医療業界は高齢社会のため追い風業界の1つ
さまざまな業界が消費の縮小などに影響を受けているのに対し、医療業界は安定していると一般的に見られています。特に、他の業界は少子高齢化がマイナスに働く側面が大きい中、医療業界にとって高齢社会は追い風が吹いていると言えるでしょう。
就活生の中にも、「医療を通して貢献したい」、「今後大きな可能性のある医療の世界に携わりたい」と考える人は多いでしょう。しかし、医療と言ってもたくさんの分野があります。まずは医療業界の基礎知識から押さえていくことが大切です。
医療業界は成長している業界のひとつ
医療に関わる仕事は、医療によって人々の健康な暮らしを守ります。そのため「医療業界」という言葉は非常に範囲の広い言葉です。医師や看護師、福祉施設、製薬、介護支援など多くの職種を含みます。医療業界は、成長している業界の1つです。今後もますます高齢社会が進んでいくため、将来も安定して成長していく業界であるとされています。
また日本だけでなく、先進国を中心に世界全体で高齢化が進んでいくことが予測されます。さまざまな企業が、今後需要の伸びそうな分野に注力して事業を行っていこうとしており、目が離せない業界だと言えるでしょう。
医療業界の業績推移について
図形では、「業績規模」「平均年収」「平均勤続年数」のカテゴリーのうち、それぞれトップの「卸売」「総合商社」「電力」の業界と医療業界を比較しております。
業界動向リサーチの「医療機器業界の動向、現状、ランキング、シェアを研究-業界動向サーチ」によれば、医療業界は他の業界と比べても、特別業界規模が大きいわけではありませんが、成長率はとても高い業界です。2005年以降、順調に成長しつづけています。「医療業界は景気変動の影響を受けにくい」と言われていますが、実際に2008年の金融危機の時期も順調に業績を出していました。
先にも書いた通り、日本国内だけでなく世界で高齢化が進み、医療の需要が増える見込みがあることから、異業種企業の参入が増加しているのも特徴です。今後は予防医療・福祉施設向け事業の拡大などでさらなる成長が見込まれています。
一方医療業界の平均年収は564万円となっており、総合商社と比べると低いものの、サラリーマンの平均年収が400万円程度と言われているため、平均と比べると高めとなっています。ただし企業によって差があり、平均年収が900万円近い企業もあれば400万円台の企業もあります。
また平均勤続年数は18.3年となっております。国税庁が公表している「平成29年分 民間給与実態統計調査」によれば、全体の平均勤続年数は12.1年であるため、平均より長い勤続年数であることが分かります。勤続年数も20年近い企業から10年未満の企業もありますが、業界全体として勤続年数は伸びにくい傾向となっています。
医療業界で求められる2つの人物像
医療業界への就職を目指すなら、業界ではどのような人材が好まれるのか、求められている人物像を知っておくことが大切です。病院やその他の就職先によって求められる人物像の詳細は異なるものの、大枠では共通している場合が多いです。
つまり、業界全体で求められている人物像を知っておくことで、選考をスムーズに進め、高評価も獲得しやすくなります。求められる人材の特徴を正しく把握して、選考での評価の獲得に役立てましょう。
1.コミュニケーション能力がある
医療業界ではコミュニケーション能力の高い人材が求められており、これは仕事の性質に深く関係しています。医療の現場では患者や他のスタッフとコミュニケーションを取り合うことが多く、仕事をスムーズにおこなうには、お互いの認識の共有を正しくおこなわなければなりません。
相手が考えることを正しく理解し、自身の行動に移すことはもちろん、自分の考えていることを相手にスムーズに伝えられる力も必要でしょう。そのため、コミュニケーション能力は全般的に高めておく必要があり、聞く力と伝える力の両方が求められます。
どのような人とでもコミュニケーションが取れ、相手の考えを汲み取り、自身の考えを正しく相手に伝えられる能力が、医療業界では重要視されます。
コミュニケーション能力を自己PRするポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
2.臨機応変な対応ができる
臨機応変な対応ができる人材も、医療業界では求められています。これは主に病院等の医療現場に必要になる能力です。
例えば同じ病気を持っている患者でも、人によって既往歴が違ったり、その日の体調やどの薬が合うのかは異なったりすると考えましょう。つまり、患者個人ごとに異なる対応が求められ、その人に合った医療サービスを提供することが、医療業界では求められています。
医療の現場に決まった正解やルーティンはなく、そのときどきでどのような対応を取らなければならないかは異なります。その場の状況に合わせて臨機応変に仕事に取り組める柔軟な対応力が必要です。一分一秒を争うこともある医療現場において、臨機応変な対応力は必須であるため、特に重要視される能力と考えましょう。
順応性をアピールする方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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医療業界の主要企業5社
医療業界に対するニーズは多様です。病院などの臨床医療の現場だけでなく、救急現場や在宅医療、介護の現場などさまざまな場面で医療ニーズが拡大しています。そのため、それらに応えていく企業もさまざまです。
内視鏡、検査分野、透析技術など、特定分野に力を入れる企業もあります。それぞれの企業がどこに力を入れているのか、それによってどのように貢献しているのか知ることから企業研究をスタートしましょう。
1.オリンパス株式会社
- 企業名:オリンパス株式会社
- 取締役 代表執行役 社長兼CEO:竹内康雄
- 従業員数:35,174人(2020年3月)
- 設立年月日:1919年(大正8年)10月12日
オリンパス株式会社は日本の医療業界でトップの売上高・シェアを誇っている企業です。事業内容は精密機械器具の製造販売であり、医療機器だけでなく科学機器、映像機器などを幅広く扱っているのが特徴です。
医療事業では、特に内視鏡のリーディングカンパニーとして世界の医療に貢献しています。内視鏡とは、人体内部を観察する際に用いられる細長い形状の医療機器で、主に口内から食道を通り、内蔵を観察する際に使用されます。オリンパスでは、内視鏡関連の機器や外科に関する機器、内視鏡処置具などを開発・製造しています。
企業理念して掲げられているのは"Social IN"という言葉です。INtegrity(社会に誠実)、INnovation(価値の創造)、INvolvement(社会との融合)という3つの"IN"を満たすことで人々の健康と幸せな生活を目指しています。専門性の高い医療現場のニーズに対し、高い倫理観・技術力で応えている企業です。
2.テルモ株式会社
- 企業名:テルモ株式会社
- 代表取締役社長CEO:佐藤 慎次郎
- 従業員数:26,438人(2020年3月)
- 設立年月日:1921年(大正10年) 9月
テルモ株式会社は日本の医療業界で2位の売上高・シェアを誇る企業です。企業理念は「医療を通じて社会に貢献する」であり、これまで医療従事者や医療を受ける人に向けた数多くの製品を作り出してきました。事業内容は医療機器や医薬品の製造・販売です。
事業は「心臓血管カンパニー」、「ホスピタルカンパニー」、「血液システムカンパニー」の3つに分かれて展開されています。心臓血管カンパニーは、カテーテルと呼ばれる細い管を血管に通す血管内治療、心臓血管外科手術への貢献に注力しています。
ホスピタルカンパニーが注力しているのは、医療現場の状況に合わせた医療機器や医薬品の機能・使い勝手の向上です。血液システムカンパニーは、採血装置や血液成分分離装置などによって輸血医療を支えることに注力しています。医療の質向上を追求する日本の代表企業と言えるでしょう。
3.ニプロ株式会社
- 企業名:ニプロ株式会社
- 代表取締役社長:佐野 嘉彦
- 従業員数:32,786(2020年3月)
- 設立年月日:1954年(昭和29年)7月8日
ニプロ株式会社は、もともと電球再生事業としてスタートした企業です。その後、医療用ガラス製品や魔法瓶用ガラスの製造を始め、スーパーマーケットも始めました。ガラス事業とスーパーマーケット事業で成功を収めた後、本格的に医療業界に参入しました。
現在の事業内容は医療機器事業、医薬事業、ファーマパッケージング事業の3種類です。医療機器事業では透析関係の機器や人工臓器、外科手術用機器などを製造しています。医薬事業では注射剤や経口剤の製造、ファーマパッケージング事業では医療用のガラス材料などを生産しています。
製品が日本国内だけでなく海外でも高く評価され、使用されているのもニプロの大きな特徴です。ニプロは今後も、地球規模の医療に貢献できる真にグローバルな総合医療メーカーとして、果敢に成長を目指しています。
4.シスメックス株式会社
- 企業名:シスメックス株式会社
- 代表取締役会長兼社長:家次 恒
- 従業員数:8,200(2020年3月)
- 設立年月日:1968年(昭和43年)2月20日
シスメックス株式会社は医療分野の中でも「検査」に特化している企業です。事業内容は検体検査事業、ライフサイエンス事業、その他事業の3つに分類されます。
検体検査事業では、人体から採取した血液や尿、細胞などを分析する機器や試薬、ソフトウェアなどを製造しています。ライフサイエンス事業で行われているのは、主にがんの確定診断や再発防止のための研究です。その他事業では、採血せずにヘモグロビンの値を測定できるモニタリング装置や動物用自動血球分析装置などの開発・販売が行われています。
特に血液中の白血球や赤血球を検査するヘマトロジーという分野では世界最大シェアを誇っているのが特徴です。また検体検査事業を展開している国は世界で190か国を超えています。特に検査分野で世界中の医療に大きく貢献している企業であると言えます。
5.日本光電工業株式会社
- 企業名:日本光電工業株式会社
- 代表取締役社長執行役員:荻野 博一
- 従業員数:5,357(2020年3月)
- 設立年月日:1951年(昭和26年)8月7日
日本光電工業株式会社は医療用電子機器のメーカーです。「エレクトロニクスで病魔に挑戦」を掲げ、救急現場や検査、治療、リハビリなどを最先端技術でサポートすることを使命としています。
拡大する医療ニーズを満たすため、「医療に国境は無い」という考えのもと、世界120か国以上に製品を輸出し医療現場を支えています。日本光電工業株式会社が特に力を入れているのは、患者さんの生体情報を早く正確に計測する技術です。手術中の事故防止や新生児管理に欠かせない、「パスルオキシメータ」という動脈血中の酸素を計測する機器は1979年に特許を取得しています。
現在、臨床医療の現場だけでなく、救急現場や在宅医療などさまざまな場面で医療ニーズが拡大していますが、それらの分野に果敢に挑戦している企業と言えます。
かんたん3分!受けない方がいい職種がわかる適職診断
就活では、自分に適性のある仕事を選ぶことが大切です。向いていない職業に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまいます。
そんな時は「適職診断」を活用して、志望する職業と自分の相性をチェックしてみましょう。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強み・弱みを分析し、ぴったりの職業を診断できます。
適職診断で自分の適性を把握しておき、就活を効率的に進めましょう。
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医療業界の業界研究ができるおすすめ書籍2選
医療業界について深く知るためには、書籍による業界研究がおすすめです。医療業界は臨床現場から在宅医療、福祉など守備範囲が広く、しかも専門性が高い分野です。そのため、インターネット上の情報やニュース記事だけでは業界について正確に把握することは難しいでしょう。
書籍を活用すれば、医療業界の仕組みや最新の流れをスムーズに把握することが可能です。そこでここからは医療業界研究におすすめの書籍を紹介します。
1.最新業界の常識よくわかる医療業界 (最新 業界の常識)
『最新業界の常識よくわかる医療業界 (最新 業界の常識) 』は、医療業界の基礎知識や医療業界に関する情勢についてまとめた書籍です。医療業界の仕組みや最近のできごとを取り上げ、医療業界の就職事情や制度の変化、医療機関の生き残り戦略などについて紹介しています。
医薬品メーカーや医療機器メーカー、医療関連サービスの拡大などさまざまな領域についてまとめられており、医療業界の今後についても言及されています。医療業界の全体像がわかりやすい構成となっているため、就活生はもちろん、医療従事者や医療業界への転職志望者にも読まれている書籍です。
2.ゼロからわかる医療機器・介護機器ビジネスのしくみ
『ゼロからわかる医療機器・介護機器ビジネスのしくみ』は、医療機器業界に特化してわかりやすく最新の動向をまとめた書籍です。医療機器業界の基礎知識をまとめた上で最新動向が解説されているため、医療機器業界を知るための入門書として最適です。
医療業界は、今後もニーズが拡大する市場として注目されており、異業種からの参入も相次いでいます。
そのような中、「技術力を活かすためのマーケティング力が大切」という視点でビジネスチャンスを解説しているのがこの本です。読みやすい構成でわかりやすい書き方になっているため、必要な情報をスピーディーに学ぶにはぴったりの本と言えます。
医療業界を深く知り就活を有利に進めよう
医療業界は今後ますますニーズが拡大することが予測されている業界です。そのため医療業界を目指す就活生は増えていますが、一方で医療業界は専門性の高い分野でもあります。
医療の網羅する範囲は広いですが、少しずつでも業界や最新の動向について情報を集め、広い視野を持って医療業界を目指していきましょう。