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設備系のプロフェッショナルなエネルギー管理士
世の中にはさまざまな資格があり、その中のひとつに「エネルギー管理士」の資格があります。エネルギー管理士は資格の名前であり、明確にその名称を持つ仕事があるわけではありません。
エネルギー管理士は、一定のエネルギーを消費する工場や事業所に配置が義務付けられている資格であり、その設置義務は省エネ法に基づいて施行されています。
勤める工場や事業所によって仕事の内容は異なりますが、基本的にはエネルギーに関するプロとして、省エネのための効率化を図ることが主な仕事です。
本記事ではエネルギー管理士の仕事から試験内容まで幅広く解説しています。
エネルギー不足が叫ばれている現代においては、欠かすことができない存在ですので、エネルギー管理士についての知識をさらに深めていきましょう。
エネルギー管理士とは
「エネルギー管理士」とは、エネルギー管理士試験に合格した者、またはエネルギー管理認定研修を修了して、エネルギー管理士免状の交付を受けている者のことを指します。略して「エネ管」と呼ばれることも多いです。
そもそも「エネルギー」とは、何かを働かせる力のことです。例えば、温度を変化させる「熱エネルギー」や、ライトを光らせるための「電気エネルギー」、ウランが核分裂する時に発生する熱と、熱による蒸気を利用し、タービンと発電機を回して電気をつくる「原子力エネルギー」などがあげられます。
エネルギー管理士は、石油資源を元とした電気・ガス・油のようなのエネルギーを大量に消費する工場や事業所で働くことが一般的です。それらの施設で、エネルギー使用量を合理化するために設備を管理したり、使用方法の監視や改善を指揮する業務に従事します。
エネルギー管理士は、例えば「化学工場」や「食料品製造工場」「輸送用機械器具製造業」のような、化学製品や製造工場で働く場合が多いです。これらの大型の施設や工場では、エネルギーの消費を押さえ、省エネを推進することが法律で定められています。そのため、それらを管理する責任者がエネルギー管理士となっています。
また中規模以上の事業所や工場においても、その規模に応じて、エネルギー管理者を一定人数配置することが法律により定められています。
「エネルギー業界」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。「エネルギー業界」について詳しくなることで、より優位に就活を進めることができるでしょう。
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エネルギー管理士の仕事内容
エネルギー管理士の主な仕事は、「燃料や電気消費量が特に多い工場におけるエネルギー使用量の監視や改善を指揮すること」です。
エネルギー管理士の主な職場は、「第一種エネルギー管理指定工場」です。工場の中で規定以上の量(年間で原油換算3,000キロリットル以上)のエネルギーを使用し、「省エネルギー法」で指定された工場のことを「第一種エネルギー管理指定工場」と呼びます。
この第一種エネルギー管理指定工場の中でも、「製造業」「鉱業」「電気供給業」「ガス供給業」「熱供給業」の5業種に関しては、エネルギー管理士を1~4名置くことが義務付けられています。そのため、資格取得後に就職を目指す際には、これらの業界を対象とした就職活動を行うことが一般的でしょう。
また、年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500キロリットル以上の工場・事業所が指定される「第二種エネルギー管理指定工場」に関しても、エネルギー管理士の選任が必要となっています。
これらに関してもエネルギー管理士の資格取得者の就職先の候補として考えることが可能です。「エネルギー管理指定工場」で第一種エネルギー管理指定工場、第二種エネルギー管理指定工場が、都道府県別で一覧として掲載されているため、気になる人はチェックしてみてください。
エネルギー管理士は「エネルギー管理統括者」「エネルギー企画管理推進者」「エネルギー管理者・エネルギー管理員」と分けることができます。それぞれ求められる役割や仕事内容が異なりますが、まずは「エネルギー管理者・エネルギー管理員」としての経験が必要です。細かな仕事内容やなるための条件は下記に記載しているので、確認しておきましょう。
エネルギー管理統括者
なるためには:
法律上「事業の実態を統括管理する者」をもって充てるとされており、事業経営の一環として、事業者全体の鳥瞰的なエネルギーを行える者
仕事内容:
①経営的視点を踏まえた取組の推進
②中長期計画のとりまとめ
③現場管理に係わる企画立案、実務の実施
エネルギー企画管理推進者
なるためには:
エネルギー管理講習修了者又はエネルギ-管理士の資格を有している者
仕事内容:
エネルギー管理統括者の職務を実務面から支えること
エネルギー管理者・エネルギー管理員
なるためには:
エネルギー管理士の資格を有する者、エネルギー管理講習修了者
仕事内容:
①エネルギー管理指定工場の現場におけるエネルギー管理の実施
②エネルギー管理統括者及びエネルギー管理企画推進者との連携
③経営判断に基づく組織的な取組を実施することにより、事業者全体として効率的かつ効果的な省エネルギー対策の実施
エネルギー管理士になるための2つのルート
エネルギー管理士の資格取得には2つの方法があります。誰でも受験することができる「国家試験ルート」と、一部の人しか参加することができない「管理研修ルート」です。
それぞれに受験資格や資格取得までのフローが異なっているため、自分に合った方法を知るために理解しておきましょう。
1.国家試験
エネルギー管理士の資格取得には2パターンの方法があり、その1つ目が国家試験への受験です。
毎年8月に行われる国家試験を受け、合格することでエネルギー管理士の資格を得れます。この試験へは誰でも受験することが可能です。
試験に合格後は、エネルギー使用の合理化に関する実務経験1年以上を証明する「エネルギー使用合理化実務従事証明書」の提出が求められます。実務に携わった時期は、試験合格の前でも後でもどちらでも可能です。
そのため国家試験ルートは、これからエネルギー関係の仕事を目指す人にとっておすすめのルートです。
2.管理研修
もう1つのエネルギー管理士取得ルートとして、エネルギー管理研修による資格取得という方法があります。
こちらは誰でも受けられるわけではありません。研修を受けるためには、「エネルギー使用の合理化に関する実務経験3年以上」という条件があります。
つまり、エネルギー使用の合理化に関する実務を3年以上経験していなければ、そもそも試験による資格取得以外の選択肢がないということです。
研修は毎年12月に実施され、研修受講・修了をもって資格取得となります。ただし、研修の最後には修了試験という筆記試験を受けることが義務づけられています。
そのため管理研修ルートは、すでにエネルギー使用に関する実務経験を積んでいて、キャリアアップや社内で資格取得を推奨されている人に向けたルートとなっています。
エネルギー管理士試験の試験内容
次にエネルギー管理士試験の試験内容について、解説します。エネルギー管理士試験では、合計4課目の受験をすることになっており、1課目の「エネルギー総合管理及び法規」を全員が必須で受験することとなります。
残りの3課目については選択式になっており、「熱分野」から3課目、もしくは「電気分野」から3課目を受験しなくてはなりません。
「熱分野」を選択しても「電気分野」を選択しても、結果的には両方の管理者になることが可能です。そのため課目選択は、「自分の得意な方を選択する」のがよいとされています。
ちなみに、エネルギー管理士試験では試験課目の免除制度があります。これは、合格した課目について、合格した年の初めから3年以内であれば、その課目の試験が免除になるというものです。ただし、この期間中に、その課目を新たに受け直すことはできません。
1.熱管理科目
【必須科目】
(1) エネルギー総合管理及び法規(80分)
① エネルギー使用の合理化等に関する法律及び命令(1題)
② エネルギー総合管理
エネルギー情勢・政策、エネルギー概論(1題)
エネルギー管理技術の基礎(1題)
【選択科目】
(2) 熱と流体の流れの基礎(110分)
① 熱力学基礎(2題)
② 流体工学基礎(1題)
③ 伝熱工学基礎(1題)
(3) 熱利用設備及びその管理(110分)
① 計測及び制御(2題)
② 熱利用設備(下記4題中、2問を選択)
ボイラ、蒸気輸送・貯蔵装置、蒸気原動機、内燃機関・ガス(2問)
【熱交換器・熱回収装置】、【冷凍・空気調和設備】、【工業炉・熱設備材料】、【蒸留・蒸発・濃縮装置・乾燥装置・乾留・ガス化装置】の4題中、2題を選択解答
(4) 燃料と燃焼(80分)
① 燃料及び燃焼管理(2題)
② 燃焼計算(1題)
熱管理科目の3課目は「熱と流体の流れの基礎」「燃料と燃焼」「熱利用設備及びその管理」になります。
熱管理科目の試験は、傾向として文章問題が多く、流体力学や熱力学に関する設問や燃焼計算の問題が出題されます。
また「電気管理科目よりも合格率が高い年度が多い」という特徴もあります。そのため毎年、熱管理科目を選択する人が多い傾向があります。
熱管理科目の試験内容
・熱と流体の流れの基礎(熱力学の基礎、流体工学の基礎、電熱工学の基礎)
・燃料と燃焼(燃料および燃焼管理、燃焼計算)
・熱利用設備及びその管理(計測および制御、他)
2.電気管理科目
【必須科目】
(1) エネルギー総合管理及び法規(80分)
① エネルギー使用の合理化等に関する法律及び命令(1題)
② エネルギー総合管理
エネルギー情勢・政策、エネルギー概論(1題)
エネルギー管理技術の基礎(1題)
【選択科目】
(2) 電気設備及び機器(110分)
① 工場配電(2題)
② 電気機器(2題)
(3) 電力応用(110分)
① 電動力応用(2題)
② 【電気加熱】、【電気化学】、【照明】、【空気調和】の4題中、2題を選択解答
(4) 電気の基礎(80分)
① 電気及び電子理論(1題)
② 自動制御及び情報処理(1題)
③ 電気計測(1題)
電気管理科目の3課目は「電気の基礎」「電気設備及び機器」「電力応用」になります。
電気管理科目の試験では、電気数学や工場配電の力率改善に関する問題が出題されます。
また「熱管理科目よりも合格率が低い年度が多い」ことから、難易度が熱管理科目よりも高いとされています。
電気管理科目の試験内容
・電気の基礎(電気および電子理論、自動制御および情報処理、電気計測)
・電気設備及び機器(工場配電、電気機器)
・電力応用(電動力応用、他)
エネルギー管理士の試験情報
次に、エネルギー管理士の試験情報に関して解説します。試験情報としては「日程」「受験資格」「試験合格率」「受験費用」「試験方式」「受験地」です。
それぞれ国家試験ルートと管理研修ルートで、違いがあります。自分が挑みたいルートに関する情報を適切に把握し、エネルギー管理士資格取得を目指しましょう。
日程
試験日
【試験】年1回8月の第1土曜日
【研修】12月中旬
申込日
【試験】5月中旬~6月上旬
【研修】10月上旬~下旬
合格発表日
【試験】:9月中旬
【研修】:修了試験終了後
「試験日」「申込日」「合格発表日」の日程は上記の通りです。国家試験と管理研修は、それぞれ日程が異なっています。
また国家試験と管理研修の両方とも、年1回の開催のため、申し込みの際は十分に注意しましょう。
受験資格
【試験】特になし
【研修】研修修了までに実務経験3年以上必要
受験資格に関しては、国家試験を受ける人に制限はありません。誰でも受験することができます。
しかし管理研修を受験する人には「研修修了までに実務経験3年以上」が必要となります。主に社会人が対象となるため、自分に受験資格があるのか事前に確認しておきましょう。
試験合格率
受験者数:9,830人
合格者数:3,207人
合格率:32%
「一般財団法人 省エネルギーセンター」によれば、令和元年度のエネルギー管理士試験の合格率は32%となっています。
同じ国家試験である司法試験の合格率が25%であるため、難関とまではいかないレベル感です。そのため、試験対策を十分に行えば合格できる資格と言えるでしょう。
またエネルギー管理士の合格基準としては、「満点の60%以上の得点率で科目合格」となります。さらに「全4科目合格でエネルギー管理士試験合格」となるので、覚えておきましょう。
受験費用
【試験】17,000円(税別)
【研修】70,000円(科目合格者は50,000円)
受験費用は、17,000円(税別)となっています。ただし、エネルギー管理士の試験及び免状の交付に関する規則の一部を改正する省令付則第6条に該当する者は、10,000円(税別)になります。
また研修費用は70,000円(税別)です。また試験科目に合格している人も研修を受講することは可能となっており、その場合50,000円(税別)になります。
試験方式
【試験】筆記のマークシート方式
国家試験の出題方式としては、すべてマークシートになります。黒の鉛筆かシャーペンの持参を忘れずにしましょう。
受験地
【試験】北海道、宮城、首都、愛知、富山、大阪、広島、香川、福岡、沖縄【研修】宮城、東京、愛知、大阪、広島、福岡
受験地は上記の通りです。国家試験と管理研修で受験地が異なっているので、受験する際は注意して申し込みましょう。
適職診断を試してください。
適職診断はもう試しましたでしょうか?就活では、自分に適性のある仕事を選ぶことが大切です。向いていない職業に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまいます。
そんな時は「適職診断」を活用して、志望する職業と自分の相性をチェックしてみましょう。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強み・弱みを分析し、ぴったりの職業を診断できます。
強み・弱みを理解し、自分がどんな仕事に適性があるのか診断してみましょう。
エネルギー管理士の2つの勉強方法
エネルギー管理士の試験は、1年に1回しか実施されていないため、試験日までに計画的に学習する必要があります。
また合格までの勉強時間は、約90時間と言われており、1日1時間の勉強を3ヶ月行えば、合格に近づく計算になります。
ここでは、試験勉強を計画的に行う2つの方法について解説します。エネルギー管理士になるための勉強方法を理解し、試験合格を目指しましょう。
1.過去問を解く
1つ目の方法としては、過去問を解くことです。エネルギー管理士の試験は、過去問と類似した問題を出題してくる傾向にあります。3~5年に1度の頻度で同じような問題が出題されており、勉強は過去問を中心に進めると効果的です。
最初は問題を解けないことも多くなるでしょう。その場合は、過去問の解説や参考書を用いて勉強してください。解ける問題を少しずつ増やしていくことで、確実に合格に近づきます。
目安としては「10年分の過去問を2周以上」を心掛け、じっくり勉強することが大切です。過去問を解くのは1番スタンダードな方法であるため、エネルギー管理士の勉強を始める人にとってはおすすめの方法となります。
2.通信講座を利用する
過去問での勉強方法は、基本的に独学での勉強になります。そのため「分からない箇所はどうすればいいのか?」「資格の勉強に長い時間を費やしたくない」と勉強に不安を抱く受験者も少なくありません。
そういった人の場合は、通信講座を活用しましょう。通信講座では、講師の方が受講者とマンツーマンで教えてくれるため、分からない箇所をその場で解決することができます。そのため独学よりも、効率良く勉強できます。
デメリットとしては、受講料が発生する為、費用がかかってしまいます。利用する講座にもよりますが、受講料として30,000円以上はかかると算段しておいた方が良いでしょう。
「これから試験勉強を始めたい」「分厚い参考書での独学が苦手」「勉強のモチベーションが続かない」といった人には、通信講座で勉強するのがおすすめです。
エネルギー管理士について理解し就活を進めよう
電気やガス、石油のようなエネルギーの管理や使用方法の監視をおこなうエネルギー管理士は、中規模以上の施設で一定数を配置することが、法律で義務付けられています。
工場の省エネ化だけでなく、日本のエネルギーや地球環境の保全にも役立つ資格です。しかし、資格を持っていても、就活が有利になることはあまりなく、新入社員の採用条件としてエネルギー管理士の資格を掲げている企業はほとんどありません。
就活のために取得する必要はないといえますが、就職後の昇進や昇給の際には役立つことがあり、実務経験を積んでからエネルギー管理士の資格を取得する人もいます。
会社によっては資格費用を負担や資格手当の支給をおこなうこともあるので確認してみましょう。資格取得を目指す際には、紹介した試験取得の方法や問題集を参考にしてみてください。