業界研究

【製紙業界研究ガイド】就活に役立つ情報を一挙大公開!

製紙業界とは

製紙業界は、広義で紙の製造をする業種です。デジタル、ペーパーレスの時代にあって「紙」の需要は2000年をピークに緩やかに下降しています。そのため製紙業界は、用紙を製造するだけではない分野に手を広げ、事業を拡大しているのです。

パルプを新しい素材として使えるように開発・研究する事業部を設置したり、森林事業を始め環境保護対策に力を入れたりと、活動も多岐に渡ってきています。そのため、業界への就職を考えるのであれば、現在の製紙業界の動向と、今後のことに目を向ける必要があるのです。

製紙業界

製紙業界は「紙・パルプ産業」とも言われています。紙の原料であるパルプを研究し、近年ではカーボン、ファイバーに続く素材として、セルロースファイバーと呼ばれる素材を開発し、そしてそれを各企業で商品として役立てているのです。

紙と言えばコピー紙のようないわゆる「用紙」が浮かびますが、新聞用紙、ダンボール、そして身近な生活用紙であるティッシュペーパーやトイレットペーパーの生産、開発も製紙業界が行っています。あらゆるパッケージに使われている厚紙、板紙、そしてそれらのデザイン提案を行っている会社もあります。

このように、事業の幅は広く、研究者として活躍することもあれば職人として製作に携わることもり、古きにとらわれずに、新しい可能性を見つけていくことができる業界です。

製紙業界の業績推移について

  • 業界規模 4兆653億円
  • 平均年収 561万円
  • 平均継続年数 16.7年

製紙業界は、用紙の産業としては頭打ちと言われています。しかし、ペーパーレスの昨今でもあらゆるもののパッケージや、ティッシュやトイレットペーパーといった生活用紙、新聞、菓子などのパッケージといった用紙のニーズは変わらずあります。

また、今後高齢化にあたり紙おむつ事業面で拡大を狙う会社や、インターネット通販の拡大にともない、ダンボール事業部が好調な会社もあります。

平均年収は、会社の業務形態にもよります。24時間用紙を作り続ける三交代シフトのある会社であれば夜勤手当もつくために、平均を超える手取りの人もいるでしょう。大手では福利厚生を充実させ、社員によりよい環境を整えて仕事に集中してもらおうという動きが見えます。

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製紙業界の主要トピック

製紙業界でのニュースでは、製品・素材の開発、売れ行きトレンドの他にも企業買収、合併といったM&Aの情報が飛び込んでくることもあります。大手会社が海外の企業を買収することもあれば、国内の大手企業同士が合併をし、より大きな企業となって業界再編を狙うというニュースもあります。

研究・開発部門では新素材の使い道などについて発表されることもあり、これらのことを業界知識として面接で聞かれる可能性もあります。製紙業界を目指すのであれば、身近な日常の生活用紙に気を配り、テレビCMなどで新製品情報を仕入れるところから始めるのも良いでしょう。

特許資産規模ランキングトップ3は東レ・東洋紡・大王製紙

特許分析会社の株式会社パテント・リザルトが2017年10月31日、「繊維・紙・パルプ業界 特許資産規模ランキング」をまとめ、ランキングデータの販売を開始しました。

これは同社の独自の調査であり、2016年4月1日から、2017年3月末までに登録された特許を対象としています。特許の数だけではなく、注目度をスコア化し、企業の総合得点をつけたものをランキング化して、その結果、1位東レ、2位東洋紡、3位大王製紙となっています。

このランキングは、製紙業だけではなく繊維、紙、パルプ業界でのランキングです。東レは、新規技術開発が海外でも広く認められ、特許を多く出願していたためにスコアが高く評価されました。3位に入った大王製紙の特許は、「吸収性物品」「トイレットロール包装体」に関する技術などがあります。

吸収性物品とは、平たく言えばパンツタイプの使い捨ておむつに使用されている、水分などを吸収する素材です。そして、吸収物質だけではなくフィット性を重視し弾性フィルムの開発も行っています。

このように、高齢化社会に向けてや新生児、乳児・幼児向けに、より快適な紙おむつの研究、開発も行われています。

 日本製紙:石炭・木質バイオマス混焼発電石巻で試運転

日本製紙が三菱商事との共同事業として、石巻にある工場で石炭・木質のバイオマス混焼発電の試運転を始めました。この工場は、宮城県石巻市にあり、同社の誇る、東京ドーム23個分の広さを持つ工場に隣接しています。

従来の石炭火力発電はCO2の排出量が問題になっていましたが、木質バイオマスを混ぜることによりこの排出量を大幅に下げることができます。宮城県内を中心とした、東北や地方の未利用材・北米やアジアから輸入した木質ペレットを活用し、コストと環境に配慮した発電方法となっています。これにより、自社工場の稼働にかかる電力をまかなうことができます。

また、石炭・木質バイオマス混焼発電は現在、新しい発電方法として注目を浴びています。同社の他、新日本製鐵株式会社、常陸共同火力株式会社、北海道電力などがバイオマス発電を利用、研究しています。四国電力と住友商事の共同研究開発も進められています。今後の課題としては、木材流通の構造の変化や、既存の木材用途との競合が挙げられます。

大王製紙:日清紡に成長投資

家庭紙国内トップの大王製紙が、日清紡HDの紙製品部門を正式に買収した、と報じています。大王製紙は、製紙業界全体では4位ですが、家庭紙のシェアでは国内1位です。家庭紙とは、ティッシュやトイレットペーパー、おむつなど家庭での生活に関係する紙用品のことです。この分野で大王製紙はエリエールのブランドを掲げています。

日清紡の紙製品事業部は、売上高325億円で家庭紙国内シェア4位です。コットンフィールのブランドで知られています。この買収により大王製紙は、家庭紙業界においてシェアをより拡大することになりました。

製紙業界は、全体的に業績が頭打ちの状態であると言えます。インターネット、電子化、ペーパーレス時代の流れにおいて、印刷用紙の需要は減少。各社とも生き残りをかけて、各種新素材の開発や、その素材を使った新商品の開発に全力をあげています。大王製紙が日清紡の紙製品部門を買収したのも、日清紡の誠意研究ノウハウを目的としたと語る声もありました。

大王製紙はこの買収を「好調なダンボール事業、家庭紙部門の成長のための投資」と説明しています。また、大王製紙は同時期に商業印刷の三浦印刷もTOBで買収しており、製紙事業に加え印刷事業の拡大も強化しているのです。

このように製紙業界は、各部門の売り上げや研究能力を上げるために、その道の各社を買収し協力体制を取り始めています。今後、どの会社がどの部門に目をつけ、事業を拡大していくのかは注目していく必要があるでしょう。

印刷業界については、こちらの記事で詳しく解説しています。

製紙業界の売上高ランキングTOP10

ここでは、業界動向リサーチを参考に製紙業界の売上高ランキングを紹介します。製紙業界を希望する人は、ぜひ売上高についても押さえておきましょう。

      製紙業界売上高ランキングTOP10

  1. 王子HD 1兆4,335億円
  2. 日本製紙 1兆0,070億円
  3. レンゴー 5,325億円
  4. 大王製紙                 4,740億円
  5. 北越紀州製紙               2,468億円
  6. 三菱製紙                     2,163億円
  7. リンテック                    2,105億円
  8. トーモク                     1,513億円
  9. 中越パルプ工業                   999億円
  10. ザ・パック                     880億円

主要企業5選紹介

製紙業界は、製紙という一つのジャンルではありますが、内部では「印刷用紙」「板紙・ダンボール」「生活用紙」などに生産部門が分けられます。グループとしての総合力が高い企業、一事業において圧倒的なシェアを誇る企業などさまざまです。

それらを一括しての売上高・企業規模的に主要な企業をご紹介します。研究部門に強い会社、生産性の高い会社など、企業傾向をよく見極めて就職活動に活かすようにしましょう。

王子ホールディングス株式会社

  • 企業名 王子ホールディングス株式会社
  • 代表取締役社長(グループCEO) 矢嶋 進
  • 従業員数 2,281名(グループ連結33,605名)
  • 設立年月日 1873年(明治6年)2月12日(財閥解体後の設立1949年/昭和24年8月1日)

王子ホールディングス株式会社は、製紙業界国内最大手、世界でも第6位の会社です。製紙業としてダンボール・ティッシュ・紙おむつなどを製造しています。他にもエネルギー・資源環境ビジネス、特殊素材を開発する新素材ビジネスも取り扱っており、売上高や研究事業としても業界をリードする会社です。

パルプを独自の技術でナノ化したセルロースナノファイバー(CNF)と呼ばれる素材を3つの形態でさまざまな用途に使えるようにするなと、新しい素材の開発手として高い技術研究力を誇っています。

海外売上高が25%を超え、海外事業拠点も積極的に増やしており、業界最大手の座に甘んじることなく、斬新な発想で「チャレンジングなモノづくり」を目指しています。

大手のグループ会社らしく、研究、加工技術、機械、電気など、社員の働き方は幅広いです。エンジニア系の製造現場では、さまざまな業務をローテーションで経験しながら技術を身につけ、プロフェッショナルへと成長できるような教育がされています。

日本製紙株式会社

  • 企業名 日本製紙株式会社
  • 代表取締役社長 芳賀 義雄
  • 従業員数 4,999名(グループ連結 13,057名)
  • 設立年月日 1949年(昭和24年)8月1日

日本製紙株式会社は、クリネックス・クレシア・スコッティのブランドで有名な製紙業会社です。三井・芙蓉グループに属しています。製紙業の他、SNFの研究開発、セルロースを活用した新素材の生産、あらゆる紙製包装容器・パッケージも取り扱っています。

SNFをシート化し、超強力消臭シートとして紙おむつ産業に役立てているなど、製紙業に終わらない研究開発と、それをそのまま商品に活かす技術力を誇ります。近年では、インターネット通販の需要拡大に伴うダンボールのニーズに応え、ダンボール研究室を設置しました。

このように、市場の需要や動向に敏感であり、素早い動きが取れる会社です。石巻にある生産工場は東京ドーム23個分、世界最大級のマシンを設置し、敷地内には海外から原料を運んでくる船が直接入港できるように、専用の港があります。洋紙生産量は世界トップクラスです。

製紙事業に使用する電力を自社で生み出してきたように、未来を自分の手で拓く人を求めています。入社2~3年目で責任ある大きな仕事を任されることもあり、海外のグループ企業で経験を積めるように、語学支援もあります。

レンゴー株式会社

  • 企業名 レンゴー株式会社
  • 代表取締役社長 大坪 清
  • 従業員数 3,700名(グループ連結 16,038名)
  • 設立年月日 1920年(大正9年)5月2日 創業1909年(明治42年4月12日)

レンゴー株式会社は、ダンボール・板紙に代表される包装資源で、業界最大手の製紙業会社です。いわゆる一般的なダンボールだけではなく、耐水・防炎・重量物用などの機能を付けたものや化粧箱ダンボールまで、さまざまなものを研究、開発しています。

また、包装紙に関してはフィルム・セロファンなどの軟包装事業、化学品を入れる丈夫なポリエチレン袋、クラフト紙袋などの重包装、ギフトパッケージやPOP広告というように事業は幅広いです。流行を先取り、常に新しいことに目を向けている会社です。パッケージではユニバーサルデザインを提案し、多くの人が快適に包装を使えるようにと尽力をしています。

事務・営業の他、デザインチームでの採用もあり、どのようなデザインが売れるのかマーケティングし、各企業に提案する仕事に携わることが魅力です。福利厚生も充実しており、寮・社宅・各種祝い金などで、社員がじっくりと働くことができる環境をバックアップしています。

また、女性活躍推進法に基づく基準適合会社として、厚生労働大臣より「えるぼし」企業に認定されています。

大王製紙株式会社

  • 企業名 大王製紙株式会社
  • 代表取締役社長 佐光 正義
  • 従業員数 2,533名(グループ連結 9,549名)
  • 設立年月日 1943年(昭和18年)5月5日

大王製紙株式会社は、新聞用紙・包装用紙などの他、板紙・ダンボール事業でも広いシェアを持つ会社です。エリエールのブランドで知られ、ティッシュ、トイレットペーパーなどの衛生用紙は国内シェア約15%で首位に立っています。

古紙回収、リサイクルにも積極的で、新聞用紙は、業界初の古紙配合率100%となりました。新聞用紙の他、ダンボールでも業界平均を上回る古紙配合率97%で環境対策にも気を配っており、南米チリに59,000haの植林地を持つなど環境資源運動を推進しています。

そのため植林事業部があり、毎年植林する区画と収穫する区画を決め、計画的に植林を行っているのです。国内各箇所に営業員を配置し、自分たちで作ったものは自分たちで売るをモットーに、自ら作り出した商品をそのまま顧客に届けることで、ニーズを直接伺えるスタンスを取っています。

顧客と生産の場がそのまま繋がっている現場の強みを活かすため、マーケティングに力を入れています。教育制度も、海外赴任者語学教育、次世代リーダー教育など多岐にわたるでしょう。

北越紀州製紙株式会社

  • 企業名 北越紀州製紙株式会社
  • 代表取締役社長 岸本 晢夫
  • 従業員数 1,544名(グループ連結 4,769名)
  • 設立年月日 1907年(明治40年)4月27日

北越紀州製紙株式会社は、いわゆる「用紙」事業に特化した製紙会社です。高品質の印刷用紙、OA用紙、そして「紀州の色上質」として知られる色上質紙ではトップのシェアを誇ります。

また、ケントカラーラシャなどの特殊紙でも顧客のニーズに応えています。小説文庫本にもよく使用される淡クリームキンマリ、書籍用紙など、デジタル社会においても本が必要とされる社会です。紙の新たなる可能性を広げるために、日々高品質な紙作りを目指し「心を込めた紙づくり」で社会貢献を追求しており、製紙業界の中でも生産効率が高いことで知られています。

現在は国内での事業が中心ですが、今後は海外への供給に目を向けており、創造力にあふれる人材を求めています。入社後はOJT、OFF-JT(Off The Job Training=通常の仕事を一時的に離れて行う研修)、三交代勤務実習などがあり、高品質な用紙を生産するために必要な知識を身につける必要があり、入社後一年後には研究発表会を行っています。

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製紙業界研究のおすすめ書籍紹介

製紙業界への理解を深めるためには、業界にまつわる用紙に関しての本だけではなく、化学繊維や家庭での身近な用紙など、さまざまな書籍に目を通していくと今後の業界について見えてくることが多いです。

製紙業界そのものが、紙を作る事だけではなく、多方面に事業を展開していることからも、何事も、関係無さそうだとは思わずに手に取ってみましょう。

紙つなげ!彼らが本の紙を造っている

『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』という本は、日本製紙・石巻工場の再生について書いた本です。2011年3月の東日本大震災の津波により、宮城県石巻市にある日本製紙石巻工場は津波に呑み込まれました。

しかし絶望の中、工場長は「半年でこの工場を復興する」と宣言しました。食料の調達もできない、電気やガスや水道も復旧していないそんな中、作業は困難であり、しかし従業員たちは「日本の物づくり」のために尽力をつくすのです。

あえてドラマチックに書かれているのではなく、事実が淡々と記されていることによって逆に状況がありありと伝わってきます。美談ではなく、リアルな人間の思いが描かれています。製紙業界、事業への理解を深めるためだけではなく、リーダーとしての在り方や、日本の職人・企業人の熱い思いに触れることができる一冊です。

紙の科学(B&Tブックスーおもしろサイエンス)

『紙の科学―B&Tブックスおもしろサイエンス』という本は、紙について知りたい初心者向けの本です。子供向けの本ですが、それだけに分かりやすく、基本的なことから学ぶことができます。

紙とはどのようなものか、という歴史から、紙が世界中で広まった歴史、材料であるパルプについてから、ダンボールや紙コップといった身近な用紙がどのように生まれたのか、などが易しく書かれています。

業界的に必要な生活用紙であるティッシュやトイレットペーパーについての解説もあり、これからの紙業界、そして紙はどうなっていくのかという所にも触れているところもおすすめです。

解説だけではなくちょっとした知識をつけるようなコラムも載っており、子供向けの本だとあなどらずに一冊読み切れば、紙に対しての基礎知識がつく本になっています。

業界研究のやり方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

製紙業界を深く知って就活を有利に進めよう!

製紙業界は、歴史はあれども常に新しいことにチャレンジを続けている業界です。紙という媒体にこだわることなく、化学繊維、素材などを研究開発し、商品に活かしています。

また、エネルギーの分野にも積極的に進出しており、自然保護や環境に対しても配慮をしながら業務として拡大しています。さまざまな分野に目を向けて、製紙業界への理解を深めて就職活動に役立てましょう。

監修者プロフィール

ソーシャルリクルーティングのプロフィール画像
吉川 智也(よしかわ・ともや)
1988年北海道生まれ。大学卒業後、2010年に株式会社マイナビに入社、2011年に新人賞金賞を受賞。IT・小売・外食などサービス業界の企業を中心に、300社以上の採用活動を支援してきた経験をもとに、各大学のエントリーシート・履歴書などの就活講座の講師も務め、年間3,000名以上に対して講演を実施。
現在はポート株式会社で、キャリアアドバイザーグループの責任者として、年間約5,000名の学生の就活相談に乗り、さまざまな企業への内定に導いている。

多くの学生と企業をマッチングしてきた経験を活かし、『就活対策サイト「キャリアパーク!」が教える 「最高の会社」の見つけ方』(高橋書店)を出版。最高の会社を見極めるための基準や失敗しない企業選びの方法を紹介している。

全国民営職業紹介事業協会 職業紹介責任者(001-190515132-01459)

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