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造船業界とは
造船業界は就活生にとってあまり馴染みのない業界かもしれません。しかし業界規模としては国内で大きな規模を誇っている産業の一つです。造船業界と関係する業界として海運などが挙げられますが、海運業界は船がないことには事業を展開することができません。
このように船は海運業界にとってなくてはならないものであり、造船業界の必要性は非常に高いです。また造船業界は認知度こそ低いですが、さまざまな魅力がある業界です。そのため業界の動向などから造船業界についての理解を深め、就活を優位に進めましょう。
造船業界
現在造船業界は横ばい、あるいは若干の成長傾向で推移しています。造船業界は2007年頃までは好調に推移していましたが、2008年から2009年頃にかけての世界同時不況のあおりを受けて、業績は一気に落ち込みました。不況に伴う燃料価格の増加によっても需要は減少し、業界規模は伸び悩みを見せています。
2013年頃からようやく業績も好調に推移し、業界規模も拡大傾向に戻りました。円安の追い風を受け、現在に至るまで堅調に業績を回復させています。造船業界では中国、韓国、日本が世界の9割を超えるシェアを占めており、日本は世界でも3番目のシェアを誇っています。業績は好調ではありますが、先行きは不透明であり、今後の展開がどうなるかは全く分かっていません。
造船業界の業績
業界規模 9兆2,503億円
平均年収 674万円
平均勤続年数 15年
図形では、「業績規模」「平均年収」「平均勤続年数」のカテゴリーのうち、それぞれトップの「卸売」「総合商社」「電力」の業界と造船業界を比較しております。
業界動向リサーチの「造船重機業界の動向・ランキング・シェア等を研究-業界動向サーチ」によれば、造船業界の業界規模は9兆2,503億円であり、国内でも大規模な産業です。現在も業績は堅調に推移している企業も多く、業界規模は若干拡大傾向、あるいはほぼ横ばいですが、先行きは不透明なままです。業界としての伸び率は高いので、成長力を秘めた業界であると言われています。
平均年収は674万円であり、他業界と比べても若干高い水準です。企業によって多少のばらつきはあるものの、それほど大きな差ではありません。基本的には平均程度の年収を獲得している人が多いです。
平均継続年数は15年となっております。国税庁が公表している「平成29年分 民間給与実態統計調査」によれば、全体の平均勤続年数は12.1年であるため、平均より長い勤続年数であることが分かります。これも企業によっての差は見られず、基本的に長く働いている人が多い業界であります。長く続けている人は多く、働きやすい環境の企業が多いでしょう。
造船業界の4つの職種
造船業界の職種は設計、製造管理、営業、資材調達が挙げられます。
1.設計
設計では船舶の設計、開発を行います。船舶の図面を引く仕事であり、造船業界では最も重要な職種です。製造管理は完成した設計図をもとに、船舶を作っていく仕事です。
設計での技術により、船のクオリティや安全性等が変動してしまうため、高度な知識や協調性が必要になる職種であります。そのため慎重な性格やチームワークを大切にできる人は向いている職種と言われています。
自己PRでチームワークを伝える方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
2.製造管理
製造過程の管理や品質管理などを行います。例えば船を作るための鋼材の加工や組み立て、塗装、試運転など多くの工程が存在します。工程が多い分、たくさんの作業員が製造管理に関わります。
場合によっては作業員の管理などを行い、リーダーとしての役割を果たすこともあります。そのため、各工程のチームをまとめることができるようなリーダーシップを兼ね備えた人に向いている職種であると言われています。
リーダーシップを就活でアピールする方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
3.営業
営業は完成した船舶を顧客に対して売り込んでいく職種です。国内だけではなく、国外にも需要が高く、国内外で活躍している職種でもあります。
船は一艘で100億円を越えると言われています。そのため、営業がもたらす売り上げが企業の存続を左右するほどの影響力があります。顧客から受注を得るために競合他社の製品も含めた業界理解や、交渉力などが必要になってきます。
営業の職種一覧については、こちらの記事で詳しく解説しています。
4.資材調達
資材調達は船舶の製造に必要な資材を仕入れる仕事です。良い資材を好条件で仕入れることが大切であり、交渉力や目利きの力が必要な職種です。
資材には鋼材や塗料などの材料や、エンジンや航海機器といった機材まで幅広く存在します。こららを購入先の選定や価格の調整、納品管理などを行うことが資材調達の仕事になります。
造船業界の主要企業5選
就活では業界研究だけではなく、企業研究も大切です。企業の特徴を把握していなければ、選考において差別化できず、その企業に就職したいという熱意をアピールできません。
熱意を伝えるためには、企業への理解が大切ですので、主要企業を知って、理解を深めていきましょう。
1.川崎重工業株式会社
企業名:川崎重工業株式会社
代表者名:金花 芳則
従業員数:17,218人(2020年3月期時点)
設立年月日:1896年10月15日
川崎重工業株式会社は、航空宇宙、造船、鉄道車両、エネルギー関連、エンジニアリングなどをさまざまな事業を展開している企業です。業界内の売上やシェア率でもトップクラスの実績を誇る企業でもあります。幅広い事業展開が特徴でもあり、それぞれの分野で高い技術力を有しています。
船舶事業でも高い技術力を持ち、耐久力が高く、軽量な船体を作る技術であったり、深海を潜航を可能にする技術、さらには極低温の液化ガスを運ぶ技術などが強みです。川崎重工業では切磋琢磨しながら成長することができ、かつチームワークが大切にできる人材が求められています。社風としてもチームワークが大切にされており、新しいことに挑戦しながらも、チームで協力して仕事をする姿勢が求められています。
2.三菱重工業株式会社
企業名:三菱重工業株式会社
代表者名:宮永 俊一
従業員数:14,501人(2020年3月末時点)
三菱重工業株式会社は、パワー、インダストリー、社会基盤、航空・防衛・宇宙などの事業を展開している企業です。国内に4つの造船所を持ち、さまざまな船舶の建造を手掛けています。工場は長崎の本工場を始めとして、香焼工場、幸町工場、諫早工場などです。それぞれの工場で船舶の建造が進められています。
建造している船舶の種類は豪華客船やLNG船、LPG船などの高付加価値船などさまざまです。国内だけではなく、海外にも納入実績を持ち、グローバルに活躍している企業でもあります。
三菱重工業ではバランス感覚のある人材が求めれています。さまざまな人とコミュニケーションをとり、仕事を円滑に進めていくことが求められており、社風としても多様な個性が大切にされている企業です。
3.三井造船株式会社
企業名:三井造船株式会社
代表者名:田中 孝雄
従業員数:131人(2020年3月末時点)
設立年月日:1937年(昭和12年)7月31日
三井造船株式会社は、東京に本社を置く造船会社です。船舶造船事業だけではなく、物流システムや動力エネルギー、先進機械事業などでも活躍しており、幅広い分野に事業を展開している企業でもあります。
船舶の建造ではLNG運搬船や大型タンカー、バラ積み貨物船などに強みがあり、さまざまな商船を建造、提供しています。また高い技術力を使用して建造される巡視船や高速船などにも強いを持ち、ハイテク船の分野でも高い評価を受けている企業です。
三井造船では「考え抜く力」を持っている人が求められる人物像として挙げられています。物事に対して真摯に向き合い、誠実に問題を解決していく社風があり、何事にも当事者意識を持って取り組み、解決できる能力が求められています。
4.株式会社IHI
企業名:株式会社IHI
代表者名:満岡 次郎
従業員数:3,723名(2020年3月末時点)
設立年月日:明治22年(1889年)1月17日
株式会社IHIは、航空・宇宙、機械、物流・鉄構、エネルギー・プラントなどの事業を展開している企業です。直接的な船舶の建造については行われていませんが、舶用エンジンや部品などの製品に強みがあります。
技術力の高さを活かした製品づくりが特徴であり、造船業界の中でも高い実績と売上、シェア率を誇っています。高い技術力に強みがある企業であり、技術開発の分野で重機工業の業界をけん引する存在であり、造船業界内でも強い影響力がある企業です。
また海外進出が進められており、海外事業は拡大を続けるグローバルな企業でもあります。IHIでは人材を大切にする社風があり、男女ともに働きやすい環境が整っている企業です。
5.住友重機械工業株式会社
企業名:住友重機械工業株式会社
代表者名:別川 俊介
従業員数:3,068名(2020年3月31日時点)
設立年月日:昭和9年11月1日
住友重機械工業株式会社は、重機械工業事業を展開している企業です。船舶事業では1,300隻以上の船舶を建造しています。中型タンカー分野に強みがあり、高い技術力を活かした高付加価値船の建造にも強みがあります。
世界初のダブルアクティングタンカーやダブルハルタンカーなどの建造経験もあり、高い技術力と確かな実績によって高く評価されている企業です。また国内でも日本丸、海王丸などが有名であり、さまざまな船舶の建造を手がけています。
住友重機械工業では変化を恐れず、向上心を持って挑戦できる人材が求められています。社風としてもさまざまなことに挑戦しやすい環境であり、好奇心が旺盛な人、向上心の高い人が活躍できる環境が整っている企業です。
造船業界の業界研究ができるおすすめの書籍2選
より専門的な知識を身に付け、業界研究を進めるのであれば、書籍の利用がおすすめです。書籍ではネットにはない情報が知れますし、幅広く、かつ専門的な知識を学べます。
業界に関しての知識が深ければ深いほど就活でも役に立ちますし、就職後にも知識を役立てることができます。業界の知識はあって困るものではありませんし、就職後にも必要になるのものですので、書籍を利用して専門的な内容についても学んでおきましょう。
1.造船の技術 どうやって巨大な船体を組み立てる?大きなエンジンは船にどう載せるの?
造船の技術 どうやって巨大な船体を組み立てる?大きなエンジンは船にどう載せるの?は、造船の技術について解説しています。造船業界は船作りの業界ですが、船の成り立ちや工法についてはあまり知られていません。
造船業界で働くのであれば、最低限の船の成り立ちを知っておくことは必須です。技術職で実際に船作りをする職種であればもちろん、それ以外の職種であっても船作りに関わって仕事をすることに変わりはありません。
船に関する基本的な知識を身に付けるのであれば、この本は最適であり、さまざまな種類の船作りについてが解説されています。船を作る全体図だけではなく、船に必要な各種部品の製技術などについても解説されており、幅広い知識を身に付けられます。造船の基礎をしっかりと学べる一冊であり、入門書としてもおすすめです。
2.トコトンやさしい船舶工学の本 (今日からモノ知りシリーズ)
トコトンやさしい船舶工学の本 (今日からモノ知りシリーズ)は、船舶工学について分かりやすく解説しています。船舶工学は単に船を作るだけのものではなく、船がより安全に航行するためには何が必要なのか、どんな要素が必要なのかを知らなければなりません。
波や浮力などの物理学の知識が活かされる側面もありますし、船体設計を行うためには、機械工学などの知識も必要です。
船舶工学にはさまざまな知識が必要であり、初心者には難しいことも多いです。
この本では難しい船舶工学を、実際例を用いて分かりやすく解説しています。船の仕組みや船の種類、基本的な力学、造船の過程などについても解説されており、基礎的な知識を身に付けられます。船作りだけではなく、業界を知るヒントも隠されていますので、就活生に広くおすすめの一冊です。
業界を深く知り就活を有利に進めよう
造船業界は就活生にはあまり知られていませんが、日本では重要な産業であり、魅力が詰まった業界です。馴染みがない分、念入りに業界研究を行うことが大切ですので、しっかりと業界研究に取り組み、造船業界への就活を攻略していきましょう。