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建築系の学部生は就職先で悩みやすい
就職活動では、自身の進路について考える時間が増るでしょう。建築系を専攻している学生は「ディベロッパー」や「ゼネコン」「ハウスメーカー」など、様々
な業界で専門性を活かして働くことができます。そのため、どの業界に就職すべきか悩む人も多いでしょう。
また、建築系などの理系学部に進学した人は、大学卒業後の進路について悩む人も多いです。建築系の分野を専攻している人の中には、就職するべきか大学院へ進学するべきかどうか、迷ってしまう人もいるのではないのでしょうか。
周りの学生が本格的に企業説明会に参加しだしたり、企業研究を始めていたりするのを見ると、余計に焦りが募ってしまうのも仕方ありません。
本記事では、「建築系の学生の就職先」や、「学部卒で就職するメリットデメリット」「進学するメリットデメリット」を解説しています。建築系の学生の就職状況を知り、自分に合った仕事に就けるよう、就活を進めましょう。
建築系の就職先
建築系といっても幅広く、就職先の選択肢は多岐にわたります。企業はもちろん、職業、職種の選択肢も広いため、まずはどのような仕事があるのかを知ることが大切です。仕事への理解は就職を成功させるための基本であり、これを怠ると納得して就職ができません。
就職の選考で不合格になりやすいことはもちろん、仮に就職できても仕事を始めてから不満を抱えてしまうこともあります。ミスマッチを防ぐためにも、業界や企業を知り、自分に合った仕事を見つけましょう。
1.ディベロッパー
ディベロッパーを志望する人の志望動機
・街づくりがしたい
・自分のアイデアを形にしたい
ディベロッパーとはディベロップメント(development)から来ており、開発者という意味があります。ディベロッパーは不動産を開発することで街をより良くし、「どうすれば街を発展させることができるか」「何が必要なのか」を考える仕事になります。そのため、ディベロッパーは「不動産業界の中の1つの業態」として考えられることが多いです。
不動産業界では「開発」「販売」「管理」「賃貸」など様々な事業がありますが、ディベロッパーは「開発」をメイン事業としています。ディベロッパーの中でも、マンションやオフィスビル、商業施設、ホテル、リゾート、住宅などさまざまな種類の開発を行う「総合ディベロッパー」と、ある事業に特化した開発を行う「専門ディベロッパー」に分けられます。
総合ディベロッパーも専門ディベロッパーも土地の取得から始まり、施工をし建物を完成させるまでが仕事です。その過程の中で建築業者や交通関係者、インフラ関係者などの多くの関係者を巻き込みます。開発する土地なり物件なりを調査し、プランを立て、土地を購入し、それに伴う行政の許認可を取得します。その後、周辺住民への説明や交渉などの近隣対策、実際に建物を建設する建築会社への発注、管理も行います。
ディベロッパーの有名企業
・財閥系:三井不動産、三菱地所、住友不動産
・鉄道系:東急不動産、京王不動産、小田急不動産
・金融系:野村不動産、ヒューリック、東京建物、大京
・メーカー系:トヨタホーム、旭化成ホームズ
・独立系:森ビル、イオンモール
「ディベロッパー」の業務内容については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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2.ゼネコン
ゼネコンを志望する人の志望動機
・街づくりがしたい
・地図に残る仕事がしたい
ゼネコンとは建設業界の中の一つの業態を指し、人々が生活する上で、必要不可欠なモノを作っている業界です。例えば道路やダム、トンネル、学校、オフィス、マンションなどが該当します。いわゆるインフラと呼ばれる公共設備や、人々が暮らすために必要な建物まで、様々な建設を行うことで支える産業です。
「ゼネコン(ゼネラル・コントラクター)」は、建設業界の中でも代表的な存在であり、建築一式工事、または土木一式工事を請け負う総合建設業者を指す言葉です。ゼネコンは建設業界の業種ですが、実際に工事を行うことはあまりありません。不動産会社から元請け業者として、次に説明するサブコン等に工事を委託することが仕事になります。
ゼネコンの中でも「売上1兆円」を超える企業はスーパーゼネコンと呼ばれています。大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店という企業が挙げられます。
また「サブコン(サブ・コントラクター)」という業態も存在し、ゼネコンの下請として土木・建築工事の一部を請負う企業を指す言葉です。例えば、内装専門の工事や、電気専門の工事など、それぞれの領域に特化した強みをもつ企業が多くなっています。主なサブコンの企業としては、日揮、千代田化工建設、きんでん、関電工、九電工、東洋エンジニアリングなどが挙げられます。
そして「マリコン(マリン・コントラクター)」という業態も存在し、ゼネコンの中でも、海洋土木を得意とする業者を指す言葉です。海洋土木とは、港湾や堤防、橋梁などの建設や海洋調査などにかかわる土木工事の総称です。これらの建設工事の多くが、官公庁や大企業の発注によるもので、専門性が高く大規模な工事になることが特徴となっております。主なマリコンは、五洋建設、東亜建設工業、東洋建設などが該当します。
ゼネコンの有名企業
・大林組
・鹿島建設
・大成建設
・清水建設
・竹中工務店
サブコンの有名企業
・日揮
・千代田化工建設
・きんでん
・関電工
・九電工
・東洋エンジニアリング
マリコンの有名企業
・五洋建設
・東亜建設工業
・東洋建設
「建設業界」について詳しく説明している記事もあるので、合わせて確認してください。
3.ハウスメーカー
ハウスメーカーを志望する人の志望動機
・高齢者向けの住宅を作りたい
・住宅が好き
ハウスメーカーは、住宅を作り販売することが主な仕事です。扱う住宅は、戸建てからマンションまで幅は広くあります。例えばファミリー向けの住宅に強みのある企業もあれば、単身者用の住宅に強みのある企業もあります。
ハウスメーカーが住宅を設計し、建設会社が施工や工事を行うことが多いです。そのため家を提供することがハウスメーカーの役割であり、自社で設計図を作成して、建売りで物件を販売することが仕事になります。
つまり、ただ家を建てるだけではなく、建てた家の販売の仕事も行います。メーカーとしてだけではなく、販売業者としての側面も持ち合わせていると言えるでしょう。ハウスメーカーでは住宅の開発から建築、販売までの業務を担っています。
ハウスメーカーの有名企業
・積水ハウス
・住友林業
・三井ホーム
住宅業界の志望動機の書き方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
学部卒で就職する場合のメリットとデメリット
建築系の学部や学科に通っている場合、卒業を控えたときに考えなければならないのが就職か進学かです。経済や文学など、専門職ではない一般的な学部の場合、卒業とともに就職という選択肢を選ぶ学生が多いですが、建築系の場合はそうではありません。
ここでは「学部卒で就職する場合のメリット・デメリット」を紹介します。「学部卒で就職するメリットとデメリット」を知ることで、より自分に合ったキャリアプランを考えることができ、自分のやりたい仕事を選択できるようになるでしょう。
メリット:早期からキャリアを積める
建築系の学部や学科を卒業し就職した場合、早期からキャリアを積めるのが大きな特徴でありメリットです。建築系の仕事では、数年かけて実績を積むことが大切であり、実績に応じてキャリアが決定することがほとんどです。いかに学校での成績がよくても、就職後は実績ゼロからのスタートになります。
大学院に進学した場合、最短でも2年、人によってはさらに長期間大学に通わなければなりません。大学院での勉強はさらに専門的であり、知識やスキルは高まりますが実績を積めないため、キャリア形成を考えれば出遅れてしまいがちです。
また、初任給などは院卒の方が高いです。しかし、先に学部卒で就職することで、早いうちから仕事のスキルを積むことができるので、年収アップを目指せるのは大きなメリットです。
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デメリット:修士卒より大学推薦を受けづらい
建築系をはじめとした就活では、大学推薦という形態があります。就職活動では、ESやグループディスカッション、面接を通じて内定を頂き、採用される「自由応募」と呼ばれる選考が一般的です。しかし、大学や学科、研究室とつながりがある企業から求人があり、その求人に推薦状を添えて応募する「推薦応募」もしくは「大学推薦」という形態もあります。
大学推薦は誰でも受けられるというわけではなく、一定レベル以上の専門性やスキルが求められ、GPAなどによる学内選考が行われる場合が多いです。
専門性やスキルの面において大学院に進学している学生の方が、学部生よりもその分野をより深く学んでいます。そのため学部生では、知識やスキルが限定的であるため、学校推薦でもらえる枠が少ないというデメリットがあります。
大学院へ進学する場合
上記のように建築系の学生が、学部卒で就職する場合、「早期からキャリアを積める」といったメリットと「選択肢が狭い」といったデメリットが存在します。
それでは建築系の学生が、大学院へ進学する場合にもメリットとデメリットがあるのでしょうか。ここでは「修士卒で就職する場合のメリット・デメリット」を紹介します。
「修士卒で就職するメリットとデメリット」を知ることで、より自分に合ったキャリアプランを考えることができ、自分のやりたい仕事を選択できるようになるでしょう。
メリット:選択肢が広がる
就職先の選択肢が広がるのが大きなメリットです。大学院ではより専門的なことが学べるため、専門職として就職する人が多い建築系では就職に有利になることがあります。
修士卒の方が内定率が上がるだけではなく、より難しい職業や職種にチャレンジでき、望んだ仕事に就きやすいでしょう。
建築系は募集条件が厳しく設定されている企業や職業が多く、大卒ではそもそもチャレンジできないものもあります。専門職のため特定の課程を修了しなければならないだけではなく、学歴によっても就職の選択肢に差が出ることは理解しておきましょう。
デメリット:お金がかかる
大学院に進学した場合、就職先の選択肢を広げ、「自分に合った仕事」や「修士卒でしか入れない仕事」に就ける可能性が高まります。
しかし、学費がにかかるのがデメリットであり、経済的なコストは膨大であることは理解しておきましょう。院に通うとなれば最低でも2年間分の学費が必要であり、数百万円を超すことも少なくありません。
就職した場合、当然学費はかからず働いた分給料がもらえるため、仕事の実績だけではなく経済的な差も生まれます。経済面を考えて就職と進学を考えることも大切です。
希望の就職先によっては進学がおすすめ
より専門的な分野に就職をしたいと考えている人は、進学して知識を深めることをおすすめします。
業種や企業によっては、入社時から専門的な知識を身についていることを求められるケースもあります。そのような場合は、進学の道を選び、専門分野を学んでから就職をした方が現実的といえます。
また、企業によっては「●●を専攻していること」と求人情報に掲載していないこともあります。
「自分の専攻分野でも、応募していいのかわからない」と、応募資格が不透明な求人情報は多く存在します。実際に入社してから大学院レベルの勉強をすることは現実的には厳しいので、次に紹介する職種への就業を考えている人は、進学も1つの手段としてじっくり考えてみてください。
1.設計事務所
建築系で住宅に関する仕事は、「ハウスメーカー」と「設計事務所」の2つに分けられます。設計事務所は事務所ごとに強みや色が違い、オリジナリティにあふれているのが魅力です。
このうち設計事務所への就職を目指す場合、院卒以上の経歴が求められることが多いです。いろんな職種があるなかで、設計の特に「意匠設計」に携わりたいなら、院卒の方が有利になるでしょう。
「意匠設計」とは、建築の間取りやデザインにおける設計のことです。意匠設計をはじめとした設計を行う仕事は、ほとんどの場合、より専門的な知識を必要とする専門職に該当します。そのため学部卒での就職は難しく、修士卒でなければ募集条件を満たさない場合が多いです。
ハウスメーカーの場合、メーカーが決めた通りの設計、建築をしなければいけないケースが多いです。一方で、設計事務所の裁量が大きく、設計事務所の設計により建築が進められます。
もちろん、事務所ごとの細かい決まりなどはあるでしょうが、自由度が高くやりたいことを形にしやすいのは設計事務所です。設計事務所は住宅の分野を担うことが多いですが、他にも幅広い分野に精通している事務所もあり、領域の選択肢が幅広いのも魅力のひとつです。
2.建築・設備設計のゼネコン
建築系の就職先では、ゼネコンの人気が高いです。一方で、建築・設備設計系のゼネコンに就職する場合は、院卒以上の学歴が求められることが多いです。
営業や事務職などでの就職であれば大卒でも問題ありません。しかし、上記の「設計事務所」と同じく、専門職として就職するため修士が必要であることを理解しておきましょう。
建築・設備設計系のゼネコンは事業規模が大きく、大手企業も多いのが特徴です。大手のため転職での就職が難しく、もっともチャンスがあるのは新卒といえるでしょう。そのため、建築・設備設計のゼネコンに就職したい場合は、まずは大学院へ進学しておきましょう。
ゼネコンは待遇がいい場合も多く安定性の高さが魅力でもあるため、就職の条件は厳しいものの人気は非常に高いです。
業界動向リサーチの「建設業界の現状・動向・ランキング・シェアを研究-業界動向サーチ」によれば、平均年収は744万円となっています。サラリーマンの平均年収が400万円程度と言われているため、平均と比べると高めとなっています。
建築系の就職に必要な資格
建築系に就職するために、資格は必ずしも必要ではありません。しかし、資格があれば共通した水準で能力を測れるため、スキルもある程度は判断できます。
特定の学部、学科で学んだことも武器にはなりますが、学んだ内容には個人差があるため、学歴だけではスキルの程度を測ることはできません。
そこで建築系の学生は、資格を取得していればより有利になる可能性があるでしょう。建築系で求められる資格は共通しているため、どのような資格が必要か取得の条件も併せて知っておきましょう。
一級建築士は就職後に求められる
建築系で有名な資格として「一級建築士」があげられますが、これは実務経験が必要になるため、基本的に就職時には資格を取得することができません。
実務経験は就職して働いた場合に認められるため、どれだけ高度な勉強をしていても在学中に取得することはできません。
もちろん、実務経験2年はあくまで資格にチャレンジする条件であり、試験に合格してようやく資格は取得できます。資格試験にはチャレンジできなくても、それまでに試験の勉強はできるため、応募資格を得るまでにしっかり勉強して条件を満たせば素早く取得することが大切です。
一方で「二級建築士」であれば、「建築学部・学科を卒業していること」が受験資格であるため、実務経験を必要としません。そのため、就職前に取得しておくことで、入社後のキャリアアップにつながるでしょう。
また「宅地建物取引士」の資格も、在学中に取得できるためおすすめです。建築会社やハウスメーカーでは、依頼された建物を建築して依頼主に引き渡すだけでなく、自社で建築した建物を自ら販売することがあります。
そのため物件を販売するためには、宅建の免許が必要になるため、入社後の活躍の場が広がるでしょう。
院卒なら卒業後すぐ取得できる
一級建築士の資格を取得するには、就職して2年実務経験を積まなければなりませんが、院卒の場合は卒業後すぐに取得が可能です。院の建築課程を修了した場合、2年分の実務経験を積んだとみなされるため、就職してさらに2年待つ必要はありません。
建築系で院卒の就職が有利になりやすいのはこの点にあり、卒業後すぐに一級建築士を取得でき、かつ即戦力として期待しやすいからです。ただし、建築課程の修了によって受験資格を満たしたことになるため、在学中に取得はできません。
建築関係の就職は志望先によって進学がおすすめ
ここでは建築系の就職について解説をしました。志望する職種によっては、進学した方が有利となる場合もあります。
一方で、大学院に進むとなると、多額の費用がかかります。自分で費用を工面しなければならない人は、奨学金を申し込む必要もありますし、アルバイトなどで稼がなくてはなりません。
このようなメリットとデメリットを把握したうえで、建築系への就職を考えている人や進学するべきか悩んでいる人は、今回ご紹介したポイントを意識して、もう一度自分の進路について再考してみてください。
就業して働きながらキャリアを積んでいくか、進学してより専門な知識を身につけるべきか、どちらの道を選んでも後悔のないように、しっかりと自問自答してみましょう。