目次
ソフトウェア業界の概要と実態を知ろう
スマートフォンの普及とクラウドの出現により、ソフトウェア業界は今、注目を浴びています。
ライセンスに依存しないオープンソースの出現で、誰もがソフトウェアエンジニアになれる可能性が広がりました。
オープンソースとは、ソフトウェアを構成するプログラムである「ソースコード」が無料公開されていることを言います。これにより、誰でもコードを編集できるサイトを使えるようになります。
オープンソースの例として「Word Press」があり、反対は有償ライセンスがなければ使えないMicrosoftの「Windows」「Office」です。
ソースコードを自由に変えれるか否かで、オープンソースかどうか別れます。
それに伴って、これまでの大手ソフトウェア企業は「新しく勢いのある企業、個人」とも競争せざるを得ない状況です。
本記事では、ソフトウェア業界の動向や職種、主要企業の紹介をします。ソフトウェア業界への就職を考えている、興味がある就活生のみなさんのお役に立てれば幸いです。
そもそも「ソフトウェア」とは
「ソフトウェア」とは、コンピューターやスマートフォンを動かすプログラムのことを指します。
パソコン、スマートフォン、タブレット、マウスと目に見えるものを「ハードウェア」と呼ぶのに対して、ソフトウェアは目に見えないプログラムです。
ソフトウェアは「OS(Operating System)」と「アプリケーションソフト」の2つに分けることができます。
「OS」とはハードウェアを制御したり、操作に関わるソフトウェアで、Microsoft社のWindows、Apple社のMacOS、Google社のAndroid、Linuxが代表的です。スマートフォンの場合、アップルのiOS、グーグルのAndroidの2つに大別できます。
OSの例
- Microsoft:Windows
- Apple:MacOS、iOS
- Google:Linux、Android
- インテル:iRMX
- Mozilla:Firefox OS
「アプリケーションソフト」とは、ハードウェアを使うユーザーが直接操作するソフトウェアのことです。Microsoft社のoffice系のワード、エクセル、パワーポイント、Adobe社のPhotoshop、 Illustrator、After Effectsといった画像や動画編集のソフトがあります。
OSと比べて、アプリケーションソフトは膨大な数が存在するのが特徴です。
アプリケーションソフトの例
- 個人向け:オフィスソフト、ゲームソフト
- 法人向け:オフィスソフト、セキュリティソフト、経営管理ソフト、勤怠管理ソフト、在庫管理ソフト、顧客情報管理ソフト
ソフトウェア業界の業績推移について
- 業界規模:6,443億円
- 平均年収:740万円
- 平均勤続年数:14年未満
参照:「ソフトウェア業界(2019-2020年)|業界動向リサーチ」
2011年までの日本経済は、円高、欧州債務危機、東日本大震災により停滞が続いていました。しかし、2012年以降は企業のIT投資が活発になり、個人向けソフトウェアの販売も伸び、近年は上昇傾向にあります。
職種により格差はありますが、平均年収は705万円で全国平均の436万円よりも高い水準です。(参照:「民間給与実態統計調査 (令和元年分)|国税庁」)
年収格差が大きい職種であるWeb系システムエンジニア職を例に挙げると、最高年収が1,300万円、最低で150万円と大きな開きがあります。
平均勤続年数は14年未満であり、ソフトウェア業界で10年を超えているのは6社のみです。ソフトウェア開発は業務の特性上、スキルを別の会社でも活かせるので、転職のしやすさが特徴として挙げられます。
そのため、更なる年収アップやキャリア形成を目的に、一つの企業にとどまらない人が多い一面があります。
また、スキルに自信があればフリーランスとして独立し、企業勤めするよりも収入が高くなる人も少なくありません。
ソフトウェア業界の細かい職種分類について
- プログラマー
- システムエンジニア
- ネットワークエンジニア
プログラマーは、ソフトウェア開発の基本を担う職種です。使用できるプログラミング言語によって、携われる仕事が変わります。
また、プログラミング言語はトレンドがあり、身につけていると自分の価値が高まる場合もあるのが特徴です。そのため、常に最新のトレンドを勉強しておく必要があります。
システムエンジニア(SE)は、開発を始めとするシステム構築に総合的に携わる職種です。基本的なプログラミングの知識をベースに、コンサルティングやマーケティングもこなす人もいます。
ネットワークエンジニアは、企業や個人利用における多数のシステムをネットワークで繋ぎ、構築、運用、保守を行うスペシャリストです。さまざまな機器のネットワークを繋ぐ必要があるため、複数のOS、ハードウェアの知識も求められます。
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ソフトウェア業界の今後の動向
ソフトウェア業界は、大きくくくると「IT業界」に分類されます。IT業界は新規開発や情報の飛び交いが多く、他の業界と比較してもトレンドによる影響が激しいのが特徴です。
たとえば、スマートフォン、スマートウォッチと新たなデバイスが開発されれば、それに対応できるソフトウェアの開発が必要になります。
その際、ハードウェアに適したソフトウェアを開発できなければ、シェアを獲得できず売上が上がらない恐れがあります。ハードウェアとソフトウェアが相互に作用してこそ、IT業界は伸びるのです。
以下より、ソフトウェア業界の代表的な動向として「Iotの普及」「クラウド化」について紹介します。
IoTの普及によりソフトウェアが必要になる
IoTとは「Internet of Things」の略です。「モノのインターネット化」と直訳でき「さまざまな物がインターネットに接続すること」を指します。
近年は予防医療の重要性が高まり、健康管理ができるスマートデバイスの普及が広まりました。たとえばApple社の「Apple Watch」はスマートウォッチと呼ばれ、腕時計に通信機能を持たせることで、インターネットに接続できます。
今後は「スマートホーム」と呼ばれる、住居におけるのIoTが進むでしょう。たとえば、冷蔵庫や炊飯器、クーラー、テレビなど家電をインターネットに接続することで、離れた場所からでもスマホで操作できるのが特徴です。
他にもAppleの「Siri」Googleの「Google Home」Amazonの「Amazon Echo」といった、話かけるだけで操作ができる商品も開発されています。
また、2020年に商用化された「5G」の影響もIoTの普及に大きく関わると予想されます。5Gとは「第5世代移動通信システム」の略で、現在普及している4Gの発展形です。
4Gと比べて通信速度が早いことはもちろん、同時に多数のデバイスで接続が可能になり、速度遅延が起こりにくいのが特徴となっています。
5Gの商用化により、様々なモノがインターネットに同時に接続できるようになることも、IoTがこれから普及していく後押しとなるでしょう。
このようにIoTが普及すれば、デバイス使用をより便利にするためにソフトウェアの開発が必要になります。
クラウド化がますます進む
ソフトウェア業界では2013年頃から「クラウド化」が急速に進んでいます。「クラウド」とは、インターネットを通じてデータのダウンロードやアップロードができる仕組みのことです。
Google、Microsoft、Amazon、IBMの大手企業が先頭に立ち、クラウド化を進めました。今では規模を問わず、さまざまな企業が業務の効率化を目的にクラウド化を進めています。
2000年代でのソフトウェアは、自身のPCにインストールして使うことが一般的でした。それが近年では、パッケージソフトを購入せず、使いたい時にインターネットを介してソフトウェアを使うことが主流です。
自身のPCにインストールすることなく、インターネットを介してソフトウェアを利用することを「クラウド化」と呼びます。
今後、クラウド化がますます進むと言われており、それに伴ってソフトウェア業界がどれだけ伸びるのか注目です。
ソフトウェア業界の主要企業5社を紹介
ソフトウェア業界における主要企業5社
- 日本オラクル
- トレンドマイクロ
- サイボウズ
- オービック
- ピー・シー・エー
ソフトウェア業界では、OSはマイクロソフト、アプリケーションはオラクルが多くのシェアを獲得しています。
ただしクラウド化によるIoTの波とオープンソースの出現もあり、どの企業でも業績を伸ばせる可能性を秘めています。
また、クラウドを大いに利用したテレワーク、政府の副業支援と会社独自の働き方が進んでいる企業が多い業界です。エンジニア不足がささやかれている業界ですが、働き方改革により女性進出にも期待が寄せられています。
以下より、ソフトウェア業界における主要企業5社を紹介しますので、それぞれの特徴を知り、就職先を考えるのに役立ててください。
①日本オラクル
- 企業名:日本オラクル
- 代表執行役: 内海 寛子
- 従業員数:2,280人(2020年5月31日時点)
- 設立年月日: 1985年10月15日
日本オラクルは、米国オラクル・コーポレーションの日本法人として設立されました。
国内を拠点とした情報システム構築のためのソフトウェア製品、ハードウェア製品、ソリューション、コンサルティング、サポートサービス、教育の事業など多岐にわたるサービスを展開しています。
社員犬を25年間導入していることも話題で、今は4代目のキャンディです。マスコットとして社員の激励をしています。
また、諸外国と関わる機会が多く、将来は海外で勤務したい人にとってはチャンスがあります。自分から能動的に仕事を取る姿勢が求められる会社です。
②トレンドマイクロ
- 企業名:トレンドマイクロ
- 代表取締役社長(CEO):エバ・チェン
- 従業員数:6,975名(2020年12月31日付)
- 設立年月日:1989年10月24日
トレンドマイクロの歴史は30年に及び、常にソフトウェア分野で最先端を行く企業です。そのため、真に力のある企業として高い評価をされています。
セキュリティ市場では2年連続(2019-2020年)シェアNo.1です。2位のベンダーと比較して3倍の市場シェアを保持し、最も高い割合を占めています。
参照:「業界における実績|トレンドマイクロ」
セキュリティソフト・ウイルスバスターが代表製品ですが、最近ではサーバセキュリティ分野のトップを走る企業としての取り組みを行っています。
保護者向けに子どもへスマートフォンを持たせる際の疑問解消や教育方法の指導を行ったり、夏休みに親子ワークショップを開催したりと、インターネットを安全に使用する支援を精力的に行っています。
③サイボウズ
- 企業名:サイボウズ(Cybozu, Inc.)
- 代表取締役社長 : 青野 慶久(本名:西端 慶久)
- 従業員数:857名(2020年12月末 連結)
647名(2020年12月末 単体) - 設立年月日:1997年8月8日
サイボウズは国内に750万人以上のユーザーを有し、 国内グループウェア市場において11年連続シェアNo.1となった会社です。
グローバルに拠点をもつ企業や公共団体といった大規模チームから、企業間プロジェクト、ボランティア、家族の小規模チームで共有できるアプリケーションの開発をしています。
サイボウズでは「100人いれば100通りの働き方がある」を推進しています。青野社長自身が率先して夫婦別姓を訴えたことも記憶に新しく、複(副)業採用枠を作るなど、挑戦的で革新的な試みをしている会社です。
④オービック
- 企業名:株式会社 オービック(英訳名:OBIC Co., Ltd.)
- 代表取締役社長 : 橘 昇一
- 従業員数:連結 2,049名
単体 1,854名 (2021年3月末日現在) - 設立年月日:1968年4月8日
オービックは長期にわたり自社一貫体制で実現する「ワンストップ・ソリューション・サービス」を提供しています。
コンサルティングからハードウェア選定、ネットワーク環境構築、システム開発、導入時教育といった情報システムの導入から、導入後の運用サポート、サプライ品の供給、法改正に関する情報提供まで網羅しています。
また「社員を植木からではなく種から育てたい」という野田会長の意向もあり、新入社員を手厚く教育する仕組みがなされています。
対話とプロセスを重視するため営業力が高いと他社からも評価されています。近年ではコンサルティングにも力を入れており、受注数は減っているものの売上高は好調です。
⑤ピー・シー・エー
- 企業名:ピー・シー・エー
- 代表取締役社長 : 佐藤 文昭
- 従業員数:425人(2021年3月末)
- 設立年月日:昭和55年8月1日
ピー・シー・エーは社内のお金にまつわることを一元管理できる「基幹業務ソフトウェア」に強い会社です。製品名にクラウドの名を冠するほどクラウド分野での取り組みに力を入れています。
財務会計、人事給与はもちろんですが、電子カルテシステムなども開発しており、業務効率化、コスト削減に貢献しています。
近年ではクロノス、インターコム3社で労務管理ソリューション分野での協業が確定しました。今後はクラウドサービスを中心とした、業務管理システムの提供拡大が見込めます。
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