業界研究

【航空業界とは】主な業務内容や動向、採用でのポイントを解説

毎年人気の高い航空業界

世の中には様々な業界がある中で、航空業界は毎年志望する人も多く、人気の業界の一つです。パイロットやキャリビンアテンダントなど、華やかなイメージあることから、憧れの業界とされています。

しかしながら、そのようなイメージで選考に進んでしまうと、入社前の理想と入社後の現実のギャップに苦しんだり、選考で落とされてしまう可能性もあります。

本記事では航空業界の基礎知識から内定を得るためのポイントまで解説しております。航空業界の業務内容や動向などを知ることで、業界研究や企業研究を進めることができ、自分に合っているかどうか判断することができます。航空業界の基礎知識から内定を得るためのポイントまで理解し、就職活動を優位に進めましょう。

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航空業界とは

航空業界は、航空事業を主な業務としている業界です。2011年からインバウンド観光客の増加により業績は良好でした。ここ数年で訪日外国人は急速に増え、トラベルボイスの「【図解】2019年の訪日外国人数(直近10年の推移グラフ付き)」によれば、2018年では3,000万人を越えるなど、かなりの成長を見せました。

しかし2020年に流行した新型コロナウイルス感染拡大の影響により、航空業界を含む多くのサービス業が打撃を受けました。日本を代表するANAやJALも過去最高の赤字と発表するほど、航空業界に大きな影響がありました。

一方で航空業界は人や物を運ぶ上で欠かせない業種であります。航空での輸送は「速達性」「長距離輸送」といった大きなメリットがあり、旅行需要はもちろん、精密機器や生花、生鮮食品の輸送の要となっております。航空業界は人や物の移動という点で社会に大きく貢献しており、私たちの生活を成り立たせる上で必要不可欠な分野の1つです。

航空業界の4つの職種と業務内容

航空業界の4つの職種と業務内容を表した図

次に航空業界の職種と業務内容について解説します。航空業界は「客室乗務員」「グランドスタッフ」「パイロット」「総合職」と、4つの職種と仕事内容に分かれています。
4つそれぞれが重要な役割を担っておりますので、しっかりと理解し業界研究を進めましょう。

1.客室乗務員

航空会社の仕事の中で、毎年人気のある職種として客室乗務員があげられます。キャビンアテンダントやCAとも呼ばれるこの業務は、お客様と一緒に飛行機に乗り、さまざまなサービスを提供する仕事となります。

例えば「飲食の提供」や「機内販売」「機内アナウンス」などの機内サービス業務や、「ドアの開閉操作」や「離着陸前の安全確認」「搭乗前の機内確認」などの保安業務があります。

「人と接する仕事」「華やかな仕事」のイメージが強い一方で、機内の安全確認や病人への対応など、肉体労働を基本とする業務内容になることからハードワークでもあります。また、時差による体調管理も必要になってきます。

しかし、仕事としてさまざまな場所に行けることは魅力のひとつです。国際線の場合、4日勤務2日休暇のサイクルをとる企業が多いと言われています。そのため、休日に旅行に行くことが好きな人や外国が好きな人にとっては、理想的な仕事であります。世界各国の人々と触れあえたり、さまざまな食べ物を楽しめることは大きなメリットです。

客室乗務員になるための基準として、「TOEIC600点以上」「身長160cm以上(外資系航空会社のみ)」「コンタクトレンズでの矯正視力1.0以上」などがあり、毎年20倍以上の倍率に上ります。しかし基本的にこれらの条件を満たしていれば、採用されるケースは多く、ルックスや身長に左右されないと言われています。

また例年、客室乗務員の採用は多く、2017年のANAの客室乗務員の採用数は700名とかなり採用人数は多くなる傾向にあります。そのため入社時期を4年の9月や3月に分散することで、研修時期をずらすといった取り組みがされる年もあります。

客室乗務員の業務
・飲食の提供
・機内販売
・機内アナウンス
・ドアの開閉操作
・離着陸前の安全確認
・搭乗前の機内確認

CAの企業一覧と志望動機の例文については、こちらの記事で詳しく解説しています。

2.グランドスタッフ

グランドスタッフは、空港内での仕事がメインとなります。例えば、旅客の搭乗手続きを行うや搭乗ゲートで搭乗案内をする「チェックイン業務」や「ゲート業務」、飛行機が空港に到着してから荷物の引き渡し場所で乗客の荷物のケアをする「バゲージクレーム業務」、自分が担当する便の旅客数や特別なケアを必要とする旅客を確認する「オフィス業務」などが仕事となります。

グランドスタッフの仕事の特徴として、早朝から深夜にまでおよぶシフト制の勤務形態があります。勤務は主に4日勤務して2日間休む「4勤2休」のパターンを採用している会社が多く、勤務日にも早朝から勤務する「早番」と午後からの「遅番」があるケースが多いです。

グランドスタッフの業務
・チェックイン業務
・ゲート業務
・パッケージ業務
・オフィス業務

3.パイロット

空会社の仕事といえば、パイロットを想起する人もたくさんいらっしゃるでしょう。飛行機で旅行客や貨物を運ぶ業務ですが、もちろん操縦席で運転するだけの簡単な仕事ではありません。

例えば、搭乗前には客室乗務員など各スタッフとミーティングや、気象データや燃料などを入念なチェックがあります。操縦席に入ってからも副操縦士と連携し、エンジンの確認などに余念がありません。

機長と副操縦士の違いは、「服装」「座席位置」「運行時の役割」などになります。制服に4本線が入っているほうが機長になり、3本線が副操縦士になります。またコックピットに入って左側が機長、右側が副操縦士の席になります。

さらに役割として、機長はPF(Pilot Flying)と呼ばれ、飛行機を操縦することに集中します。一方副操縦士はPM(Pilot monitoring)という主に無線のやり取りや、計器の監視、車輪の出し入れなど、操縦以外を行います。

また免許も機長と副操縦士で異なります。機長になるためには定期運送用操縦士という資格が必要であり、副操縦士は事業用操縦士という資格が必要です。大手の航空会社だと副操縦士として10年程度の経験を積んでから、定期運送用操縦士の資格を取得し、機長になるというのが一般的なキャリアステップになります。

パイロットの業務
・操縦
・気象データや燃料の確認
・コックピット内の点検
・整備状況の確認

パイロットに強い憧れを抱いている人も少なくありません。しかし飛行機の安全を守るために、ちょっとした気の緩みも許されないストレスフルなポジションでもあります。そのためパイロットになるためには、さまざまな訓練や専門的な知識が必要とされ、試験に合格しなければなりません。

パイロットになるためには2つのルートがあります。1つ目は4年制大学を卒業し、航空会社の自社養成コースで就職するケースです。この場合、大学を卒業し入社してからパイロットの養成訓練を受け、資格を取得するといった流れになります。

2つ目は独立行政法人「航空大学」に入学し資格を取得するケースもあります。この場合、在学中にいくつかの資格を取得し、その後航空会社に入学するといった流れになります。

パイロットの資格には「定期運送用操縦士」「事業用操縦士」「自家用操縦士」の3つがあり、それぞれの試験に合格しなければなりません。いずれも試験の難易度が高いと言われているため、しっかりとした勉強が必要になってきます。

自社養成パイロットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

4.総合職

総合職は空港内での企画の運営などを行う仕事です。例えば空港や客室サービスに関わる業務やさまざまなデータ入力や、事務職のようなバックオフィス系の仕事など、さまざまあります。

入社後は、空港や営業所などで経験を積み、管理部門や旅客管理部門、貨物事業部門、関連事業部門をジョブローテーションしながら、航空会社全般のビジネスモデルに携わることになります。

また航空整備士などの職種も存在し、飛行機のメンテナンスなどに欠かせない重要なポジションです。これらは飛行機の点検や整備、修理を行う仕事であり、国家資格を持っていなければできないほど高い技術を必要とします。

入社後は、航空現場で働くことになり、知識と経験を数年かけて積みます。その後は航空機の運航整備や機体整備計画、航空機やエンジンメーカーとの交渉など、専門性の高い整備部門の管理人としてキャリアステップする流れになります。

さらにJALでは2019年度の新卒採用から、「業務企画職(地上職 数理・IT系)」を募集しています。この職種では、情報通信技術や統計学を活かして、JALグループが蓄積するビッグデータを分析しながら、路線計画や販売戦略、IT企画などを担うことが期待されている職種になります。

このように大手航空会社では、「総合職」として就職することで多様な働き方ができるようになります。幹部候補として空港に関するゼネラリストを目指す働き方や、航空整備に特化したスペシャリストを目指すことも総合職では可能になります。

総合職の業務内容
・空港・客室サービスに関わる業務やさまざまなデータ入力
・経営管理
・財務、経理
・人事
・航空機の運航整備や機体整備の計画
・航空機やエンジンメーカーとの交渉

航空整備士の給料事情については、こちらの記事で詳しく解説しています。

航空業界の動向

次に航空業界の動向について解説します。航空業界の動向について理解することで、「業界全体ではどんな過去や課題があり、どのような人物を求めているのか」「今後の展望により、就職することでどのようなメリットやデメリット」などが分かります。

そのため、自分にあった企業を探すための業界研究や企業研究を進めることができます。航空業界を理解するためにも、現状の課題や今後の行方にもしっかり注目しておきましょう。

今までの変革

日本航空の倒産

日本航空は2010年1月に、会社更生法の適用を申請し経営破綻しました。その引き金となったのは2008年のリーマン・ショックでした。リーマン・ショックに耐えることのできなかった企業体質が、長年にわたって形成されてきたことが原因だと言われています。

例えば、過剰な供給座席数による大型航空機を大量に保有せざるを得なかったことです。日本では、国内線の基幹空港である羽田空港が非常に混雑しており、大量輸送によって需要に対応していかなければならない状況が続いていました。

しかし、多くの地方空港が建設されていく中で、需要の大きさも多様化し、必ずしも大型航空機が望ましい状況ではなくなりました。そのため大型航空機を保有することによる燃料費や維持費の高騰が原因となりました。

また投資での失敗も大きく、ホテルなどの関連企業の増備が、採算性の見通しが取れず、航空事業の足を引っ張る形となってしまいました。その他にも、採算性の低い地方路線への就航を、政治的な観点から行わなければならなかったことなど、破綻の要因は多くありました。これだけの多くの問題から、航空業界のトップ企業が経営破綻をした歴史があります。

LCCの参入

LCCとは「Low-Cost Carrier」の略であり、日本語で格安航空会社と呼ばれています。運送にかかるコストの削減や、一部のサービスを簡素化することにより、低価格でのサービスを実現した企業になります。これにより、大手の航空会社と異なり、破格の安さで航空券が買えることから、若年層に人気を博している航空会社になります。

近年LCCが大手の航空会社に次ぐ勢いを見ていますが、LCCが航空業界でのシェアを確立したのは2000年代に入ってからになります。

また大手にはできない安さを実現できた要因はいくつかあります。例えば、「機種を1種類に限定」や「パイロットの育成、整備にかかる費用を削減」「座席間の距離を狭くしたりする」などです。また、すでに乗務資格を取得しているパイロットや客室乗務員を中途採用することで「客室乗務員の訓練コストを削減」している企業も存在します。

格安航空券とLCCの航空券との違い | 航空券ドットネット」によれば、LCCの航空券価格は、大手航空会社の正規運賃の約30%~半額ほどに設定されています。また、シーズンやタイミング次第では、10数%程度というお買い得な価格で購入することもできると言われています。

これらにより、低価格での運行が実現しており、大手の航空会社とライバル関係にあります。航空業界を業界研究するうえでは、これらの企業の関係性についても認知しておきましょう。

現状の課題

過去最大の赤字

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ANAホールディングスは、2021年3月期通期には過去最大の最終赤字となる見通しと発表しました。

ANAホールディングスの21年3月期の連結最終損益は5000億円前後の赤字(前期は276億円の黒字)となると予想されています。赤字額は2003年以来の過去最大です。日本航空も4~6月期の連結最終損益は937億円の赤字(前年同期は129億円黒字)と予想されています。

また国内に止まらず、米デルタ航空や米ユナイテッド航空が発表した2020年7~9月期の最終赤字も数千億円規模となりました。2020年7~9月期決算を発表したデルタ航空とユナイテッド航空の最終赤字はそれぞれ53億ドル、日本円で約5559億円の赤字を計上しました。

雇用の限界と動き

上記のような赤字額を抑えるため、人件費などの固定費を削減する動きがあります。アメリカン航空とユナイテッド航空は10月から、2社合計で3万2000人超の従業員を無給の休暇扱いとする人員削減が行われました。

ANAホールディングスの片野坂真哉社長は「事業規模を縮小しても、余った人を解雇することはあり得ない」と主張しました。しかし、コロナの収束は当初の想定から遅れ、大幅な減便が続いたことから、全日空は年収ベースでの3割減や、希望退職者への退職金の割り増し支給を労組に提示することとなってしまいました。

またエアアジア・ジャパンは事業廃止に伴い大半の従業員を解雇という形をとりました。そのため航空業界では、雇用に対する限界とそれに伴った各社の動きが見られています。

今後の行方

入国制限の緩和

日本政府は2020年10月に開催された新型コロナウイルス感染症対策本部の会議を開催しました。そこでは入国制限についての様々な対策が発表されました。

①海外短期出張者・帰国時の14日間待機の免除
②72時間以内の短期滞在に限った海外からのビジネス渡航者の条件付き受け入れ
③感染拡大以降初となる9つの国と地域の入国拒否の解除やレベル引き下げ

このように入国制限の緩和がなされました。そこで日本の航空会社は、様々な施策を取っています。

例えば日本航空では「入国時にはPCR検査の実施を義務(過去14日以内に入管法に基づく入国制限対象地域に滞在歴のある人が対象」や「入国後は健康状態に異常のない方も含め、自宅などで入国の次の日から起算して14日間待機し、公共交通機関を使用しないことを義務付ける」など、緩和に伴った対策をとっています。

このように入国制限の緩和は航空業界にとって、回復の兆しであります。短期的な回復は見込めないものの、旅行者を含む航空利用者が増加に起因するため、採用活動再開など、今後の回復に向けた一歩となると言われています。

国際線の統合

新型コロナウイルス感染拡大で被った損益は、国内の航空会社全体での事業を再構築しないと、赤字の返済が成り立たないと言われています。

国内線が1社体制になると、競争の原理が働かないために必然的に運賃が高くなります。これは利用者としては、再編や統合してしまうとデメリットが大きく、航空会社が価格競争してもらうという状況がベストです。

一方で、国際線は1社体制の方がメリットは大きいとされています。現在は、ANAと日本航空の2社体制となっていますが、ライバル企業は海外の航空会社になります。統合した方が資本金が大きくなり、事業に投資できる額が増えるため、航空業の早期回復が見込めるようになります。

これらの要因により、国際線の統合が今後の航空業界の議論となると言われています。そのため国際線と国内線それぞれの採用に関して、今後変化する可能性は十分にあります。航空業界を志望する際はこれらの変化に対応しなければいけません。

世界の航空会社ランキング
1位 カタール航空
2位 シンガポール航空
3位 全日空
4位 キャセイパシフィック航空
5位 エミレーツ航空
6位 エバー航空
7位 海南航空
8位 カンタス航空
9位 ルフトハンザ航空
10位 タイ航空

航空業界の業績と待遇

航空業界の業績を表した図

業績規模 3.5兆円
平均年収 681万円
平均勤続年数 約10.0年

図では、「業績規模」「平均年収」「平均勤続年数」のカテゴリーのうち、それぞれトップの「卸売」「総合商社」「電力」の業界と航空業界を比較しています。

業界動向リサーチの「航空業界の現状・動向・ランキング・シェアを研究-業界動向サーチ」によれば、航空業界は毎年順調に業績を伸ばし続け、現在では業界規模3兆5,000億円となっています。業績の伸び率は+3.6%であり、142業界43位と高くなっております。

一方平均年収は681万円となっており、総合商社と比べると低いものの、サラリーマンの平均年収が400万円程度と言われているため、平均と比べると高めとなっています。

また平均勤続年数は10年となっております。国税庁が公表している「平成29年分 民間給与実態統計調査」によれば、全体の平均勤続年数は12.1年であるため、平均より低い勤続年数であることが分かります。

航空業界の主要企業の売上高ランキングと特徴

航空業界の売上高ランキングを表した図

航空業界を志望するのであれば、どの企業を志望するのかを決めていくために、企業ごとの特徴や強みなどを調べる必要があります。

就職する企業と自分の目指すところが違えば将来が全く違うものになりますので、企業正しく知り、就活を進めていきましょう。就活では業界研究だけではなく、企業研究も大切ですので、航空業界の主要な企業についてもしっかりと、理解を深めていきましょう。

航空業界について理解し就活に挑もう

航空業界は多くの人の憧れとなる業界であり、毎年就活生に人気のありたくさんの人が志望している業界でもあります。しかし、華やかなイメージを持っているだけで、業界についてあまり知らない人も多いです。

航空業界はLCCの参入や新型コロナウイルス感染拡大の影響によりさまざまな変化が起こっている業界の一つです。そのためしっかりと業界研究を行い、徹底的に準備をして就活を進めていきましょう。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

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