹底的です。こうした大胆な経営方針に共感できる野心的な人であれば、活躍が期待できる職場だといえます。

⑥スギホールディングス

  • 企業名 スギホールディングス株式会社
  • 代表取締役社長 杉浦 広一
  • 従業員数 5,494人(連結)2019年2月末現在
  • 創業 1976年(昭和51年)12月
  • 設立年月日 1982年(昭和57年)3月

スギホールディングス株式会社は、愛知県に本社を持ち、ドラッグストアの運営や訪問介護サービスなどを事業としておこなっています。

ドラッグストアのスギ薬局は中部地方を中心に関東や関西、北陸にも店舗を出店しています。別事業では訪問介護などの医療サービスを提供する「スギメディカル」や、障がい者雇用の促進を目指した「スギスマイル」などがあげられます。

⑦ココカラファイン

  • 企業名 株式会社ココカラファイン
  • 代表取締役社長 塚本 厚志
  • 従業員数 259人(単独)6,460人(連結)
  • 設立年月日 2008年(平成20年)4月1日

神奈川県に本社を置くココカラファイン株式会社は、ドラックストアの運営をはじめ、幅広い事業を展開しています。ドラッグストアやインターネット通販による商品の販売はもちろん、輸出入を主にした海外事業や介護事業、人材活用事業やグループ企業への電力小売り事業などがあります。

また、ドラッグストアは同社名の「ココカラファイン」にはじまり、「セイジョー」や「ジップドラッグ」、「スズラン薬局」や「ライフォート」など、店舗展開が幅広い点も特徴でしょう。医薬品や化粧品、日用雑貨などの販売から、医療や医薬の分野にとどまらない事業を展開している点が大きな魅力でしょう。

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ドラッグストア業界研究のおすすめ書籍紹介

ドラッグストア業界についてもっと深く知りたいのであれば、書籍による研究をおすすめします。ネットやニュースで得られる情報は断片的なものが多く、業界の全体像をまとめて知るにはかえって手間がかかる場合が多いからです。

一方で書籍は、さまざまな情報の一覧性が高く、まとまった形で知識を得ることができます。

また書籍は、ネットなどと比べて時間をかけて取材されており、情報の信頼性も高いものが多いです。ドラッグストア業界に関心があり、今後の就活に活用できる業界研究をおこないたい人に向けて、ここでは2冊の書籍を紹介します。

①図解入門業界研究 最新ドラッグストアの動向とカラクリがよ~くわかる本

図解入門業界研究 最新ドラッグストアの動向とカラクリがよ~くわかる本』は、ドラッグストア業界の全体像を、図解やデータで分かりやすく解説した業界の入門書です。業界の仕事内容から、現状や課題について、今後の動向を詳細に知ることができます。発行は2010年とやや古いものの、ドラッグストア業界についての基本的な知識は、この一冊で得られるでしょう。

また、ドラッグストアでは医薬品も扱っていることから、改正薬事法などの法規制などについても知る必要がありますが、本書ではそれについても詳しく解説しています。ドラッグストア業界の内定を得るために、知っておきたい業界の基本的な情報は数多くありますが、それをまとめて知ることができるのが本書です。

②ドラッグストアQ&A―薬・健康食品・化粧品・ベビー・生活用品の情報BOOK

ドラッグストアQ&A―薬・健康食品・化粧品・ベビー・生活用品の情報BOOK』は、ドラッグストアに寄せられる質問をまとめた、ドラッグストア向けマニュアル本です。医薬品から化粧品、健康食品や生活用品など、ドラッグストアの店舗では多様な商品を扱っていますが、それら商品に関するお客様の質問とその回答例をまとめています。

一見するとドラッグストアで働く人向けのようではありますが、ドラッグストアでの仕事を具体的に知ることができる貴重な一冊です。多数のイラストなど読みやすい配慮がなされており、一般の読者でも無理なく読むことができます。ドラッグストアでの就職が決まった後でも長く使える、ドラッグストア業界研究・業界人必携書籍です。

ドラッグストア業界を深く知り就活を有利に進めよう!

ドラッグストア業界には全国展開などの規模の大きな仕事がある一方、地域の生活に寄り添う地道な仕事もあります。どちらもやりがいのある仕事であり、それらを併せ持っているのがドラッグストア業界の魅力の1つです。

ドラッグストア業界は身近な存在であることから、多くの就活生が視野に入れています。一歩先を歩むのに必要なのは、業界への高い理解です。そして業界研究を通して得た知識は、就活だけでなくその後の活躍にも大いに役立つでしょう。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

多くの学生と企業をマッチングしてきた経験を活かし、『就活対策サイト「キャリアパーク!」が教える 「最高の会社」の見つけ方』(高橋書店)を出版。最高の会社を見極めるための基準や失敗しない企業選びの方法を紹介している。

全国民営職業紹介事業協会 職業紹介責任者(001-190515132-01459)

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